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審決分類 審判 一部申立て  登録を取消(申立全部取消) W03
管理番号 1356278 
異議申立番号 異議2018-900098 
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-04-24 
確定日 2019-09-30 
異議申立件数
事件の表示 登録第6019500号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6019500号商標の指定商品中、第3類「卵殻膜成分を配合した化粧品」についての商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第6019500号商標(以下「本件商標」という。)は、「水解卵殻膜」の文字を標準文字で表してなり、平成29年3月6日に登録出願、第1類「たんぱく質」、第3類「卵殻膜成分を配合した化粧品」及び第5類「卵殻膜あるいは加水分解卵殻膜を含む栄養補助食品」を指定商品として、同年12月15日に登録査定、同30年2月16日に設定登録され、その後、本件商標に係る商標権については、同31年4月26日に、その指定商品中、第3類「卵殻膜成分を配合した化粧品」を放棄する旨の登録の申請がされた結果、その登録の一部抹消がされたものである。

第2 登録異議申立ての理由(要旨)
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標について、その指定商品中の第3類「卵殻膜成分を配合した化粧品」との関係においては、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、その指定商品に係る登録は、取り消されるべきである旨申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第21号証を提出した。
1 商標法第3条第1項第3号について
本件商標は、漢字で「水解卵殻膜」と横書きしてなるものであるところ、本件商標を構成する「水解」の語は、「加水分解」の略語であり(甲1、甲2)、また、「水解卵殻膜」及び「加水分解卵殻膜」の語は、「ニワトリGallus gallus domesticus Brisson(Phasianidae)の卵殻膜をアルカリ又は酵素により加水分解して得たもの」(甲3、甲4)、あるいは、「卵殻膜を酸、酵素又は他の方法により加水分解して得られるもの」(甲5、甲6)と定義されていることから、これらの語は、「卵殻膜を酵素等により加水分解したもの」を表す同義語であることが明白である。
また、「水解卵殻膜」及び「加水分解卵殻膜」が、本件商標の指定商品である化粧品(薬用化粧品等の医薬部外品を含む)のうち、洗顔料、美容液、化粧水、クリーム等の原材料を表す語として普通に使用されていることも明白なところである(甲7?甲21)。
したがって、本件商標は、これをその指定商品中の「卵殻膜を酵素等により加水分解したものを原材料とした商品」に使用するときは、単に商品の原材料、品質を表す標章にすぎないものであり、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 商標法第4条第1項第16号について
本件商標は、その指定商品中の「卵殻膜を酵素等により加水分解したものを原材料とした商品」以外の商品に使用するときは、あたかもその商品が「卵殻膜を酵素等により加水分解したものを原材料とした商品」であるかのように直感させ、その商品の品質について誤認を生じるおそれのあることは明白であるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。

第3 本件商標に対する取消理由の通知
審判長は、本件商標の商標権者に対し、本件商標が、その指定商品中の第3類「卵殻膜成分を配合した化粧品」との関係においては、商品の原材料を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、本件商標の登録査定時に、商標法第3条第1項第3号に該当する商標であったというべきである旨の取消理由を平成31年3月19日付けで通知し、期間を指定して、意見書を提出する機会を与えた。

第4 本件商標の商標権者の意見(要旨)
本件商標の商標権者は、前記第3の取消理由の通知に対し、本件商標の指定商品中の第3類「卵殻膜成分を配合した化粧品」を抹消するため、商標権の一部放棄書を添付した商標権の一部抹消登録申請書を本意見書提出と同時に提出したことから、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当したものとはいえないものとなったので、本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとした取消理由は、なくなったものと思料する旨の意見を述べた。

第5 当審の判断
1「水解卵殻膜」の文字について
申立人提出の甲各号証によれば、「水解卵殻膜」の文字については、以下のとおりである。
(1)日本化粧品工業連合会は、医薬部外品の成分表示に係る医薬部外品関係団体と厚生労働省との意見交換会を受け、自主基準として成分表示を行うこととした。そして、同連合会は、その具体的な表示方法等について検討を行い、「医薬部外品の成分表示に係る日本化粧品工業連合会の基本方針」を作成して、平成18年4月1日から同連合会の自主基準として医薬部外品の成分表示を実施している。
また、日本化粧品工業連合会は、上記基本方針に基づき、表示に用いる成分名称をまとめた「医薬部外品の成分表示名称リスト」を作成し、それを医薬部外品関係5団体(日本石鹸洗剤工業会、日本パーマネントウェーブ液工業組合、日本ヘアカラー工業会、日本輸入化粧品協会及び日本浴用剤工業会)と共有している。
なお、上記リストへの新規成分の追加、既収載成分の名称の追加等の変更、管理は、日本化粧品工業連合会がまとめて行っている(甲3)。
(2)上記「医薬部外品の成分表示名称リスト」の平成20年3月25日版(甲3)には、「連番」の「544」において、「成分名」を「加水分解卵殻膜」とするものについて、その「簡略名」として「水解卵殻膜」の記載があり、その「本質」として「本品は,ニワトリ・・・の卵殻膜をアルカリ又は酵素により加水分解して得たものである。」の記載がある。
(3)「化粧品・医薬部外品/成分表示名称ガイドブック」(平成19年11月30日、株式会社薬事日報社発行)(甲4)の「第1部 化粧品と医薬部外品の成分表示名称」の62ページにおいて、医薬部外品の成分の正名「加水分解卵殻膜」について、その「別・略名」(医薬部外品表示名称付与の際、正名以外に使用可能な別名及び簡略名)として「水解卵殻膜」の記載があり、その成分の本質、起源として「本品は,ニワトリ・・・の卵殻膜をアルカリ又は酵素により加水分解して得たものである。」の記載があるほか、その適用範囲として「清浄剤,育毛剤,薬用化粧品,日やけ止め剤,薬用口唇化粧品,薬用歯みがき,浴用剤」の記載がある。また、当該成分に対応するであろう「化粧品表示名称」として「加水分解卵殻膜」の記載がある。
(4)「日本化粧品成分表示名称事典 第3版」(2013年(平成25年)4月15日、株式会社薬事日報社発行、日本化粧品工業連合会編集)(甲5)の307ページ及び日本化粧品工業連合会の作成に係る「化粧品の成分表示名称リスト」(甲6)において、化粧品の成分表示名称「加水分解卵殻膜」について、その定義として「本品は、卵殻膜を酸、酵素又は他の方法により加水分解して得られるものである。」の記載がある。
(5)上記(1)ないし(4)によれば、「水解卵殻膜」の文字は、「ニワトリ・・・の卵殻膜をアルカリ又は酵素により加水分解して得たもの」であって、医薬部外品や化粧品の成分として一般に用いられるものの1つである「加水分解卵殻膜」について、いわゆる薬用化粧品や薬用口唇化粧品といった医薬部外品の成分を表示する際に使用することができる別名及び簡略名として、本件商標の登録査定日(平成29年12月15日)前から、医薬部外品としてのものを含む化粧品を取り扱う業界において、その取引者、需要者の間で広く認識されていたとみるのが相当である。
2 商標法第3条第1項第3号該当性について
本件商標は、前記第1のとおり、「水解卵殻膜」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、上記1のとおり、本件商標の登録査定日前から、医薬部外品としてのものを含む化粧品を取り扱う業界において、取引者、需要者により、商品の成分(原材料)を表示するものとして広く認識されていたといえる。
また、申立人の提出に係る甲第8号証ないし甲第10号証によれば、本件商標の登録査定日からさほど経過していない平成30年5月においても、美容液(医薬部外品)の広告に、商品の成分表示として「水解卵殻膜」の記載がされていることが見受けられる。
そうすると、本件商標は、これを本件登録異議の申立てに係る指定商品である第3類「卵殻膜成分を配合した化粧品」について使用しても、取引者、需要者をして、商品の原材料(成分)を表示したものと認識するにすぎないものというべきである。
したがって、本件商標は、その指定商品中の第3類「卵殻膜成分を配合した化粧品」との関係においては、商品の原材料を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、本件商標の登録査定時においては、商標法第3条第1項第3号に該当する商標であったというべきである。
3 本件商標の商標権者による意見について
本件商標の商標権者は、前記第4のとおり、本件商標の指定商品中の第3類「卵殻膜成分を配合した化粧品」についての商標権を放棄することにより、本件商標について通知された取消理由はなくなった旨述べている。
しかしながら、商標登録の異議申立制度は、異議の申立てがあった場合に登録処分の適否を審理し、瑕疵ある場合にはその是正を図るというものであって、商標登録を取り消すべき旨の決定をしたときは、その商標権は、初めからなかったものとみなすと規定されていることに鑑みれば、商標登録が商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであるか否かは、その商標の登録査定時を基準に判断すべきことである。
他方、本件商標に係る商標権については、前記第1のとおり、放棄による登録の一部抹消が商標登録原簿に登録されているところ、商標権の放棄による消滅の効力は、登録により生じるものである(商標法第35条で準用する特許法第98条第1項第1号)。
そうすると、本件商標の設定登録後になされた上記商標権の放棄の事実は、本件商標が、その登録査定時において、商標法第3条第1項第3号に該当するものであったとした先の取消理由の認定、判断に何ら影響を及ぼすことはないと解するのが相当である。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、その登録査定時において、本件商標の指定商品中の第3類「卵殻膜成分を配合した化粧品」について、商標法第3条第1項第3号に該当するものであったから、その登録は、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2019-08-20 
出願番号 商願2017-28736(T2017-28736) 
審決分類 T 1 652・ 13- Z (W03)
最終処分 取消  
前審関与審査官 大橋 良成 
特許庁審判長 田中 敬規
特許庁審判官 小松 里美
中束 としえ
登録日 2018-02-16 
登録番号 商標登録第6019500号(T6019500) 
権利者 株式会社 アルマード
商標の称呼 スイカイランカクマク、スイカイ 
代理人 日比野 香 

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