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審決分類 |
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W2930 審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない W2930 |
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管理番号 | 1357813 |
審判番号 | 不服2018-9759 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-07-17 |
確定日 | 2019-11-20 |
事件の表示 | 商願2016-140880拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 本願商標 本願商標は、「Ferrara」の欧文字を標準文字で表してなり、第29類「オリーブ油,食用油脂」及び第30類「トマトソース,調味料,パスタ,穀物の加工品」を指定商品として、平成28年12月15日に登録出願されたものである。 第2 原査定の拒絶の理由の要点 本願商標は、「Ferrara」の欧文字を標準文字で表してなるところ、該文字はイタリア共和国の都市「フェラーラ」を理解させ、また、フェラーラの町並みが紹介される、ツアーが組まれるなど、フェラーラが観光地としても認識されている実情がうかがえことから、これを本願の指定商品に使用しても、これに接する需要者は、「イタリア共和国フェラーラ県産の商品」であることを認識するにとどまるといえる。よって、本願商標は、商品の産地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。 また、本願商標をその指定商品中「イタリア共和国フェラーラ県産の商品」以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから、本願商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。 第3 当審における審尋及び請求人の回答 審判長は、請求人に対し、別掲1及び2に係る証拠を示して、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する旨の審尋を発し、意見を求めたが、請求人からは、何ら応答がなかった。 第4 当審の判断 1 商標法第3条第1項第3号該当性について 本願商標は、「Ferrara」の欧文字を標準文字で表してなり、指定商品は、第29類「オリーブ油,食用油脂」及び第30類「トマトソース,調味料,パスタ,穀物の加工品」である。 そして、「フェラーラ(Ferrara)」は、「イタリア北部、ポー川支流ヴォラーノ川に望む都市。ルネサンス期の芸術の一大中心地。同時期の市街とポー川デルタ地帯は世界遺産。フェッラーラ。」であって(広辞苑 第7版)、別掲1のとおり、我が国において観光地として広く紹介されている実情があること、また、別掲2のとおり、小麦の栽培、食品加工(砂糖、製粉、マカロニなど)、トマトの生産などが「Ferrara(フェラーラ、フェッラーラ)」の主要な産業と認められることを併せみれば、「Ferrara(フェラーラ、フェッラーラ)」は、我が国において観光地として広く認識され、また、加工食品などの産地又は販売地と認識させることが少なくないものと判断するのが相当である。 そうすると、「Ferrara」の欧文字を標準文字で表してなる本願商標は、これをその指定商品中「イタリア共和国の都市『Ferrara(フェラーラ、フェッラーラ)』で生産又は販売された商品」について使用するときは、これに接する取引者、需要者をして、該文字をその商品が「イタリア共和国の都市『Ferrara(フェラーラ、フェッラーラ)』で生産又は販売された商品」であるという、商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示したものと認識させるにすぎないものというのが相当である。 したがって、本願商標は、その指定商品中「イタリア共和国の都市『Ferrara(フェラーラ、フェッラーラ)』で生産又は販売された商品」について使用するときは、商標法第3条第1項第3号に該当する。 2 商標法第4条第1項第16号該当性について 上記1のとおり、本願商標は、これをその指定商品中「イタリア共和国の都市『Ferrara(フェラーラ、フェッラーラ)』で生産又は販売された商品」について、該商品が「イタリア共和国の都市『Ferrara(フェラーラ、フェッラーラ)』で生産又は販売された商品」であるという、商品の産地及び販売地を表示したものと認識させるものであるから、これをその指定商品中、上記商品以外の商品について使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあると認められる。 したがって、本願商標は、その指定商品中「イタリア共和国の都市『Ferrara(フェラーラ、フェッラーラ)』で生産又は販売された商品」以外の商品について使用するときは、商標法第4条第1項第16号に該当する。 3 請求人の主張 (1)請求人は、「Ferrara(フェラーラ)」はイタリア共和国における一般的な姓である旨、「Ferrara(フェラーラ)」が同国の都市を意味するとしても我が国で馴染みのある地理的名称ではない旨、「Ferrara」に関する我が国における観光地としての知名度は限定的である旨、及び原審が提示したウェブページには飲食物との関係を示す記述は皆無に等しい旨述べ、本願商標は商品の産地、販売地を表示したものと理解させることはない旨主張する。 しかしながら、我が国において、「Ferrara(フェラーラ)」がイタリア共和国における一般的な姓であると理解、認識されているというに足る証左はなく、また、別掲1のとおり、「Ferrara(フェラーラ)」には世界遺産として登録(1995年登録)されている地域があり、我が国において「Ferrara(フェラーラ)」を観光地として紹介している書籍やウェブサイトが複数あることから、「Ferrara(フェラーラ)」は我が国において観光地として相当程度認識されていると判断するのが相当である。さらに、上記1のとおり、「フェラーラ(Ferrara)」の主要な産業は小麦の栽培、食品加工などであると認められるから、請求人のかかる主張は採用できない。 (2)請求人は、我が国において、日本製粉株式会社が、請求人の許諾の下、「フェラーラ」(「Ferrara」の読みを表記したもの)を商標的に使用して指定商品に係るパスタを販売しており、当該商品のプレスリリースにおいては、「イタリア産パスタブランド 『フェラーラ』パスタを本格展開」と述べていること等から、「フェラーラ」の欧文字表記が「Ferrara」であることは容易に理解されるため、本願商標をパスタ等の商品に使用した場合には、ブランドとして認識されるものである旨主張する。 確かに、我が国において、日本製粉株式会社が、「Ferrara」の欧文字を含む標章を商品「パスタ」について使用していることは認められるものの、当該標章は他の構成要素を含むものであるから、当該標章の使用あるいは当該標章を説明する文の中に「フェラーラ」の文字があるとしても、当該事実により上記判断が左右されるものではない。 (3)請求人は、過去の審決例、登録例を挙げて、本願商標も同様に取り扱われるべきである旨主張する。 しかしながら、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるか否かの判断は、当該商標の査定時又は審決時において、個別具体的に判断されるものであるから、過去に登録された事例の判断に拘束されることはないし、他に上記判断を覆すべき事情は見いだせない。 (4)したがって、請求人の主張は、いずれも採用できない。 4 まとめ 以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、登録することができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲(平成31年2月21日付け審尋により開示した事実) 1 「Ferrara(フェラーラ、フェッラーラ)」が我が国において観光地として紹介されている実情 (1)「地球の歩き方 イタリア 2018?2019年版」(株式会社ダイヤモンド・ビック社発行)には、「Ferrara フェッラーラ」の項に、「世界遺産 フェッラーラ、ルネッサンス期の市街とポー川デルタ地帯 登録年1995/1996年 文化遺産」の記載及び「Ferrara(フェラーラ)」の観光情報の記載がある。 (2)「るるぶ.COM」のウェブサイトにおいて、「フェッラーラ:ルネサンス期の市街とポー川デルタ地帯」の見出しの下、「イタリア北部、イタリア最大の川、ポー川下流に位置するフェッラーラ。(略)1995年世界文化遺産に登録され、1999年にはその範囲が拡大された。」の記載がある。 (https://www.rurubu.com/overseas/detail.aspx?ID=124021) (3)「AB-ROAD PRODUCED BY RECRUIT」のウェブサイトにおいて、「【豊かなエミリアロマーニャ】ボローニャから日本語係員と専用車で訪れる【美食の食材工場】と城壁都市【フェッラーラ】6日間!【日本人対応現地連絡先付きで安心】」の見出しの下、「Ferrara(フェラーラ)」を訪れるツアーが紹介されている。 (chrome-extension://mcbpblocgmgfnpjjppndjkmgjaogfceg/fsCaptured.html) (4)原審が示した「Ferrara(フェラーラ)」が我が国において観光地として紹介されている実情 ア 「イタリア政府観光局」のウェブサイトにおいて、「イタリアの旅:世界遺産を巡る フェッラーラ:ルネッサンス期の市街とポー河デルタ地帯」の見出しの下、「Ferrara(フェラーラ)」の観光情報が記載されている。(http://visitaly.jp/unesco/ferrara-citta-del-rinascimento-e-il-delta-del-po) イ 「有限会社ひだまり」が運営する「大人になれる本」のウェブサイトにおいて、「本当のイタリアを感じる街『フェラーラ』」の見出しの下、「Ferrara(フェラーラ)」の町並みが紹介されている。(http://otonaninareru.net/ferrara/)。 ウ 「Viator」のウェブサイトにおいて、「ラベンナとフェラーラ1日ツアー」の見出しの下、「Ferrara(フェラーラ)」を訪れるツアーが紹介されている。(https://jp.viator.com/tours/Ferrara/Private-Day-Tour-of-Ravenna-and-Ferrara/d27187-2734P29)。 2 「Ferrara(フェラーラ)」の産業について (1)「コンサイス外国地名事典 <第3版>」(株式会社三省堂発行) 「フェラーラ(フェッラーラ) Ferrara」の項に「小麦・麻・テンサイ栽培および牧畜地帯」の記載がある。 (2)「世界地名大事典6 ヨーロッパ・ロシアIII」(株式会社朝倉書店発行) 「フェラーラ Ferrara」の項に「主要産業は、食品加工・プラスティック製造・肥料製造.」の記載がある。 (3)「世界大百科事典 24」(平凡社発行) 「フェラーラ Ferrara」の項に「今日では、石油精製所も立地しているが、工業の主体は、周囲の豊かな農業地域と結びついた食品工業(砂糖、製粉)、農業機械、化学肥料などである。」の記載がある。 (4)「万有百科大事典 10 世界地理」(株式会社小学館発行) 「フェララ Ferrara」の項に「農産物の集散や農産物加工業(とくに砂糖・マカロニ・ソーセージ・せっけんなどの製造)が盛んである。」の記載がある。 (5)「野菜情報 2016年10月号 VOL.151」(独立行政法人農畜産業振興機構 調査情報部発行) 「海外情報」として、「イタリアのトマトの生産状況およびトマト加工品の生産、輸出動向(前編)」の見出しの下、「2 トマトの生産状況」の「(2)主要生産地」の項に「加工用トマト生産は、南部のプーリア州と、ポー平原が広がる北部のエミリア=ロマーナ州が二大産地となっており、この二州で全体の7割弱を占める(略)。プーリア州ではフォッジア(Foggia)が、エミリア=ロマーナ州ではピアチェンツァ(Piacenza)、フェラーラ(Ferrara)、パルマ(Palma)などが主要な産地である。」の記載がある。 |
審理終結日 | 2019-06-18 |
結審通知日 | 2019-06-25 |
審決日 | 2019-07-11 |
出願番号 | 商願2016-140880(T2016-140880) |
審決分類 |
T
1
8・
13-
Z
(W2930)
T 1 8・ 272- Z (W2930) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 駒井 芳子、押阪 彩音、菅沼 結香子 |
特許庁審判長 |
早川 文宏 |
特許庁審判官 |
山田 啓之 庄司 美和 |
商標の称呼 | フェッラーラ、フェラーラ、フェルラーラ、ファーララ |
代理人 | 貝塚 亮平 |