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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X41
管理番号 1353327 
審判番号 取消2017-300080 
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2017-02-01 
確定日 2019-07-03 
事件の表示 上記当事者間の登録第5408900号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5408900号商標の指定役務中,第41類「放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」についての商標登録を取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5408900号商標(以下「本件商標」という。)は,「ZOUK」の欧文字を横書きしてなり,平成22年3月17日に登録出願,第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」を指定役務として,同23年4月28日に設定登録され,その後,登録異議の申立てにより,指定役務中「ズークに関する技芸・スポーツ又は知識の教授」についての取消決定がされ,同24年4月23日にその確定決定の登録がされ,現に有効に存続しているものである。
そして,本件審判の請求の登録日は,平成29年2月20日である。
また,本件審判の請求の登録前3年以内の期間である平成26年2月20日から同29年2月19日までの期間を,以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を審判請求書において要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
本件商標は,その指定役務中,第41類「放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」(以下「取消請求役務」という。)について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
なお,請求人は,被請求人の答弁に対して,何ら弁駁していない。

第3 被請求人の主張
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を答弁書及び審尋に対する証拠説明書において要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第18号証(枝番を含む。)を提出した。
(理由)
「ZOUK」という商標は役務商標であり,パリ条約は適用されず,国内法が適用される。そして,日本国憲法は,国民の権利と義務,生命と財産の保証などはその趣旨とされる。だから,日本国においては投票権に関する公職選挙法で外国人投票権は認められず,文化的な最低限の生活を保障する生活保護法でも外国人はその対象とされていない。同様に,国民の財産に関する工業所有権でパリ条約が適用されない役務商標に関しても,外国籍の個人及び法人の権利を認めるべきではない。
そして,本事件の請求人は,日本国で何ら義務を負うことがない外国籍の企業であり,日本国憲法が審判請求の権利を保障する対象ではありえない。
以上をもって,本事件の審判請求を棄却すべきである。
また,被請求人が「ZOUK」の商標を使用している証拠として,講座のテキストの一部,2016年(平成28年)12月16日に書かれた原稿のワープロソフトにより作成されたファイルと,この講座に関連する2017年(平成29年)1月23日に撮影されたビデオ及び同月28日に撮影されたビデオを提出する。これにより,企画自体がこれより前の時点で行われていることも明白である。

第4 被請求人に対する審尋
当審において,平成29年8月24日付け及び平成30年1月10日付けで,被請求人に対して,以下を内容とする審尋を通知し,期間を指定して,これに対する意見を求めた。
1 平成29年8月18付けの審尋(要旨)
請求人が外国企業であることは,本件審判を請求する妨げとはならない旨,及び提出された証拠によっては,要証期間に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,取消請求役務について,本件商標の使用を証明したということはできない。
2 平成30年1月10日付けの審尋(要旨)
(1)被請求人による主張立証責任
被請求人は,要証期間に,日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,取消請求役務のいずれかについて,本件商標を使用していることを証明する必要があるところ,提出した証拠によっては,被請求人が,要証期間に,日本国内において,商標権者等のいずれかが,取消請求役務のいずれかについて,本件商標を使用していることを証明したとは認められない。
(2)被請求人が提出した証拠説明書について
ア 当合議体が,被請求人に対し,平成29年8月18日付け審尋において,回答書及び証拠説明書を求めたところ,被請求人は,甲第1号証から甲第8号証の2までの証拠を添付した証拠説明書のみを提出している(なお,これら証拠は,審判事件答弁書に添付された乙第1号証に続くものとして,以後,乙第2号証から乙第9号証の2として取り扱う。)。
イ 上記(1)に記載した内容を踏まえて,被請求人から提出された証拠説明書を検討したところ,当合議体による暫定的な見解は,被請求人は,要証期間に,日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,その請求に係る指定役務(第41類「放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用のビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」)のいずれかについて,本件商標を使用していることを証明したとは認められない。

第5 審尋に対する請求人の対応
被請求人は,上記第4の1の審尋に対し,乙第2号証から乙第9号証(枝番を含む。)を追加して提出し,及び上記第4の2の審尋に対し,乙第10号証ないし乙第18号証を追加して提出した。

第6 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠及びその主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)本件マニュアルについて
ア 乙第2号証は,標題を「超リラックスヨガ/ティーチャートレーニングコース/マニュアル」とする2017年3月5日版の全47頁からなるマニュアル(以下「本件マニュアル」という。)であって,その奥付には,著作者として本件商標権者の氏名及び所在地,並びに,問合せ先として,メールアドレス及び電話番号が記載されている。
そして,当該マニュアルの記載内容は,ヨガのインストラクターになるための,クラスの進行の方法,準備練習及び具体的な体・心のリラックスのテクニック等である。
また,本件マニュアルの40ページ及び41ページには,受講のための「申込用紙」の様式及び「体験談」の様式の記載がある。
イ 本件マニュアルに掲載された「申込用紙」及び「体験談」の様式を使用して,2017年(平成29年)3月11日付で実施された「無料体験説明会」の受講者により申込用紙及びその説明会の体験談が記載されている(乙4,乙5)。
ウ 以上よりすると,乙第2号証は,本件商標権者が2017年(平成29年)3月5日に作成したヨガのインストラクターになるための「ヨガの知識の教授」の役務に関するマニュアルといえる。
(2)動画ファイルについて
ア 乙第1号証は,本件商標権者が作成した,ファイルの記録日を平成28年12月20日とするワープロの文書とファイルの記録日を同29年1月23日及び同月28日とする動画のファイル2本が記録されているDVDである。
そして,当該文書は,「インストラクターのやっていいこと」をファイル名とし,「【インストラクターの行動指針】」の表題の下,「インストラクターの権限」及び「インストラクターの禁止事項」の記載がある。
また,当該DVDに記録されている2つの動画ファイルは,1つ目が「ヨガとは一体何か?」の表題の下,「ヨガの八支則」の紹介の記録であり,2つ目が「超リラックスヨガとは?」の見出しの下,「無料体験から始めましょう!」の記事の記録で,それぞれインストラクター行動に関すること,「ヨガの知識」に関することが記録されている(乙1,乙11)。
イ 乙第9号証は,本件商標権者が作成した,ファイルの記録日を平成28年11月5日とするワープロの文書と同29年1月28日とする動画のファイル1本が記録されているDVDである。
そして,当該文書は,「筋肉のリラックス」の見出しの下,「事前の解説」の項に筋肉のコントロールに関する説明,及び「【練習】筋肉のリラックス」の項には,「1.身体的な異常のチェック」,「2.筋肉の緊張をリラックス路繰り返して体の緊張をほぐす。」(原文のまま。)及び「3.身体的な異常の解消をチェック」の記載がある。
また,当該DVDに記録されている動画ファイルは,動画ファイル(乙1)と同じ内容のインストラクター行動に関すること,「ヨガの知識」に関することが記録されている。
2 上記1からすれば,次のとおり判断できる。
(1)上記1(1)のとおり,本件マニュアルは,本件商標権者が平成29年3月5日に作成したヨガのインストラクターになるための「ヨガの知識の教授」の役務に関するマニュアルである。
そして,当該マニュアルの奥付には,請求人の氏名及び連絡先の記載があること,当該マニュアルに掲載された受講のための「申込用紙」の様式及び「体験談」の様式が記載され,当該様式を用いて平成29年3月11日付けで実際に受講者により記載された申込用紙等が存在することからすると,本件商標権者は,「ヨガの知識の教授」に係る役務を自ら提供する者であると認められる。
(2)上記1(1)のとおり,本件マニュアルは,「ヨガの知識の教授」の役務に関するマニュアルであり,また,上記1(2)のとおり,乙第1号証及び乙第9号証に記録された動画ファイルは,本件商標権者が作成し,その内容は「ヨガの知識」を紹介するためのものであること,及び上記(1)のとおり,本件商標権者は,「ヨガの知識の教授」に係る役務を自ら提供する者であると認められるからことすると,本件マニュアル及び当該動画ファイルは,いずれも本件商標権者自らが「ヨガの知識の教授」に係る役務を自ら提供するために作成されたものというのが相当である。
(3)商標法上の「役務」とは,「他人のためにする労務又は便益であって,独立して商取引の目的たりうべきもの」と解されるところ,取消請求役務中「放送番組の制作」の役務については,テレビ局等の顧客(他人)の依頼に基づいて番組制作会社が,番組を制作し納品する業務等であり,「教育・文化・娯楽・スポーツ用のビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」の役務については,顧客(他人)の依頼に基づいてビデオ制作会社が,研修用ビデオを制作し提供する業務等をいうものである。
(4)以上からすると,本件マニュアル及び動画ファイル(乙1,乙9)は本件商標権者が自らが「ヨガの知識の教授」に係る役務を提供するために作成したものとみるのが相当であって,本件商標権者による本件マニュアル及び当該動画ファイルの作成は,「他人のためにする労務又は便益であって,独立して商取引の目的たりうべきもの」ということはできないから,取消請求役務に該当するものではない。
したがって,上記証拠からは,本件商標権者が,取消請求役務に本件商標を使用したと認めることはできない。
(4)その他,被請求人が提出した証拠からは,被請求人が,要証期間に本件商標を使用して取消請求役務を行っている事実は見いだせない。
以上よりすれば,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,本件商標を取消請求役務に使用していたことは認められない。
3 被請求人の主張について
(1)被請求人は,「国民の財産に関する工業所有権でパリ条約が適用されない役務商標に関しても,外国籍の個人及び法人の権利を認めるべきではない」旨を主張している。
しかしながら,商標法第50条第1項は,「何人も」指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる旨の規定を定めているため,請求人が外国企業であることは,本件審判を請求する妨げとはならない。
(2)被請求人は,乙第10号証において,被請求人が乙第1号証の動画ファイルの基となった乙第11号証の証拠を自らが制作したことを証明するため,自らビデオ撮影をしながら,PCの画面上に映し出された文書のプロパティを撮影したり,作成した文書のファイル名と作成日を撮影したりして要証期間に自らが作成しているものである旨主張している。
確かに,本件商標権者は,「ヨガの知識の教授」について,これを行うための本件マニュアルや当該動画ファイルを作成していることは認められる。
しかしながら,上記2(3)のとおり,これらの本件マニュアルや当該動画ファイルは,本件商標権者自らが行う「ヨガの知識の教授」に係る役務を自らの提供のために作成されたものであって,「他人のためにする労務又は便益であって,独立して商取引の目的たりうべきもの」とはいえないから,取消請求役務を行っていることの証明にはならない。
(3)被請求人は,第2回の証拠説明書の「事業の説明」において,「・・・テキストの作成と,講座の指導資格を得た講師の教育を目的としたビデオのDVDを作成することになりました。教育用ビデオを作成する目的は,本講座を修了し資格を取得した講師が一人で復習するため,および,喉の疾病による説明の困難や人前で内容の説明など話す技術に問題のあるケースなどに対応することです。そのため,講座のテキストの作成と並行して,まずはヨガの説明を含めた体験講座向けの映像の作成と,テキストの完成とともに講座内容の文章とナレーションによる映像を撮影,編集,電子媒体への記録による映像DVDの作成を意図していました。・・・つまり,平成26年2月20日から同29年2月19日の間に,教育・文化のビデオを制作していたことは事実です。」旨の主張している。
しかしながら,上記2(2)のとおり,本件マニュアル及び動画ファイル(乙1,乙9)は,いずれも本件商標権者自らが「ヨガの知識の教授」に係る役務を自ら提供するために作成されたものというのが相当であって,「他人のためにする労務又は便益であって,独立して商取引の目的たりうべきもの」として作成されたものとはいえないから,たとえ,これらが要証期間に作成されたものとしても,取消請求役務を行っていることの証明にはならない。
したがって,被請求人の上記主張は,いずれも採用することはできない。
4 まとめ
以上のとおり,被請求人は,要証期間に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,その請求に係る指定役務について,本件商標を使用していたことを証明したものと認めることはできない。
また,被請求人は,取消請求役務について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,その指定役務中「放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」についての登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2019-04-25 
結審通知日 2019-05-08 
審決日 2019-05-23 
出願番号 商願2010-25528(T2010-25528) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X41)
最終処分 成立  
前審関与審査官 綿貫 音哉海老名 友子 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 榎本 政実
大森 友子
登録日 2011-04-28 
登録番号 商標登録第5408900号(T5408900) 
商標の称呼 ズーク、ゾーク 
代理人 石田 昌彦 
代理人 栗下 清治 
代理人 田中 克郎 
代理人 稲葉 良幸 

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