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審決分類 |
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W43 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W43 |
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管理番号 | 1356930 |
審判番号 | 不服2018-13660 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-10-12 |
確定日 | 2019-10-24 |
事件の表示 | 商願2017-74962拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 本願商標 本願商標は,「シビカラ」の文字を横書きしてなり,第43類に属する願書に記載のとおりの役務を指定役務とし,平成29年6月5日に登録出願されたものであり,その後,指定役務については,原審における同30年2月23日受付の手続補正書により,第43類「ラーメンを主とする飲食物の提供」と補正されたものである。 第2 原査定の拒絶の理由の要旨 原査定は,「本願商標は,『シビカラ』の文字を普通に用いられる方法で横書きしてなるところ,『シビカラ』の語は,ラーメンの提供等を取り扱う業界においては,『シビれてカラい』,『シビれるカラさ』程の意味合いをもって,一般に使用されている実情があることよりすれば,本願商標を,その指定役務に使用するときは,これに接する取引者,需要者は,該役務が『痺れて辛い効果のある商品を使用したもの(例えば山椒と唐辛子を使用したもの)』程の意味合いを認識,理解するにとどまり,すなわち,役務の質,提供の用に供する物を表示したものとして認識するとみるのが相当である。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。 第3 当審における審尋 当審において,請求人に対し,令和元年5月8日付けで,別掲のとおりの事実を示した上で,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当する旨の審尋を発し,相当の期間を指定して,これに対する意見を求めた。 第4 審尋に対する請求人の回答(要旨) 請求人は,上記3の審尋に対して,令和元年6月18日付けの回答書において,「本願商標『シビカラ』は本願出願人が商標として非常に沢山使用しており,造語と認定することが合理的であり,本願商標『シビカラ』は単に役務の質を表示するとされるものではなく,取引の実情に鑑みれば本願商標『シビカラ』は,自他商品の識別標識としての機能を充分果たす商標であり,商標法第3条第1項第3号には決して該当しないものである」旨の意見を提出した。 第5 当審の判断 1 商標法第3条第1項第3号該当性 (1)本願商標について 本願商標は,「シビカラ」の文字を普通に用いられる方法で書してなるものである。 そして,別掲(1)のとおり,「シビ辛」の語は,インターネット辞書にも「舌が痺れるような辛さを表現する言葉」の意味を有する語として掲載されており,「シビカラ」と読まれるものである。 さらに,「シビカラ」及び「シビ辛」の文字は,別掲(2)のとおり,本願商標に係る指定役務のラーメンを主として提供する飲食業界において,「舌が痺れるような辛さ」を指称する語として,普通に使用されている実情が見受けられる。 以上よりすると,本願商標をその指定役務に使用するときには,これに接する取引者,需要者は,本願商標が「舌が痺れるような辛さを特徴とするラーメン等の飲食物を提供する役務」であるという役務の質を表したものとして理解するにとどまるから,本願商標は,自他役務の識別力を有しないものというのが相当である。 したがって,本願商標は,その役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから,商標法第3条第1項第3号に該当する。 (2)請求人の主張 ア 請求人は,本願商標はカタカナ四文字のみからなる分離不可能な構成であるとともに意味を全く持たない構成であるところ,本願商標から直ちに「シビ」及び「カラ」を連想して,「シビカラ」の文字から直ちに「舌が痺れるような辛さを特徴とするラーメン」と知覚するようなことは考えられず,現実の商取引においては,商標にいかなる意味があるかを充分に考えることはほとんど無く,商標をそのまま聞いたり,言ったり,そのまま「シビカラ」として認識したりすることが自然とすべきであるから,本願商標『シビカラ』はまとまりのある一つの造語商標と認定すべきである旨主張する。 しかしながら,上記(1)のとおり,「シビ辛」の語が,「舌が痺れるような辛さを表現する言葉」の意味を有する語としてインターネット辞書に掲載されていること(別掲(1)),「シビカラ」及び「シビ辛」の文字は本願商標に係る指定役務であるラーメンを主として提供する飲食業界において,「舌が痺れるような辛さ」を指称する語として,普通に使用されている実情が見受けられること(別掲(2))よりすれば,本願商標は,これに接する需要者,取引者をして,特定の意味を有さない造語ではなく,「舌が痺れるような辛さ」程を認識するというべきである。 イ 請求人は,過去の商標の登録事例を挙げて,本願商標もそれらと同様に,登録されるべきである旨主張する。 しかしながら,登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであるか否かの判断は,当該商標登録出願の査定時又は審決時において,当該商標の構成態様と指定商品・指定役務との関係や,その商品又は役務の分野における取引の実情をも踏まえて,個別具体的に判断されるべきものであるところ,請求人の挙げた登録例・審決例は,商標の構成態様が本願商標とは異なるもの,又は,本願商標を使用する役務とは異なる商品又は役務である点において,本願とは,事案を異にするものというべきであり,また,過去の登録例が存在することをもって,上記判断が左右されるものではない。 ウ したがって,請求人の上記主張は,いずれも採用できない。 2 本願商標の商標法第3条第2項該当性について 請求人は,平成30年10月12日付け手続補足書「使用により識別力を獲得したことを証明する資料」として資料1ないし資料30(以下,資料1ないし資料30を甲第1号証ないし甲第30号証と読み替える。)を提出しており,これは,商標法第3条第2項の要件を具備していることを主張しているものと解されるため,本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するか否かについて,請求人の提出した証拠及び主張を検討する。 (1)証拠及び請求人の主張によれば,以下の事実が認められる。 ア 請求人及び使用商標の使用開始時期,使用地域,使用態様について 請求人は,「飲食店の経営,飲食店経営の企画及びコンサルタント業務」等を目的として,平成23年12月19日設立され(甲1),新潟市内に6店舗の飲食店を有し,そのうち江南区旭及び西区小針において,ラーメン店を経営している(甲2?甲4)。 また,請求人は,上記新潟市西区小針に所在する,2017年(平成29年)5月9日に新たに開店したラーメン店において(甲9,甲12),メニューの一つに唐辛子及び山椒(さんしょう)を用いた辛い味噌のスープによるラーメンの名称として「シビカラ味噌ラーメン」及び「シビカラつけ麺」等の文字を使用している(甲3?甲30)。 なお,請求人にかかる当該新潟市西区小針に所在するラーメン店において提供される役務「ラーメンを主とする飲食物の提供」を,以下,「請求人役務」という。 イ 請求人役務における売上実績 請求人役務にかかる売上数量及び売上額等の売上実績に係る証拠の提出はない。 ウ 広告宣伝の期間・地域及び規模 上記アのとおり,請求人は,2017年(平成29年)5月から請求人役務を行っており,請求人のウェブサイトを通じて,広告宣伝している(甲2)。また,2017年(平成29年)5月から同年12月にかけて新潟県において発行された雑誌「月刊新潟WEEK!」(2017年6月号,2017年7月号及び2018年1月号),「月刊にいがた 2017年7月号」,「月刊新潟Komachi 2017年7月号 下越版」(甲5?甲9)や,2017年(平成29年)5月から2018年(平成30年)8月におけるインターネット記事(甲10?甲14,甲17?甲21,甲24,甲25,甲27?甲30)にて,請求人にかかるラーメン店及びメニューの一つである「シビカラ味噌ラーメン」等が紹介された。 (2)上記(1)の認定事実によれば,請求人は,請求人役務において,メニューの一つに唐辛子及び山椒(さんしょう)を用いた辛い味噌のスープによるラーメンの名称として「シビカラ味噌ラーメン」及び「シビカラつけ麺」等の文字を使用していることは認められる。 しかしながら,その使用は,2017年(平成29年)5月9日に新たに開店した新潟市内のわずか1店舗のみにすぎない。 また,請求人役務にかかる売上数量,売上金額等の売上実績は不明であり,請求人役務は,請求人のウェブサイトにおける広告や,新潟県において発行された雑誌,インターネット記事において,紹介されたことが認められるものの,請求人による広告はウェブサイト上のもののみであり,雑誌掲載はわずか5回であって,いずれも地域に特化したものにすぎない。 加えて,上記1(1)のとおり,本願指定役務との関係において,「シビカラ」及び「シビ辛」の文字が,「舌が痺れるような辛さ」を指称する語として,他人によっても使用されている例がある。 以上よりすると,本願商標は,その指定役務「ラーメンを主とする飲食物の提供」に使用された結果,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することが至ったものとは認められない。 したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備しない。 (3)まとめ 以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,かつ,同条第2項の要件を具備しないから,これを登録することはできない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 当審における審尋で示した証拠 (1)weblio辞書,実用日本語表現辞典に「シビ辛」の見出しの下,「読み方:しびから 別表記:しび辛」及び「舌が痺れるような辛さを表現する言葉。唐辛子やマスタードなどによる,舌がヒリヒリするような辛さではなく,山椒や花椒などによる辛さを意味することが多い。山椒などの香辛料を用いた,麻婆豆腐やラーメンなどの料理のことを『シビ辛料理』と言う。」の記載がある。 (https://www.weblio.jp/content/%E3%82%B7%E3%83%93%E8%BE%9B) (2)指定役務の分野で,「シビカラ」の文字及び「シビ辛」の文字が,「舌が痺れるような辛さ」を指称する語として使用されている事実について ア 「東海ウォーカー 2018年vol.2 7月・8月号」(ウォーカームックNo.862 2018年6月20日発行・発売)(株式会社KADOKAWA)の表紙の上部に同号の掲載内容の紹介として「『(涼)山遊び』『シビ辛グルメ』など全370スポット」の記載がある。また,同号の84頁ないし93頁に「ブーム到来!!/舌がシビれる/新たなる味覚!」及び「シビ辛グルメ 厳選28軒」の見出しの下,ラーメン等の飲食物及びそれらを提供する店舗の特集が組まれており,84頁には,「シビ辛グルメとは?」の項に,「唐辛子のようなヒリヒリとした辛さではなく,山椒や花椒によるビリビリとシビれる辛さが特徴。あと味の爽快感はクセになります!」の記載がある。 イ 「ラーメンWalker新潟 2019」(ウォーカームックNo.907 2018年10月5日発行・発売)(株式会社KADOKAWA)の14頁に,「県外の有名店が新潟進出」の見出しの下,「汁なし担々麺」の紹介記事において「ピリリとしびれる旨辛さにハマる人が続出!」及び「北海道札幌市に本店を構える担々麺の専門店。17年に新潟,18年には東京に進出を果たし,シビ辛ブームの一翼を担っている。」の記載がある。 ウ 「ラーメン大志軒」のウェブサイトに,グランドメニューとして「シビカラ味噌麺 650円」の見出しの下,「シビカラ味噌」,「辛さとシビレのやみつき味」及び「オリジナルのスパイス。そして上質な山椒を使いただ辛いだけではない後を引くやみつきの旨辛味噌ラーメンです。お好みで辛さとシビレの強さをお選びください。」の記載がある。 (http://taishiken.jp/menu/) エ 「八王子のラーメンを食べ歩く会」のウェブサイトに,「『シビカラ麻婆つけ麺』790円@横浜家系ラーメン八王子大和家」の見出しの下,「”四川の香辛料を独自にブレンドした麻婆ととんこつのコラボ。大和家のニューフェイス!このシビレこの辛さハンパない!!”」の記載がある。 (http://ramen8.com/?p=8936) オ 「Komachi MAG.」のウェブサイトに,「【特集】辛いもの好き集合!刺激が駆け抜ける〈新潟シビ&辛い麺〉5選」の見出しの下,「■『吉相 県庁前店』のシビカラ味噌らーめん(853円)」の説明として,「シビれと辛さの余韻の中にしっかりとうま味を感じられるスパイシーなみそラーメン。数種のトウガラシを使った辛みも,4種のサンショウを使った香味油も,好みに応じてそれぞれ5段階に調節可能。」の記載がある。(https://komachi-mag.com/feature/10711/) カ 「麺肴ひづき 本店 と麺肴ひづき あさのや 公式ブログ」のウェブサイトに「2015年03月31日 麺肴ひづき,ひるめん!」の見出しの下,「『シビカラ担々つけ麺』800円」の説明として,「なんまつイチオシの担々麺のつけ麺バージョンです!やってそうでやっていなかった担々麺つけ麺!今回は四川山椒を多めに振りかけておりますのでシビレ!カラミ!をお楽しみ下さい」の記載がある。 (http://hiduki.naganoblog.jp/d2015-03.html) キ 「麺肴ひづき 本店 と麺肴ひづき あさのや 公式ブログ」のウェブサイトに「2015年06月09日 今週のひるめん!」の見出しの下,「今週のひるめんは,『シビカラ味噌ラーメン』750円です!」の説明として,「程よい辛さと痺れの味噌ラーメンで,梅雨を乗り切って下さい」の記載がある。 (http://hiduki.naganoblog.jp/e1728288.html) ク 「TRAVEL STAR」のウェブサイトに,「鈴鹿市ラーメン人気ランキングBEST7!有名店やつけ麺が自慢の店など!」の見出しの下,「鈴鹿周辺のおすすめ有名ラーメン3:麺屋すみか」の見出しの下,「鈴鹿周辺でおすすめしたい有名ラーメン『麺屋すみか』は,いなべ市にある痺れるような辛さのラーメンが自慢のお店です。」及び「『麺屋すみか』では,刺激たっぷりのまぜそばが人気です。ヒットメニューでもある『シビカラ混ぜそば』は,ニンニクのパンチに花椒がたっぷりときいた見るからにスタミナが付きそうな逸品。」の記載がある。 (https://travel-star.jp/posts/8656) ケ 「大阪ラーメンTODAY」のウェブサイトに,「【限定】ラーメン而今 四ツ橋店・シビカラ濃厚冷やし担々麺(2017?07-31)」の見出しの下,「シビカラ濃厚冷やし担々麺」の説明として,「最初は,芝麻醤によるゴマの甘味のコクが先行し,すぐにコチュジャンや中国山椒によるスパイシーな痺辛感がガツン!と押し寄せる。」の記載がある。 (https://ameblo.jp/pikiojapan/entry-12297237568.html) コ 「貝汁らぁめんこはく」のウェブサイトに,「シビカラ豚足油そば 2018年01月29日」の見出しの下,「トロトロ豚足をピリ辛に煮込み山椒を効かせたシビカラ油そばです」の記載がある。 (https://ameblo.jp/keieigenri/entry-12348432957.html) サ 「奈良グルメ図鑑」のウェブサイトに,「シビカラ 四川料理特集」の見出しの下,「暑い夏は辛い物を食べて元気を出そう。ということで,辛さと痺れがたまらない麻婆豆腐や担々麺といった四川料理特集です。」の記載がある。 (http://nara-gourmet.com/nara-kakigori/nara-sisen/) |
審理終結日 | 2019-08-20 |
結審通知日 | 2019-08-27 |
審決日 | 2019-09-10 |
出願番号 | 商願2017-74962(T2017-74962) |
審決分類 |
T
1
8・
13-
Z
(W43)
T 1 8・ 17- Z (W43) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 蛭川 一治 |
特許庁審判長 |
早川 文宏 |
特許庁審判官 |
山根 まり子 大森 友子 |
商標の称呼 | シビカラ |
代理人 | 黒田 勇治 |