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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W0914
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W0914
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W0914
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W0914
管理番号 1350847 
異議申立番号 異議2018-900139 
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-06-04 
確定日 2019-04-01 
異議申立件数
事件の表示 登録第6026109号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6026109号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第6026109号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成29年6月6日に登録出願,第9類「測定機械器具,眼鏡」及び第14類「貴金属,時計」を指定商品として,同30年2月5日に登録査定,同30年3月9日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は,以下の4件であり,いずれも現在,有効に存続しているものである。
1 登録第1717065号商標(以下「引用商標1」という。)は,「DECOR」の欧文字を横書きしてなり,昭和56年7月17日に登録出願,第23類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として,同59年9月26日に設定登録され,その後,平成7年2月27日,同16年8月3日及び同26年6月17日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。そして,指定商品については,平成16年9月8日に,第9類「眼鏡」及び第14類「時計」とする指定商品の書換登録がされたものである。
2 登録第1738235号商標(以下「引用商標2」という。)は,「DECOR」の欧文字及び「デコ-ル」の片仮名を上下二段に横書きしてなり,昭和56年7月29日に登録出願,第23類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として,同59年12月20日に設定登録され,その後,平成7年2月27日,同16年11月24日及び同26年12月24日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。そして,指定商品については,平成17年1月5日に,第9類「眼鏡」及び第14類「時計」とする指定商品の書換登録がされたものである。
3 登録第5161608号商標(以下「引用商標3」という。)は,「DECOR」の欧文字及び「デコ-ル」の片仮名を上下二段に横書きしてなり,平成19年9月14日に登録出願,第9類「加工ガラス(建築用のものを除く。),青写真複写機,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,パンチカードシステム機械,票数計算機,郵便切手のはり付けチェック装置,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,測定機械器具,電池,眼鏡,レコード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル」及び第14類「時計,身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,宝玉及びその模造品」を指定商品として,同20年8月22日に設定登録され,その後,同30年7月24日に商標権の存続期間の更新登録がなされたものである。そして,その指定商品中,第14類「身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,宝玉及びその模造品」については,商標登録の一部取消し審判により取り消すべき旨の審決がされ,平成28年8月18日にその確定審決の登録がされたものである。
4 登録第5903503号商標(以下「引用商標4」という。)は,「decor」の欧文字を標準文字により表してなり,平成28年2月29日に登録出願,第14類「身飾品,貴金属,宝玉及びその模造品」及び第18類「かばん類,袋物,愛玩動物用被服類,傘」を指定商品として,同年12月9日に設定登録されたものである。
以下,上記の引用商標1ないし引用商標4をまとめていうときは,「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,登録異議の申立ての理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第49号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 申立人及びその子会社であるセイコークロック株式会社(以下「申立人等」とする。)が製造・販売している商品に付されている引用商標が,時計業界において周知・著名性を獲得していることについて
申立人等は,置時計及び掛け時計をはじめとするクロック業界において,長年において高いシェアを誇る企業であり,ここ10数年にわたり,平均すると年100億円を超える売上高を有するわが国を代表する企業グループの企業といえる(甲6)。
そして引用商標である「DECOR」シリーズは,申立人等が長年にわたって製造,販売してきているクロック商品の主力ブランドであって,1981年(昭和56年)より製造販売を開始し,現在に至るまで,37年もの間継続して製造販売を行っている。この「DECOR」シリーズは,機械式のムーブメントと高い工芸的な装飾を凝らした商品や大型の商品も多く,価格帯も数十万円から数百万円に至るまでの最高級の商品に使用されている(甲7?甲21)。
このように,申立人等による長年による使用により「DECOR」シリーズは,置時計及び掛け時計の最高級ブランドとして取引者及び需要者において広く認知されるに至っており,また,最高級ブランドとして認知されているが故に取引者及び需要者における注目度は大きく,それらの商品が登場するたびに新聞や雑誌において広く紹介されている(甲22?甲35)。
また,例えば金箔の生産で著名な株式会社箔一の金沢箔の技法を取り入れた商品や有田焼の名窯「源右衛門」の磁器枠を組み合わせた商品等,他の著名な技法や商品を組み合わせた商品も多く取り扱われており,時計業界のみならず,貴金属や陶磁器における分野における需要者及び取引者においても広く認知されているといえる(甲36,甲37)。
さらに,三越ワールドウォッチフェア及び世界最大級の時計イベントであるバーゼルワールド2011等において,申立人等の「DECOR」商品が展示される等,国内外における取引者及び需要者においても広く認知されている(甲38?甲42)。
なお,申立人等の「DECOR」のカタログは,約2千店もの取扱店に配布され,各店舗の販売店員が需要者に販売の際に使用している。また,「DECOR」は最高級の時計とのこともあり,主たる百貨店や時計専門店において常設的又は各催事において展示され,来店される需要者に供覧している実情がある(甲43,甲44)。
このように「DECOR」は,時計などの取引分野における需要者及び取引者においては,高い知名度を有しており高級置時計及び掛け時計のシリーズ名称を特定する商標としての高い知名度を有している。
2 本件商標について
本件商標は,「mAG」と「DECOR」を2段に配してなる商標であるが,外観上,一部が欠けたような字体による「m」「A」「G」の文字を上段に配し,上段とは異なる字体及び大きさからなる「DECOR」の文字を下段に配した構成よりなる。
本件商標の構成中,上段の「mAG」と下段の「DECOR」の字体においては,一見して差異を有する態様を有するものであり,外観上,分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではない態様であるといえる。さらに,観念上も,本件商標の全体をもって一連の意味合いを表すような事情にはなく,むしろ,本件商標を構成する文字において,「DECOR」の文字部分は,申立人等が販売している商品に付されている商標として広く認識されている語である実情をも加えて,取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すると,本件商標は,これをその指定商品について使用した場合,「DECOR」の文字部分が要部として独立して認識されて,商品の出所が識別されることがあるといえる。
3 商標法第4条第1項第11号に該当することについて
本件商標は,上述のとおり,「DECOR」の文字部分が要部として認識され,該文字部分より「デコール」の称呼も生じる。
これに対し,引用商標は,いずれも「DECOR」及び「DECOR」と「デコール」の二段併記による構成を有する商標であり,その称呼は「デコール」である。
そうすると,本件商標と引用商標とは,外観上,「DECOR」の文字を有する点において共通にし,また,称呼上も,「デコール」の称呼を共通にするものであるから,本件商標をその指定商品に使用した場合に,取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すると,商品の出所について誤認混同されるおそれがある類似の商標であることは明白である。
以上により,本件商標は,引用商標と同一又は類似であって,その指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。
4 商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当することについて
(1)類似性の程度は,上述したとおり,本件商標から「DECOR」の文字部分が独立して要部として認識される態様であり,引用商標とは類似するものといえる。
(2)周知著名性については,上述のとおり,申立人等における長年の継続的使用及び宣伝広告活動などにより,商標「DECOR(デコール)」は申立人等における商標であるとして,本件商標に係る指定商品の分野における取引者及び需要者において広く認識されるに至った商標であることは明白である。
(3)本件商標に係る指定商品において「時計」はもとより「測定機械器具」においても,例えば温度計や湿度計と時計が一体となった商品が多数販売されている実情(甲46)からも,取引としての関連性の程度は高いといえる。また,古くから眼鏡や貴金属等の宝飾については,時計と共に一つの組合が設立されている等,同一業種として取り扱われている実情があり(甲47),販売経路として共通する商品といえる。実際,申立人のグループ企業の中には,本件商標に係る指定商品の中でも,眼鏡や貴金属をあしらった時計,システム機器などを扱う企業があり(甲48),申立人グループは事業の多角化にも積極的な企業といえる。このように,本件商標に係る商品については,商品「時計」を始め,申立人グループの事業に係る商品と密接な関連性を有する商品であることはこれらの実情からも明らかである。このように,本件商標に係る商品については,商品「時計」と密接な関連性を有する商品であることはこれらの実情からも明らかである。
さらに,本件商標に係る指定商品の需要者は,専門家ではなく一般的な需要者であって,高度な注意力を有するものではなく,簡易な印象により出所を認識していることから,これらの取引の実情を踏まえ,なんらかの経済的な関連性やシリーズブランドとしての認識により,出所の混同が生じるおそれがある。
以上により,本件商標は,申立人等の商標と出所の混同を生じるおそれのある商標であることは明白であり,商標法第4条第1項第10号又は同項第15号に該当する。
5 商標法第4条第1項第19号に該当することについて
引用商標は,上述のように申立人等の業務に係る商品を表示するものとして日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されており,また,本件商標権者は,申立人の子会社が販売する高級置時計や掛け時計と同様の置時計や掛け時計に本件商標と類似する商品を付して使用する等,不正の目的をもって使用している。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。
6 商標法第4条第1項第7号に該当することについて
本件商標権者は,過去において申立人等が取り扱う商品と近似した商品を多数販売しており,申立人等の商品にフリーライドした経緯を有する者であり,本件商標においても申立人等の商標の高い信用と著名性にあやかることを意図した社会的妥当性を欠く出願であることから,商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 商標権者の主張
本件商標権者は,異議申立ての理由について,平成30年8月30日付け上申書において,申立人の主張にはいずれも理由がなく,本件商標は商標法第4条第1項第7号,同項第10号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものではないから,本件商標の登録を維持すべきである旨を述べ,次のとおり主張している。
1 申立人の「本件商標と引用商標の類否について」の主張に対して
本件商標中の「mAG」の欧文字は,本件商標権者のハウスマークというべきもので,最初の登録は,平成8年3月19日出願,平成10年10月30日登録に係る第4206899号商標「図形/mAG」であり,長年にわたり継続して使用してきたものである。そして,近年,「mAG」のデザインをやや変更して本件商標のとおりの「mAG」を使用しているのであり,本件商標と同日に,第6026110号商標「mAG/Private」が登録された。
申立人は,本件商標の「DECOR」の文字部分が要部として認識され,該文字部分より「デコール」の称呼も生じ得るといえると主張しているが,本件商標の要部は「mAG」であり,「DECORE」の文字部分は「mAG」の文字部分より小さく書しているところから,本件商標からは,「マグ」の称呼及び「マグデコア」若しくは「マグデコール」の称呼が生じる。
そのうえ,「DECORE」の文字は,本来,「装飾(様式),装飾品,装飾様式,室内装飾」など,「装飾」という意味に関わるものであり,本件商標を「マグ商品の装飾」という観念が生じると考えることもでき,単に「装飾」の意味を有する引用商標とは観念において異なる。
よって,本件商標と引用商標とは,外観において相違することは明らかであり,称呼及び観念においても異なっている非類似の商標であり,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 申立人の「本件商標が第4条第1項第10号及び第15号に該当することについて」の主張に対して
申立人は,引用商標に係る「DECOR」シリーズは,1981年(昭和56年)より製造販売を開始し,現在に至るまで,37年もの間継続して製造販売を行っているということ,価格帯も数十万円から数百万円に至るまでの最高級品の商品に使用されている旨主張している。
しかし,昭和56年に製造販売を開始して直ちに周知性・著名性を獲得することは考えられず,いつの時点で周知性・著名性を獲得したのか,何ら主張立証はなされていない。
そのうえ,本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するというためには,引用商標が使用されており,かつ,周知・著名商標であると主張するだけでなく,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国における引用商標を使用した広告宣伝,販売数量,売上高及び市場占有率などについて明らかにしなければならないところ,そのような具体的な要件については全く明らかにされていない。
引用商標は,高額な最高級の商品に使用されているということが強調されているが,一般の需要者には高嶺の花といえるのであり,申立人商品の需要者層はどのような範囲であるのかの主張立証もない。
申立人は,引用商標の使用として,「DECOR」の商標の使用について述べているが,証拠方法として提出されたカタログ(甲7?甲20)をみると,「DECOR」のみの商標が時計の文字盤に使用されているのは見当たらず,ほとんどが,「SEIKO/DECOR」あるいは「DECOR/SEIKO」というように,「SEIKO」の商標と共に使用されているのであり,これでは,「DECOR」の文字のみの使用とはいえない。「SEIKO」の商標は世上広く知られているところから,申立人の使用は,「SEIKO」の「DECOR」という商標であり,「SEIKO」の時計の中のひとつのブランドであると認識するのであり,申立人の引用商標が周知・著名であるとは到底いえないものである。
すなわち,申立人が使用する商標が引用商標と異なっている以上,「DECOR」の文字部分が共通するとはいえ,「mAG/DECOR」と「SEIKO/DECOR」とは,外観において相違していることはもちろん,称呼及び観念においても相違していることは明らかである。
本件商標権者は,「mAG/DECOR」については,「マグデコア」の一連の称呼をもって取引をしているので,主として「マグデコア」の称呼が生じるものであるが,「マグデコール」の称呼が生じることを否定するものではない。
しかし,いずれにしても,申立人の使用商標から生じる「セイコーデコール」の称呼とは相違していることは明らかである。
よって,本件商標は,申立人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれは全くなく,商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するものではない。
3 申立人の「本件商標が第4条第1項第19号に該当することについて」の主張に対して
申立人は,「DECOR」の周知・著名性を強調しているが,前述のとおり,申立人が使用している商標は「DECOR」のみではなく,ほとんど「SEIKO」の商標と共に使用されているところから,引用商標の使用とはいえず,よって,引用商標が周知・著名性を有しているとは到底いえない。
すなわち,引用商標は周知・著名商標ではないこと,本件商標と引用商標とは外観,称呼及び観念において非類似の商標であることから,本件商標は,商標法第4条第1項第19号には該当しない。また,本件商標は,本件商標権者の主要商標である「mAG」との組み合わせで登録を有し,かつ,使用していることから,何ら不正の目的をもって使用をするものではない。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当するものではない。
4 申立人の「本件商標が第4条第1項第7号に該当することについて」の主張に対して
本件商標は,非道徳的,卑わい,差別的,きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字,図形,記号などに該当するものではないことは明らかである。
また,本件商標は,商標登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあるなど,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合などに該当しないことは明らかである。
よって,引用商標のみが周知・著名性を有しているものではなく,使用商標と異なっているにもかかわらず,本件商標権者の不正を主張している申立人の主張は不当であり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号にも該当するものではない。

第5 当審における取消理由
当審において,本件商標権者に対して,「本件商標と引用商標とは,類似する商標であって,かつ,本件商標の指定商品は,引用商標の指定商品と同一又は類似する商品であるから,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。」旨の取消理由を平成30年11月15日付けで通知した。

第6 本件商標権者の意見
審判長は,上記第5の取消理由を通知し,期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが,本件商標権者は,何ら意見を述べていない。

第7 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は,別掲のとおり,デザイン化された「mAG」の欧文字と,やや丸みを帯びた「DECOR」の欧文字を上下二段に横書きした構成からなるところ,上段の「mAG」の文字部分と,下段にやや小さな文字で表された「DECOR」の文字部分とは,文字の大きさ及び書体が相違し,視覚上分離して看取されるばかりでなく,構成全体として特定の既成観念を有する一連の熟語として親しまれているといった観念的なつながりを見いだすこともできない。
そうすると,本件商標の構成中の「mAG」又は「DECOR」の文字は,分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえないから,それぞれの文字部分が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものである。
したがって,本件商標は,「mAG」又は「DECOR」の文字部分を要部として抽出し,他の商標と比較することが許されるというべきである。
そうすると,本件商標は,「mAG」と「DECOR」の文字部分全体を英語風に発音した「マグデコール」又は「エムエイジイデコール」の一連の称呼のほか,要部である「mAG」又は「DECOR」の文字部分から,単に「マグ」若しくは「エムエイジイ」又は「デコール」の称呼をも生ずるものと判断するのが相当である。
そして,本件商標は,その要部である「DECOR」の文字部分が,「背景,舞台装置」を意味する語(コンサイスカタカナ語辞典 株式会社三省堂)であることから,「背景,舞台装置」の観念を生じるものである。
(2)引用商標について
引用商標は,上記第2のとおり,「DECOR」若しくは「decor」の欧文字からなる又は「DECOR」の欧文字と「デコール」の片仮名を上下二段に横書きした構成からなるところ,「DECOR」又は「decor」の欧文字は,本件商標とそのつづりを同じくするものであり,「デコール」の片仮名は欧文字の読みを表したものと認められるから,「デコール」の称呼及び「背景,舞台装置」の観念を生じるものであるといえる。
(3)本件商標と引用商標との比較
本件商標の要部である「DECOR」と引用商標とを比較すると,外観については,本件商標の要部である「DECOR」の文字部分と引用商標の「DECOR」又は「decor」の欧文字部分とは,書体又は大文字と小文字についての差異があるとしても,その文字つづりを共通にするものであるから,両者は,外観上,きわめて近似した印象を与えるものである。そして,両者は,「デコール」の称呼及び「背景,舞台装置」の観念を共通にするものである。
してみれば,本件商標の要部である「DECOR」と引用商標とは,外観においてきわめて近似するものであって,称呼及び観念を共通にするものであるから,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合的に考察すれば,両者は,相紛れるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。
したがって,本件商標と引用商標とは,互いに類似する商標といえる。
(4)本件商標と引用商標の指定商品の類否
本件商標の指定商品及び引用商標の指定商品は,それぞれ,上記第1及び第2のとおりであるところ,本件商標の指定商品中の第9類「測定機械器具」は,引用商標3の指定商品中の第9類「測定機械器具」と同一の商品であり,本件商標の指定商品中の第9類「眼鏡」は,引用商標2の指定商品中の第9類「眼鏡」と同一の商品である。
また,本件商標の指定商品中の第14類「貴金属」は,引用商標4の指定商品中の第14類「貴金属」と同一の商品であり,本件商標の指定商品中の第14類「時計」は,引用商標1及び引用商標2の指定商品中の第14類「時計」と同一の商品である。
(5)まとめ
以上のとおり,本件商標は,その商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標である引用商標と類似する商標であって,引用商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当し,その登録は同条第1項の規定に違反してされたものであるから,その他の登録異議の申立ての理由について判断するまでもなく,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲 本件商標



異議決定日 2019-02-21 
出願番号 商願2017-75466(T2017-75466) 
審決分類 T 1 651・ 264- Z (W0914)
T 1 651・ 262- Z (W0914)
T 1 651・ 263- Z (W0914)
T 1 651・ 261- Z (W0914)
最終処分 取消  
前審関与審査官 小林 裕子 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 薩摩 純一
大森 友子
登録日 2018-03-09 
登録番号 商標登録第6026109号(T6026109) 
権利者 ノア精密株式会社
商標の称呼 マグデコール、マグ、エムエイジイ、デコール 
代理人 篠田 貴子 
代理人 林 栄二 
代理人 小野寺 隆 
代理人 特許業務法人東京アルパ特許事務所 

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