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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W3541
審判 全部申立て  登録を維持 W3541
審判 全部申立て  登録を維持 W3541
管理番号 1353365 
異議申立番号 異議2018-900363 
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-11-30 
確定日 2019-06-19 
異議申立件数
事件の表示 登録第6086526号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6086526号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6086526号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成30年1月30日に登録出願,第35類「広告物の制作,広告用及び販売促進用の広告文の作成,広告,画廊による美術品の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第41類「絵画及び美術品の展示,絵画及び美術品の貸与」を指定役務として,同年9月20日に登録査定,同年10月5日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は,次のとおりであり(以下,それらをまとめて「引用商標」という。),いずれも同人が「貸画廊」について使用し,需要者の間に広く認識されているとするものである。
(1)別掲のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標1」という。)
(2)「GALLERY ART POINT」の文字からなる商標(以下「引用商標2」という。)

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標の登録は商標法第4条第1項第19号,同項第7号及び同項第15号に違反してなされたものであるから,同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は,申立人の経営する貸画廊において約10年以上前より使用されているマークと全く同一である(甲2?甲4)。
申立人は,貸画廊「GALLERY ART POINT」の経営を,2007年(平成19年)11月頃より実母から引き継いだものである。
同貸画廊の経営は,先代の岡田氏が1968年(昭和43年)頃より開始し,2006年(平成18年)5月には申立人の実母が画廊の負債を全て清算する形で経営を担い,実質的なオーナーとして先代と共同経営を開始し(甲5),2007年(平成19年)11月に当時の代表者であった申立人の実母が急逝したために,申立人が事業を引き継いだものである。
申立人は,多大なる努力により,上記貸画廊の事業の拡大に成功し,銀座でも有数の人気画廊として業界内に広く知られるようになっている。特に,銀座はこの種の業界においては聖地と呼ばれるようなこともあり,芸術家にとって銀座で個展を開くということは夢の実現に近いものがある(甲6)。
このように,先代,申立人の実母,及び申立人の50年以上にわたる当該業界での「GALLERY ART POINT」の名称の使用,及びそのロゴマークの使用により,該名称やそのロゴマークには,需要者からの多大なる信頼が付与されていることは疑いのない事実である。
そして,本件商標のロゴマークは,申立人が画廊を引き継ぎ,画廊の再建のためにCIの一環として新しく考案したものである。それまで画廊名が片仮名表記であったりマークがない表記であったりなど,統一性がなかった表記を改めて画廊名は必ずアルファベットの大文字表記2行で表現し,マークを必ず画廊名の上部中央か左に配置することを考案したものである。
商標権者は,申立人の妻であり,2015年(平成27年)2月に結婚し(甲7),2016年(平成28年)より,申立人の経営する画廊「GALLERY ART POINT」の仕事をサポートしてもらっていた。
画廊での仕事経験のない商標権者には早く画廊の仕事を覚えてもらいたい気持ちから,週3日を別の画廊で働き,残りの時間を申立人の画廊をサポートしてもらうようにした。このような勤務形態は2017年(平成29年)12月まで続いた。
商標権者には,フリーのディレクターのような立場で画廊の仕事に関わってもらうようにした。フリーのディレクターには,1ないし2割安い料金でスペースを提供するが,商標権者には4割引の料金でスペースを提供することにしていた。また,作品が売れた場合の販売手数料は,全て商標権者が受け取るようにした。これは商標権者が少しでもやる気を出し,また余裕を持って営業に励んでくれればという思いと,どちらの稼ぎも実質的には夫婦二人のものであるという意識があり,また,節税の目的もあった。
そして,申立人は,10年間かけて築き上げた信用と実績,磨き上げたノウハウを商標権者に惜しみなく与え,商標権者は期待どおり1年も経たないうちに十分な営業ができるようになった。
ところが,2016年(平成28年)の夏頃から商標権者が売上の6割を画廊使用料として納めるのは不当だと言ってきた。
商標権者は,2016年(平成28年)から申立人の経営する画廊の仕事を,他の画廊でアルバイトをしながら,残りの時間を一時的にサポートしたのみである。
このような状況下において,商標権者は,申立人の同意も承諾も得ずに,申立人が考案し10年以上以使用しているマークと全く同じ本件商標を登録出願した。
そして,申立人が行っている役務(貸画廊)は「展示施設の貸与」に該当するもので,本件商標の指定役務とは非類似である。小売を行う画廊と貸画廊の役務は根本的に異なり,申立人の行っている役務は,本件商標の指定役務とは異なるものである。
なお,画廊が絵画などの小売りを行う場合には古物商免許が必要となるが,商標権者はこの免許を所有しておらず,第35類の「画廊による美術品の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を行っていないことは明確である。
にもかかわらず,商標権者は,本件商標の登録を得たことを利として,申立人が10年近く管理運営してきた画廊HPを公式ページではなく類似ページであるなどと,SNSの投稿,関係者への一斉メールや郵送による通知,画廊における張り紙で喧伝している(甲8?甲10)。これらの行為により多くの作家からの問合わせ,また展覧会のキャンセルが出るなど悪影響も出ており,申立人は心労のみならず,多大なる被害を被っている(甲11)。また,申立人に「GALLERY ART POINT」の使用を禁止するような警告書を送付している(甲12)。
しかしながら,商標権者の「GALLERY ART POINT」の使用は,自らの事業において本件商標を使用したものではなく,これを使用する権限を有していたものでもない。また,商標権者は,画廊「GALLERY ART POINT」のオーナーである申立人の同意を得ておらず,本件商標は登録出願・登録されたものである。
以上を鑑みると,商標権者には「不正の目的」があり,申立人,その実母,先代の長年築き上げてきた「GALLERY ART POINT」の信用にフリーライドする目的があることは明らかである。
また,現在,商標権者は,申立人の「株式会社GALLERY ART POINT」(2018年に法人化:甲13)とは異なり,別途「合同会社GALLERY ART POINT」を設立して事業を行っているが,これにより,上記フリーライドのみならず,「GALLERY ART POINT」のロゴマークの希釈化の目的もあるものと推認できる。
したがって,商標権者が,2016年(平成28年)から数年間の期間において,「GALLERY ART POINT」の業務上の信用の形成にある程度の貢献をしていたとしても,商標権者のみが「GALLERY ART POINT」の使用をする権利を有するとは当然いえず,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第19号に違反してなされたものである。
(2)商標法第4条第1項第7号について
上述したように,「GALLERY ART POINT」は1968年(昭和43年)より先代の岡田氏が使用し,本件商標と同一のロゴマークは申立人が10年以上前に考案し,現在も使用を継続しているものである。
そして,上述のように,商標権者は申立人に無断で本件商標を登録出願したといえるから,かかる行為は,社会の一般道徳観念に反するものであって,公の秩序を害するおそれがあるものといえる。
したがって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号に違反してなされたものである。
(3)商標法第4条第1項第15号について
申立人は,10年以上前よりインターネット上のホームページの公開(甲14),フェイスブックなどのSNSの公開,美術新聞(甲4),申立人の貸画廊の立て看板(甲2),「GALLERY ART POINT」主催のコンサートパンフレット(甲3)等を一般に公開している。
そして,これらのネットサイト,新聞,パンフレットには引用商標が使用されている。また,美術新聞などは,貸画廊などの分野において非常に権威のある新聞紙として知られている。
これらのことを鑑みても,申立人が10年以上以前より使用を継続している引用商標は,遅くとも本件商標の登録出願日以前において,我が国で商標として使用された結果「他人の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識される」ようになった商標と解される。特に,銀座において有数の画廊である点からもこのことは推認される。
このため,申立人の行っている業務(貸画廊)と本件商標の指定役務とは非類似であるとしても,商品等の出所の混同を生じるおそれが極めて高いことは疑問の余地がない。
また,申立人は,商標権者が登記した「合同会社GALLERY ART POINT」との親子会社や系列会社のようなグループ化を一切望んでいない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものである。

4 当審の判断
(1)事実認定
申立人提出の証拠及び同人の主張並びに職権調査によれば,以下の事実が認められる。
ア 現在,東京都中央区銀座一丁目に所在する画廊「GALLERY ART POINT(ギャラリー・アート・ポイント)」は,1969年(昭和44年)に東京都中央区銀座六丁目に「ギャラリーアートポイント」という名称で開設されたこと,その後,2001年(平成13年)3月に銀座八丁目に,さらに2018年(平成30年)2月に銀座一丁目に移転したことがうかがえる(甲3,甲5,甲9,職権調査)。
イ 同画廊においては,遅くとも2009年(平成21年)11月頃から現在まで,同画廊を表示するものとして引用商標が使用されている(甲3,職権調査)。
ウ 申立人は,平成30年3月に設立され東京都中央区銀座一丁目に本店を置く「株式会社ギャラリーアートポイント」の代表取締役であることが認められ,同所の画廊「GALLERY ART POINT」の運営に携わっていると推認できる(甲13,職権調査)。
エ 商標権者は,平成30年3月に設立され東京都中央区銀座一丁目に所在する「合同会社GALLERY ART POINT」の代表取締役であること,及び同所の画廊「GALLERY ART POINT」の運営に携わっていることがうかがえる(甲9,甲10)。
オ 申立人は,商標権者から平成30年11月に通知書及び同年12月に警告書をもって,絵画及び美術品の展示・即売に関し本件商標と同一又は類似の商標を使用することを中止するよう通知及び警告を受けた(甲12)。
カ 申立人と商標権者は,平成27年2月に婚姻届を提出し,平成30年7月時点において婚姻関係にある(甲1,甲7)。
キ 引用商標を使用している画廊「GALLERY ART POINT(ギャラリー・アート・ポイント)」の利用者数,取引額など取引実績を示す主張,証左は見いだせない。
また,同画廊における,申立人及び商標権者の業務内容や両者の業務上の関係などを示す証左も見いだせない。
(2)引用商標の周知性について
上記(1)からすれば,現在,東京都中央区銀座一丁目に所在する画廊「GALLERY ART POINT(ギャラリー・アート・ポイント)」は,昭和44年に「ギャラリーアートポイント」として開設し,現在まで約50年継続して運営されていることがうかがえることから,画廊の利用者など需要者の間である程度知られているといい得るとしても,同画廊に係る利用者数,取引額など取引実績を示す証左は見いだせないから,需要者の間で広く認識されているものと認めることはできない。
そうすると,当該画廊を表示するものとして使用されている引用商標は,いずれも本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る役務「展示施設の貸与」を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(3)不正の目的について
上記(1)からすれば,申立人及び商標権者がそれぞれ運営に携わる画廊「GALLERY ART POINT」は,その所在等が一致することから,同一の画廊とみるのが自然である。
そうすると,申立人及び商標権者は,いずれも本件商標の登録出願日前には,同一の画廊「GALLERY ART POINT」の運営に携わっているといい得るものの,当該画廊おける両者の業務内容,業務上の関係などを示す証左は見いだせないから,商標権者が申立人に対し,絵画及び美術品の展示・即売に関し本件商標と同一又は類似の商標を使用することを中止するよう通知書,警告書を送付していることなどを考慮しても,本件商標が不正の目的をもって使用するものということはできない。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 引用商標の周知性
上記(2)のとおり,引用商標は,いずれも申立人の業務に係る役務「展示施設の貸与」を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
イ 本件商標と引用商標との類否
本件商標は,別掲のとおりの構成からなるものであり,その構成態様から,その構成中「GALLERY ART POINT」の文字部分及び二つの三角形と一つ四角形からなる図形部分は,いずれも独立して自他役務識別標識としての機能を果たし得るものである。
他方,引用商標1は,別掲のとおり,本件商標と同一の構成からなるものであり,引用商標2は,「GALLERY ART POINT」の文字からなるものである。
そうすると,本件商標と引用商標は,いずれも同一又は類似の商標であることは明らかである。
不正の目的
上記(3)のとおり,本件商標は,不正の目的をもって使用するものといえないものである。
エ 小括
上記アないしウのとおり,本件商標は引用商標と同一又は類似のものであるが,引用商標は申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,また,本件商標は,不正の目的をもって使用するものといえないものであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(2)のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,引用商標は,いずれも申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
そうすると,本件商標は,商標権者がこれをその指定役務について使用しても,取引者,需要者をして,その役務が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。
その他,本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(6)商標法第4条第1項第7号該当性について
上記(3)のとおり,本件商標は,不正の目的をもって使用するものといえないものである。
また,申立人は,引用商標の使用開始にあたって,その商標を自ら登録出願をする機会は十分にあったというべきであって,自ら登録出願しなかった責めを商標権者に求めるべき事情を見いだすこともできない。
さらに,申立人と商標権者の間で,あらかじめ,引用商標の使用に関し何らかの契約を締結していた事実も確認できない。
そして,本件商標は,その出願の経緯に社会的妥当性を欠き,その登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないというべき事情は見いだせず,さらに,他に本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足る証左は発見できない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(7)むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号,同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲 本件商標及び引用商標1


異議決定日 2019-06-07 
出願番号 商願2018-11704(T2018-11704) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W3541)
T 1 651・ 222- Y (W3541)
T 1 651・ 272- Y (W3541)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大島 勉 
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 平澤 芳行
薩摩 純一
登録日 2018-10-05 
登録番号 商標登録第6086526号(T6086526) 
権利者 吉村 清子
商標の称呼 ギャラリーアートポイント、アートポイント、ポイント 
代理人 蓑和田 登 

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