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審決分類 再審 全部取消 商50条不使用による取り消し 審決却下 X41
管理番号 1353345 
審判番号 再審2015-950001 
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-06-25 
確定日 2019-05-07 
事件の表示 上記当事者間の取消2014-300963審判事件の確定審決に対する再審の請求事件(再審2015-950001)についてされた平成28年10月31日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成28年(行ケ)第10254号、平成29年12月25日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 取消2014-300963審判事件について、平成27年3月31日に行った確定審決を取り消す。 再審の審判費用は、被請求人の負担とする。 取消2014-300963審判事件の請求を却下する。 原審の審判費用は、原審の請求人の負担とする。
理由 第1 再審2015-950001(以下「本件再審請求」という。)について
1 本件再審請求に至る経緯
登録第5177809号商標(以下「本件商標」という。)に係る取消審判事件(取消2014-300963号、以下「原審」という。)は、商標法第50条第1項の規定による商標登録の取消審判(以下「不使用取消審判」という。)として、「小針正次」(以下「小針」という。)によって、平成26年11月28日に審判請求され、同年12月17日に商標登録原簿にその登録がなされたものである。
そして、原審が審理された結果、平成27年3月31日に「登録第5177809号商標の商標登録は取り消す。」との審決(以下「原審決」という。)がなされ、同年5月11日に原審決は確定し、同年6月5日に本件商標の抹消登録がされたものである。
本件再審請求は、確定した原審決に対して、請求人「株式会社Shapes」(以下「請求人」という。)により、原審の請求人「小針」及び原審の被請求人「株式会社Shapes International」(以下「SI社」という。)を共同被請求人として、平成27年6月25日にされたものである。(以下、「SI社」及び「小針」をまとめて「被請求人ら」ということがある。)
なお、本件商標は、別掲のとおりの構成からなり、第41類「フィットネス・エクササイズ及びボディートレーニングに関する教授,フィットネス・エクササイズ及びボディートレーニングに関する施設の提供,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,スポーツの興行の企画・運営又は開催,運動用具の貸与,録画済み記録媒体の貸与」を指定役務として、平成20年8月21日に登録出願、同年10月31日に設定登録されたものである。
2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、再審請求書及び回答書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第26号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)小針について
ア 請求人及びその代表取締役O氏(以下「請求人ら」という。)とSI社との間における本件商標の譲渡を含む「営業権等譲渡契約」及び「顧問契約」の締結と解除を巡る訴訟事件(本訴事件:平成24年(ワ)第29533号、反訴事件:平成25年(ワ)第17196号。以下「本件訴訟」という。)係属中、小針は、商標法第50条の規定に基づき原審の審判請求をしたが、その結果得た原審決が確定したにもかかわらず、自らは当該商標の出願をしていない。登録商標の不使用取消審判の請求は、当該商標又は類似商標につき自ら出願をして自ら登録を受けることを目的として行うのが通常であるから、不使用取消審判の請求をしておきながら、自らは本件商標の出願をしない小針の一連の行為は不自然・不合理であって、通常あり得ない。
イ 小針は、本件再審請求の答弁書にて、法律上の請求人適格が「何人も」とされている旨を述べるのみで、自己が不使用取消審決を得る利益ないし請求の動機につき、何ら主張立証をしていない。
(2)SI社について
ア SI社は、請求人らとの間で、平成23年12月14日、請求人らの営業権等をSI社に譲渡することを主な内容とする営業譲渡契約(甲4:以下「本件営業譲渡契約」という。)を締結し、同24年2月10日、同契約に基づき、本件商標を含む請求人所有の3件の商標権(以下「原商標権」ということがある。)について、特定承継による移転登録(以下「本件移転登録」という。)を受けた。
イ SI社は、本件営業譲渡契約の締結日と同日、O氏との間で、O氏に対し一定の顧問料を支払う顧問契約(甲5)を締結した。
ウ SI社は、上記アの本件移転登録の前後にかけて、指定役務を本件商標と同一又は類似する範囲とし、原商標権と類似する商標を出願し、登録を得た。
エ SI社は、平成24年7月2日、上記イの顧問契約のみを解除し(甲6)、顧問料の支払いを停止した。
オ SI社は、平成24年7月25日付け書面により、請求人らに対し、本件商標権に基づき商標権侵害を主張して、「Shapes」商標の使用中止を要求した(甲7)。
カ SI社は、平成25年6月27日、請求人らに対して、上記ウに含まれる登録第5506264号商標(以下「反訴商標1」という。)、登録第5506267号商標(以下「反訴商標2」という。)及び登録第5506263号商標に基づいて、商標権侵害による差止請求訴訟の反訴を提起した(平成25年(ワ)第17196号)。同訴訟は、本訴事件との併合審理がなされた(甲16の1)。
キ 本件訴訟の係属中である平成26年11月28日、小針は、原審の審判請求をした。SI社は、同審判手続きにおいて何ら答弁しなかったため、平成27年3月31日、特許庁は本件商標の登録を取り消す旨の原審決をし、同年5月11日に確定した(甲2)。
ク 本件訴訟の弁論終結後である平成27年4月23日付けのSI社代理人作成の提案書(甲11)には、本件商標権につき同年3月31日に原審決がなされていることは何ら言及されていない。また、原審決の確定日である平成27年5月11日付けのSI社代理人作成の提案書(甲24)にも、原審の事実は、全く記載されていない。
ケ SI社は、平成27年5月26日付け提案書(甲12)において、初めて、原審決の確定の事実を告知し、同年5月25日に、本件商標とほぼ同一の構成からなる商標(以下「再出願商標」という。)の商標登録出願をした上で、その出願に係る権利を請求人に譲渡する旨、及び和解金の支払い額を2,500万円に増額する旨を提案した。SI社は、訴訟物の消滅を理由に、本件商標の移転登録抹消登録請求につき棄却すべき旨を主張して口頭弁論再開を申し立てた(甲25)が、裁判所は弁論再開せず、本件訴訟につき、判決した。
コ 本件訴訟において、東京地方裁判所は、平成27年7月7日に、請求人による本件営業譲渡契約解除を有効と認め、SI社に対し、「原商標権の移転登録の抹消登録手続きをせよ」とする内容の判決を言い渡した(甲16の1)。
サ 上記アないしコの期間を通じ、SI社は、本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)を使用して、パーソナルトレーニング事業Shapesのフランチャイズ展開を、そのホームページないし広告にて、大々的に宣伝している(甲10)。
(3)本件訴訟の判決が認定するとおり、本件営業譲渡契約と顧問契約は、不可分一体であって、SI社が顧問料の支払いを懈怠した以上、その債務不履行を理由として、請求人が行った本件営業譲渡契約の解除は有効である。したがって、SI社は、実体法上、請求人に対し、原状回復義務として、本件商標を含む各登録商標につき、移転登録の抹消登録手続をなすべき義務を負っており、上記判決でも請求が認容されている。
ところが、本件訴訟の審理中の平成26年11月28日、原審の審判請求がなされた際、SI社は、何ら答弁しなかったため、平成27年3月31日、本件商標の登録を取り消す旨の原審決がなされ、同年5月11日に確定した。
(4)本件商標の使用事実の立証は容易であったのに、SI社が原審において何ら答弁・反論をしていないのは、本件訴訟によって本件商標権の移転登録の抹消が認容されると、SI社が本件商標を使用できなくなると予想されることから、本件訴訟が敗訴しても請求人からの本件商標権に基づく差止請求を阻止するために、本件商標登録を取消す必要があったからである。
(5)SI社は、本件商標を使用した事業を行っている最中になされた原審において、何ら答弁をせず取消審決を受け、しかも本件商標権の帰属を巡り請求人との間で係争中であることを知悉しながら原審決を確定させ、確定後わずか1か月に満たない間に、消滅した本件商標と同一のロゴにつき再度出願を行ったものであるが、SI社のこれら一連の行為は極めて不自然・不合理であって、本件商標に係る請求人の権利を害する目的をもってなされた被請求人らの共謀に基づく行為である以外には説明がつかない。
(6)SI社は、「平成27年5月25日に本件商標と同一の商標の商標登録出願を行った」理由について、「既に原審決が確定している本件商標を請求人に譲渡する」意図で、和解期日に間に合わせるために出願した旨を主張しているが、出願日が全く異なる商標は、その他の点で全く同一の商標であっても、別個の商標であり、再出願商標は、「本件商標と同一の商標」とはいえない。そのような商標の譲渡を受けても、本件商標の移転登録抹消手続がなされたと同一の法律上の効果を受けることができないから、SI社が原状回復義務を果たしたことにはならない。
(7)以上のとおり、本件においては、関係各証拠から認定できる各間接事実を総合し、これらに経験則を適用する手法により、被請求人らの共謀の事実及び請求人の権利を害する目的をもって原審決を得た事実が容易に認定される。
(8)したがって、請求人は、商標法58条第1項に基づき、本件商標の原審で確定した原審決の取り消しを求めるものである。
3 被請求人らの主張
(1)SI社の主張
SI社は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判事件答弁書において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
ア SI社は、Shapes事業を女性専用パーソナルトレーニング事業として一から構築しており、商標についてもブランドイメージに合致するものを自ら登録出願し使用している。一方、請求人の所有していた本件商標は、Shapes事業のブランドイメージに全く合わなかったため、SI社は一切使用していない(乙3)。
イ SI社と小針との間には何ら面識がなく、共謀して詐害目的の審判請求を行った事実など存在しない。また、請求人は、小針が自らは本件商標の出願をしていないことを指摘するが、不使用取消審判は「何人も」請求することができるとされており、その請求人適格が利害関係人に限られているわけではない。
ウ SI社が原審において答弁しなかったのは、本件商標は一切使用しておらず取り消されてもやむを得ないため、せめて費用だけはかけずに審判を終了させようと判断したからにすぎず、請求人が主張するような詐害目的など存在しない。
エ SI社が本件商標と同一の商標を商標登録出願したのは、本件訴訟において裁判官から本件商標を請求人に譲渡する内容での和解を検討するように強く要請されたためである。
本件訴訟では、東京地方裁判所において和解協議が実施されていたが、平成27年5月26日の和解期日を控えた同月22日、裁判官からSI社らの代理人弁護士に対して電話があり、商標(本件商標を含む。)を請求人らに譲渡する内容での和解を検討するよう強く要請された。そこで、既に原審決が確定している本件商標を請求人に譲渡する方法があるか弁理士に相談したところ、本件商標と同一の商標を早急に商標登録出願した上で、同出願により生じた権利を請求人に譲渡する他はないとのアドバイスを受けたので、SI社は、和解期日に間に合わせるため、同月25日に本件商標と同一の商標の商標登録出願を行った上で、同出願により生じた権利を請求人に譲渡する旨の条項を盛り込んだ和解条項案を提出した(甲12)。
請求人は、原審の存在が「秘匿」されていたと主張するが、SI社は、その段階では本件商標を請求人に譲渡することを一切考えていなかったため、不使用取消審判について言及しなかったにすぎず、原審の存在を「秘匿」したわけではない。
オ 以上のとおり、SI社と小針との間には何ら面識がないことから共謀のしようがなく、また、SI社が原審について答弁しなかったこと、及び、SI社が本件商標と同一の商標の商標登録出願したことにはそれぞれ理由があるから、被請求人らが共謀して詐害目的の審判請求を行っていないことは明らかである。
カ 請求人は、被請求人らが「本件商標に係る請求人の権利」を害する目的をもって原審の請求を行ったと主張するが、本件商標権は本件営業譲渡契約によって請求人からSI社へと譲渡されていたから、原審の請求がなされた時点において、請求人は本件商標に係る権利を何ら有していなかったはずである。
したがって、請求人の主張では、そもそも何をもって「第三者の権利又は利益」とするのかが明らかにされていない。
キ 以上によれば、原審決の取消しを求める請求人の主張には理由がない。
(2)小針の主張
小針は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判事件答弁書において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証を提出した。
ア 原審の正当性
(ア)本件商標の所有者は、SI社であり、請求人は審判請求時の商標権者ではない。不使用取消審判は、商標原簿の記載どおりに請求する必要があり、請求人とは無関係である。
(イ)不使用取消審判は、登録前の使用を登録要件としていない我が国の商標制度の不合理を修正是正するために制定されている制度であって、何人も不使用を理由に商標権の取消を求めることのできる制度である。
したがって、不使用取消審判請求人は、審判請求とは別に商標の使用をしていることを要求されたり、商標出願をしていることが要件とされる訳ではない。
(ウ)不使用取消審判の要証事実は、外形において当該商標が使用されていないと信じる審判請求人が、その旨を審判請求書に開示すれば十分であり、使用の挙証責任は商標権者側にある。
審判請求人が予め権利者に使用の立証をしないように依頼するようなことはなく、また、予め権利者が使用の立証をしないことを知ってから審判請求をする理由もない。
(エ)商標権の取消は保護法益の化体していない不使用商標の整理が目的であり、詐害的な要素は含まれていない。確かに、商標権は取り消されるので、外形上、商標権者は害されるが、使用している権利を取り消すような詐害要素はないので、実害は発生していないと法律上は考えられる。
(オ)詐害行為とは、一般に、債務者が、債権者を害することを図って、自己の財産を減少させる行為をいうが、取消審判請求人である小針は請求人とは債権債務関係にはない。SI社は請求人と債権債務関係にあるように窺えるが、小針にはこの関係は知らされておらず、債務者と評価される者ではない。
小針もSI社と同列の債務者であるとの前提に立って主張されているが、不使用取消審判請求を利用したのは、一方的にSI社だけであって、小針には共謀の意図はなく、何より債権の存在自体も知らないという立場にあり、全く関与していないし、関与する立場にもない。
(カ)何を共謀したのかの指摘がないが、共謀する内容は、両者にとって利があるものでなければならない。商標権者が自己の権利を毀損したければ、放棄すれば済む。SI社が小針に不使用取消審判の請求を依頼して共謀したという構成には無理がある。むしろ、本人の意思または誰かからの依頼で不使用取消審判を請求したのではないかというのであれば、通常有り得ないことではないと考えられる。
ただし、小針が商標出願をしていない点だけをもって、「通常有り得ない異常な経緯のみをみても、両者の共謀の事実が強く推定できるものである」との主張は証拠に基づく主張ではない。
(キ)SI社が毀損されたと主張されている本件商標について、専用的使用権を確保する方法は商標権を再建することであり、同一の商標権を再度出願し、権利化することにより、3年以上不使用であったにもかかわらず権利は確保できるのであって、実害は存在しない。
イ 再審請求の不合理性
(ア)小針は、単に不使用取消審判の請求人にすぎず、債権債務関係の当事者ではない。
(イ)小針は、共同で被請求人となっているSI社が保有する本件商標に対して不使用取消審判を請求し、原審決は確定している。請求人は、小針が商標登録出願をしていない事を問題にしているが、平成8年の商標法改正により不使用取消審判は「何人も」請求する事ができると改正されており、小針による本件不使用取消審判の請求には何ら瑕疵はない。
(ウ)不使用取消審判の実務においては、商標の取消を希望する者があえて部外者を審判請求人に立てることが多く行われている。小針も、同様に依頼を受けて不使用取消審判を請求したことが考えられるが、SI社とは直接的には何ら関係はなく、小針にも共謀の意図はなかった。小針にとっては、請求日前3年間に使用がなかったという事実だけが重大であり、その他の事情は全く関与するところではない。
(エ)請求人は、「取消審判申立てをしておきながら自らは本件商標の出願をしない小針の一連の行為は極めて不自然・不合理であって、通常あり得ない」旨を主張しているが、不使用取消審判と商標登録出願とが常に一体の手続となっているとは、条文および制度趣旨から読み取ることはできない。少なくとも、本件商標が取り消されることにより、小針以外の者も商標選択の余地が広がったのであり、不使用取消審判の公益的目的は果たされているものと考えられるため、不使用取消審判の濫用ということはできず、小針の行為が不自然・不合理であると断定する請求人の主張は妥当なものとは考えられない。
(オ)SI社は、原審決が確定した後、平成27年5月25日付で新たに商標登録出願を行っている。これは、甲第12号証にも記載されているように、請求人に商標を返還するために行った出願と考えられる。本件商標は、原審によって取り消されているため、返還することが不可能となっているので、もし、SI社に本件商標を返還する気がない場合、あえて新たに指定役務が共通する同じ商標を出願することはない。また、新たに取得した商標登録を請求人に売りつけるような事実も存在していない。請求人は、新たな商標登録出願を「通常あり得ない異常な経緯」と主張しているが、商標を返還する意思があり、請求人を害する意図が明らかとなっていない以上、異常な行為であると断定するのは失当と評価できる。請求人にとって、害される行為とは、商標を使用する権利がなくなることであり、実質的には一旦取り消された本件商標を無理に復活させることではなく、今後の専用使用権の確保にある。
(カ)商標法第58条第1項は、「第三者の権利又は利益を害する目的」をもって審決をさせる行為を再審請求の要件の1つとしている。しかしながら、SI社は本件商標を新たに商標登録出願して返還する意思を有している以上、本件商標に関する権利や利益が害されているとまではいえないのではないかと考えられる。本件商標に関する権利については何らの権利も請求人は有していなかったものであり、害され得る権利等を観念することができない状態であった。仮に本件商標が請求人による契約に対する法定解除権の行使による商標権移転登録抹消登録手続請求が容認され、権利の原状回復が行われたとしても、本件商標と社会通念上同一の商標が使用されていない以上、結果として本件商標が取消審判によって取り消される可能性を包含していることに変わりはない。
すなわち、本件商標は不使用取消審判が請求された場合には取り消されざるを得ない状況であったことと、SI社は本件商標と同じ商標を返還する意思があると考えられることから、請求人の権利又は利益を害する目的を有しておらず、被請求人の行為は詐害行為には該当しない。
(キ)小針が請求した審判が、あたかも無権利者にあてた不使用取消審判請求であったかのような判断がされかけているが、商標原簿を信じた取消審判請求人である小針は、商標権の移転登録に関する契約の有効性とは全く関係がない。
後日、商標権の移転に瑕疵があった場合は、移転登録の無効ではなく、原状回復の再移転の要請ができるにすぎない。ちなみに、先の移転登録を信じた第三者が、譲渡を受けた場合は、その譲渡は有効となる。原簿上の現権利者に対して提出された不使用取消審判自体は有効であり、単に使用の事実を立証すれば足りる。
(ク)以上より、被請求人同士の共謀の意図や詐害目的は、存在しないと評価でき、被請求人が共謀して請求人の本件商標権を害する目的をもって原審決を確定させたものとはいえない。
4 審決取消判決の拘束力について
本件商標に係る再審請求(再審2015-950001)についてなされた平成28年10月31日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成28年(行ケ)第10254号、平成29年12月25日判決言渡)があり、当該判決は、上告却下及び上告受理申立不受理を経て、確定した。
再審の請求に係る取消訴訟において、審決取消判決が確定したときには、審判官は、商標法第63条第2項で準用する特許法第181条第2項の規定に従い、当該審判事件について更に審理を行い、審決をしなければならないところ、再度の審理ないし審決には、行政事件訴訟法第33条第1項の規定により、当該審決取消判決の拘束力が及ぶ。
5 平成28年(行ケ)第10254号判決について
知的財産高等裁判所は、民訴法208条に基づき、被告ら(被請求人ら)が共謀して本件商標権を害する目的をもって本件商標に係る登録商標を取り消す旨の原審決をさせたという原告(請求人)の主張は、真実と認めることができるとした上で、被告らが共謀して原告の権利を害する目的をもって原審決をさせたとは認められないとした審決の判断には誤りがあるとして、特許庁が本件再審請求について平成28年10月31日にした審決を取り消したものである。
6 判断
再度の審理ないし審決には、上記5のとおりの平成28年(行ケ)第10254号判決の拘束力が及ぶことから、被請求人らは、共謀して本件商標権を害する目的をもって本件商標に係る登録商標を取り消す旨の原審決をさせたものと認められる。
したがって、商標法第58条第1項の規定に基づき、本件商標の原審につき確定した原審決は取消すべきものである。
第2 原審の再審理について
1 本件商標に係る経緯
請求人提出の証拠及び職権による調査によれば、以下のとおりである。
(1)本件商標は、請求人により、平成20年8月21日に登録出願され、同年10月31日に設定登録された。
(2)請求人らは、SI社との間で、平成23年12月14日、請求人らの営業権等をSI社に譲渡することを主な内容とする本件営業譲渡契約を締結した。同契約においては、本件商標も譲渡の目的物に含まれており、同契約に基づいて、同24年2月10日、本件移転登録がされた。
(3)SI社は、本件営業譲渡契約の締結日である平成23年12月14日、O氏との間で、O氏に対し一定の顧問料を支払う顧問契約を締結した(甲5)。
(4)SI社は、平成24年7月2日、上記(3)の顧問契約を解除し、顧問料の支払いを停止した(甲6)。
(5)SI社は、平成24年7月25日付け書面により、請求人らに対し、本件商標権に基づき商標権侵害を主張して、「Shapes」商標の使用中止を要求した(甲7)。
(6)請求人らは、平成24年9月26日付けで、SI社、その親会社である株式会社ラスカ及び代表取締役T氏(以下、この3者を「SI社ら」という。)に対し、本件営業譲渡契約を解除する旨の通知をし、同年10月17日、SI社らを被告として、本件移転登録の抹消登録手続きを求める本訴(平成24年(ワ)第29533号)を提起した(甲8、甲9)。同訴訟の訴状は、同年12月6日にSI社らに送達された。
(7)SI社は、平成25年6月27日、請求人らに対して、反訴商標1、反訴商標2及び登録第5506263号商標に基づいて、商標権侵害による差止請求訴訟の反訴を提起した(平成25年(ワ)第17196号)。同訴訟は、本訴事件との併合審理がなされた(甲16の1)。
(8)本件訴訟の係属中である平成26年11月28日、小針は、原審の審判請求をした。原審の被請求人であるSI社は、同審判手続きにおいて答弁書を提出せず、何らの防御もしなかったため、同27年3月31日、特許庁は本件商標の登録を取り消す旨の審決をし、同年5月11日に確定した。
(9)その後、平成27年5月25日に、SI社は、本件商標と同一の構成からなる再出願商標の商標登録出願をして登録を受け(登録第5812225号商標)、別訴である東京地裁平成27年(ワ)第17767号事件においては、請求人らが再出願商標を侵害していると主張して、再出願商標と同一又は類似する標章の使用差止め及び損害賠償の請求をした。
当該訴訟において、同30年8月24日、東京地方裁判所は、「再出願商標に基づき請求人らの標章の差止め等を求める請求については、(ア)再出願商標と同一の構成の本件商標については、本件営業譲渡契約の解除に伴う原状回復により請求人に移転されるべきものであったこと、(イ)再審2015-950001号の審決が知財高裁で取り消されたこと、(ウ)再出願商標は、本件商標の登録を取り消す審決の確定後にSI社が出願し、登録されたという事情を総合すると、本件商標の登録取消しについて何らの防御活動もしなかったSI社がその後出願した同一構成の再出願商標に基づき、差止請求を求めることは権利の濫用として許されないというべきである」旨判断している。
(10)本件訴訟は、平成27年7月7日に、本件商標の移転登録の抹消登録手続きを認める内容の判決が言い渡された(甲16の1)が、控訴審である知財高裁平成27年(ネ)第10103号では、同28年2月18日、本件商標の登録が抹消されたことを理由として、本件商標の移転登録の抹消請求は棄却された(甲16の2)。
当該判決において、「請求人らによる反訴商標1及び2と同一又は類似の商標の使用状況、使用の必要性や、SI社が、反訴商標1及び2の商標登録を受けたのは、本件営業譲渡契約により、商標登録出願が可能となったものであるところ、当該契約の解除により原状回復義務を負うに至ったことなどに鑑みると、SI社による請求人らに対する反訴商標1及び2に基づく権利行使は、権利の濫用として許されないというべきである」旨判断されている。
(11)請求人は、上記(8)の原審決について、平成27年6月25日に本件再審請求をしたところ、特許庁は、同28年10月31日、再審請求を却下する旨の審決をした。これに対し、請求人は、同年11月28日、審決取消訴訟を提起した。
(12)知的財産高等裁判所は、平成29年12月25日、上記(11)の審決を取り消す旨の判決をした。同判決は、上告却下及び上告受理申立不受理を経て、確定した。
2 判断
本再審請求審判においては、判決の拘束力により、原審における審判請求人(再審被請求人)小針と原審における審判被請求人SI社は、共謀して請求人の権利を害する目的をもって本件商標を取り消す旨の原審決をさせたものであることが認められる。
また、上記1で認定した事実からすれば、原審の審判請求は、本件訴訟における請求人のSI社らに対する請求を不能にすることを目的として、SI社と共謀した原審における審判請求人(再審被請求人)小針が請求したものと推認され、これによりSI社が再出願商標の登録を得て、請求人に対し、再出願商標の商標権に基づく使用差止め請求及び損害賠償請求をしている経緯からしても、原審の審判請求は、SI社と小針が共謀して本件商標権を害する目的をもってされたものであったといわざるを得ない。
加えて、この再出願商標の商標権に基づく使用差止め請求及び損害賠償請求については、前記1(9)のとおり、東京地方裁判所において、「権利の濫用として許されない」旨の判断もされており、また、前記1(10)のとおり、「SI社による請求人らに対する反訴商標1及び2に基づく権利行使は、権利の濫用として許されない」旨の判断もされているところである。
なお、再出願商標の出願の理由に関し、SI社は、「本件訴訟中、裁判所からの和解勧告を受けて、請求人に譲渡する目的で既に取り消された本件商標の再出願をした。」旨主張しているが、実際に、請求人らに対して、再出願商標の商標権に基づく使用差止め請求及び損害賠償請求を行った事実及びその行為については裁判所において「権利の濫用」と判断されていることからすれば、上記主張は採用できない。
そうすると、原審の審判請求は、不使用の登録商標により権利者以外の商標使用希望者の商標の選択の余地を狭めることを防ぐという商標不使用取消審判の趣旨・目的に照らして、著しく相当性を欠き、審判請求権を濫用するものといえるから、不適法な請求として却下すべきである。
なお、被請求人らは、「不使用取消審判は何人も請求できる」旨主張しているが、平成8年の商標法改正により不使用取消審判は「何人も」請求することができると改正されてはいるものの、「請求人適格を『何人』とすることとしても、当該審判の請求が被請求人を害することを目的としていると認められる場合には、その請求は権利濫用として認められないこととなる。」(産業財産権法(工業所有権法)の解説(平成8年法改正(平成8年法律第68号))60頁)とあることからしても、「何人も」の文言にかかわらず、商標不使用取消審判の趣旨・目的に照らして、著しく相当性を欠き、審判請求権を濫用するような場合までも審判請求が認められるものではないというべきである。
したがって、原審の審判請求は、審判請求権を濫用する不適法な請求であって、その補正をすることができないものであるから、商標法第56条第1項において準用する特許法第135条の規定により却下すべきである。
第3 むすび
よって、商標法第58条第1項の規定に基づき、本件商標の原審につき確定した原審決を取り消すとともに、原審の審判請求は、商標法第56条第1項において準用する特許法第135条の規定により却下することとし、結論のとおり審決する。
別掲 【別記】

審理終結日 2019-03-07 
結審通知日 2019-03-11 
審決日 2019-03-27 
出願番号 商願2008-68709(T2008-68709) 
審決分類 T 5 31・ 1- X (X41)
最終処分 成立 
前審関与審査官 田中 幸一 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 鈴木 雅也
冨澤 美加
登録日 2008-10-31 
登録番号 商標登録第5177809号(T5177809) 
商標の称呼 シェープス 
代理人 高橋 隆二 
代理人 井嶋 倫子 
代理人 寺島 英輔 
代理人 末岡 秀文 
代理人 神田 孝 
代理人 広瀬 文彦 
代理人 清野 龍作 
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