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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1353390 
異議申立番号 異議2018-900360 
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-11-30 
確定日 2019-07-11 
異議申立件数
事件の表示 登録第6083257号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6083257号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6083257号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成29年12月6日に登録出願,第9類「プログラマブルコントローラ,電子計算機,コンピュータプログラム及びコンピュータソフトウェア,電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として,同30年8月13日に登録査定され,同年9月21日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりである(以下,それらをまとめて「引用商標」という場合がある。)。
(1)登録第5042114号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 別掲2のとおり
登録出願日 平成18年1月5日
設定登録日 平成19年4月20日
指定商品 第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(2)登録第5296055号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 INTEL INSIDE(標準文字)
登録出願日 平成21年3月10日
設定登録日 平成22年1月22日
指定商品 第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(3)登録第5777817号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 別掲3のとおり
登録出願日 平成26年10月7日
設定登録日 平成27年7月10日
指定商品 第9類,第10類,第14類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(4)登録第4222888号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様 THE COMPUTER INSIDE
登録出願日 平成8年10月17日
設定登録日 平成10年12月18日
指定商品 第16類に属する閉鎖商標原簿に記載のとおりの商品
(5)登録第4233497号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様 THE COMPUTER INSIDE
登録出願日 平成8年10月17日
設定登録日 平成11年1月22日
指定商品 第9類に属する閉鎖商標原簿に記載のとおりの商品
(6)登録第4492276号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の態様 THE JOURNEY INSIDE(標準文字)
登録出願日 平成12年3月15日
設定登録日 平成13年7月19日
指定役務 第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
(7)登録第5651671号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の態様 LOOK INSIDE(標準文字)
登録出願日 平成25年3月13日
優先権主張 サンマリノ共和国 2013年(平成25年)1月31日
設定登録日 平成26年2月21日
指定商品及び指定役務 第9類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務
(8)登録第5651672号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の態様 別掲4のとおり
登録出願日 平成25年3月13日
優先権主張 サンマリノ共和国 2013年(平成25年)2月1日
設定登録日 平成26年2月21日
指定商品及び指定役務 第9類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務
なお,引用商標1ないし3及び引用商標6ないし8に係る商標権はいずれも現に有効に存続しているが,引用商標4及び5に係る商標権はいずれも本件商標の登録出願前に存続期間の満了により商標権の抹消の登録がされている。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第11号,同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は,その登録出願の日前の商標登録出願に係る引用商標の「○○○INSIDE」の様式からなるINSIDEファミリー商標(以下「INSIDEファミリー商標」という。)に標章が類似し,INSIDEファミリー商標の指定商品・役務又はこれに類似する商品について使用するものである。以下,詳細に説明する。
ア 申立人の沿革及び名声
申立人は,1968年(昭和43年)7月18日にアメリカ合衆国カリフォルニア州で創業された世界最大の半導体製品メーカーである。
申立人の日本での本格的な営業活動は,1971年(昭和46年)10月開設の「インテルコーポレーション日本支社」により開始され,1976年(昭和51年)4月28日に「インテルジャパン株式会社」として法人登記され,1997年(平成9年)に「インテル株式会社」と名称変更して現在に至る。
半導体業界における申立人の名声は,1970年(昭和45年)に世界初のICメモリを,また1971年(昭和46年)に世界初のマイクロプロセッサを開発したことに始まり,これ以後,現在に至るまで,数年毎に先進技術のマイクロプロセッサを開発,製品化し,マイクロプロセッサの世界市場の約80%を占めている。
申立人の世界半導体市場の売上ランキングは,1992年(平成4年)以降2009年(平成21年)まで18年連続して世界第1位を維持している。
また,日本における2014年(平成26年)度ないし2017年(平成29年)度の通年売上は,24.9億米ドルないし15.1億米ドルである(甲4)。
申立人のハウスマーク「INTEL」のブランド評価額は,英国のインターブランド(Interbrand)社が行った2003年(平成15年)度評価では,311.1億米ドルで世界第5位,2009年度は306.4億米ドルで世界第9位,2017年度は394.6億米ドルで第15位であった(甲5)。
イ 引用商標1ないし3によるブランド戦略と「○○○INSIDE」形式の知名度
1990年(平成2年)末から1991年(平成3年)初頭,申立人は,その商号商標「INTEL」を冒頭に冠した「Intel INSIDE」を商標として採択し,膨大な広告費用を投じて,「Intel/inside」のロゴマークと「インテル,入ってる」のキャッチコピーを用いたテレビコマーシャルを含む広告宣伝活動を展開すると共に,当該商標に関する商標使用許諾制度「インテル・インサイド・プログラム」(INTEL INSIDE PROGRAM)を導入した(甲6)。
このインテル・インサイド・プログラムは,申立人のプロセッサを搭載したライセンシーの製造に係るパソコン等の最終製品に「Intel/inside」のロゴマークステッカーを貼付して表示し,さらに,当該ライセンシーの製品の広告宣伝活動にも引用商標の使用を許容して,その広告宣伝費の一部を申立人が支援するという極めて独創的で画期的な発想に基づくユニークなライセンス方式を特色とするものである。
すなわち,申立人は,消費者がインテルのプロセッサを搭載したパソコンを簡単に認識できるようにと,「Intel Inside」のロゴを発表し,このロゴの入った初めての広告は,IBMにより1991年(平成3年)4月にウォール・ストリート・ジャーナル紙に掲載された。10年後には,世界中で2,700社のコンピューター・メーカーにこのロゴが採用され,また,「Intel Inside」のサウンドロゴもテレビやラジオを通じて,世界中のどこかで5分に1回の割合で流れるようになった(甲6)。
申立人の主要商品であるマイクロプロセッサ等の半導体製品は,これによって制御される最終製品の中に主要部品として内蔵されるものであるため,最終製品の購買者である一般消費者は外部から見ることができないものである。
しかし,上記インテル・インサイド・プログラムを用いたマーケティング戦略により,申立人は,他社のプロセッサを搭載した最終製品(パソコン)から自社のプロセッサを搭載した最終製品(パソコン)を差別化することに成功すると同時に,「Intel Inside」のロゴは,申立人の高度な技術に裏打ちされた高い品質を最終製品の需要者(すなわち一般消費者)に保証する機能を果たすこととなり,一般消費者における申立人及びIntel INSIDEファミリー商標の知名度は大きく上昇した。
加えて,1994年(平成6年)頃から急速に浸透した職場環境におけるパソコン一人一台時代の到来,一般家庭へのパソコンの普及,インターネット等情報通信技術産業の発展と相俟って,申立人及びその商品出所識別標識であるINTEL INSIDEファミリーの知名度は,半導体・コンピュータ関連の取引者,特定層の需要者のみならず,業種を越えて,一般の消費者を含む広範囲の需要者の間でも広く知られ不動のものとなった。
上述のインテル・インサイド・プログラムは,申立人が開発,導入して成功したブランド・マーケティング戦略のビジネスモデルとして高く評価されていることで有名である(甲6)。
なお,申立人は,現在も10種の「intel inside」のロゴ商標を継続してマイクロプロセッサ本体に表示し,若しくは,これらマイクロプロセッサを搭載したハードウェア商品(例えばPCなど)の筐体若しくは外装箱等に表示して使用を継続している。
ウ 「○○○INSIDE」形式の商標は,申立人の商品等出所識別標識として認識理解されている。
申立人は,「Intel INSIDE」の他,引用商標4ないし8をINSIDEファミリー商標として所有し,商標登録を取得している。また,申立人はINSIDEファミリー商標を全世界で1,114件所有している。
このように,申立人の商品等の出所識別標識としての著名性は,引用商標1及び3にとどまらず,INSIDEファミリー商標自体にまで及ぶものである。つまり,インテル・インサイド・プログラムによる広範囲な使用を通じた「intel inside」の高度な著名性の獲得により,INSIDEファミリー商標に共通する「○○○INSIDE」の形式は,取引者,需要者の間で申立人の業務に係る商品の出所を表示する識別標識として,広く認識理解されている。
例えば,外国において「○○○INSIDE」形式の商標が,申立人の業務に係る商品又は役務と出所混同を生ずるおそれがあるなどと認定して,他人による「○○○INSIDE」の形式の商標の登録及び使用を禁じた判決等がある。
以上からすると,「Intel INSIDE」及びINSIDEファミリー商標は,本件商標の登録出願時から設定登録時に至るまで,申立人の業務に係る商品を表示するものとして取引者及び需要者(一般の消費者を含む)の間で広く認識され著名であったものである。
また,引用商標に共通して採用する「○○○INSIDE」の形式は,申立人が採択するINSIDEファミリー商標の基幹的構成要素となっており,当該「○○○INSIDE」形式自体もまた,申立人の商品の出所識別標識として取引者,需要者に広く認識されていたものである。
エ 本件商標と引用商標との類否
本件商標は,別掲1のとおりの構成からなる商標である。
申立人のINSIDEファミリー商標は,申立人の商品を示す商標として周知著名であるが,前述のインテル・インサイド・プログラムの表示としても周知著名である。すなわち,半導体製品の分野ではINSIDEファミリー商標が周知著名であることから,第三者が「○○○INSIDE」の表示様式を用い,「○○○INSIDE」の「○○○」に何らかの表示を付加し使用した場合は,取引者・需要者は頻繁に接する機会が多いINSIDEファミリー商標の印象及び記憶に基づき第三者の表示「○○○INSIDE」に接すると,申立人の商標を連想し,申立人の商品又は役務であることを認識するおそれがある。
よって,本件商標は,正に「○○○INSIDE」の様式を踏襲するものであるから,これに接した取引者・需要者は申立人のINSIDEファミリー商標を連想し,共通する印象を抱くものである。よって,本件商標は,申立人の「Intel INSIDE」及びINSIDEファミリー商標,すなわち引用商標に類似する商標である。
オ 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否
本件商標の指定商品は,引用商標1ないし3の指定商品中,第9類「コンピュータ,コンピュータソフトウェア,半導体,マイクロプロセッサ,集積回路」などの商品との関係において,その機能及び用途が同一又は類似である。
よって,本件商標の指定商品は,引用商標1ないし3の指定商品に類似する。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
前述のとおり,「○○○INSIDE」は申立人の商標として周知著名である。
したがって,本件商標をその指定商品に使用した場合は,INSIDEファミリー商標の様式と本件商標が共通することから,申立人の本件商標の指定商品の分野における周知著名な商標「Intel INSIDE」及びその他のINSIDEファミリー商標のシリーズ商標であると取引者・需要者が理解することは明らかである。
すなわち,本件商標から申立人の周知著名な商標「Intel INSIDE」及びINSIDEファミリー商標を想起し,本件商標により提供される指定商品・役務は,申立人が提供する指定商品・役務であると誤認混同を生じるおそれがある(狭義の混同)。
仮に,狭義の混同を生じるおそれがない場合においても,申立人の子会社又は関連会社の商品・役務であるとか,申立人から,本件商標の使用に関して許諾を受けていると理解するなど,間接的に誤認混同を生じるおそれがある(広義の混同)。
また,本件商標は引用商標の名声,評判にフリーライドし,INSIDEファミリー商標は申立人が創作し使用を継続していることを指標するものであるという唯一性を,稀釈化するものでもある。
したがって,本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号について
引用商標1ないし3は,本件商標の登録出願前から,本件指定商品と同一又は類似若しくは密接に関連する商品に使用されていたものである。本件商標の指定商品を取り扱う商標権者が,本件商標の登録出願時に世界的に広く知られている引用商標について不知であったとは考え難い。
ましてや,本件商標の権利者が半導体の研究開発型企業であることに鑑みれば,本件商標は,引用商標「Intel INSIDE」及びINSIDEファミリー商標が獲得している世界的な名声と顧客吸引力にフリーライドし,これにより,商標権者の市場参入を容易化し,不当に商業的利益を得んとする意図がうかがえる。
それのみならず,本件商標は,引用商標の出所表示力を希釈化してブランド価値を低下させ,申立人の商標の資産価値を毀損するものである。引用商標に関する「○○○INSIDE」の方式に立つ商標は,英文法の観点よりみても文法法則から外れた特異な表示形式であり,極めて独創性の高い標章である。
このような状況の下で,取引者,需要者に申立人を容易に連想させる本件商標を申立人と無関係の商標権者が使用すれば,申立人の業務に係る商品と強く結合している引用商標の出所表示力が希釈化され,これにより,世界的な著名商標である引用商標のブランド価値が低下し,申立人の資産に重大な損害を及ぼすことは避けられない。
かかる事情から,本件商標は,申立人の周知著名な商標「Intel INSIDE」及びINSIDEファミリー商標が築き上げた名声を利用する,不正の目的をもって使用するものである。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)「INTEL(intel)」及び引用商標等の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張並びに職権調査(インターネット情報,新聞記事情報など)によれば,次の事実を認めることができる。
(ア)申立人は,1968年(昭和43年)にアメリカ合衆国カリフォルニア州で創業した半導体製品メーカーであり,1970年(昭和45年)にICメモリ,1971年(昭和46年)にマイクロプロセッサを開発し,以後現在に至るまで,マイクロプロセッサの開発,製品化を継続している(甲6,職権調査)。
日本における2014年(平成26年)度ないし2017年(平成29年)度の通年売上は,24.9億米ドルないし15.1億米ドルである(甲4)。
(イ)申立人は,マイクロプロセッサについて,遅くとも1982年(昭和57年)から商標「intel」を使用し,2006年(平成18年)から現在まで別掲5のとおりのコーポレートロゴ及び製品ロゴ(以下「申立人ロゴ」という。)を継続して使用している(甲6,職権調査)。
(ウ)日本における本格的な営業活動は,1971年(昭和46年)開設の「インテル・ジャパン・コーポレーション日本支社」により開始され,同支社は1976年(昭和51年)に「インテルジャパン株式会社」として法人登記,1997年(平成9年)に「インテル株式会社」と名称変更され,その営業活動は現在も継続して行われている(甲6,職権調査)。
(エ)しかしながら,引用商標3以外の引用商標が使用されている事実及び「INSIDE(inside)」の文字が単独で使用されている事実を示す証左は見いだせない。
イ 上記アの事実によれば,「INTEL(intel)」の文字及び申立人ロゴは,本件商標の登録出願の日前から,申立人の業務に係る商品(マイクロプロセッサ)を表示するものとして,日本国内及び米国をはじめとする外国における需要者の間に広く認識されている商標であって,その状況は本件商標の登録査定日においても継続していたものと判断するのが相当である。
しかしながら,引用商標3以外の引用商標が使用されている事実及び「INSIDE(inside)」の文字が単独で使用されている事実を示す証左は見いだせないことに加え,「INSIDE(inside)」の文字が,「内側の,内側に」等の意味を有する平易な英単語であることからすると,必ずしも「INSIDE(inside)」の文字を申立人と関連付けて認識するものとはいえず,「intel」以外の文字と結合した「○○○INSIDE(inside)」の構成からなる商標及び「INSIDE(inside)」単独の文字は,いずれも申立人の業務に係る商品を表示するものとして,また,インテル・インサイド・プログラムの表示として,日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
なお,申立人は,外国において「○○○INSIDE(inside)」形式の構成からなる商標が,申立人の業務に係る商品又は役務と出所混同を生ずるおそれがあるなどと認定され,他人による「○○○INSIDE」形式の商標の登録及び使用が禁じられたとする事案を挙げているが,その事実を裏付ける証左は見いだせないし,外国における判断を直ちに本件の判断の基礎としなければならない理由はないから,それらによって上記判断が左右されるものではない。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 商標の類否
(ア)本件商標について
a 本件商標は,別掲1のとおり,極めて細い線で表された隅丸四角形内に,「mujn」と「inside」の文字を2段に表し,その左上に図形を配置してなるところ,その構成態様及び指定商品との関係から,「mujn」及び「inside」の文字部分並びに図形部分は,いずれも自他商品識別標識としての機能を果たし得るものといえる。
そして,「mujn」と「inside」の文字部分は,2段に表されているものの,上段の「J」と「n」の間の点,下段の語頭の「i」の点及び「side」の文字が赤色で統一されていることから,まとまりよく一体的な印象を与えるとともに,いずれかの文字部分が取引者,需要者に商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるもの,又は,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないというべき事情は見いだせない。
また,文字部分から生じる「エムユウジェイエヌインサイド」の称呼も,よどみなく一連に称呼し得るものであるから,本件商標の文字部分は,特定の観念を生じない一体不可分のものというのが相当である。
なお,図形部分は,一見して特定の物の形状を表しているものと認識することは困難であり,それ自体から特定の称呼や観念を生じないものである。
b 申立人は,引用商標及びINSIDEファミリー商標が申立人の商品等を表示する商標として周知著名であるから,「○○○INSIDE」の形式からなる本件商標は,それら申立人の商標を連想し,共通する印象を抱くものであるなどとして,引用商標と類似する旨主張しているが,上記(1)イのとおり引用商標及びINSIDEファミリー商標は申立人の業務に係る商品等を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであるから,申立人のかかる主張はその前提において理由がない。
(イ)引用商標について
a 引用商標4及び5について
引用商標4及び5に係る商標権は,いずれも本件商標の登録出願の日前(査定日前)に存続期間満了により抹消登録されているので,本件商標は,これらとの関係において商標法第4条第1項第11号に該当しない。
b 引用商標1ないし3について
引用商標1及び3は,別掲2及び3のとおり,いずれも2つの円弧を楕円形状に組み合わせた図形内に「intel」の文字を表し,その下に「inside」の文字を配した構成からなるものであり,引用商標2は,上記2(2)のとおり「INTEL INSIDE」の文字を標準文字で表してなるものであるから,いずれもその構成文字に相応し「インテルインサイド」の称呼を生じるものである。
そして,引用商標1ないし3は,それらの構成中,2つの円弧を楕円形状に組み合わせた図形内に「intel」の文字を表した部分及び「INTEL」の文字部分が,上記(1)イのとおり申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と同一視できるものであって,出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえるから,当該文字に相応し「インテル」の称呼を生じ,「(申立人のブランドとしての)インテル」の観念を生じるものというべきである。
c 引用商標6及び7
引用商標6及び7は,それぞれ上記2(6)及び(7)のとおり,「THE JOURNEY INSIDE」及び「LOOK INSIDE」の文字からなり,該文字に相応し「ザジャーニーインサイド」及び「ルックインサイド」の称呼を生ずる。
そして,引用商標6は,特定の観念を生じないが,引用商標7は,「のぞき込む」(株式会社小学館「ランダムハウス英和大事典」)程の観念を生じるものである。
d 引用商標8
引用商標8は,別掲4のとおりの構成からなり,その構成中「intel」及び「Look Inside」の文字に相応し,「インテルルックインサイド」の称呼を生じるほか,「intel」及び「Look Inside」の文字部分は,それぞれ,要部として分離して看取されるものであるから,これらに相応して「インテル」及び「ルックインサイド」の称呼をも生じ,「(申立人のブランドとしての)インテル」及び「のぞき込む」の観念を生じるものである。
(ウ)本件商標と引用商標1ないし3及び引用商標6ないし8との類否
本件商標と引用商標1ないし3及び引用商標6ないし8の構成全体及びそれらの要部とを比較すると,両者の上記のとおりの外観は,構成態様が明らかに異なり相紛れるおそれのないものである。
次に称呼においては,本件商標から生じる「エムユウジェイエヌインサイド」の称呼と,引用商標1ないし3及び引用商標6ないし8から生じる「インテルインサイド」,「ザジャーニーインサイド」,「ルックインサイド」,「インテルルックインサイド」及び「インテル」の称呼とは,明らかに構成音が異なり,それぞれを一連に称呼するときは,全体の音調,音感が明らかに異なることから,両商標は,称呼上,明瞭に聴別し得るものである。
そして,観念においては,本件商標は,特定の観念を生じないものであるのに対し,引用商標1ないし3は,「(申立人のブランドとしての)インテル」の観念が生じ,引用商標6は特定の観念を生じず,引用商標7は「のぞき込む」の観念が生じ,引用商標8は,「(申立人のブランドとしての)インテル」及び「のぞき込む」の観念が生じるものであるから,両商標は,観念上,相紛れるおそれはないものである。
そうすると,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
イ 小括
上記ア(イ)aのとおり引用商標4及び5に係る商標権は,本件商標の登録出願の日前に抹消登録され,上記ア(ウ)のとおり本件商標と引用商標1ないし3及び6ないし8とは,非類似の商標である。
そうすると,本件商標と引用商標の指定商品が同一又は類似するとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
なお,申立人は甲第2号証中に,引用商標として主張していない商標登録第5127135号に係る登録情報を提出しているが,かかる証拠は上記判断に影響しない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
上記(1)のとおり,「INSIDE(inside)」単独の文字及びINSIDEファミリー商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
そして,上記(2)ア(ウ)のとおり本件商標は,引用商標と外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。
なお,本件商標と引用商標4及び5とは,引用商標6及び7と同様の理由で相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標ということができる。
そうすると,本件商標は,商標権者がこれを指定商品について使用しても,取引者,需要者をして引用商標及びINSIDEファミリー商標を連想又は想起させることはなく,その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
また,他に本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(4)商標法第4条第1項第19号について
上記(1)のとおり,「INSIDE(inside)」の文字及びINSIDEファミリー商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
また,上記(2)及び(3)のとおり本件商標は,引用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異のものであり,引用商標及びINSIDEファミリー商標を連想又は想起させるものではない。
そうすると,本件商標は,引用商標などの名声にただ乗りする,出所表示力を希釈化させるなどの不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
さらに,他に,本件商標が不正の目的をもって使用をするものと認めるに足る事情は見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当するものといえない。
(5)むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号,同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当せず,その登録は,同条第1項の規定に違反してされたものとはいえないものであり,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1 本件商標(色彩は原本参照。)

別掲2 引用商標1

別掲3 引用商標3

別掲4 引用商標8

引用商標5 申立人ロゴ

異議決定日 2019-07-02 
出願番号 商願2017-160261(T2017-160261) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (W09)
T 1 651・ 264- Y (W09)
T 1 651・ 261- Y (W09)
T 1 651・ 222- Y (W09)
T 1 651・ 271- Y (W09)
T 1 651・ 263- Y (W09)
最終処分 維持  
前審関与審査官 谷村 浩幸 
特許庁審判長 薩摩 純一
特許庁審判官 浜岸 愛
大森 友子
登録日 2018-09-21 
登録番号 商標登録第6083257号(T6083257) 
権利者 株式会社MUJIN
商標の称呼 ムジンインサイド、ムジン、インサイド、エムユウジェイエヌ 
代理人 伊藤 孝太郎 
代理人 朝倉 美知 
代理人 西脇 眞紀子 
代理人 中村 知公 
代理人 前田 大輔 

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