ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X33 |
---|---|
管理番号 | 1356175 |
審判番号 | 取消2018-300279 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2018-05-08 |
確定日 | 2019-09-30 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2085404号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第2085404号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第2085404号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり「富源」の文字を縦書きしてなり、昭和61年4月25日に登録出願、第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同63年10月26日に設定登録され、その後、平成20年11月26日に指定商品を第33類「日本酒」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。 なお、本件審判の請求の登録は、平成30年5月23日にされていることから、本件審判について、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前三年以内」とは、同27年(2015年)5月23日から同30年(2018年)5月22日(以下「要証期間」という場合がある。)までの期間である。 第2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。 1 請求の趣旨 本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁 (1)被請求人は、答弁書において、本件商標を、その指定商品「日本酒」(以下「本件商品」という場合がある。)に表示して、要証期間内である平成29年11月から、本件商標権者の店舗に陳列して販売し、また、同月に千葉県成田市S町区に対して上記商品を12本販売しているとして、商品の陳列状況の写真や商品受注兼計算書の写し等を付した陳述書(乙1)及び商品の陳列状況の写真を付した証明書(乙2)を提出している。 しかしながら、以下のアないしエに述べるとおり、上記提出資料は、本件商標がその登録取消を免れるに足る使用事実の証拠としては疑念があるから、被請求人の主張には理由がない。 ア 各書証に添付された展示状況写真は、平成29年11月に本件商標権者の店舗に本件商品を展示した当時に撮影した、とされているが、当該日付の証明はなされていない。 なお、商品を展示した当時に、わざわざ当該商品自体、それもわずかに9本ほどを拡大して写真撮影することは、不自然である。 イ そもそも本件商標権者がインターネット上で運営しているウェブサイトにおいては、本件商標が付された商品は一切掲載されていない。本件商標権者の会社業務内容としては「清酒『仁勇』・『不動』製造販売、和菓子製造販売、不動産賃貸」と記載されているものの、本件商標に係る「清酒『富源』」についての説明も、商品紹介も当該ウェブサイトや社長ブログ等において一切見当たらない。 ウ 実際に本件商標を付した「清酒」が、その商品陳列状況写真に掲載されたとおり存在しているのであれば、ラベルの原本を提出できるはずである。瓶容器に貼付されたラベルの正面写真だけでは全体が不明瞭であって、プリンタ等で自作したのではないかとの疑念も禁じ得ない。 よって、ラベル原本と併せて、商品のラベルの印刷日、印刷会社及び印刷枚数等の詳細も明らかにされたい。 エ 陳述書において「平成29年11月から、当社の店舗に陳列して販売しました」と述べていることからすると、その後、少なくとも相当期間は本件商品の販売を継続していたと思われるから、当該商品を購入したと証明している「成田市S町区」以外にも販売した実績があるはずであることから、その他の販売伝票類も併せて提出されたい。 (2)結語 以上申し述べたとおり、被請求人が提出した本件商標の使用証拠には疑念があるため、本件商標が、要証期間内に日本国内において、その指定商品、第33類「日本酒」について使用された事実は明らかにされていないから、被請求人の主張には理由がない。 第3 被請求人の主張 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証を提出した。 答弁の理由 本件商標権者は、陳述書(乙1)に記載のとおり、本件商標を指定商品「日本酒」に表示して、平成29年11月から本件商標権者の店舗に陳列して販売した。また、平成29年11月に千葉県成田市S町区に販売した(乙2)。 上記のとおり、本件商標権者は、本件商標をその指定商品である「日本酒」について、要証期間内に、日本国内において、使用している。なお、使用商標は、厳密には本件商標と書体が異なるものの、登録商標の書体のみに変更を加えた同一の文字からなるものであるから、社会通念上同一と認められる商標に該当する。 したがって、本件商標には使用事実があるため、商標法第50条第1項の取消事由に該当するものではない。 第4 被請求人に対する審尋及び被請求人による審尋への回答 審判長は、被請求人に対し、令和元年5月7日付けで、被請求人の提出に係る乙第1号証及び乙第2号証を併せみても、本件商標権者が、本件商品を要証期間内に本件商標権者の店舗において、販売のために展示した事実及び本件商品を販売した事実を認めることができない旨の合議体による暫定的見解を示した審尋を送付し、相当の期間を指定して、当該審尋への回答をする機会を与えた。 しかしながら、被請求人は、上記審尋に対し、何ら回答をしていない。 第5 当審の判断 1 被請求人の主張及び提出に係る証拠について (1)乙第1号証について ア 乙第1号証は、本件商標権者の代表取締役が平成30年6月30日付けで作成した「陳述書」であるところ、これには、「富源」銘柄の日本酒(300ml入り)(本件商品)を、平成29年11月から、本件商標権者の店舗(写真1)において陳列して販売した。その展示状況は、添付の写真2のとおりであり、当該写真は展示当時に撮影したものである旨陳述されており、店舗正面の写真(写真1)(以下「店舗写真」という。)と瓶詰めされた日本酒9本が並べられた写真(写真2)(以下「本件商品写真」という。)が添付されている。 そして、店舗写真には、店舗内の商品の陳列風景及び看板が写っているところ、当該看板には「仁勇」「不動」の文字が表示されているが、「富源」の文字は見当たらない。また、本件商品写真の瓶の容器には、中央に別掲2に示したとおり、筆書き風に縦書きされた「富源」の文字が大きく表示され、その左側には「純米吟醸」「醸造元 鍋店株式会社」及び本店として本件商標権者の住所が表示されたラベルが貼付されている。 なお、乙第1号証に添付されている上記写真のいずれにも、撮影日に関する記載はない。 イ また、「陳述書」(乙1)において、本件商品写真の「富源」銘柄の日本酒を千葉県成田市S町区に対して、添付の「商品受注兼計算書」及び「売上票(兼受領証)」に記載のとおり、平成29年11月に販売した旨述べているところ、上記「商品受注兼計算書」には、「お取り扱い日 平成29年11月10日」「商品発送日 平成29年11月10日」「お届け日 平成29年11月11日」「ご依頼主 S町区様」の記載があり、「商品名」欄には「富源 純米吟醸300ml」、「個数」欄には「12」の記載がある。また、2017年(平成29年)11月11日付けで、千葉県成田市S町区宛てに作成された「売上票(兼受領書)」には、「品番・品名」欄には「富源 純米吟醸 300ml」、「数量」欄には「12」の記載があり、上記書類のいずれにも、本件商標権者の屋号とされる「鍋屋源五右衛門」の表示とともに、本件商標権者と同一の住所及び銀行の口座の名義人として本件商標権者の名称が記載されている。 (2)乙第2号証について 乙第2号証は、千葉県成田市S町区の2017年度会計担当者が、平成30年6月30日に付けで作成した「証明書」であるところ、これには、本件商標権者(屋号:鍋屋源五右衛門)から、添付の写真に撮影されている「富源」銘柄の日本酒(300ml入り)12本を、平成29年11月に購入した旨が述べられているところ、上記写真は、乙第1号証に添付されている本件商品写真と同じものである。 2 判断 (1)上記1によれば、本件商標権者が、本件商標と社会通念上同一と認められる「富源」の文字からなる標章を本件商品の瓶のラベルに表示したことが認められ、当該ラベルに清酒の種類を表す語として使用される「純米吟醸」の語が記載されていることからすれば、上記商品は、本件商標の指定商品「日本酒」の範ちゅうの商品「純米吟醸酒」と認められる。 (2)しかしながら、被請求人は、本件商標権者が本件商品を平成29年11月から同人の店舗において陳列、販売した旨主張し、店舗写真及び展示当時の写真として本件商品写真を提出しているところ、これらのいずれも、撮影者、撮影日が明らかではなく、また、店舗写真には、本件商標の表示はなく、本件商品にラベルを貼付した時期及び当該ラベルの作成時期は不明である。 さらに、乙第1号証に添付された「商品受注兼計算書」及び「売上票(兼受領書)」は、いずれも本件商標権者の作成に係るものであって、自身が容易に作成可能といわざるを得ないものであり、S町区の2017年度会計担当者による証明書(乙2)は、単に、平成29年11月に添付の写真に撮影されている「富源」銘柄の日本酒を購入した旨述べるのみであり、添付された本件商品写真の撮影者、撮影日も不明であること、及び本件商品が平成29年11月に本件商標権者の店舗において、陳列又は販売されていた事実を客観的に裏付ける証拠も何ら提出されていないことからからすれば、その陳述内容と提出された証拠を併せみても、本件商標が要証期間内に使用された事実までは認めることはできないというべきである。 してみれば、本件商標権者が、要証期間内に、同人の店舗において本件商品を販売のため陳列し、これを販売した事実を認めることができない。 その他、被請求人が提出した証拠を総合してみても、本件商標(社会通念上同一と認められるものを含む。)が、要証期間内に、本件審判の請求に係る指定商品「日本酒」について、本件商標権者はもとより、専用使用権者又は通常使用権者により使用をされていたことを認めるに足る事実は見いだせない。 3 まとめ 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品について本件商標の使用をしていたことを証明したものとは認められない。 また、被請求人は、本件商標をその指定商品に使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1 (本件商標) 別掲2 (使用商標) |
審理終結日 | 2019-07-31 |
結審通知日 | 2019-08-05 |
審決日 | 2019-08-20 |
出願番号 | 商願昭61-42324 |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Z
(X33)
|
最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
岩崎 安子 |
特許庁審判官 |
金子 尚人 中束 としえ |
登録日 | 1988-10-26 |
登録番号 | 商標登録第2085404号(T2085404) |
商標の称呼 | フゲン、トミゲン |
代理人 | 小林 正英 |
代理人 | 小林 正治 |