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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W44
管理番号 1355041 
審判番号 不服2018-13815 
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-29 
確定日 2019-08-30 
事件の表示 商願2017-79079拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は,「MY薬局」の文字を横書きしてなり,第44類に属する願書に記載のとおりの役務を指定役務として,平成29年6月1日に登録出願されたものである。
その後,指定役務については,原審における平成30年2月27日付けの手続補正書により,第44類「薬局における助言,薬局における調剤に関する相談,薬剤に関する助言」と補正されたものである。

第2 原査定における拒絶の理由の要旨
原査定は,「本願商標は,『MY薬局』の文字を書してなるところ,インターネットの情報によれば,『MY薬局』及び『my薬局』の各文字が,いずれも『かかりつけ薬局』の意味合いで使用されている実情がある。そうすると,これを本願の指定役務中,かかりつけ薬局が行う役務に使用しても,前記役務であることを認識させるにとどまり,単に役務の質(内容)を表示するにすぎないものと認める。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,前記役務以外の役務に使用するときは,役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから,同法第4条第1項第16号に該当する。さらに,意見書に添付された証拠の程度では,本願商標が,出願人に係る役務を表示するものとして需要者の間で認識され識別力を発揮しているとまではいえないことから,本願商標は,同法第3条第2項に規定する要件を具備するものとは認められない。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審における審尋及びそれに対する請求人の対応
当審において,平成31年2月27日付けで,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当する旨の見解を示す審尋を通知し,これに対する回答を求めた。
しかしながら,請求人は,上記審尋に対し,請求人は,何ら意見を述べていない。

第4 当審の判断
請求人は,本件審判の請求の理由において,本願商標は商標法第3条第2項に該当しないとする原査定の拒絶の理由には反論しておらず,専ら同条第1項第3号該当性のみを主張しているから,以下,この点について検討する。
1 本願商標について
(1)本願商標は,「MY薬局」の文字を,一般に用いられる書体で横書きしてなるものである。
(2)本願商標の構成中「MY」の文字部分は,「my」又は「マイ(my)」の語が,「私の」の意味を有する英語又は外来語として親しまれているものである(「小学館ランダムハウス英和大辞典第2版」株式会社小学館,「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)。
そして,同一の欧文字からなる語が,大文字又は小文字表記で表されることは普通に見られることから,本願商標の構成中「MY」の文字部分は,「私の」を意味する英語である「my」又は外来語である「マイ(my)」を,欧文字の大文字表記によって表したものと容易に理解されるものであって,「私の」の意味を認識させるものである。
(3)本願商標の構成中「薬局」の文字部分は,「薬剤師が調剤する場所、また併せて医薬品の販売を行う店。」の意味を有する語である(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)。
(4)そうすると,本願商標は,全体として,「私の薬局」との意味合いを容易に理解させるものである。
2 商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)「かかりつけ薬局」又は「かかりつけ薬剤師」について
ア 「患者のための薬局ビジョン?『門前』から『かかりつけ』,そして『地域』へ?」(平成27年10月23日厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/vision_1.pdf)において,「(1)かかりつけ薬剤師・薬局の意義」の見出しの下,「複数の医療機関・診療科を受診した場合でも,患者が日頃からかかりつけとなる薬剤師・薬局を選び,調剤を受けることで,服薬情報の一元的・継続的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導が行われ,医薬分業が目指す安全・安心な薬物療法を受けることが可能になる。」の記載がある。
イ 平成29年11月15日付けの「健康サポート薬局の現状について」の標題に係る厚労省の「第3回医薬品医療機器制度部会・資料1」(参考資料3)によれば,2葉目において,「健康サポート薬局の概要」の見出しの下,「健康サポート薬局」の項に,「○かかりつけ薬剤師・薬局の基本的な機能を有し,○地域住民による主体的な健康の維持・増進を積極的に支援する薬局 ○都道府県知事等に届出を行い,薬局機能情報提供制度に基づき公表。※平成28年10月から届出開始」の記載があり,さらに,「かかりつけ薬剤師・薬局の基本的機能」の項には,
(ア)「服薬情報の一元的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導」
(イ)「24時間対応,在宅対応」
(ウ)「かかりつけ医を始めとした医療機関等との連携強化」
の記載がある。
ウ そうすると,上記ア及びイによれば,「かかりつけ薬局」とは,一般に,「個々の患者が継続的にかかるものとして選んだ特定の薬局であって,その個々の患者の服薬情報の一元的・継続的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導を行う薬局」をいうものであり,また,平成28年10月から届出開始とされた「健康サポート薬局」制度において,「かかりつけ薬局」とは,上記イ(ア)ないし(ウ)の機能を有する薬局であると認められる。
(2)「MY薬局」,「My薬局」又は「マイ薬局」の文字は,本願の指定役務との関係においては,別掲に示すとおり,上記(1)に記載したような「かかりつけ薬局」を示す語として普通に使用されている実情がある。
(3)以上からすると,「MY薬局」の文字を書してなる本願商標は,これをその指定役務に使用したときは,取引者,需要者に対して,「かかりつけ薬局,すなわち,個々の患者の服薬情報の一元的な把握やそれに基づく薬学的管理・指導等の機能を有する薬局によって提供される役務」程の意味合いを理解し,認識させるものであって,その役務の質を表示したものとして理解させるにとどまり,自他役務の識別標識としては認識し得ないものというのが相当である。
したがって,本願商標は,その役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから,商標法第3条第1項第3号に該当する。
3 請求人の主張について
請求人は,過去の商標の登録事例を挙げて,本願商標もそれらと同様に,登録されるべきである旨主張する。
しかしながら,商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであるか否かを判断するにあたっては,当該商標が,その指定役務との関係で,その役務の質,その他の特性を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であるか否かについての事情を総合考慮して,当該商標がその指定役務に使用された場合における,指定役務の取引者,需要者の認識を基準として判断すべきであるところ,請求人の挙げる事例は,いずれも,本願商標とは,その商標の構成や指定役務が相違するものであり,かかる事例についての判断は,本願商標の上記判断に影響を与えるものではない。
したがって,請求人の上記主張は,採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲 「MY薬局」,「My薬局」,「マイ薬局」の使用例について
(1)書籍
ア 「大阪府内科医会会誌 第20巻第2号」(平成23年10月25日 一般社団法人 大阪府内科医会発行)の79頁において,「第12回 大阪府内科医会市民講座 女性と医師が語り合う会 講演 もし“家族(あなた)”が病気になったら-かかりつけは?-/1.薬剤師の出番 MY薬剤師 MY薬局の勧め」の見出しの下,「このように,くすりに関してお困りのときなどは,ご相談していただければ薬剤師は患者さんの要望にお答えします。かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師をもち,日頃からMY薬剤師,MY薬局を利用していただけたら幸いです。」の記載があり,「セルフメディケーションとは?」の項には,「『もし“家族(あなた)”が病気になったら-かかりつけは?-』ということで,『MY薬剤師 MY薬局の勧め』というお話をさせていただきます。」の記載がある。
イ 「いい医者は薬剤師に聞け!」(2009年3月6日 株式会社中経出版発行)の127頁において,「『マイ薬局・マイ薬剤師』をもつメリットとは?」の見出しの下,129頁及び130頁には,「マイ薬局をもつと,自分のことを正確に理解し,親身になって相談にのってもらえ,より的確なアドバイスを受けることができます・・・1 マイ薬局をもつと,患者さんのアレルギー歴や,服用している薬歴等が一元管理・・・されることになる。 2 マイ薬局をもつと,薬歴から複数の医療機関から出された薬の重複をチェックできる。3 マイ薬局をもつと,薬歴から複数の医療機関から出された薬の飲み合わせをチェックできる。 マイ薬局・マイ薬剤師をぜひもっていただきたいと思います。」の記載がある。
(2)インターネット情報
ア 「NPO法人WiZ」のウェブサイトにおいて,「企業紹介 2018.5.10/とうごう薬局(ロッツ株式会社)」の見出しの下,「■特徴2:とうごう薬局を地域のかかりつけ薬局へ」の項には,「かかりつけ薬局とは,厚労省が進める『患者本位の医薬分業』の一環で,身近で相談できるマイ薬局を持つことをいいます。」の記載がある。
(https://npowiz.org/intern/867)
イ 「日本調剤」のウェブサイトにおいて,「かかりつけ薬局を探そう!/知って役立つ『かかりつけ薬局』のキホン」の見出しの下,「『かかりつけ薬局』って?/身近で相談できる“いつもの薬局”を持つことです。/一人の方が複数の病院に通う場合,それぞれ違う薬局でお薬を受け取っていませんか?自分のことを分かってくれている薬剤師がいる“マイ薬局”を一つに決めることで,薬や健康のことで疑問や困ったことがあった時,体質や病歴などを理解してくれた上で相談することができます。」の記載がある。
(https://www.nicho.co.jp/kakaritsuke/basic/)
ウ 「株式会社ライブリー」のウェブサイトにおいて,「かかりつけ薬局・薬剤師を持ちませんか?/ライブリーは,地域に密着した親しまれる『街のかかりつけマイ薬局』を目指しています。」の見出しの下,「かかりつけ薬局とは?/患者さまが毎回処方箋を持っていく薬局をひとつの薬局に決める患者さまのマイ薬局のことです。」の記載がある。
(https://www.lively-pharma.jp/family-pharmacy)
エ 「プラネットメディカル有限会社」のウェブサイトにおいて,「プラネット薬局」の見出しの下,「地域に合ったコミュニケーション」の項には,「自分の髪質や似合うヘアスタイルをちゃんとわかってくれている『いきつけの美容院』があるように, お薬にも,あなたの体質や病状などをしっかり把握して健康をサポートしてくれる『かかりつけの薬局=My薬局』があったら安心ですよね。」の記載がある。
(http://planetmedical.biz/pharmacy.html)
オ 「株式会社日本メディック」のウェブサイトにおいて,「よくあるご質問」の見出しの下,「Q.かかりつけ薬局は自由に選んでいいの?」の項には,「A.信頼できる薬局をかかりつけ薬局に/お薬は,・・・体の調和を乱す『異物』にもなりえます。・・・だからこそ,お薬にも,あなたの体質や病状などをしっかり把握して健康をサポートしてくれる『かかりつけの薬局=My薬局』があったら安心ですよね。」の記載がある。
(http://www.nihonmedic.com/qa)
カ 「北九州湯川病院 広報誌 ほのぼの 第61号 平成28年5月発行(春号)」において,2葉目には,「地域包括ケアシステム?かかりつけ薬局をつくりましょう?」の見出しの下,「みなさん,『かかりつけ薬局』ってご存知ですか?かかりつけ薬局とは,身近で相談できる“いつもの薬局”を持つことです。一人の方が複数の病院に通う場合,それぞれ違う薬局でお薬を受け取っていませんか?自分のことを分かってくれている薬剤師がいる“マイ薬局”を一つに決めることで,薬や健康のことで疑問や困ったことがあった時,体質や病歴などを理解してくれた上で相談することができます。また,かかりつけ薬局を持つということは『自分のことをよく知る,お薬のパートナーができる』ということ。ご自身の過去に処方されたお薬や普段の体調のことを理解してくれているお薬のプロがサポートすることで,お薬や健康に関する不安・悩みに対し,的確で信頼性のあるアドバイスを受けられます。」の記載がある。
(http://www.kitakyu-hp.or.jp/contents/yugawa/%E5%BA%83%E5%A0%B1%E8%AA%8C%E3%80%8C%E3%81%BB%E3%81%AE%E3%81%BC%E3%81%AE%E3%80%8D61%E5%8F%B7.pdf)
キ 「新薬学研究者技術者集団」のウェブサイトにおける「新しい薬学をめざして 44,183-187(2015)」の183頁においては,「シンポジウム『薬剤師職能と医薬分業』/医薬分業の今日的意義を考える上での論点整理と打開策/廣田憲威」の見出しの下,187頁の「現状での打開策は何か」の項に,「患者自身が『かかりつけ薬局』,『マイ薬局』をきちんと持って,そこで処方せん薬のみならず一般用医薬品(OTC)の管理もすることが,現状での最善の打開策ではないだろうか。」の記載がある。 (http://pha.jp/shin-yakugaku/doc/44_8_183-187.pdf)

審理終結日 2019-07-01 
結審通知日 2019-07-05 
審決日 2019-07-17 
出願番号 商願2017-79079(T2017-79079) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W44)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 旦 克昌根岸 克弘 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 渡邉 あおい
平澤 芳行
商標の称呼 マイヤッキョク、マイ 

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