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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W35
管理番号 1354337 
異議申立番号 異議2018-900143 
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-06-07 
確定日 2019-07-16 
異議申立件数
事件の表示 登録第6027086号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6027086号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第6027086号商標(以下「本件商標」という。)は、「ペット漢方」の文字を標準文字で表してなり、平成29年5月16日に登録出願、第35類「動物用餌・動物用サプリメント・動物用スキンケア化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、同30年2月5日に登録査定、同年3月16日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当し、同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第49号証(枝番号を含む。)を提出した。
本件商標は、「ペット漢方」の文字を標準文字で表示したにすぎないから、その指定役務中、例えば、「漢方薬成分が含まれている愛玩動物用(ペット用)餌の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、漢方薬成分が含まれている愛玩動物用(ペット用)サプリメントの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、漢方薬成分が含まれている愛玩動物用(ペット用)スキンケア化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に使用した場合、これに接する取引者・需要者は単に役務の質を表示したものとして認識するにすぎず、自他役務識別標識として機能を果たし得ない。
また、前記意味合いに相応する指定役務以外に使用するときは、役務の質の誤認を生じるおそれがある。

第3 取消理由の通知
当審において、商標権者に対し、「本件商標は、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものであるから、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨の取消理由を、平成31年1月8日付けで通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。

第4 商標権者の意見
前記第3の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べるところがない。

第5 当審の判断
1 申立人の提出に係る証拠(各項の括弧内に掲載)及び職権による調査によれば、以下のとおりである。
(1)「ペット」と「漢方薬」との関連について
ア 「週刊朝日」(1998年4月3日号)において、「自然食、漢方薬であなたのペットが元気になる」の見出しの下、「・・・『アカシア動物病院』は、犬や猫に漢方薬を使って治療しているユニークな病院。ペットに漢方とは、ちょっと意外に思ってしまうが、これがなかなかの効果を上げているという。」の記載がある(甲7)。
イ 「心と体にやさしい漢方2008」(週刊朝日増刊号)において、その表紙に「ペットにも漢方」の記載、「ペットも漢方で元気」の見出しの下、「家族の一員である愛犬や愛猫なども高齢化の時代。その健康を守るために、ペットの漢方治療が注目されています。」の記載及び「ミシナ動物病院」の紹介記事に「高齢のペットの多くは、複数の病気を抱えています。西洋薬だと何種類かの薬を飲まなければいけませんが、漢方だと一つの薬で解決してしまうこともあります。ペットに漢方は、今後、より必要とされてくるのではないでしょうか」の記載がある(甲8)。
ウ 平成20年4月11日付けで農林水産省消費・安全局長から各都道府県知事に宛てた「動物用医薬品等の範囲に関する基準について」において、「近年、多種多様なペットフードやペット用サプリメント等と称するものの販売等がなされており、表示された効能効果、用法用量等から、動物用医薬品等として薬事法の適用を受けるべき物であるかの判断を行うため、具体的な取扱いの一層の明確化が求められているところです。」の記載とともに、「2 医薬品的な効能効果の解釈」における「(1)医薬品的な効能効果と判断される表示例」に「オ 医薬品であることを暗示させる表示」の例として「○○の漢方薬剤をベースに開発されました。」の記載がある(甲9)。
エ 「中森製薬株式会社」のウェブサイトにおいて、会社概要に「平成3年7月1日 ペット用包装の漢方胃腸薬『新中森獣医散』発売。」の記載がある(甲10)。
(2)「ペット漢方」の文字の使用について
ア 「漢方のスギヤマ薬局」のウェブサイトにおいて、「ペット用漢方薬 最新記事」の項に「2010年5月31日 ペット漢方 Q&A」、「2013年8月28日 改めて、ペット漢方相談について皆様へ」、「2017年3月2日 ペット漢方をご希望される皆様へ」の記載がある(甲15)。
イ 「杜の都の漢方薬局 運龍堂」のウェブサイトにおいて、「ペット漢方(犬 ワンちゃん編)」の項に、「2016/11/11 ワンちゃんと一緒に生活している方々は必見です。人間と同じでペットにも漢方薬を使えます。」の記載がある(甲16(1))。
ウ 読売新聞月刊地域情報紙「PARK LIFE」(2016年12月号)の「PARK LIFEお店&イベント紹介」において、「杜の都の漢方薬局 運龍堂」の紹介には、「日常に漢方を取り入れ、体質や悩みを改善!」及び「ペット漢方のサンプル差し上げます!」の記載がある(甲16(2))。
エ 「遠藤全快堂薬局」のウェブサイトにおいて、「ペット漢方って何?」(2015/04/21)の見出しの下、「『ペット漢方』って言葉 聞いた事ありますか?・・・ペットの世界にも生活習慣病に罹っているワンちゃんもいるんですよね。そんな時には、漢方薬で体質改善という選択肢もあるんです。」の記載がある(甲18)。
(3)漢方薬成分入りのペット用餌、ペット用サプリメントについて
ア 2006年8月19日付け産経新聞大阪夕刊2頁において、「手軽な漢方、人気です コンビニで買える/ペット用まで・・・」の見出しの下、「ドクダミや高麗ニンジンといった漢方薬に使われる素材を、手軽に飲める商品を大手飲料メーカーなどが販売、人気を集めている。店頭で買って簡単に味わえるのが特徴で、ペット用まで登場、利用層は広がりを見せている。・・・漢方を取り入れる動きは、ペット用品にまで広がっている。ペット用品会社、ワンパオは、犬猫用の漢方サプリメントを販売。ナツメやハトムギなどを使って『体力維持用』や『アレルギー体質用』など3種類を販売している。同社は『病院に行くほどではないが、生活習慣病や高齢で不調を抱えるペットに対応しようと考えた』。売れ行きも好調だという。」の記載がある。
イ 2006年12月10日付け河北新報朝刊31頁において、「ペット用”自然食”人気/無農薬・無添加漢方薬配合・・・/価格より健康重視専門店・製造業者も増加」の見出しの下、「自然素材に加え、漢方薬入りのドッグフードを作っているのはワンフー(鳥取県米子市)。おなかに優しい成分を含むサンザシ、排せつ物の消臭作用もあるキクの花などの漢方薬を配合しているのが自慢だ。『中国の獣医師らと共同研究し、4年前から製造・販売を始めた。・・・』」の記載がある。
ウ 「有限会社オリエント商会」のウェブサイトにおいて、「鹿肉五膳」の見出しの下、「『ワンちゃんの健康ケアを目的としたおやつを作って欲しい』そんなお客様のご期待にお答えし、2010年秋から販売を始めた鹿肉五膳シリーズ。・・・山田漢方薬局によるこだわりの品質の薬膳と、高品質の馬肉・鹿肉を使用した愛犬やみつきの美味しさと、本質の健康ケア」との記載があり、この商品には鹿の角、高麗人参、霊芝などの漢方薬成分が原材料に使用されている旨の記載がある(甲37)。
エ 「株式会社ペティオ」のウェブサイトにおいて、「犬の漢方薬『犬康食ワン』ってどんな サプリメント?」の見出しの下、「・・・夏が大の苦手な犬種で、夏バテからドライフードを食べなくなって栄養不足の心配をしたり、もうすぐ高齢犬に突入するので、病気せず長生きしてほしい。。。。そんな思いからいつものフードとは別に、『犬康食・ワン』というサプリメントを与え始めました。」の記載があり、同商品は、霊芝、エゾウコギエキス、田七人参の3つの漢方薬成分が原材料に使用されている旨の記載がある(甲38)。
オ 「わんわん漢方」のウェブサイトにおいて、「いつものごはんにまぜるだけ?わんちゃん用サプリメント?わんわん漢方」の見出しの下、「大切なワンちゃんの為に わんわん漢方は植物100%のサプリメントです。・・・わんわん漢方は2001年に販売を開始し、今年で16年目になります。」の記載があり、同商品は、枸杞子(くこし)や山査子(さんざし)などの漢方薬成分が原材料として使用されている旨の記載がある(甲39)。
カ 「日本ペット中医学研究会(JPCM)」のウェブサイトにおいて、「関連品情報」の見出しの下、「中医学理論に基づく中成薬(中国漢方製剤)で、たくさんの人たちの健康に貢献してきたイスクラ産業。その実績と信頼をもとに取り扱っているペット専用製品『QUANPOWペットヘルスサプリメント』を、日本ペット中医学研究会は推奨しています。」の記載があり、漢方薬成分入りペット用サプリメント、ペット用食品を紹介している(甲41)。
(4)ペット用スキンケア化粧品について
ア 1994年12月7日付け日経産業新聞1頁において、「キリンビール、食品酵母から化粧品原料。」の見出しの下、「キリンビールは化粧品用の配合素材を手がける成和化成(東大阪市・・・)と共同で、食品酵母から抽出した純度の高いたんぱく質を使った化粧品・トイレタリー製品用の配合原料を開発した。・・・主にシャンプー、リンス、パーマネント薬剤、ペット用化粧品など毛髪関連の製品のほか、洗顔料、保湿クリームへの配合原料として販売する。」の記載がある。
イ 2006年8月19日付け毎日新聞地方版25頁において「ペット用クリーム:ダメージ肌に効果、エステで広がり」の見出しの下、「◇ペット用クリームを美容に・・・犬猫の足の肉球のひび割れ対策として開発されたクリームが都内のドラッグストアなどで『人用』の美容クリームとして販売されている。」の記載がある。
ウ 2007年8月23日付け朝日新聞朝刊9頁において「(独創力 地元の一番企業)ウノウインターナショナル 愛犬の肌守るクリーム」の見出しの下、「すっかり『家族の一員』になった犬や猫。その皮膚を守るペット専用クリームで業界シェアトップなのが、福岡県筑紫野市のベンチャー企業・・・だ。05年に発売した「パナズー パウケアクリーム」(税込み2520円)は計4万個以上のヒットになった。・・・犬や猫の地肌に塗り込むとヒアルロン酸やアロエベラなど保湿成分が浸透。乾燥や角質化を防いで、体臭の一因になる雑菌の増殖も抑えられる。」の記載がある。
エ 2010年3月21日付け山形新聞朝刊9頁において「食と農を問う?やまがた・現場を見つめて(50) 庄内の“農の革命家”○○○さん」の見出しの下、「メモ【ハーブ研究所スパール】代表の○○○さんを中心に、傘下の4社がそれぞれ化粧品とペット用化粧品製造・・・に取り組む。」の記載がある。
オ 2012年3月20日付け日刊工業新聞15頁において「経営革新計画承認/埼玉県(3)・25件」の見出しの下、「埼玉県は中小企業新事業活動促進法に基づき、経営革新計画を承認した。・・・承認企業とテーマは次の通り・・・▽リプランスワン(東京都足立区)=自然素材(ニーム)を使ったペット用クリームの国内普及」の記載がある。
カ 2017年8月22日付け北海道新聞朝刊全道(生活・くらし)13頁において「〈ペットとくらす イイネ〉ペット用化粧水*肌の元気と潤い引き出す」の見出しの下、「今回ご紹介するのは、温泉から生まれたペット用化粧水『アヴァンス温泉ペットケアミスト』(サラヴィオ化粧品)です。・・・ペットランドでの店頭売価は30ミリリットル入りが千円、200ミリリットル入りが4320円です。乾燥肌やフケ、かゆみや赤みなど皮膚トラブルにお悩みのペットにはもちろん、普段使いにも、ぜひお試し下さい。」の記載がある。
キ 2017年12月26日付け日本経済新聞地方経済面神奈川26頁において「ペット用化粧品、東京に専門店、スキンケア用品など販売。」の見出しの下、「ペットもスキンケア。東京・青山に犬と猫のための化粧品店・・・がお目見えした。天然由来成分にこだわった独自の美容液入りシャンプーやクリームなど専用のスキンケア化粧品を取りそろえた。」の記載がある。
ク 「日本ペット中医学研究会(JPCM)」のウェブサイトにおいて、「関連品情報」の見出しの下、「中医学理論に基づく中成薬(中国漢方製剤)で、たくさんの人たちの健康に貢献してきたイスクラ産業。その実績と信頼をもとに取り扱っているペット専用製品『QUANPOWペットヘルスサプリメント』を、日本ペット中医学研究会は推奨しています。」の記載があり、漢方薬成分入りのスキンケア用品「[ペットイヤー&スキンケアリキッド]」を紹介している(甲41)。
ケ 「ペット用品の通販サイトペピイ(PEPPY)」のウェブサイトにおいて、「トリートメントシャンプー&コンディショナー 自然流」の見出しの下、「白毛用/全犬種用/トリートメントコンディショナー」の商品情報として「35種類以上の和漢洋植物エキスを配合!・・・<白毛用>艶やかな仕上がり 35種類の漢方・ハーブ・植物エキス配合。」の記載があり、素材・原材料として「朝鮮人参エキス、紫根、甘草」等の漢方成分が記載されている。(https://www.peppynet.com/shop/item/id/054095)
コ 「漢方薬鹿鳴堂オンラインショップ」のウェブサイトにおいて、「犬ファーストローション200ml」の見出しの下、「犬用メーテローション 皮膚のバリア機能『回復』と『維持』を目的として開発されたメーテローションは、免疫強化&保湿力&殺菌力&抗炎症力かつ低刺激な保湿ローションの効果により、犬のスキンケアを強力にサポートします。・・・コラーゲン合成促進作用のあるゲットウ他、34種類の有効成分が犬の皮膚を強力にケアしてくれます。」の記載があり、主成分として「カンゾウ、オウゴン」等の漢方成分が記載されている。(http://rokumeido-shop.net/caegory/1)
(5)上記(1)ないし(4)を総合して判断すれば、本件商標の登録査定前から、漢方薬がペットに対する治療に使用され、ペット用の漢方薬を「ペット漢方」と称していることが確認できる。そして、漢方薬成分を配合したペット用の餌やサプリメントが一般に製造・販売されていること、また、ペット用のスキンケア化粧品が一般に製造・販売されており、漢方薬成分を配合したペット用スキンケア化粧品も存在することが確認できる。
2 商標法第3条第1項第6号該当性について
本件商標は、前記第1のとおり、「ペット漢方」の文字からなるところ、「愛玩動物」の意味を有する「ペット」の文字及び、漢方薬を投与する医学体系を指し、漢方薬そのものを意味する場合もある「漢方」の文字(甲2、甲6)を結合したものと認識され、上記1のとおり、全体の文字からは、「ペット(愛玩動物)用の漢方薬」の意味合いを容易に認識させるものであり、また、そのような意味で実際に使用されているものである。
そして、ペット用の餌、サプリメント及びスキンケア化粧品については、漢方薬成分を配合したものが一般に製造、販売されていることからすれば、「ペット漢方」の文字は、当該商品との関係において、「漢方薬成分が配合されたペット(愛玩動物)用の商品」であること、すなわち、当該商品の品質、原材料、用途を表示したものと認識されるというべきである。
本件商標の指定役務は、「動物用餌・動物用サプリメント・動物用スキンケア化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」であり、取扱商品の品揃え、陳列、接客サービス等といった最終的に取扱商品の販売により収益を上げるためのサービス活動をいい、顧客の商品の選択が可能となるように、その取扱商品の品質、原材料、用途その他の特長等を説明することも含まれる。
そうすると、本件商標をその指定役務「動物用餌・動物用サプリメント・動物用スキンケア化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について使用しても、これに接する取引者・需要者は、その小売等役務における取扱商品が「漢方薬成分が配合されたペット(愛玩動物)用の商品」であることを認識するにとどまるものであって、本件商標は、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものであるから、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものというのが相当である。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、その登録は、同条の規定に違反してされたものといわざるを得ないから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2019-06-03 
出願番号 商願2017-72652(T2017-72652) 
審決分類 T 1 651・ 16- Z (W35)
最終処分 取消  
前審関与審査官 安達 輝幸 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 冨澤 美加
鈴木 雅也
登録日 2018-03-16 
登録番号 商標登録第6027086号(T6027086) 
権利者 榎屋相談薬舗株式会社
商標の称呼 ペットカンポー 
代理人 鈴木 徳子 
代理人 高松 孝行 

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