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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W11
審判 一部申立て  登録を維持 W11
管理番号 1354362 
異議申立番号 異議2019-900014 
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-01-15 
確定日 2019-08-16 
異議申立件数
事件の表示 登録第6103667号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6103667号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6103667号商標(以下「本件商標」という。)は、「セルゼロ」の文字を標準文字で表してなり、平成30年3月2日に登録出願、第11類「業務用電気式ヘアドライヤー,業務用超音波美顔器,家庭用電気式ヘアドライヤー,家庭用超音波美顔器,家庭用電熱用品類(美容用又は衛生用のものを除く。)」及び第44類「業務用美容機械器具の貸与,美容,理容,入浴施設の提供,マッサージ,アロマテラピーの提供,栄養の指導」、並びに第3類、第5類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品及び指定役務として、同年11月15日に登録査定、同月30日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する登録第5860268号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成28年2月1日に登録出願、第11類「業務用美顔機械器具,業務用美容機械器具,美容院用又は理髪店用の機械器具(「椅子」を除く。),家庭用電熱用品類」を指定商品として、同年6月17日に設定登録されたものであり、現在、有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、その指定商品及び指定役務中の第11類「業務用電気式ヘアドライヤー,業務用超音波美顔器,家庭用電気式ヘアドライヤー,家庭用超音波美顔器,家庭用電熱用品類(美容用又は衛生用のものを除く。)」(以下「申立対象商品」という。)及び第44類「業務用美容機械器具の貸与,美容,理容,マッサージ,アロマテラピーの提供」(以下「申立対象役務」という。)について、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第100号証(枝番号を含む。なお、甲号証において、枝番号を有するもので、枝番号のすべてを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第7号該当性
(1)引用商標等
ア 申立人及び引用商標
申立人は、エステティック・サロン(以下「サロン」という。)の経営、化粧品販売事業、セラピストの養成スクールの経営及びこれらの関連商品の販売を目的に、平成18(2006)年に設立された。引用商標は、一部をややデザイン化した欧文字で「Cellulite ZERO」と横書きにしてなる。
イ 本件略称
エステに関連する市場及びその需要者からは、申立人の販売にかかる美容機器(以下「本件商品」という。)について、「CelluliteZERO」を略した「セルゼロ」の名称(以下「本件略称」という。)で呼ばれている(甲6?50)。
(2)引用商標の周知性
ア 引用商標の使用
引用商標は、本件商品の名称として使用されている(甲4)。
本件商品は、サロンの店舗において使用される業務用機器であり、単機能の、数万円代の家庭用(簡易型)美容機器とは異なる。
イ 本件商品の販売実績(販売台数及びサロンへの浸透状況)
本件商品は、平成27(2015)年に販売が開始され、サロン向け価格が156万円と高価な機器でありながら、累計約700台が申立人に納入された(甲5)。そのうち600台は、販売(リースを含む)されて、各サロンで使用されている。
また、本件商品を使用しているサロンは、全国各地に存在する。そして、各地のサロンでは、本件商品を「セルライトゼロ」という名称の他、本件略称で宣伝等をおこなっている(甲6?39)。
ウ 本件商品のブログ
本件商品は、サロン及びサロンに通っている個人のブログ等でも、「CelluliteZERO」、「セルライトゼロ」又は本件略称で紹介されている(甲40?50)。
エ 本件商品の受賞歴等
申立人は、2016年及び2017年に賞を受賞し(甲51及び52)、特に、2017年の受賞理由は、「業務用痩身機器『セルライトゼロ』のホーム用の新作『ゼロスリム』が大きな反響を呼んだこと」とされている。
本件商品は、2015年の発売開始以来、話題を集め、全国600以上のサロンに導入されており(甲71)、2017年7月に楽天リサーチにて行われた医療関係者へのアンケートにおいて、3部門で1位を獲得している(甲53)。
したがって、引用商標は、遅くとも2017年7月頃には、市場における周知性を獲得しており、その周知性は現在も継続している。
オ 本件商品の広告
申立人は、本件商品に関する広告を、サロン経営者向け月刊専門雑誌に、ほぼ毎号、掲載している(甲54?76)。
また、自社でも、エステティシャン向け季刊情報雑誌を発行・配布し、本件商品の宣伝広告を行っている(甲77?80)。
(3)本件商標及び引用商標等との類似性
本件商標は、引用商標を略したものであり、本件略称とは文字列も称呼も同一である。
また、本件商標の申立対象商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似であり、申立対象役務は、上記商品に関連性の高い役務である。
したがって、本件商標を使用すれば、申立対象商品及び役務の範囲で、引用商標と出所の混同を生じる。また、本件商標と本件略称とは、文字列も称呼も同一であるから、出所の混同を生じるおそれは更に高い。
本件商標は、短期間でサロン又はサロンに通う人の間で周知となった引用商標に、不当にすり寄った商標である。
引用商標は、遅くとも2017年7月頃には、市場における周知性を獲得しており、他方、本件商標の出願日は2018年3月2日である。
したがって、引用商標に類似する本件商標を、被請求人のみがこれを出願し、その登録により排他的に使用するということは、信義則に反し、穏当を欠くといわざるを得ないし、関係者及びその利用者の利益を害するといえ、このことは剽窃的であって、社会の一般的道徳観念に反し、公の秩序を害するものといわざるを得ないから(甲81)、商標法第4条第1項第7号に該当し、登録されるべきではない。

2 商標法第4条第1項第19号該当性
(1)引用商標はエステ業界において周知である
前記1(2)で述べたとおり、引用商標及び本件略称は、エステ業界及びエステに通う人の間において、いずれも周知である。
(2)引用商標と本件商標の類似性は高い
前記1(3)で述べたとおり、本件商標権者が、本件商標を使用すれば、申立対象商品及び役務の範囲で、引用商標と出所の混同を生じることは明らかである。
(3)不正の目的
ア 本件商標権者の商標の多くはエステ業界及び本件商品の類似商品に使用されている。
本件商標権者の保有商標(甲82?89)は、エステ業界において、本件商品に類似する商品に使用されている。
これら一連の商標同様に、本件商標も、申立人の現に行っている役務(エステ)及び本件商品と同様の商品に使用される可能性は高い。
したがって、本件商標権者又は本件商標権者の商標を使用する者が、本件商標を使用することは、既に、全国600以上のエステに導入され、2017年7月に行われた医療関係者へのアンケートにおいて、3部門で1位を獲得している本件商品の信用・名声にフリーライドするものである。
本件商標は、申立人と全く同一のエステ業界において、申立人が現に行っている役務(エステの提供)を行い、又は、申立人の周知な主力商品と類似する商標を使用するために出願されたものといわざるを得ない。
特に、本件商品が「セルゼロ」と略されている事実を知りながら、これと同一称呼が生じる商標を申立人が出願していないことを奇貨として、出願されたものと強く推認される。
イ 過去の審決等に鑑みても、本件商標の出願は悪意の出願である。
以上により、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、前記第1のとおり「セルゼロ」の文字を標準文字で表してなるところ、構成中の「セル」の文字から「細胞」の意を、「ゼロ」の文字から「零。全く無いこと。」の意を想起し(いずれも「広辞苑第六版(株式会社岩波書店)」参照)、それらの結合と看取される場合があるとしても、その構成全体から一般に親しまれた特定の観念までは生じないものと認められる。
また、本件商標は、その構成文字に相応して「セルゼロ」の称呼を生じること明らかである。
(2)引用商標
引用商標は、別掲のとおり、黄色で着色された「Cellulite」の欧文字と下部を波線状に図案化して表した「ZERO」の欧文字とを結合した結合商標とみることができ、それぞれの文字から「セルライト。皮下脂肪に老廃物が付着して肥大化したもの。」の意、「零。全く無いこと。」の意を想起するとしても(いずれも前掲書参照)、その構成全体から一般に親しまれた特定の観念までは生じないものと認められる。
また、引用商標は、その構成文字に相応して「セルライトゼロ」の称呼を生じるものと認められる。
(3)引用商標及び本件略称の周知著名性について
ア 申立人の提出に係る証拠及び申立人の主張によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人は、サロンの経営、化粧品販売事業、セラピストの養成スクールの経営及びこれらの関連商品の販売を目的に、平成18(2006)年に設立された(申立人の主張)。
(イ)引用商標は、本件商品の名称として使用されている(甲4)。
(ウ)本件商品は、サロンの店舗において使用される業務用美容機器であり、平成27(2015)年に販売開始、700台が製造され(甲5)、そのうち600台が販売又はリースされ、全国各地のサロンで使用されている(申立人の主張)。
(エ)川崎及び仙台におけるサロンでは、本件商品が施術に使用され、これを「セルライトゼロ」という名称の他、本件略称で宣伝等を行っている(甲9、11)。また、本件商品は、サロン及びサロンに通っている個人のブログ等でも、「CelluliteZERO」、「セルライトゼロ」又は本件略称で紹介されている(甲40?48、50)。
(オ)本件商品は、2017年7月に行われた医療関係者へのアンケートにおいて、3部門で1位を獲得している(甲53)。
(カ)申立人は、本件商品に関する広告をサロン経営者向け月刊専門雑誌「エステティック通信」に2017年1月号から2018年12月号にかけて(2017年9月号を除く。各号の発行日は前月の10日。)掲載し(甲54?76)、申立人発行のエステティシャン向け季刊情報雑誌「サロン百花」でも2017年冬号から2018年秋号にかけて本件商品の宣伝広告を行っている(甲77?80)。
イ 前記アによれば、引用商標は本件商品に使用され、当該商品が各地のサロンで使用されていることが認められる。また、当該サロンにおいては、本件商品が「セルゼロ」(本件略称)と称されていることも認められる。
しかしながら、本件商標の登録出願時及び登録査定時における、我が国での引用商標を使用した商品の市場シェアは不明であり、申立人が主張する本件商品の販売又はリース台数が本件商品を取扱う業界において多いものと評価することができない。なお、申立人は、本件商品はサロン向け価格が156万円と高価な機器でありながら、約700台(約4年の累計台数)が申立人に納入され、そのうちの600台がサロンで使用されたとして、引用商標の周知性を主張するが、600台のうちのどの程度が上記価格で購入されたものか明らかでなく、リースに関してもその料金及び期間等が不明であるから、本件商品の上記販売価格のみを基礎として、600台という台数の多少を推し量ることは妥当でない。
本件商品に係る広告宣伝についても、専門雑誌1誌及び申立人発行の情報雑誌1誌の頒布数、頒布範囲等が不明であり、また、それら2誌以外の各種新聞・雑誌等への掲載事実などの実績に係る証左は見いだせない。さらに、サロンのブログ等についても、本件商品が本件略称で指称されている事実が一定程度認められるものの、全国に相当数展開されているサロンにあって、それら使用事実によって本件商標の取引者、需要者において引用商標及び本件略称が広く認識されているとは認めることができない。加えて、本件商品に係る受賞歴についても、当該賞がどのように選定されたものであるか不明であって、その他、引用商標又は本件略称がその取引者、需要者においてどの程度認識されているかを客観的に把握できる証拠は提出されていない。
以上からすれば、申立人の提出に係る証拠によっては、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者において、一定程度認識されているとはいい得るとしても、広く認識されているものとまでは認めることができない。
その他、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の取引者、需要者間に広く認識されていると認めるに足る事情は見いだせない。
また、本件略称についてみても、引用商標を略して指称するものとして、サロン関係者において使用されることがあるとしても、上記のとおり引用商標が広く認識されていると認めるに足りないことと同様に、本件略称もまた、我が国又は外国の取引者、需要者において広く認識されているものと認めることはできない。
(4)本件商標と引用商標との類似性について
本件商標と引用商標とを比較すると、外観については、構成文字の種類や図案化の有無、文字数等において明らかに相違するから、外観上、判然と区別し得るものである。
つぎに、称呼については、本件商標から生じる「セルゼロ」の称呼と、引用商標から生じる「セルライトゼロ」の称呼とを比較すると、両者の構成音数に明らかな差異を有するものであるから、互いに聴き誤るおそれはないというべきである。
さらに、観念については、本件商標、引用商標共に、特定の観念を生じないものであるから、観念上、比較することはできない。
なお、申立対象商品及び役務との関係において、「セルライト」のことを「セル」と略して称している事情は、見いだせない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点も相紛れるおそれはないため、両商標は相紛れるおそれのない非類似の商標といえる。
(5)小括
前記(3)イのとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の需要者の間で、申立人の業務を表すものとして、広く認識されていたとは認められないものであり、かつ、前記(4)のとおり、本件商標とは非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。
また、申立人の提出に係る証拠によっては、申立人が主張するような、本件商標権者又は本件商標権者の商標を使用する者による本件商標の使用が本件商品の信用・名声にフリーライドするというべき事実及び申立人が出願していないのを奇貨として本件商標権者が本件商標を出願したというべき事実は見いだし難いばかりでなく、他に、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他の不正の目的をもって使用するものであることを具体的に示す証拠はない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

2 商標法第4条第1項第7号該当性について
前記1(3)イのとおり、引用商標及び本件略称のいずれについても、我が国又は外国の取引者及び需要者の間において広く認識されていたものと認めることはできず、また、前記1(4)のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標権者が、本件商標を登録出願し、その登録により使用することが、信義則に反し、穏当を欠くということはできない。
また、申立人提出の証拠からは、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くなどの事実は見当たらず、本件商標を申立対象商品及び役務について使用することが、社会の一般道徳観念に反するものともいえず、その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標であると認めるに足りる証拠の提出はない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

3 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品及び指定役務中、申立対象商品及び役務について、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に違反してされたものとはいえず、他に同法43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲(引用商標)(色彩は原本参照)


異議決定日 2019-08-07 
出願番号 商願2018-25200(T2018-25200) 
審決分類 T 1 652・ 222- Y (W11)
T 1 652・ 22- Y (W11)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山川 達央福田 洋子 
特許庁審判長 小出 浩子
特許庁審判官 山田 啓之
板谷 玲子
登録日 2018-11-30 
登録番号 商標登録第6103667号(T6103667) 
権利者 伊藤 哲也
商標の称呼 セルゼロ 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 廣中 健 
代理人 高田 修治 
代理人 特許業務法人プロテック 
代理人 田中 克郎 
代理人 小林 彰治 

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