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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W09
審判 一部申立て  登録を維持 W09
審判 一部申立て  登録を維持 W09
審判 一部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1351642 
異議申立番号 異議2019-900001 
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-01-04 
確定日 2019-05-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第6086268号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6086268号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6086268号商標(以下「本件商標」という。)は,「iGS」の欧文字を標準文字で表してなり,平成29年12月15日に登録出願,第9類に属する「電池」とはじめとする商標登録原簿に記載の商品を指定商品として,同30年9月3日に登録査定され,同年10月5日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりである(以下,それらをまとめて「引用商標」という。)。
(1)登録第580382号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 別掲のとおり
指定商品 第9類「蓄電池」
登録出願日 昭和33年10月16日
設定登録日 昭和36年9月15日
書換登録日 平成14年7月31日
なお,引用商標1に係る商標権は現に有効に存続している。
(2)「GS」の欧文字からなる商標(以下「引用商標2」という。)
申立人が,同人の業務に係る商品(蓄電池など)を表示するものとして,需要者の間に広く認識されているとするものである。(異議決定注:申立人主張の全趣旨から,申立人は引用商標1とは別に引用商標2も引用しているものと判断した。)

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標はその指定商品中,第9類「電池」について商標法第4条第1項第10号及び同項第11号に違反して登録されたものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第38号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号の該当性について
ア 引用商標1の著名性について
引用商標1の電池関連事業における著名性については,過去の異議決定において既に認定されているとおりである(甲3?甲5)。
また,引用商標1は,1970年(昭和45年)及び1998年(平成10年)の「日本有名商標集」に掲載された(甲6,甲7)。
さらに,引用商標1は,その審査時において特別顕著性がないという趣旨の拒絶理由通知を受け,これに対し申立人が使用による特別顕著性を主張し,その結果出願公告の決定謄本が発行されていることから,使用による顕著性が認められたものと思考する(甲8?甲10)。
したがって,引用商標1の電池関連事業における著名性は認定済みである。
イ 申立人の歴史と事業
申立人は,旧日本電池株式会社(以下「旧日本電池」という。)と旧株式会社ユアサコーポレーション(以下「旧ユアサコーポレーション」という。)が平成16年に経営統合し,設立された。申立人は,その前身の2社の時代を含めると創業110年以上の長い歴史を持ち,前身の2社によって築かれた,電池分野における高い信頼と実績を発展的に受け継いで現在に至っている(甲11,甲12)。
申立人の連結売上高は,4110億円(平成30年3月期)ないし3698億円(平成27年3月期)である(甲14)。
経営統合前の2003年(平成15年)における国内シェアは,旧日本電池と旧ユアサコーポレーションとを合算すると,四輪自動車用鉛蓄電池市場の新車用で約30%(国内第1位),補修用で約40%(国内第1位),二輪自動車用鉛蓄電池市場の新車用で約85%(国内第1位),補修用で約70%(国内第1位),及び産業用鉛蓄電池で約55%(国内第1位)であった(甲15)。2017年時点での申立人の国内シェアは1位である(甲16)。
申立人は,世界各国で蓄電池関係製品を製造・販売しており,各市場における世界シェアは,2017年度,二輪自動車用蓄電池で22%(1位),四輪自動車用蓄電池で8%(2位)となっている(甲16)。
ウ 申立人の商標「GS」の使用について
申立人の商標「GS」は,明治41年(1908年)から蓄電池の表示に使用され,「G.S.」及び「ジー,エス」は,大正2年(1913年)に商標登録され(甲11,甲18,甲19),大正6年(1917年)以降,蓄電池の商標として使用された。その後,昭和36年に商標登録された「GS」(引用商標1)が広く知られるようになり,1970年(昭和45年)及び1998年(平成10年)の「日本有名商標集」にも掲載された(甲6,甲7)。
また,昭和62年(1987年)には「GS」の文字と図形を組み合わせた新たなコーポレートマークを制定し,商標登録している(甲11,甲20)。
旧日本電池の製品,カタログ及び会社案内等には「GS」の商標が使用されている(甲21)。また,昭和50年(1975年)発行の書籍「電池ハンドブック(電気書院発行)」にも,「GS」の商標を用いた広告が掲載されている(甲22)。
申立人が設立された以降も,申立人の商標「GS YUASA」には,その語頭に「GS」を商標の一部として使用して現在に至っている(甲23,甲17)。
さらに,申立人は国内及び海外のグループ企業・関連会社の社名の一部に「GS」及び「ジーエス」を使用しており,グループ企業・関連会社は日本全国及び世界各国に分布している(甲24,甲25)。また,申立人の「GS」商標は世界各国で登録されており(甲26),海外グループ企業・関連会社の製品・カタログには「GS」の登録商標が使用されている(甲27?甲31)。
エ 申立人の商標「GS」の著名性
前述したように,申立人は商標「GS」を使用し,国内外で電池事業における高いシェアを獲得してきた。さらに経営統合後も,申立人は商標「GS YUASA」の語頭に「GS」を商標の一部として使用し,電池事業における高いシェアを獲得している。大手検索サイトで「GS」及び「battery」で検索を行うと,申立人の製品に関する国内外のページが多数ヒットする(甲32)。
旧日本電池及び申立人は,その事業内容等について各種一般紙,専門紙,業界誌等のメディアで多数取り上げられている(甲33)。
申立人は,ベトナムやEUにおいて,商標「GS」を用いて販促活動を行った(甲34,甲35)。また,申立人はアメリカ,インドネシア,ベトナムにおいて多数の受賞歴を持っている(甲36,甲37)。
オ 小括
上述のとおり,申立人は電池事業で長い歴史を持ち,市場での高いシェアを獲得している。よって,申立人の商標に係る欧文字「GS」は,その著名性から,電池及び電池を用いた事業における需要者に強く印象付けられている。
したがって,本件商標が指定商品「電池」に使用されるとき,本件商標は著名な引用商標と類似の商標であるから,商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標と引用商標1の指定商品の類否
「電池」は「蓄電池」を包含しているため(甲38),本件商標の指定商品である「電池」は,引用商標1の指定商品「蓄電池」と類似であるといえる。
イ 本件商標と引用商標1の類否
(ア)本件商標は,「iGS」の欧文字を横書きしてなる商標である。
「i」のみが小文字で書され,「GS」が大文字で書されていることから,外観上まとまりよく一体に表示されているとは言いがたい。したがって,本件商標は「i」と「GS」の文字に分離されて看取され得る。
また,本件商標中「i」の占める面積が「GS」に比べて極めて小さいことから「GS」部分が強調される。前記(1)のとおり,「GS」の欧文字二文字が電池関連事業において著名であることも併せ考慮すると,本件商標がその指定商品「電池」に使用されるとき,取引者・需要者は,場合によっては,本件商標から「GS」のみを看取するおそれがある。
したがって,本件商標の要部は「GS」である。
(イ)引用商標1の構成は,欧文字の大文字「GS」の二文字をやや角張ったゴシック体の太字で横書きしてなるものである。
(ウ)本件商標は,その構成中の要部である「GS」の文字部分より「ジイエス」の称呼を生ずるものであって,該称呼は,引用商標1より生ずる「ジイエス」の称呼と共通するものである。
したがって,本件商標と引用商標1は,称呼上類似する商標である。
ウ 小括
本件商標と引用商標1とは称呼において類似の商標である。したがって,本件商標は,その指定商品「電池」において引用商標1と類似の商標であるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知著名性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張並びに職権調査(インターネット情報など)によれば,次の事実を認めることができる。
(ア)申立人は,旧日本電池株式会社(旧日本電池)と旧株式会社ユアサコーポレーション(旧ユアサコーポレーション)が2004年(平成16年)に経営統合し設立された株式会社であり,前身を含めると創業110年以上の歴史を有している(甲11)。
(イ)申立人の連結売上高は,4110億円(平成30年3月期)ないし3698億円(平成27年3月期)である(甲14)。
(ウ)経営統合前の平成15年における国内シェアは,旧日本電池と旧ユアサコーポレーションとを合算すると,四輪車用鉛蓄電池市場の新車用で約30%(国内第1位),補修用で約40%(国内第1位),二輪車用鉛蓄電池市場の新車用で約85%(国内第1位),補修用で約70%(国内第1位),及び産業用鉛蓄電池で約55%(国内第1位)であった(甲15)。
また,2017年(平成29年)調査における申立人の国内自動車用補修バッテリーシェアは第1位である(甲16)。
(エ)申立人は,1908年(明治41年)から蓄電池の商標として「GS」の文字を使用し(他の構成要素と結合されたものを含む。),1913年(大正2年)には商標「G.S.」が商標登録された(甲11)。
(オ)申立人は,「GS」の文字のみからなる商標を,国内において遅くとも1953年(昭和28年)頃から,ロゴタイプの変更を経ながら,1990年(平成2年)頃まで継続して,蓄電池に使用していたことが推認できる(甲8?甲11,甲21)。
(カ)現在,関連会社の名称及び略称の一部に「GS」の文字が用いられていること(甲16,甲24),及び申立人が使用している商標「GS YUASA」(甲23,甲17)の構成中に「GS」の文字が含まれていることは認められるものの,1991年(平成3年)以後,国内で「GS」の文字のみからなる商標が使用されていることを示す証左は見いだせない(甲各号証,職権調査)。
また,「GS」の文字のみからなる商標が使用された商品の販売数,シェアなど販売実績を示す証左も見いだせない。
イ 上記アの事実からすれば,申立人は我が国において「GS」の文字のみからなる商標を1953年(昭和28年)頃から1990年(平成2年)頃まで継続して蓄電池に使用していたことが推認でき,また,現在においても申立人の関連会社の名称や略称の一部,申立人が使用している商標の語頭に「GS」の文字が用いられていること,及び近時の蓄電池市場における申立人のシェアが1位であることなどが認められることから,「GS」の文字のみからなる商標は,本件商標の登録出願の時ないし登録査定時はもとより現在においても,申立人の業務に係る商品(蓄電池)を表示するものとして需要者の間にある程度知られているものということができる。
しかしながら,1991年(平成3年)以降,国内において「GS」の文字のみからなる商標が使用されていることは確認できないし,該商標が使用された商品の販売実績も確認できないから,「GS」の文字のみからなる商標は,本件商標の登録出願の時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品(蓄電池)を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
ウ なお,申立人は,外国における商品カタログ,販促活動及び受賞歴などを述べるとともに,その証拠を提出し,「GS」商標が周知である旨主張しているが,仮にそれらが事実であるとしても,外国における事情によっては上記判断を覆し得ないから,申立人のかかる主張は採用できない。
エ したがって,「GS」の文字からなる引用商標は,いずれも本件商標の登録出願の時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第10号について
ア 引用商標の周知性
上記(1)のとおり,引用商標は,いずれも本件商標の登録出願の時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
イ 本件商標と引用商標の類否
(ア)本件商標は,上記1のとおり「iGS」の文字を標準文字で表してなり,該文字に相応し「アイジーエス」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
(イ)引用商標1は,「GS」の欧文字を別掲のとおりの態様で表してなり,該文字に相応し「ジーエス」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
(ウ)引用商標2は,上記2(2)のとおり「GS」の文字からなり,該文字に相応し「ジーエス」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
(エ)そこで,本件商標と引用商標の類否を検討すると,両者は,外観において,語頭の「i」の文字の有無という差異を有し,この差異が3文字と2文字という少ない文字構成からなる両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は大きく,相紛れるおそれのないものである。
次に,本件商標から生じる「アイジーエス」と引用商標から生じる「ジーエス」の称呼を比較すると,両者は,語頭における「アイ」の音の有無という差異を有し,この差異が6音と4音という短い音構成からなる両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく,両者をそれぞれ一連に称呼しても,かれこれ聞き誤るおそれのないものである。
さらに,観念においては,両商標は共に特定の観念を生じないものであるから,比較することができない。
そうすると,本件商標と引用商標は,外観,称呼において相紛れるおそれがなく,観念において比較できないものであるから,両者の外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
ウ 小括
上記アのとおり,引用商標はいずれも本件商標の登録出願の時及び登録査定時において申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,上記イのとおり,本件商標と引用商標は非類似の商標であるから,本件商標は,その申立てに係る指定商品第9類「電池」について,商標法第4条第1項第10号に該当するものといえない。
(3)商標法第4条第1項第11号について
上記(2)イのとおり,本件商標と引用商標1は非類似の商標というべきものである。
そうすると,本件商標の登録異議の申立てに係る指定商品第9類「電池」と引用商標1の指定商品は同一又は類似するものであるが,本件商標と引用商標1は非類似の商標であるから,本件商標は,その申立てに係る指定商品について,商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
(4)申立人の主張について
申立人は,引用商標は同人の業務に係る商品を表示するものとして著名であること,及び本件商標は小文字「i」と大文字「GS」に分離して看取され,「GS」の著名性を考慮すると「GS」が要部であることから,本件商標と引用商標は類似する旨主張する。
しかしながら,引用商標は,上記(1)のとおり本件商標の登録出願の時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
また,本件商標は,小文字と大文字で表されているが,その構成文字「iGS」は標準文字により,同じ書体,同じ大きさ,同じ間隔で外観上まとまりよく一体に表されており,本件商標全体から生じる「アイジーエス」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。
そして,本件商標の上記構成及び称呼からすれば,取引者,需要者は,本件商標の構成全体をもって,一体不可分のものとして認識し,把握するとみるのが相当である。
さらに,他に本件商標の構成中「GS」の文字部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるなど,該文字部分を分離抽出し他の商標と比較検討しなければならない事情も見いだせない。
したがって,申立人のかかる主張は採用できない。
(5)むすび
以上のとおり,本件商標は,その指定商品中,登録異議の申立てに係る指定商品第9類「電池」についての登録は,商標法第4条第1項第10号及び同第11号のいずれにも違反してされたものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲 引用商標1



異議決定日 2019-04-24 
出願番号 商願2017-164993(T2017-164993) 
審決分類 T 1 652・ 262- Y (W09)
T 1 652・ 25- Y (W09)
T 1 652・ 261- Y (W09)
T 1 652・ 263- Y (W09)
最終処分 維持  
前審関与審査官 安達 輝幸 
特許庁審判長 薩摩 純一
特許庁審判官 大森 友子
渡邉 あおい
登録日 2018-10-05 
登録番号 商標登録第6086268号(T6086268) 
権利者 住友電気工業株式会社
商標の称呼 アイジイエス 

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