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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W25
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W25
管理番号 1356046 
審判番号 無効2019-890001 
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-12-31 
確定日 2019-09-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第5861923号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5861923号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5861923号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成28年1月7日に登録出願、第25類「ティーシャツ,洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,キャミソール,和服,アイマスク,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ナイトキャップ,帽子,その他の被服,リストバンド,その他の運動用特殊衣服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同年5月19日に登録査定、同年6月24日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、スポーツシューズ、被服、バッグ等の商品に使用しているとして引用する商標は、以下の登録商標(以下、これらをまとめていうときは「引用商標」という。)であって、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第3324304号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成6年12月20日
設定登録日:平成9年6月20日
指定商品:第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」

2 登録第3328662号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成6年12月20日
設定登録日:平成9年7月4日
指定商品:第18類「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類」

3 登録第4161424号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成8年3月13日
設定登録日:平成10年7月3日
指定役務:第41類「個人の運動能力に合った肉体強化プログラムの教授,その他の技芸・スポーツ又は知識の教授,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,フィットネススタジオその他の運動施設の提供,娯楽施設の提供,スポーツ用具の貸与,記録の供覧,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,音響用又は映像用のスタジオの提供,興行場の座席の手配,映写機及びその附属品の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,セミナーの企画・運営又は開催,スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),ゴルフの興行の企画・運営又は開催,相撲の興行の企画・運営又は開催,ボクシングの興行の企画・運営又は開催,野球の興行の企画・運営又は開催,サッカーの興行の企画・運営又は開催,その他のスポーツ競技会の企画・運営又は開催」

4 登録第4291078号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成9年7月17日
設定登録日:平成11年7月9日
指定商品:第3類「クレンザー・シャンプー・洗濯せっけん・その他のせっけん類,エッセンシャルオイル・その他の香料類,スキンローション・その他の化粧水,ヘアーローション・その他の頭髪用化粧品,香水類,バスオイル,バスソルト,身体消臭用化粧品,その他の化粧品,つけづめ,つけまつ毛,口内洗浄剤(医療用のものを除く。),その他の歯磨き,つや出し剤,靴クリーム,靴墨,塗料用剥離剤」

5 登録第4322373号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成9年7月9日
設定登録日:平成11年10月8日
指定商品:第16類「紙類,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,型紙,裁縫用チャコ,紙製テーブルクロス,紙製ブラインド,紙製のぼり,紙製旗,荷札,印刷物,書画,写真,写真立て,遊戯用カード,文房具類,封ろう,観賞魚用水槽及びその附属品」

6 登録第4726776号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
登録出願日:平成15年3月20日
設定登録日:平成15年11月14日
指定商品:第24類「織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製テーブルナプキン,ふきん,シャワーカーテン,のぼり及び旗(紙製のものを除く。),織物製トイレットシートカバー,織物製いすカバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳,ビリヤードクロス,布製ラベル」

7 登録第4907491号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成16年2月19日
設定登録日:平成17年11月11日
指定商品:第9類「事故防護用の眼鏡・履物,運動用保護ヘルメット,自転車用ヘルメット,その他の保安用ヘルメット,コンタクトレンズ,ゴーグル,スポーツ用ゴーグル,サングラス,水中マスク,その他の眼鏡及びこれらの部品・付属品,救命用具,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,エアタンク,レギュレーター,光学機械器具,録音済みのコンパクトディスク,その他のレコード,運動技能訓練用シミュレーター,タイムレコーダー,測定機械器具,理化学機械器具,写真機械器具,映画機械器具,電子出版物,家庭用テレビゲームおもちゃ,スロットマシン,映写フィルム,スライドフィルム,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,加工ガラス(建築用のものを除く。),消防艇,ロケット,消防車,計算尺」

8 登録第5280935号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
登録出願日:平成21年5月15日
設定登録日:平成21年11月13日
指定商品:第14類「時計,時計の部品及び附属品」

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第75号証(枝番号を含む。なお、枝番号を有する証拠において、枝番号のすべてを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。)を提出した。

1 無効事由
本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。

2 具体的理由
(1)本件審判請求に至る背景
被請求人による本件商標の出願、及び本件審判請求に至る背景は、以下の事情に基づく。
ア 知財高裁判決
被請求人は、本件商標の出願前、商標登録第4994944号(以下、「被請求人商標」という)(別掲4)を所有していたところ(甲31)、引用商標との関係で商標法第4条第1項第15号及び同項第7号の該当性が争われた裁判(知財高裁平成24年(行ケ)第10454号審決取消請求事件)において、被請求人商標を無効とする知財高裁の判決(甲29)が平成25年6月27日に言い渡された(以下、「平成25年判決」という)。
イ 被請求人がライセンス管理を行う日本観光商事の商標出願
前記アの裁判において被請求人との関係が明らかとなった日本観光商事株式会社は、被請求人商標が出願された後、複数の商標を出願しており、いずれも特許庁の審査・審判において拒絶されている(甲32?40)。
特許庁は、不服2008-10900号審決(甲39)及び不服2008-10902号審決(甲40)において、豚や馬のシルエット風図形を描いた当該商標は当該引用商標(審決注:別掲3の態様からなる商標)との関係において商標法第4条第1項第7号に該当すると判断した。
ウ 引用商標との問題認識後に、本件商標を出願
平成25年判決が平成25年6月27日に言い渡された後、被請求人は、同年10月24日に、被請求人商標構成中の欧文字4字の「U」の部分に北海道の地形を想起させるシルエットを施した態様のロゴ(商願2013-83065、甲41)と、被請求人商標構成中の熊のシルエット風図形(商願2013-83066、甲42)を個別に出願した。
そして、上記個別商標が登録された後、被請求人は、平成28年1月7日に、本件商標を出願した(甲1、2)。
それぞれ商願2013-83065並びに被請求人商標及び本件商標の欧文字部分を見比べてみると、本件商標のみ、やや異なる書体により斜体で書されているものの、いずれも同じ欧文字4字が極太の線を用いて描かれているだけでなく、構成文字同士の間隔や縦横のサイズも酷似しており、さらに、「U」の部分に北海道の地形を連想させるシルエットを施す態様において、本件商標の欧文字部分は商願2013-83065の特徴をほぼ残している。
熊のシルエット風図形部分は、商願2013-83066並びに被請求人商標及び本件商標の図形部分のいずれも同一である。
さらに、欧文字4字と熊のシルエット風図形との組合せ部分について被請求人商標と本件商標を見比べてみると、欧文字の右上に描かれた熊のシルエット風図形部分の配置が僅かに下に、より欧文字に近づいて描かれている差異を有するに過ぎない。
エ 本件商標に対する異議申立
請求人は、本件審判請求に先立ち、本件商標に対して商標法第4条第1項第15号及び同項第7号を理由とする登録異議申立を行ったところ(異議2016-900308)、平成29年3月8日付異議決定において、本件商標の登録を維持する旨の決定が下された(以下、「原決定」という。)(甲43)。
本件審判請求は、被請求人商標が引用商標との関係で無効事由に該当するとの確定した司法判断が存在し、また、被請求人がライセンス管理を行う日本観光商事株式会社名義で出願された数々の商標(被請求人商標と同一の商標を含む。)に対して同様の理由により拒絶した特許庁の確定審決があり、さらに、本件商標と被請求人商標とがほぼ同一の外観、称呼、観念を生ずるにもかかわらず、本件商標に対する上記異議申立において、特許庁がこれらと相反する判断を下したことをその背景としている。
(2)本件商標登録を商標法第4条第1項第15号により無効とすべき具体的理由
ア 本件商標について
本件商標は、太く角ばった書体で、全体が略横長の長方形を構成するように、「KUMA」の欧文字をロゴ化して表し(「K」の上端部2か所は熊の頭部及び前肢を表したシルエット図形風に右斜め上に突き出し、「U」の縦線の内側は、中央の空白部分に重なるように北海道の地形と思しき図形を白抜きで表し、「M」の右縦線上に、外側に向かって4本の白抜きの線を表し、「A」の下部は、それぞれ熊の爪先を模したように表されている。)、その右に、左方に向かって前かがみに二足歩行する熊のシルエット風の図形を配してなる。そして、本件商標は、ロゴ化した「KUMA」の欧文字と熊のシルエット風の図形に相応して「クマ」の称呼を生じ、「熊」の観念を生じる。
イ 引用商標について
別掲2の態様よりなる商標は、請求人であるプーマ社が所有しており、独特の太く四角い書体で、全体が略横長の長方形を構成するようにロゴ化して表した「PUmA」の欧文字の右上に、左方に向かって跳び上がるように前進するピューマのシルエット風図形を配し、「A」の欧文字の右下に、円内にアルファベットの大文字の「R」を記した記号を小さく添えてなる。
請求人は、引用商標をスポーツシューズ、被服、バッグ等に使用しており(甲6?28)、同一の標章を我が国において商標登録している(甲3)。
引用商標は、平成6年12月20日から平成21年5月15日にかけて出願、平成9年6月20日から平成21年11月13日にかけて登録され、本件商標の出願時及び登録時において有効に存続している(甲3)。
ウ 引用商標の周知著名性及び独創性
両当事者間で争われた被請求人商標に関する前記(1)アの裁判における確定した事実認定(甲29)や原決定における判断(甲43)がある。
また、2013年版スポーツ産業白書によると、「プーマ」ブランドの売上高は、2010年41,883百万円、2011年43,414百万円、2012年44,170百万円、2013年44,595百万円と堅調に推移し、「アスレチックウェア国内出荷金額」で3位、「サッカー・フットサルウェア国内出荷金額」で2位である(甲5の3)。
以上、引用商標は、我が国において、遅くとも1972年から今日に至るまで、幅広い商品に使用され、大々的に宣伝広告されてきたものであり、その結果、請求人の業務に係るスポーツシューズ、スポーツウェア等を表示する商標として、本件商標の出願時及び登録時に、我が国の取引者・需要者の間で周知著名性を獲得しており、さらに、引用商標の構成態様が独創的であることは、両当事者間において最早議論の余地はなく、本件審理において顕著かつ公知の事実といえる。
エ 本件商標と引用商標との類似性
原決定は、「本件商標と引用商標とは、4個のロゴ化した欧文字と動物のシルエット図形の構成において共通する」ことを認めつつも、外観における複数の差異、称呼及び観念の差異を根拠に、両商標は外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのないものであるから、非類似の商標と結論付けた(甲43)。
これに対し、知的財産高等裁判所は、被請求人商標と引用商標との類似性について、たとえ、被請求人商標から「クマ」の称呼、「熊」の観念が生じるとしても、「共通する構成から生じる共通の印象から、被請求人商標と引用商標とは、全体として離隔的に観察した場合には、看者に外観上酷似した印象を与える」(甲29)と判断した。
上述したとおり、被請求人商標と本件商標とは、欧文字4字が同じ「KUMA」の文字構成で、極太の線により同間隔、同サイズに描かれているだけでなく、熊のシルエット風図形は全く同一である。
また、欧文字と図形の組合せ部分について、欧文字の右上に描かれた熊のシルエット風図形部分の配置が僅かに下に、欧文字により近づいて描かれている差異を有するに過ぎない。そのため、被請求人商標も本件商標も、看者に外観上極めて似通った印象を与えることが容易に推測されることから、これらと引用商標との類似性の程度が特段異なることは有り得ず、原決定は失当といわざるを得ない。
本件と同様に、周知著名商標との誤認混同のおそれが争われた裁判事件において、知財高裁は、商標法第4条第1項第15号の解釈に関するレールデュタン最高裁判決を引用し、商標法第4条第1項第15号は、当該商標が他人の商標等に類似するかどうかは考慮要素の一つに過ぎず、たとえ両商標の具体的構成において差異があるとしても、周知著名商標を特徴付ける基本的構成との共通点を比較衡量すべきであり、単に両商標の外観上の類否のみによって、混同を生じるおそれが否定されるとは判示していない(甲47、48)。
以上を踏まえ、本件商標と引用商標とを対比すると、両商標は、4個の欧文字が横書きで大きく顕著に表されている点、その右肩上方に、熊とピューマとで動物の種類は異なるものの、四足動物が前肢を左方に突き出し該欧文字部分に向かっている様子を側面からシルエット風に描かれた図形を配した基本的構成において共通する。そして、両商標構成中の4個の欧文字部分は、第1文字が「K」と「P」と相違するのみで、他の文字の配列構成を共通にする。しかも、各文字が縦長の書体で極太の線により、同間隔、同大で書されていることから、文字の特徴が類似し、かつ、文字全体が略横長の長方形を構成するようにロゴ化して表した点で共通の印象を与える。文字と動物図形の位置関係や、足や尾の方向にも対応関係を看取することができる。
本件商標の「KUMA」の欧文字と一体的に描かれた熊の頭部及び前肢を表したシルエット図形や外側に向かって4本の白抜きの線、熊の爪先を模したもの、「U」の縦線の内側は、中央の空白部分に重なるように北海道の地形と思しき図形等の差異があるとしても、各文字の線と同化して目立ちにくいことや表示が小さいこと等により看者の印象には残らず、かかる差異は看者の印象・記憶に影響を及ぼす程のものではなく、上記共通点を凌駕するものではない。
また、商標全体に占める欧文字部分と図形部分の比率は両商標とも同程度であり、さらに、色彩において差異を有しない。
したがって、本件商標は、引用商標を特徴づける基本的構成と共通しており、当該構成から生じる共通の印象から、全体として時と処を別にして離隔的に観察した場合、構成の軌を一にするものであって、看者に外観上酷似した印象を与えるものといえる。
被請求人がライセンス管理を行う日本観光商事株式会社が出願した商標(甲33、34)と当該引用商標(審決注:別掲3の態様からなる商標)との関係が争われた拒絶査定不服審判における拒絶審決に照らしてみるに、当該商標と同様に、引用商標を特徴づける基本的構成と共通した態様を備える本件商標について、全体として捉えたときは、看者に外観上酷似した印象を与えるものと判断されてしかるべきである。
オ 本件指定商品との関連性の程度
本件指定商品は、引用商標の著名性が需要者に認識されている分野であるスポーツシューズ、スポーツウェア、被服、バッグ等の商品を含む。
このため、本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度は極めて高い。
カ 取引の実情
本件商標の指定商品は、日常的に消費される性質の商品が含まれ、スポーツ関連商品を含む本件商標が使用される商品の主たる需要者は、スポーツの愛好家を始めとして、広く一般の消費者を含むものということができる。そして、このような一般の消費者には、必ずしも商標やブランドについて正確又は詳細な知識を持たない者も多数含まれているといえ、商品の購入に際し、メーカー名やハウスマークなどについて常に注意深く確認するとは限らず、小売店の店頭などで短時間のうちに購入商品を決定するということも少なくないと考えられることから、商品の選択・購入に際して払う注意力が高いとはいえない一般消費者を需要者とする点でも共通する(甲29、47)。
さらに、衣類や靴等では、商標をワンポイントマークとして小さく表示する場合も少なくなく(甲29、47)、その場合、ワンポイントマークは比較的小さいものであるから、そもそも、そのような態様で付された商標の構成は視認しにくい場合があるといえる。また、マーク自体に詳細な図柄を表現することは容易であるとはいえないから、スポーツシャツ等に刺繍やプリントなどを施すときは、商標の微細な点まで表されず、需要者が商標の全体的な印象に圧倒され、些細な相違点に気付かず、内側における差異が目立たなくなることが十分に考えられるのであって、その全体的な配置や印象が引用商標と比較的類似していることから、ワンポイントマークとして使用された場合などに、本件商標は、引用商標とより類似して認識されるとみるのが相当である。
混同を生ずるおそれ
上記の事情を総合すると、引用商標は、請求人の商品を表示するものとして、いわゆるスポーツ関連の商品分野において、高い著名性を有していたことに照らせば、両商標の具体的構成に差異が存在するとしても、引用商標と全体的な配置が共通し、印象が比較的類似していると認められる本件商標をスポーツ関連の商品を含む本件商標の指定商品に付して使用した場合には、また、これをワンポイントマークとして使用した場合などには、一般消費者の注意力などをも考慮すると、これに接する取引者、需要者は、顕著に表された独特な欧文字4字と熊のシルエット風図形との組合せ部分に着目し、周知著名となっている引用商標を連想、想起して、当該商品が請求人又は請求人との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤信するおそれがあるものというべきである。
(3)本件商標登録を商標法第4条第1項第7号により無効とすべき具体的理由
ア 被請求人商標に対して同号の該当性を認めた裁判事例
知財高裁は、両当事者の間で被請求人商標の無効性が争われた裁判(甲29)で、引用商標との関係で同号の該当性を認めた。
イ 原決定の不当性
単に、本件商標と引用商標との類似性のみをもって判断し、本件商標の出願経緯を無視した原決定は、両商標の類否判断だけでなく、同号の適用をも誤ったものをいわざるを得ない。
ウ 本件商標の出願に至る背景
前記(1)ウにおいて、被請求人による本件商標の出願に至る背景を述べたとおりである。
公序良俗を害するおそれ
経緯を時系列にみると、本件商標の採択に被請求人商標の存在や司法判断が影響していることは明らかである。
被請求人であるH2D株式会社は、被請求人商標に係る無効2010-890089号の審決取消訴訟の原告であり、その旧商号は北海道デザイン株式会社である(甲30)。H2D株式会社は被請求人商標に対する無効審決に対し、知財高裁に審決取消訴訟を提起したが、平成25年6月27日に請求棄却の判決が言い渡された(平成25年判決。甲29)。H2D株式会社は、さらに、最高裁判所に上告及び上告受理申立をしたが、平成25年12月17日に上告棄却及び上告不受理の決定がされ(甲30)、被請求人商標の登録無効が確定した。
同判決において認定された、被請求人による引用商標に対するフリーライドの実態は上述したとおりである(甲29)。
このように、被請求人が、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的で採択・出願し登録を受け、被請求人は上記の事情を知りながら被請求人商標の登録を譲り受けたものとの事実認定が確定している以上、被請求人商標と実質的に何ら変わらない本件商標の出願時に、引用商標に化体した信用・名声及び顧客吸引力にただ乗りする、あるいは、引用商標の出所表示機能を希釈化するなど、不正な目的をもって出願し、登録を受けたことが容易に推測される。
特許庁の審決においても、商標の構成自体に公序良俗を害するおそれがなくとも、周知著名な引用商標に化体した業務上の信用をフリーライドするとして、7号の適用を認めている(甲39、40)。
当該商標を出願した日本観光商事株式会社のライセンス管理を行うのが被請求人であることからすると、被請求人商標とほぼ変わらない本件商標の採択、出願において、不正の目的がなかったと捉えることの方が、むしろ不自然といわざるを得ない。
オ 小括
本件商標を本件指定商品に使用する場合、引用商標の出所表示機能が希釈化(ダイリューション)され、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力、ひいては請求人の業務上の信用を毀損させるおそれがあるから、本件商標は、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的をもって引用商標の特徴を模倣して出願し登録を受けたもので、商標を保護することにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護するという商標法の目的(商標法1条)に反するものであり、公正な取引秩序を乱し、商道徳に反するものというべきである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、審判事件答弁書において、その理由を次のように述べた。
1 請求人の主張の誤り
請求人の主張は、本件商標とは構成が異なる被請求人商標の審決取消訴訟における平成25年判決の商標法第4条第1項第15号該当性の判断が、あたかも本件商標と引用商標の判断に当てはまるかのごとく論じるものであり失当である。
本件商標と引用商標とは、基本的構成においても共通しない非類似の商標であり、商品の出所について誤認を生ずるおそれがないことは、原決定の認定・判断のとおりである。
また、本件商標の登録出願の経緯は、被請求人商標に係る商標登録が無効とされた経緯を踏まえ、商標の使用におけるトラブルを避けるべく、特許庁に本件商標と引用商標と類否の判断を仰いだものであり、決して社会的妥当性を欠くものではない。

2 商標法第4条第1項第15号該当性について
請求人の本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性に関する主張は、本件商標とは商標の構成が異なる被請求人商標等と引用商標との対比、被請求人商標と本件商標との対比に基づくものにすぎず、明らかに根拠を欠く。
(1)本件商標と引用商標の対比
本件商標と引用商標とは、外観において相紛れるおそれはなく、称呼及び観念も異なる非類似の商標であって、しかも文字全体の印象や文字と図形との位置関係の共通性も乏しく、出所の混同が生じるおそれがない。それは、原決定の判断のとおりである。
なお、原決定の認定に加え、文字部分について、本件商標は大文字の「M」であるのに対し、引用商標は小文字の「m」である点も相違する。また、「A」の文字部分は、下部がそれぞれ熊の爪先を模したように表されているだけでなく、白抜き部分には熊の開いた口と牙を模したように表している点も相違する。
また、原決定における図形に関する認定は、本件商標は文字部分と図形部分の下端の位置がほぼ同じであるのに対し、引用商標は図形部分の下端が文字部分の下端よりも高い位置にあることが前提となっている。
(2)引用商標を特徴づける基本的構成
請求人は、本件商標と引用商標が共通点を有すると主張するが、この程度の共通の構成は、商標においてよく用いられるありふれたものであり、引用商標を特徴づける基本的構成とはなりえない。
平成25年判決が被請求人商標と引用商標を特徴づける基本的構成との共通点として挙げたのは、ロゴ化された4個の欧文字とその右肩上方に動物のシルエット風に描かれた図形が配されていることだけではない。同判決はむしろ4個の欧文字の書体の酷似性が共通の印象を与えると評価している。
この点は日本観光商事株式会社の商標登録出願に関する拒絶査定不服審判の認定も同様である。
したがって、平成25年判決がいうところの「各文字が縦線を太く、横線を細く、各文字の線を垂直に表すようにし、そして、各部分に丸みを持たせた部分を持つ縦長の書体」、つまり書体のデザインが引用商標を特徴づける基本的構成に不可欠であると解するのが相当である。
この点、本件商標の文字部分をみると、横線と縦線の太さに殊更差はなく、各文字の線は垂直ではなく右斜めに傾斜しており、しかも各部分は丸みのない鋭角で構成されており、引用商標のものとは別異のデザインであって、本件商標は引用商標を特徴づける基本的構成を備えていない。しかも、熊を想起させる熊の頭部や前肢、爪痕、爪、開いた口と牙、北海道の地図等が付加されており、本件商標と引用商標の文字部分から受ける印象は明らかに異なる。
さらには、本件商標と引用商標の文字部分と図形の位置関係の違いにより、図形部分について本件商標は二足歩行する熊を想起させるのに対し、引用商標は飛び跳ねるピューマを想起させる点で異なり、図形としても受ける印象は異なる。よって、観念上も本件商標からは「熊」ないし「二足歩行する熊」の観念が生じる一方、引用商標からは「ピューマ」ないし「飛び跳ねるピューマ」の観念が生じる点で明確に区別できる。
また、称呼上は本件商標から生じるのは「クマ」であり、引用商標から生じる「プーマ」又は「ピューマ」とは明確に聴別できるものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼および観念が異なることはもとより、外観上、具体的な構成においても、基本的構成においても共通しない非類似の商標であり、本件商標は、被請求人がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして、引用商標又は請求人を連想、想起させることはなく、その商品が請求人又は請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
なお、請求人は、両商標の類似性の程度に関し、他の審決取消請求事件(甲47、48)の一部を抜粋し、本事案についても基本的構成が共通しているから外観上酷似した印象を与える旨を主張している。
しかし本件商標と引用商標との関係は、上記事件(甲47、48)における両商標との関係とは明らかに異なり、共通の事案として論じることはできない。つまり、甲第47号証の両商標は、いわゆる図形のみの商標であり、特段の称呼や観念が生じない上、外観上、商標を特徴付ける構成部分が相当数共通していることから全体的な配置や輪郭等について比較的高い類似性を示すものであると認定されている。また、甲第48号証の両商標についても、図形のみであり、特定の称呼が生じるものとは認められないことの他、同一(又は類似)の観念が生じると認定されており、外観上も基本的構成をほぼ共通にし、雄牛自体の図形の構成も様々な一致点を有すると認定されている。
これらに対し、本件商標と引用商標とは、上述したとおり、称呼および観念が明らかに異なる上、具体的構成はもとより、商標を特徴付ける基本的構成においても多くの相違点を有しており、むしろ共通点が少ない。よって、上記他の審決取消請求事件とは事案を異にするものであり、両商標は出所の混同を生じるおそれはないのである。
(3)小括
以上の点から、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものでない。

3 商標法第4条第1項第7号該当性について
請求人は被請求人商標に関する平成25年判決及び日本観光商事株式会社の商標登録出願を持ち出し、本件商標の登録出願の経緯が社会的相当性を欠くものと主張しているが、本件商標の登録出願の経緯はむしろ公の秩序を守るべく行われたものであって、社会的相当性を欠くものではない。
(1)本件商標の登録出願の経緯
被請求人は、被請求人商標の平成25年判決を受け、被請求人商標のデザイン変更に着手した。デザイン変更においては、他社の権利・利益を侵害しないよう十分配慮したが、より慎重かつ安全な商標を採用すべく、商標の類否について自己判断を避け客観的な判断を仰ぐために、特許庁に商標の登録出願を行ったのである。
被請求人は、まず2つの商標の登録出願を行い、その登録が認められた後に、さらにデザインを変更した本件商標の登録出願を行った。
そして、被請求人は本件商標の商標登録が認められた後に本件商標の使用を開始しているのである。
このように本件商標の登録出願の経緯は決して社会的妥当性を欠くものではなく、他社の権利・利益の侵害や商取引におけるトラブルを回避するためのものであって、公正な取引秩序を維持するための商道徳に従ったものというべきである。
また、本件商標と引用商標とは、原決定で判断されたように、そもそも外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるから、引用商標又は請求人を連想、想起させることもなく、引用商標に化体した信用・名声及び顧客吸引力にただ乗りする、あるいは、引用商標の出所表示機能を希釈化するものではない。
(2)小括
以上の点から、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものでない。

4 結論
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第15号および同項第7号のいずれにも該当するものではない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係について争いがないから、本案について判断する。
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標
ア 外観
本件商標は、別掲1のとおりの構成からなるところ、「KUMA」の欧文字をロゴ化して(「K」の上端部2か所はそれぞれ熊の頭部又は前肢を表したシルエット図形風に右斜め上に突き出し、「U」の縦線の内側は、その一部をくり貫くようにして中央の空白部分に重なるように北海道の地形の一部と思しき図形を表し、「M」の右縦線上に、内側に向かって4本のきれ込みを表し、「A」の下端部2か所は共に熊の爪先を模したように表されている。)、当該欧文字部分全体で略横長の長方形を構成するように表し、その右横に、上記「A」の上に手を添えるように左方に向かって二足歩行する熊の側面からのシルエット風図形を配してなるものである。
イ 称呼及び観念
本件商標は、前記アのとおり、ロゴ化した「KUMA」の欧文字と熊のシルエット風図形とから構成されるものであるから、それらに相応して「クマ」の称呼及びネコ目クマ科の哺乳類である「熊」の観念を生じるといえる。
(2)引用商標
ア 外観
引用商標1ないし引用商標5及び引用商標7は、別掲2のとおりの構成からなるところ、独特の太く四角い書体で、全体が略横長の長方形を構成するようにロゴ化して表した「PUmA」の欧文字の右上に、左方に向かって飛び跳ねるように前進するピューマの側面からのシルエット風図形を配し、また、上記「A」の欧文字の右下には、円内にアルファベットの大文字の「R」を記した記号が小さく添えてあるが、該記号は、目立たない位置にあることや表示が小さいこと等により看者の印象に残るものではない。
また、引用商標6及び引用商標8は、別掲3のとおりの構成からなるところ、独特の太く四角い書体で、全体が略横長の長方形を構成するようにロゴ化して表した「PUmA」の欧文字の右上に、左方に向かって飛び跳ねるように前進するピューマの側面からのシルエット風図形を配してなるものであり、引用商標1ないし引用商標5及び引用商標7とは、上記「R」を記した記号以外の構成を同じくするものである。
イ 称呼及び観念
引用商標は、前記アのとおり、ロゴ化した「PUmA」の欧文字とピューマのシルエット風図形とから構成されるものであるから、それらに相応して「プーマ」又は「ピューマ」の称呼を生じ、ネコ科の哺乳類である「ピューマ」の観念を生じるといえる。
(3)引用商標の周知著名性及び独創性の程度について
ア 引用商標の周知著名性について
請求人の主張及び提出した証拠によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)請求人は、1948年設立のスポーツ用品・スポーツウェア等を製造販売するドイツ連邦共和国の企業で、ヨーロッパやアメリカ等にも展開する世界的な企業であって、我が国においては、1972年から、日本国内における代理店としてコサ・リーベルマン株式会社が、請求人の業務に係る商品のうち、靴、バッグ、アクセサリーについての事業を展開し、2003年5月1日に、請求人の日本法人であるプーマジャパンが同事業を承継した。
そして、ウェアについては、国内のライセンシーであるヒットユニオン株式会社が製造・販売していたが、2006年1月に、日本において引用商標を付したアパレル関連商品を生産する、請求人の日本法人であるプーマ・アパレル・ジャパンが設立され、同社がヒットユニオン株式会社から営業権を譲り受けた(甲4、5の1及び2)。2010年に、プーマ・アパレル・ジャパンとプーマジャパンは合併し、現在のプーマジャパンとなった。
(イ)引用商標は、本件商標の登録出願前から我が国で発行された多数のカタログ(2013年)や雑誌(2012年及び2016年)において、Tシャツ、スウェットシャツ、ジャケット、帽子、スポーツシューズ等に付して掲載されている(甲6?28)。
(ウ)2013年版スポーツ産業白書(甲5の3)によると、スポーツ用品メーカー(スポーツ関連売上高10億円以上)として、「プーマジャパン(株)」が6番目に記載され、該売上高は、2010年に約419億円、2011年に約434億円、2012年(見込)に約442億円、2013年(予測)に約446億円と堅調に推移し、「アスレチックウエア国内出荷金額」で3位、「サッカー・フットサルウエア国内出荷金額」で2位となっている。
(エ)以上の事実によれば、請求人は、「PUmA」の文字及びピューマの図形をプーマ社のブランドとしてスポーツ用品・スポーツウェアに使用し、我が国においては、1972年から靴、バッグ、アクセサリー等について、製造・販売してきたこと、かつ、引用商標を付したTシャツ、スウェットシャツ、ジャケット、帽子、スポーツシューズ等を、少なくとも2012年には、各雑誌において掲載してきたことが認められ、また、2010年ないし2013年における「プーマ」ブランドの売上高も堅調に推移しており、「アスレチックウエア国内出荷金額」及び「サッカー・フットサルウエア国内出荷金額」においても上位を占めているところである。
してみれば、引用商標は、本件商標の登録出願時には既に、同人の業務に係るスポーツシューズ、スポーツウェア等を表示する商標として、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されて周知・著名な商標となっており、それは本件商標の登録査定時及びそれ以降も、継続していたと認められるものである。
イ 引用商標の独創性について
引用商標は、略横長の長方形を構成するようにロゴ化して表した欧文字の右上に、左方に向かって飛び跳ねるように前進するピューマのシルエット風図形を配した構成態様として独創的であり、需要者に強い印象を与えるものである。
(4)本件商標と引用商標との類似性の程度
ア 外観
(ア)共通点
本件商標と引用商標とは、(a)4個の欧文字が横書きで大きく顕著に表されている点、(b)該欧文字部分の右側を基点に、四足動物が前肢を左方に突き出し上記欧文字部分にかぶさるように向かっている様子を、側面からシルエット風に描かれた図形を配した点において共通する。
また、両商標は、(c)4個の欧文字部分の第2文字以降が順に「U」、「M(m)」、「A」というつづりである点、(d)各文字が肉太で、垂直方向に線を強調し、縦長の書体で表されている点、(e)文字全体が略横長の長方形を構成するようにロゴ化して表した点においても共通する。
(イ)差異点
本件商標と引用商標とは、(a)4個の欧文字部分の第1文字が「K」であるか「P」であるか、第3文字の「M」が大文字であるか小文字であるかという点、(b)本件商標の構成文字が熊の頭部やきり込み線などでロゴ化されている点、(c)シルエット風に描かれた四足動物が熊であるかピューマであるかという点、(d)当該四足動物の後肢が欧文字部分の底辺の延長線上にあるか延長線上より上にあるかという点において相違する。
イ 観念
本件商標からは、ネコ目クマ科の哺乳類である「熊」の観念が生じるのに対し、引用商標からは、ネコ科の哺乳類である「ピューマ」の観念が生じる。よって、動物の種類は異なるものの、哺乳類の四足動物という点では共通する。
ウ 称呼
本件商標からは、「クマ」の称呼が生じ、引用商標からは、「プーマ」又は「ピューマ」の称呼が生じる。よって、第1音における「ク」か「プ」又は「ピュ」かの相違、長音の有無の相違があり、第1音の母音が「u」である点と第2音が「マ」であるという点が共通する。
エ 検討
前記アのとおり、本件商標と引用商標とは、欧文字部分のロゴ化においてその文字を構成する線の一部が図案化されているか否かなどにおいて異なるが、縦長で肉太に表された4つの欧文字から受ける印象が近似するもので、かつ、文字全体が略横長の長方形を構成するようにロゴ化して表された点で共通の印象を与える。
そして、略横長の長方形を構成するようにロゴ化して表した欧文字に、四足動物が前肢を左方に突き出し上記欧文字部分にかぶさるように向かっている様子を、側面からシルエット風に描かれた図形を配したという構成が、本件商標と引用商標とで共通することから、両商標の全体の構成は似通った印象を与える。
その他、引用商標1ないし引用商標5及び引用商標7の「A」の欧文字の右下に非常に小さく、円内にアルファベットの大文字の「R」を記した記号は、目立たない位置にあることや表示が小さいこと等により看者の印象に残らない。
したがって、本件商標と引用商標との間に外観上の差異は認められるものの、その全体の印象は、相当似通ったものであるということができる。
また、前記イ及びウのとおり、本件商標と引用商標とは、その称呼及び観念において同一ではないものの、四足動物という点では観念上の共通性があり、称呼上も共通性を有するから、それらにおいて全く共通性を有しない場合に比して、称呼及び観念における差異は上記外観における類似性を凌駕するほどの違いとまではいうことができない。
以上からすると、本件商標と引用商標とは、相当程度類似性の程度が高いものであるということができる。
(5)混同を生ずるおそれについて
前記(3)アのとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時には既に、請求人の業務に係るスポーツシューズ、スポーツウェア等を表示する商標として、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されて周知・著名な商標となっており、それは本件商標の登録査定時及びそれ以降も、継続していたと認められるものである。
また、本件商標は、ティーシャツ、洋服等の被服、運動用特殊衣服、履物、運動用特殊靴等を指定商品とするところ、引用商標は、前記(3)アのとおり、Tシャツ、スウェットシャツ、ジャケット、帽子、スポーツシューズ等に付されてきたのであるから、本件商標の指定商品は、請求人の業務に係る商品と、その性質、用途、目的において関連するということができ、取引者、需要者にも共通性が認められる。
さらに、本件商標の指定商品である上記商品等は、一般消費者によって購入される商品である。
以上、前述の本件商標と引用商標の類似性の程度、引用商標の独創性の程度に、これらの事情を総合考慮すると、本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、本件商標を指定商品に使用したときに、当該商品が請求人又は請求人と一定の緊密な営業上の関係若しくは請求人と同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれがあると認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

2 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、前記1のとおり、引用商標と類似性の程度の高いものであって、出所の誤認混同のおそれがあると認められるものである。
そして、請求人がスポーツシューズ、被服、バッグ等を世界的に製造販売している多国籍企業として著名であり、引用商標が請求人の業務に係る商品を表示する独創的な商標として取引者、需要者の間に広く認識され、本件商標の指定商品には引用商標が使用されている商品が含まれていることが認められる。
さらに、被請求人は日本観光商事株式会社のライセンス管理会社であるが(主張の全趣旨)、日本観光商事株式会社は、被請求人商標や欧文字4つのロゴにピューマの代わりに馬や豚を用いた商標、他の著名商標の基本的な構成を保持しながら変更を加えた商標を多数登録出願したこと(甲32?42、63?75)、商品販売について著作権侵害の警告を受けたこともあること(甲61、62)が認められる。
これらの事実を総合考慮すると、被請求人商標については、日本観光商事株式会社は引用商標の著名であることを知り、意図的に引用商標と略同様の態様による4個の欧文字を用い、引用商標のピューマの図形を熊の図形に置き換え、全体として引用商標に酷似した構成態様に仕上げることにより、被請求人商標に接する取引者、需要者に引用商標を連想、想起させ、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的で採択・出願し登録を受け、被請求人は上記の事情を知りながら被請求人商標の登録を譲り受けたものと認めることができる。
そして、本件商標は、平成25年判決後に被請求人が出願し登録を受けたものであるところ、前述のとおり引用商標と商標全体の印象が相当似通った類似性の程度が高いものであって、出所の誤認混同のおそれのあるものであるから、本件商標をその指定商品に使用する場合には、引用商標の出所表示機能が希釈化(ダイリューション)され、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力、ひいては請求人の業務上の信用を毀損させるおそれがあるということができる。
そうすると、本件商標は、たとえ平成25年判決の対象となった被請求人商標に変更を加えているとしても、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的をもって引用商標の特徴を模倣して出願し登録を受けたものといわざるを得ず、商標を保護することにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護するという商標法の目的(商標法1条)に反するものであり、公正な取引秩序を乱し、商道徳に反するものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

3 被請求人の主張について
被請求人は、請求人の主張は平成25年判決における判断があたかも本件に係る商標法第4条第1項第15号該当性の判断に当てはまるかのごとく論じるものであり失当である、同項第7号該当性についても平成25年判決を受けて被請求人商標のデザイン変更をしたものであってむしろ公の秩序を守るべく行ったものである旨主張する。
確かに、本件商標と被請求人商標とはその構成態様が同一でないから、平成25年判決における判断を直ちに本件商標に当てはめることは妥当でないといえる。しかしながら、本件商標について検討するに、前述のとおり引用商標の特徴と共通し出所の誤認混同のおそれのあるものというのが相当である。また、本件商標は、被請求人商標と比較すると、文字部分のロゴ化の程度や熊の図形部分の位置がやや変更されてはいるものの、商標の基本的な構成要素及び配置という観点からは、被請求人商標の当該部分を未だ維持したままであって、商標全体から受ける印象において変わるものではないといわざるを得ないものである。
したがって、被請求人の主張は、採用することができない。

第6 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標1ないし5及び7)


別掲3(引用商標6及び8)


別掲4(被請求人商標)



審理終結日 2019-06-24 
結審通知日 2019-06-28 
審決日 2019-07-22 
出願番号 商願2016-1501(T2016-1501) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (W25)
T 1 11・ 22- Z (W25)
最終処分 成立 
前審関与審査官 山田 啓之 
特許庁審判長 小出 浩子
特許庁審判官 板谷 玲子
木村 一弘
登録日 2016-06-24 
登録番号 商標登録第5861923号(T5861923) 
商標の称呼 クマ 
代理人 三上 真毅 
代理人 小林 基子 
代理人 佐川 慎悟 
代理人 川野 陽輔 
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