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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W093742
管理番号 1353376 
異議申立番号 異議2018-900129 
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-05-28 
確定日 2019-07-04 
異議申立件数
事件の表示 登録第6023955号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6023955号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6023955号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成29年7月3日に登録出願され、第9類「電気通信機械器具,電子計算機用プログラム,電子応用機械器具及びその部品」、第37類「電気通信機械器具の修理又は保守,電子応用機械器具の修理又は保守,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)の修理又は保守」及び第42類「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)及び電子計算機用プログラムの設計及びこれらに関する助言・指導,電子計算機への電子計算機用プログラムの導入及び導入に関する助言・指導,電子計算機及び電子計算機用プログラムの高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする性能・操作方法等に関する紹介及び説明,電子商取引のためのコンピュータデータベースへのアクセスタイムの賃貸,コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),アプリケーションサービスプロバイダーによるソフトウェアの提供,ウェブサイトの作成又は保守,オンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供(SaaS)」を指定商品及び指定役務として、同30年2月9日に登録査定、同年3月2日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、別掲2のとおりの構成からなり、申立人が自己の業務に係る商品及び役務について周知・著名であると主張するものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 申立人について
米国カリフォルニア州に本社を置く申立人は、「iMac」、「MacBook」等のパーソナルコンピュータ、スマートフォン「iPhone」、デジタルオーディオプレーヤー「iPod」、タブレット型コンピュータ「iPad」、腕時計型コンピュータ「Apple Watch」等を製造販売し、音楽・映像配信サービス「iTunes」、写真やビデオ等を保存するサービス「iCloud」等を提供する米国の法人であり、経済紙出版社であるフォーブス社が選ぶ「世界の最も価値あるブランドランキング」で首位を獲得するなど、高い知名度を誇り、当該ランキングにおいては、2011年から8年連続で首位の座を維持している(甲1)。
上記に例示した製品は、日本を含む世界各国で記録的な売り上げを達成し、申立人とともに需要者の間において広く知られており、申立人の動向や販売する新製品及びサービスについて全世界の消費者・メディアが注目している(甲2)。
2 申立人の著名商標
申立人の商標「APPLE」は、日本で周知著名であり、これと同様に、引用商標の「りんご図形」も申立人の商標として著名であることは顕著な事実である。
この事実は、異議2017-900329及び異議2017-900340の決定でも認定されており(甲3、甲4)、本件商標の登録出願日及び登録査定日は、当該異議申立の対象となった各商標登録と半年程度の差異のみであるから、当該異議申立で行われた事実認定は本件異議申立においても適用される事実である。
引用商標が著名であることは、トヨタ、マクドナルド、アディダス等と並ぶ有名ロゴとして理解され、記事にされていることからも窺える(甲8)。
我が国において、スマートフォンはケースに入れて使用する人が多いが、iPhoneの愛用者には引用商標の「りんご図形」が見えるように、引用商標の「りんご図形」を活用したケースが人気で、そのような特集もしばしば見られることから、引用商標の注目度が窺い知ることができる(甲9)。社名と共通する引用商標は、その意味について取り上げた記事が多数あり、需要者の関心が高い (甲10)。
また、インターネットで「アップル」の文字を画像検索すると、引用商標が上位に多くヒットすることからも(甲11)、当該図形は周知・著名であるといえる。
以上のとおり、引用商標は、我が国及び世界各国における申立人の長年の販売及び販売促進活動の努力により、本件商標の登録出願時以前より、申立人の莫大な業務上の信用が化体した著名商標となっていたことが明らかである。かかる著名性が認定される分野は、電気通信機械器具、コンピュータ、ソフトウェア、これらの修理、コンピュータ及びソフトウェアの設計・導入に関する指導助言・紹介説明にわたるものであり、これらは本件商標の指定商品役務の分野である。
3 本件商標と引用商標について
本件商標は、りんごの図形を円の中心に配置する構成をとるが、円で囲われていることは一般的に行われるものであるから、中央の図形が要部といえる。当該中央図形は、上部中央がくぼみ、右に傾いた葉が茎に付いていることから、一見して「りんご」であることが理解される。また、果肉部が欠損している点も理解できる。
したがって、本件商標からは「りんご」を観念することができる。
一方、引用商標は、申立人の著名商標であり、りんごの図形をモチーフにしたものであることは平均的な需要者をして容易に理解することができる。
したがって、引用商標からは「アップル社のりんご」ないしは「りんご」を観念することができる。また、図形上部中央にくぼみ、右に傾いた葉及び果肉部の一部欠損を確認することができる。
そうすると、本件商標と引用商標は、モチーフを共通にし、上部のくぼみ、右斜めに傾いた葉、果肉部分の一部が欠けていることも共通している。特に、一部が欠けたりんごは、申立人又は申立人製品等を想起するものであるから、似通った印象を与える。
また、引用商標は、一見してシンプルな構成であることから、類似する構成をとる商標によって希釈化されやすいため、同ロゴはもちろん、葉の部分のみの商標登録もしている(登録第5686372号)。先がとがった楕円形で表された葉の態様は、両者共通するものである。
両者の構成要素は多くないが、(1)りんご図形であること、(2)果実部分の一部が欠けていること、(3)葉の形状とその傾き、構成の大部分に共通性を有することから、両者が需要者に与える印象は似通ったものとなる。
4 誤認・混同の可能性について
本件商標と引用商標の類似性については、上記のとおりであるが、それ以外の考慮事項については、以下のとおりである。
(1)その他人の標章の周知度
引用商標が著名であることは前記のとおりである。
(2)その他人の標章が創造標章であるかどうか
引用商標は、申立人が依頼したデザイナーが創作した商標である。
(3)その他人の標章がハウスマークであるかどうか
引用商標が申立人のハウスマーク(会社ロゴ)であることは前記のとおりである。
(4)企業における多角経営の可能性
申立人は、コンピュータの分野以外にも様々な事業分野で商品・役務展開しており、例えば、申立人本社では、コンピュータ関連製品の他、マグカップやTシャツ、文房具等が販売されている(甲12)。したがって、多角経営の可能性は十分に認められる。
(5)商品間、役務間又は商品と役務間の関連性
商品等の関連性があることは、本件の指定役務から十分に認められる。
(6)商品等の需要者の共通性その他取引の実情
申立人の製品・サービスと本件商標の指定役務は関連性があるから、需要者の共通性は当然に認められる。
そうすると、本件商標は、需要者の間に広く認識されている引用商標と印象が似通っていることに加え、取引実情において申立人の業務に係る商品及び役務と共通することから、両者は混同を生ずるおそれがある商標であるので、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知・著名性について
(1)申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、次のとおりである。
ア 米国カリフォルニア州に本社を置く申立人は、「iMac」、「MacBook」等のパーソナルコンピュータ、スマートフォン「iPhone」、デジタルオーディオプレーヤー「iPod」、タブレット型コンピュータ「iPad」、腕時計型コンピュータ「Apple Watch」等を製造販売し、音楽・映像配信サービス「iTunes」、写真やビデオ等を保存するサービス「iCloud」等を提供する米国の法人である。
イ 申立人は、2018年5月24日付けの「Forbes Japan」のインターネット上の記事において、「世界で最も価値あるブランド」ランキングで首位を獲得し、当該ランキングにおいては、申立人が2011年から8年連続で首位の座を維持している(甲1)。
ウ 2018年2月2日付けの「ITmedia NEWS」のインターネット上の記事において、「米Appleが2月1日(現地時間)に発表した第1四半期(10?12月)決算は、売上高は前年同期比13%増の882億9300万ドル、純利益は12%増の200億6500万ドル(1株当たり3.89ドル)の過去最高の増収増益だった。」との記載がある(甲2の1)。
エ 2017年1月12日付けの「NEVERまとめ」のインターネット上の記事において「有名企業のロゴの意味・雑学・トリビアを解説!厳選13個」の表示のもと、「【Audi・Apple・アディダス・Amazon・Google・コカコーラ・・・・ヤマハ】のロゴをまとめました。」として、「Apple」の項に、引用商標とその説明が記載されている(甲8の1)。また、同様の記事が他に3件挙げられている(甲8の2ないし甲8の4)。
オ amazonのオンラインショップの記事(2018年8月21日印刷)において「アップルマークを生かしたデザインクリアケース特集:家電&カメラ」として「iPhone」用のケースに引用商標とほぼ同一の図形が表示されている(甲9)。
カ 2011年10月から2016年9月にかけてのインターネット上の記事において、引用商標の由来について紹介した記事が4件ある(甲10の1ないし甲10の4)。
キ 2018年8月22日付けで印刷された「Google」のウェブサイトにおいて、「アップル」の文字の画像検索の結果として、引用商標と同様の「りんご図形」がヒットしている(甲11)。
(2)引用商標の周知・著名性の判断
上記(1)を総合的に判断すれば、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時はもとより、現在においても、申立人の業務に係るスマートフォン、デジタルオーディオプレーヤー及びタブレット型コンピュータ等の商品(以下「申立人商品」という。)を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く知られているといい得るものである。
2 本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、青色で表された二重輪郭円形内に中央をハート型にくり抜いた果実と思しき形状を白抜きした図形からなるところ、一見して何を表した図形であるかまでは、直ちに看取、理解し得ないものというのが相当である。
そうすると、本件商標からは、特定の称呼、観念は生じないものである。
3 引用商標について
引用商標は、別掲2のとおり、黒色で右上方に丸い切り欠きのある簡略化されたりんごと思しき果実の上方に、右上に向かって伸びる葉が表されているところ、当該図形からは、申立人商品を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く知られている「(申立人である)アップルのロゴマーク」の観念を生じるというのが相当である。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知・著名性について
引用商標は、前記1(2)のとおり、申立人商品を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く知られていたものである。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について
本件商標は、前記2のとおり、一見して何を表した図形であるかまでは、直ちに看取、理解し得ないものであることから、本件商標からは、特定の称呼及び観念は生じないものである。
一方、引用商標は、別掲2のとおり、右上方にかじられたような切り欠きのある簡略化されたりんごと思しき図形よりなり、果実の上方に、右向きに葉が表されているものである。
また、引用商標は、特定の称呼をもって親しまれたものではなく、これより特定の称呼は生じないが、申立人商品を表示するものとして周知・著名であることから、「(申立人である)アップルのロゴマーク」の観念を生じるものである。
そこで、本件商標と引用商標とを比較すると、両商標の外観においては、それぞれの構成に徴すれば、外観上、明確に区別できるものである。
なお、仮に、本件商標の構成中の青塗り二重輪郭線内に白抜きされた図形部分と引用商標とが、共にりんごの果実をモチーフとした図形であるとした場合でも、本件商標の当該図形部分は、中央をハート型にくり抜いた果実と思しき形状が白抜きされているのに対して、引用商標は、全体が黒く塗りつぶされていることから、その印象は大きく異なり、引用商標の特徴ともいい得る「かじられたような切り欠き」の部分が本件商標にはないことも踏まえると、両図形は、外観上、別異の商標として認識されるものというのが相当である。
また、本件商標と引用商標は、いずれも特定の称呼を生じないものであるから、称呼において比較することはできないものであって、観念においては、本件商標からは特定の観念を生じないのに対し、引用商標は、「(申立人である)アップルのロゴマーク」の観念を生じるから、観念上、紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、称呼において比較できないとしても、観念において紛れるおそれはなく、外観においては、明らかに異なるものであり、これらを総合して判断すれば、両者は、相紛れるおそれのない、非類似の商標であって、類似性の程度は極めて低いものといわざるを得ない。
(3)本件商標の指定商品・指定役務と申立人商品の関連性、需要者の共通性についてについて
本件商標の指定商品中には、申立人商品と同一又は類似する商品が含まれており、また、本件商標の指定役務には、申立人商品の修理等が含まれていることから、本件商標の指定商品・指定役務と申立人商品の関連性は高く、需要者の範囲も共通するものといえる。
(4)出所の混同のおそれについて
引用商標は、前記1(2)のとおり、申立人商品を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く知られていたものであって、本件商標の指定商品及び指定役務は、申立人商品と関連性を有し、その需要者を共通することがあるとしても、上記4(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない、非類似の商標であり、その印象が明らかに異なる別異の商標であって、類似性の程度は極めて低いものというべきである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれを指定商品及び指定役務について使用しても、取引者、需要者が、その商品及び役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 申立人の主張について
申立人は、「本件商標と引用商標は、モチーフを共通にし、上部のくぼみ、右斜めに傾いた葉、果肉部分の一部が欠けていることも共通している。特に、一部が欠けたりんごは申立人又は申立人製品等を想起するものであるから、似通った印象を与える。」旨主張している。
しかしながら、本件商標は、一見して何を表した図形であるかは把握し得ないものであり、仮に、その構成中の白抜きされた部分が、りんごの図形をモチーフにしたものであると想起される場合があるとしても、前記4(2)のとおり、本件商標の当該図形部分は、中央をハート型にくり抜いた果実と思しき形状が白抜きされているのに対して、引用商標は、全体が黒く塗りつぶされていることから、その印象は大きく異なり、引用商標の特徴ともいい得る「かじられたような切り欠き」の部分が本件商標にはないことも踏まえると、両図形は、外観上、明確に区別できるものであって、本件商標と引用商標とは、別異の商標とみるのが相当であるから、似通った印象を与えるとはいえない。
したがって、本件商標から、申立人又は申立人製品等を想起させ、その出所について混同を生じるおそれがあるとはいい難く、申立人のかかる主張は採用できない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものでなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

【別掲1】
本件商標(色彩については原本参照)


【別掲2】
引用商標

異議決定日 2019-06-24 
出願番号 商願2017-89653(T2017-89653) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W093742)
最終処分 維持  
前審関与審査官 清川 恵子 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 小俣 克巳
冨澤 美加
登録日 2018-03-02 
登録番号 商標登録第6023955号(T6023955) 
権利者 日本事務器株式会社
代理人 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 

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