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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効としない X03
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X03
審判 全部無効 称呼類似 無効としない X03
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない X03
審判 全部無効 外観類似 無効としない X03
管理番号 1350787 
審判番号 無効2017-890034 
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-06-01 
確定日 2019-04-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第5498434号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5498434号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成22年9月27日に登録出願、第3類「化粧品,せっけん類」を指定商品として、同24年4月20日に登録査定、同年6月1日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由において引用する商標は、以下の1ないし6に示すとおりである。
1 別掲2に示す商標(以下「引用商標1」という。)は、請求人が1963年から自己の業務に係る商品(香水、アロマキャンドル、化粧品、せっけん類)に一貫して使用してきたと主張する商標である。
2 登録第4598993号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、平成13年9月20日に登録出願、第3類「せっけん類,部屋用芳香剤その他の香料類,オーデコロンその他の化粧水,その他の化粧品」及び第4類「芳香性を有するろうそく,その他のろうそく」を指定商品として、同14年8月23日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
3 国際登録第953461号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲4のとおりの構成からなり、2008年1月15日にEuropian Communityにおいてした商標の登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、2008年(平成20年)2月5日に国際商標登録出願、第3類「Bleaching preparations and other substances for laundry use; cleaning, polishing, scouring and abrasive preparations; non-medicated toilet preparations; preparations and substances for the conditioning, care and appearance of the skin, body, face, eyes, hair, scalp, teeth and nails; soaps, personal cleansing preparations, shower gels, bath gels and bath cosmetic preparations; perfumery, eau de parfum, colognes and toilet waters; deodorant preparations for personal use, anti-perspirants, cosmetics, hair colourants, eye cosmetics, nail cosmetics, lip cosmetics, make up removers, tissues impregnated with cosmetic preparations; shampoos, hair conditioners, preparations for the hair, hair lotions; dentifrices; sun tanning preparations, sun-screening preparations; shaving preparations, after shave and pre shave lotions and oils, depilatory preparations; essential oils, oils for toilet purposes; pomanders, potpourris, fragranced sachets for drawers, room fragrance, incense, plant extracts for use as aromatics in cosmetics.」を指定商品として、平成21年5月22日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
4 国際登録第990558号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲5のとおりの構成からなり、2008年11月13日にEuropian Communityにおいてした商標の登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、2008年(平成20年)12月16日に国際商標登録出願、第3類「Bleaching preparations and other substances for laundry use; cleaning, polishing, scouring and abrasive preparations; non-medicated toilet preparations; preparations and substances for the conditioning, care and appearance of the skin, body, face, eyes, hair, scalp, teeth and nails; soaps, personal cleansing preparations, shower gels, bath gels and bath cosmetic preparations; perfumery, eau de parfum, colognes and toilet waters; deodorant preparations for personal use, anti-perspirants, cosmetics, hair colourants, eye cosmetics, nail cosmetics, lip cosmetics, make up removers, tissues impregnated with cosmetic preparations; shampoos, hair conditioners, preparations for the hair, hair lotions; dentifrices; sun tanning preparations, sun-screening preparations; shaving preparations, after shave and pre shave lotions and oils, depilatory preparations; essential oils, oils for toilet purposes; pomanders, potpourris, fragranced sachets for drawers, room fragrance, incense, plant extracts for use as aromatics in cosmetics.」を指定商品として、平成22年5月28日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
5 国際登録第990559号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲6のとおりの構成からなり、2008年11月13日にEuropian Communityにおいてした商標の登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、2008年(平成20年)12月16日に国際商標登録出願、第3類「Bleaching preparations and other substances for laundry use; cleaning, polishing, scouring and abrasive preparations; non-medicated toilet preparations; preparations and substances for the conditioning, care and appearance of the skin, body, face, eyes, hair, scalp, teeth and nails; soaps, personal cleansing preparations, shower gels, bath gels and bath cosmetic preparations; perfumery, eau de parfum, colognes and toilet waters; deodorant preparations for personal use, anti-perspirants, cosmetics, hair colourants, eye cosmetics, nail cosmetics, lip cosmetics, make up removers, tissues impregnated with cosmetic preparations; shampoos, hair conditioners, preparations for the hair, hair lotions; dentifrices; sun tanning preparations, sun-screening preparations; shaving preparations, after shave and pre shave lotions and oils, depilatory preparations; essential oils, oils for toilet purposes; pomanders, potpourris, fragranced sachets for drawers, room fragrance, incense, plant extracts for use as aromatics in cosmetics.」を指定商品として、平成22年5月28日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
6 国際登録第990560号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲7のとおりの構成からなり、2008年11月13日にEuropian Communityにおいてした商標の登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、2008年(平成20年)12月16日に国際商標登録出願、第3類「Bleaching preparations and other substances for laundry use; cleaning, polishing, scouring and abrasive preparations; non-medicated toilet preparations; preparations and substances for the conditioning, care and appearance of the skin, body, face, eyes, hair, scalp, teeth and nails; soaps, personal cleansing preparations, shower gels, bath gels and bath cosmetic preparations; perfumery, eau de parfum, colognes and toilet waters; deodorant preparations for personal use, anti-perspirants, cosmetics, hair colourants, eye cosmetics, nail cosmetics, lip cosmetics, make up removers, tissues impregnated with cosmetic preparations; shampoos, hair conditioners, preparations for the hair, hair lotions; dentifrices; sun tanning preparations, sun-screening preparations; shaving preparations, after shave and pre shave lotions and oils, depilatory preparations; essential oils, oils for toilet purposes; pomanders, potpourris, fragranced sachets for drawers, room fragrance, incense, plant extracts for use as aromatics in cosmetics.」を指定商品として、平成22年5月28日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
以下、上記引用商標1ないし引用商標6をまとめて「引用商標」という場合がある。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第28号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 無効事由
本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号に該当するものであるから、その登録は、同法第46条第1項第1号により、無効とされるべきものである。
2 無効原因
(1)本件商標
本件商標は、細線と太線からなる二重線で描いた大きな縦長の楕円の内側に、三重の細線で描いた小さな縦長の同心の楕円を配置して楕円状のリングを描き、そのリング上に「YOUR SKIN CAN BE YOUR FORTUNE・1970・YOUR SKIN CAN BE YOUR FORTUNE・1970・」からなる小さな文字を記載した楕円状リングの図形と、当該楕円状リングの内径部分に、「1970」からなる文字の背景に花のシルエットを配した図形と「Dr.Linn Sakurai」からなる文字を二段で表してなる文字とを配してなり、第3類「化粧品,せっけん類」を指定商品とする商標である(甲1)。
(2)引用商標
ア 引用商標1は、別掲2のとおり、細線と太線からなる二重線で描いた大きな縦長の楕円の内側に、太線と細線からなる二重線で描いた小さな縦長の同心の楕円を配置して楕円状のリングを描き、そのリング上に「diptyque 34 boulevard saint germain paris5e 34 boulevard saint germain」からなる小さな文字を記載した楕円状リングの図形からなる商標であり、請求人が1963年から自己の業務に係る商品(香水、アロマキャンドル、化粧品、せっけん類)に一貫して使用してきた商標である。
イ 引用商標2は、別掲3のとおり、細線と太線からなる二重線で描いた大きな縦長の楕円の内側に、太線と細線からなる二重線で小さな楕円を配置して楕円状のリングを描き、そのリングの上部に「diptyque」からなる文字を記載した楕円状リングの図形からなる商標であって、第3類「せっけん類,部屋用芳香剤その他の香料類,オーデコロンその他の化粧水,その他の化粧品」及び第4類「芳香性を有するろうそく,その他のろうそく」を指定商品とする商標である。
ウ 引用商標3は、別掲4のとおり、引用商標1と同じ構成の楕円状リングの内径部分にハンモックの上に横たわる女性が景色を鑑賞する姿と「L’EAU de NEROLI」からなる文字とを記載した商標であって、第3類「soaps; cosmetic(せっけん、化粧品)」等を指定商品とする商標である。
エ 引用商標4は、別掲5のとおり、引用商標1と同じ構成の楕円状リングの内径部分にアイリスの花と「H」からなる文字とを記載した商標であって、第3類「soaps; cosmetic(せっけん、化粧品)」等を指定商品とする商標である。
オ 引用商標5は、別掲6のとおり、引用商標1と同じ構成の楕円状リングの内径部分にバラの花と「C」からなる文字とを記載した商標であって、第3類「soaps; cosmetic(せっけん、化粧品)」等を指定商品とする商標である。
カ 引用商標6は、別掲7のとおり、引用商標1と同じ構成の楕円状リングの内径部分に数種類の樹木と山並みの手前の砂漠を歩くキャラバン隊の姿とを描き、空にあたる空間に「L’EAU de TAROCCO」からなる文字を記載した商標であって、第3類「soaps; cosmetic(せっけん、化粧品)」等を指定商品とする商標である。
(3)請求人の商標の周知性について
ア 請求人は、1961年にフランス国のパリにおいて、Christiane Gautrot(クリスチャンヌ・ゴトロ)、Yves Coueslant(イヴ・クエロン)、Desmond Knox-Leet(デスモンド・ノックス=リット)の3人のアーティストによって設立された。
請求人は、その設立以来、我が国を含む世界各国において、アロマキャンドル、香水、化粧品、せっけん類等の数々の商品を販売してきており、ファッション業界、高級ブランド業界において世界的に高い評価を得ている。
イ 請求人の主要な商品は、化粧品、香水、アロマキャンドル等のフレグランス関連商品であるが、その設立当初においては、デザイン性の高い生地のデザインを手掛けていた(甲3の1)。
そして、甲第3号証の2にも示されるとおり、楕円形のモチーフは、請求人を象徴するビジュアル・イメージとなり、やがて請求人のロゴ(引用商標1)に使われるようになった。
引用商標1が請求人の商品に使用されるようになったのは、3種類のアロマキャンドルの販売が開始された1963年であり、当該アロマキャンドルは、請求人のフレグランス製品の起源として位置付けられる商品となり、後に販売された請求人の商品には、引用商標1の楕円状リングのモチーフが共通して使用されてきた。
ウ 甲第4号証は、請求人の商品を購入することができる通信販売サイトであり、その商品の一覧からも明らかなとおり、各商品に係る楕円状リングの内径部分のデザインは商品ごとで異なるが、引用商標1が共通して使用されていることが分かる。
エ 上述したように、引用商標1は、請求人の商品であることを表す商標として、長期間変更されることなく使用され続けてきた。このような長期間にわたる使用により、引用商標1は、香水、アロマキャンドル、化粧品、せっけん類の取引者、需要者の間で、請求人のいわゆるハウスマークとして認知され、周知に至っている。
オ 請求人の商品は、我が国においては、「株式会社グローバルプロダクトプランニング」(以下「グローバルプロダクトプランニング」という。)を通じて販売を開始し、2009年2月に「Diptyque Japan株式会社」(以下「Diptyque Japan」という。)が設立されてからは、輸入代理店ルートによる販売のほか、独自に販売がされてきた。
その後、請求人は、2013年12月に、東京の青山に路面店(旗艦店)をオープンさせ(甲5の1?4)、現在では、上記の店舗を含む全国76店舗において、引用商標を使用した商品の販売を行っている(甲6)。
カ 甲第5号証の1及び2の記事からも明らかなとおり、請求人は、我が国において、上記旗艦店のオープンの10年前から商品の販売を開始しており、その商品は、我が国においても人気を博している。請求人が2009年にDiptyque Japanを設立したのも、我が国の取引者、需要者において、請求人の商品の周知度が増し、本格的な販売対応を行う必要が生じたからである。
したがって、引用商標1は、本件商標の登録出願日である平成22年9月27日には、外国においてのみならず、我が国においても周知となっていたということができる。
(4)商標法第4条第1項第10号について
ア 商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。
また、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、原則として許されない。一方、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などには、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは許されるものである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。
イ 本件商標と引用商標1とは、それぞれ、上記(1)及び(2)アのとおりの構成からなるところ、本件商標の構成中の二重線、三重線で描かれた楕円状のリングは、引用商標1と比較すると、リング内側を構成する線の種類に若干の差異はあるものの、引用商標1とほぼ同一形状である。
すなわち、本件商標と引用商標1の構成中の楕円状リングの外径に着目すると、本件商標のリングの縦横の比が1:1.2であるのに対し、引用商標1のリングの縦横の比は1:1.22であり、両者は、ほぼ同一の比率で構成されている。また、その両者の形状は、いずれも上部と底部、左右の側面の各中央の位置で直線又は直線に近いゆるやかな曲線を成しており、略長方形に近い楕円形で構成されている。さらに、両者は、大小2つの楕円で構成されたリング状の空間に、その楕円を囲むように小さい欧文字を時計回りに記載した外観も極めて近似するものである。
ウ 引用商標1の構成中の楕円状リングの内径部分が空洞となっているのに対し、本件商標の構成中の楕円状リングの内径部分には、「1970」や「Dr.Linn Sakurai」の文字等といったいくつかの構成要素が存在するが、本件商標と引用商標1の類否判断においては、本件商標におけるこれらの構成要素は、次の理由により、分離され、要部を構成しないものとして観察されるべきである。
すなわち、請求人は、長年にわたり、「香水、化粧品、せっけん類」について、引用商標を含む多くの商標を使用してきており、特に、引用商標1は、請求人の使用に係る商標において共通して使用してきたモチーフであって、本件商標の登録出願日(平成22年9月27日)には周知の商標となっていたものである。
そして、請求人が引用商標1の構成中の楕円状リングの内径部分のデザインのみを変化させ、ハウスマークのように使用することにより引用商標1の周知性を獲得してきた経緯に鑑みれば、引用商標1と同一又は類似の構成要素を有する商標の要部は、その楕円状リングの図形部分である。
そうすると、被請求人が請求人の商品と同一又は類似する商品である「香水、化粧品、せっけん類」について本件商標を使用すれば、本件商標に接した取引者、需要者は、おのずと引用商標1と近似した楕円状リングの図形を本件商標の要部として把握することとなる。
このように、本件商標の構成中、出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分は、楕円状リングの部分であり、当該楕円状リングの内径部分にある構成要素は、相対的に出所識別標識としての機能を果たさないものとなる。
したがって、本件商標の構成中の楕円状リングの内径部分に上記の構成要素があり、仮に、その構成要素に識別力を有するものが存在したとしても、当該構成要素は、分離されて要部を構成しないものとして判断されるべきである。
エ 以上のとおり、本件商標は、請求人が「香水、化粧品、せっけん類」に長年使用し、周知性を獲得してきた引用商標1と類似する関係にあるため、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第11号について
ア 引用商標は、請求人により、「香水、化粧品、せっけん類」について長年使用され、我が国を含む世界各国において、請求人の商品であることを表す商標として周知、著名に至っている。
特に、引用商標2ないし引用商標6の構成において共通する楕円状リングの図形部分は、請求人の商品のいずれにも共通して使用され、請求人のハウスマークとして取引者、需要者の間に広く認識されているという状況がある。
そうすると、「香水、化粧品、せっけん類」の商品分野においては、引用商標2ないし引用商標6の構成において共通する楕円状リングの図形が、出所識別標識として強く支配的な印象を与えることとなる。
したがって、本件商標と引用商標2ないし引用商標6との類否判断においては、その商標を構成する要素から楕円状リングの図形部分を抽出し、当該図形部分だけを比較して商標そのものの類否を判断することが許されるべきである。
イ 本件商標と引用商標2ないし引用商標6との関係
(ア)引用商標2ないし引用商標6は、それぞれ、上記(2)イないしカのとおりの構成からなり、その構成中の楕円状リングの図形部分は、いずれの商標においても共通している。
(イ)本件商標の構成中の楕円状リングの形状と引用商標2ないし引用商標6の構成中の楕円状リングの形状は、その縦横の構成比、略長方形に近い楕円形状、楕円を描く太線や細線の種類等の観点において極めて近似している。
(ウ)本件商標の構成中の楕円状リングの図形部分に記載された欧文字は「YOUR SKIN CAN BE YOUR FORTUNE・1970・YOUR SKIN CAN BE YOUR FORTUNE・1970・」であるのに対し、引用商標3ないし引用商標6の構成中の楕円状リングの図形部分に記載された欧文字は「diptyque 34 boulevard saint germain paris5e 34 boulevard saint germain」であり、両者は、異なっている。
しかし、上記各欧文字は、極めて小さく、楕円を囲うように記載されているものであって、商標に接した者に読まれることを意図して記載されたものではないことは明らかである。そして、このような文字の羅列は、一定の観念、称呼を生じさせるものではなく、「欧文字で構成された模様」として認識されるものである。
したがって、本件商標と引用商標3ないし引用商標6とにおいて、それぞれの構成中の楕円状リングの図形部分に記載された欧文字が異なるものであったとしても、称呼及び観念上、両商標の類否判断に影響を与えるものではなく、両商標は、欧文字で構成された模様を内包する略長方形に近い楕円の図形という点において共通し、互いに類似する商標であるということができる。
ウ 以上のとおり、本件商標は、引用商標2ないし引用商標6と類似の関係にあるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(6)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標の指定商品と請求人の商品との関係
請求人は、「香水、化粧品、せっけん類」の商品以外に、「アロマキャンドル(芳香性を有するろうそく)」にも引用商標を使用してきた。
請求人は、主に高級なフレグランス関連の商品の開発及び販売に注力してきており、その主たる需要者は、30代以上の女性であるところ、その女性は、美容やファッションといった特定の分野のみならず、食やインテリア等といった総合的なライフスタイル自体に高い関心を有する傾向があり、特に、アロマキャンドル、アロマオイル、ルームフレグランス等の商品は、香水等と並んで「香り」に関心をもつ女性にも広く受け入れられている。
このような市場の状況に鑑みれば、請求人が引用商標を使用する「アロマキャンドル(芳香性を有するろうそく)」の需要者層と本件商標の指定商品である「化粧品,せっけん類」の需要者層とは共通するといえ、両商品は、その品質や用途及び需要者を共通にする関連性の高い商品であるということができる。
イ 本件商標の使用に係る商品と引用商標の使用に係る商品との混同の可能性
上記(3)ないし(5)の各項において述べてきたように、引用商標は、高い周知性を有しており、本件商標と類似する関係にある。
このような状況において、被請求人によって本件商標がその指定商品について使用されることになれば、取引者、需要者において、その商品が請求人の商品であるか、請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるとして混同を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 平成29年8月1日付け上申書
(1)請求人の周知性について
ア 請求人は、1963年にアロマキャンドルを開発、販売してから、香水、アロマキャンドル、化粧品、せっけん類等のフレグランス関連商品について独自のブランドとしての地位を確立してきた(甲7)。
イ 請求人が店舗をフランスのパリに構えた1961年当時、フランスにおいては、「フレグランス」を主題とする市場は確立されておらず、英国製のパフュームが輸入され、販売されている程度であった。このような中、請求人は、オリジナルの香りを開発し、初のオードトワレである「L’Eau」の販売を開始し、その開発した香水を「ユニセックス(男女兼用)」という新しい概念で需要者に提案し、斬新な発想とその高品質な商品の販売で香水という新たな市場を開拓していった。
請求人は、上記「L’Eau」をきっかけに、フレグランス関連商品のブランドとしての地位を確立していくこととなった(甲8の1及び2)。
ウ 請求人がフレグランス業界において独特な存在感を示していることは、「香水」をテーマとした書籍の目次において、「ディオール」、「ゲラン」、「シャネル」等の著名な化粧品ブランドとは別に、「先駆者」として位置付けられていることからも明らかである。
そして、新しい概念や発想によって積極的に斬新な提案を行い続ける請求人の姿勢は、現在でも健在であり、例えば、2011年に販売が開始された砂時計型のディフューザーや2013年に発売された電気式芳香器は、これまでのインセンススティックや家庭用のアロマディフューザーを時代遅れのものにするといわれている(甲7)。
エ シャネル、ゲラン等のフランスの著名な香水メゾンのコンサルタントも務めたヴェルサイユ香水学校教授のエリザベット・ド・フェドー氏も、同氏が請求人の歴史についてまとめた「DIPTYQUE」なる書籍(2007年発表)において、請求人の「独自性」、「斬新さ」、「高品質へのこだわり」を繰り返し述べ、請求人をフランスの香水の歴史における特別な存在であると認めている(甲9の1)。
このように、請求人は、化粧品や香水の分野において、単に長い歴史を有しているというだけではなく、常に新しい発想による提案や斬新な商品の開発を行うという改革者としての存在感も大きく、請求人のブランド「Diptyque」には、単なる香水の一ブランドといったイメージを超えた、その商品の品質の高さ、デザイン性の高さ、独創性、斬新さといった独特のイメージが蓄積されている。
なお、上記書籍の巻末には、請求人の商品に対するフランスの著名人によるコメントが収録されており(甲9の2)、当該コメントを寄せたデザイナー、俳優、芸術家の顔ぶれは、ファッション、美容、映画、アートの業界において活躍する第一人者ばかりである(甲9の3)。
オ 以上のとおり、請求人は、遅くとも上記書籍が出版された2007年には、フランスにおいて周知、著名に至っているということができる。
(2)海外における引用商標の周知性について
ア 上述のとおり、請求人は、1963年に販売を開始したアロマキャンドルに引用商標1を使用し、それ以降、継続して香水、アロマキャンドル、化粧品、せっけん類等に引用商標1を使用している。そして、引用商標1を構成する楕円状リングの内径部分には、それぞれの商品ごとに異なる文字や図形が配置されているが、引用商標1は、変わらずに現在まで共通して使用され続けている。
イ 引用商標1は、請求人の商標として、請求人が提案する独自性、斬新さ、高品質なイメージと結びつき、取引者、需要者において周知、著名に至っている。この点については、在日フランス商工会議所が、引用商標1について、平成22年(2010年)よりも前に、フランス国内において、「化粧品、香水及びアロマキャンドル」の分野で周知、著名であったことを証明している(甲10)。
ウ 以上によれば、引用商標1は、本件商標の登録出願日である平成22年(2010年)9月27日には、フランスにおいて周知、著名であったということができる。
なお、請求人は、フランスのみならず、2002年頃からは英国や米国を始めとする欧米諸国にも店舗を拡大し、2004年には、米国と英国が請求人の世界における総売上の中で大きな比率を占めるまでになった(甲9の1、57ページ)。そして、現在では、請求人は、世界各国において商品を販売しており、引用商標1は、世界各国において、請求人の商標として周知、著名な商標に至っている。
(3)我が国における請求人ブランドへの注目について
ア 請求人が著名な化粧品及び香水等のフレグランス商品ブランドであるという事実は、早くから我が国の取引者、需要者において知られていた。
例えば、請求人の商品は、我が国でも話題となった海外連続ドラマ番組の「Sex and the City」の中において、主人公の寝室のアイテムとして使用され、注目を集めている。
上記番組は、世界中の女性の間で人気となった連続ドラマであり、我が国では2000年頃から放送され、その後、何度も再放送されている。ドラマの中の登場人物の生き方やファッションに憧れた視聴者も数多くおり、ドラマに登場したファッションやインテリアをお手本とする現象も発生した。特に、ドラマの主人公であるキャリー・ブラッドショー(サラ・ジェシカ・パーカー)が着用した服やアクセサリーには大きな関心が集まったといわれている(甲11の1?3)。
そして、甲第12号証の1及び2は、上記番組の中に登場した請求人の商品が使用されたシーンのキャプチャー画面である。また、当該番組の放送が完了した2004年に発売されたドラマのガイドブック(甲11の4)では、請求人の商品が飾られた主人公の部屋の写真も掲載されている。
上記番組において、請求人の商品(アロマキャンドル)が主人公の部屋で使用されているシーンは、我が国においても注目を集め、そのブランド名について話題となっていた(甲13の1及び2)。
イ フランスやパリの旅行ガイドブックには、請求人の店舗や商品が、パリのおすすめのショップとして、数多く取り上げられている。
早いものであれば、請求人のパリの店舗は、2001年5月に発行されたガイドブックにも掲載されており(甲14の1)、2008年から2010年頃にかけて発行されたガイドブックには、引用商標を使用した商品の写真も一緒に掲載され、請求人の商品及び店舗が、お洒落な女性向けの商品として紹介されている(甲14の2?5)。
旅行の目的は、名所を訪れたり、その土地の名品を入手したりして、その旅行先の歴史や文化を堪能することにある。旅行ガイドブックは、旅行先における短い滞在期間で効率良く名所巡りや名品を入手できるように、厳選された情報を掲載しているものであるから、請求人の商品がガイドブックに掲載されている事実は、これらのガイドブックの発行時において、我が国の取引者、需要者が、請求人の商品をフランスの名品であると認識していたということを意味する。
なお、「地球の歩き方」(甲14の1、3及び5)のシリーズは、年間800万部発行され、我が国における売上数の1位を誇るガイドブックであり、また、「ことりっぷ」(甲14の4)のシリーズは、累計発行部数が1,000万部を超えた女性向けの人気ガイドブックである(甲15の1及び2)。
ウ 以上によれば、請求人及び請求人の商品は、2010年頃には我が国の取引者、需要者に「パリの周知なフレグランスブランド」として広く知られており、注目を集めていたということができる。
(4)我が国における引用商標の使用について
ア 請求人は、遅くとも2002年には我が国において、引用商標1を使用した商品を販売していた。当時は、特定の販売業者を請求人の輸入代理店や販売代理店とする契約はなかったものの、請求人は、我が国において、次に述べる売上げを計上している。
すなわち、請求人が保管する販売実績の記録(甲16の1)によると、2002年度の売上げは、191,176.77ユーロ(約22,570,329円)(1ユーロを118.06円で換算)、2003年度の売上げは、408,176.78ユーロ(約53,809,944円)(1ユーロを131.83円で換算)、2004年度の売上げは、493,169.39ユーロ(約66,281,966円)(1ユーロを134.40円で換算)となっており、当時から我が国には相当数の商品が流通していたことが分かる。
なお、上記販売実績の記録(甲16の1)をみると、当時から請求人の商品が世界数十か国で販売されていたことが示されている。
イ 請求人は、2005年8月に、グローバルプロダクトプランニング(東京都渋谷区在)と販売代理店契約を締結し、請求人の商品の我が国への商品輸出を促進した(甲17)。
なお、請求人の商品は、「ユナイテッドアローズ」、「TOMORROWLAND」等の有名アパレルショップ、全国の百貨店等においても販売されていた(甲6)。
ウ 請求人は、2009年に我が国において、Diptyque Japanを設立し、請求人自ら本格的な日本市場への進出を果たしており、請求人の商品の我が国における流通量は、更に拡大した。
すなわち、2008年ないし2017年の請求人の我が国における売上高の記録(甲16の2)によれば、請求人は、2008年度に2億6,590万円を売り上げた後も売上高を順調に伸ばしており、本件商標が登録出願された2010年度の売上高は、2億3,245万円であって、2002年度の売上高の約10倍に拡大している。
エ 甲第4号証においても示したように、請求人の商品の多くには、引用商標1が付されており、このことは、請求人の商品を掲載した雑誌やインターネットウェブサイト記事の抜粋を2008年から年度ごとにまとめたもの(甲18?甲27)からも明らかである。
上記資料からも明らかなとおり、請求人の商品(香水、アロマキャンドル、化粧品、せっけん類等)は、本件商標の登録出願日以前に、20代から50代をターゲットとした全国規模の女性誌及び男性誌に数多く掲載されており、その掲載の量からしても、多くの取引者、需要者が引用商標1に接しているということが分かる。
また、請求人の商品の雑誌への掲載量は、2010年度以降も毎年増えている。これは、我が国における請求人の商品への注目が長期にわたり維持されているということであり、請求人の商品及びブランドへの信用は、一時的な流行に終わるものではなかったということを意味している。
上記した今日に至る請求人のブランドに対する信用度の高さや売上高の変遷からしても、引用商標1に蓄積された信頼性と周知、著名性は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、継続して高く維持されていたということができる。
(5)請求人が無効審判の利害関係人である理由
請求人は、引用商標の商標権者であり、かつ、引用商標の使用を行うものである。そして、本件商標は引用商標と類似するものであるから、請求人が本件無効審判を請求することについて利害関係があることは明らかである。
また、請求人の株主グループ内の別法人である「Manzanita Capital UK LLP」は、被請求人に対し、本件商標の使用の差止めを求める2017年5月8日付け警告書(甲28の1)を送付し、被請求人から同月18日付け回答書(甲28の2)を得ているが、当該警告書によっても被請求人の本件商標の使用差止めに対する理解が得られなかったことから、請求人は、自らが本件無効審判に関して利害関係があることを示す資料として、当該警告書及び回答書を提出する。
4 平成29年12月4日付け審判事件弁駁書
(1)本件商標と引用商標との類否について
ア 本件商標は、その内径部分の外側に「YOUR SKIN CAN BE YOUR FORTUNE・1970・YOUR SKIN CAN BE YOUR FORTUNE・1970」からなる小さな文字が記載され、その内径部分に更に小さな文字で「YOUR SKIN CAN BE YOUR FORTUNE・YOUR SKIN CAN BE YOUR FORTUNE」、「Dr.Linn Sakurai」及び「1970」からなる文字が記載されている。
他方、引用商標2を除く引用商標には、その内径部分の外側に「diptyque 34 boulevard saint germain paris5e 34 boulevard saint germain」からなる小さな文字が記載され、その内径部分に「L’EAU NEROLI」、「L’EAU de TAROCCO」からなる文字や、「H」、「C」の大きな文字が記載されている。
しかし、本件商標と引用商標2を除く引用商標とにおいて、上記各文字部分は、商標に接する者に読まれることを意図して記載されたものではなく、「欧文字及び数字で構成された模様」として認識されるべきものである。
そうすると、本件商標と引用商標2を除く引用商標の文字部分とから生じる称呼は、商標の類否判断をする上で考慮すべき要素及びその程度としては、単純な文字商標とは大きく異なり、格段に低い又は無いといっても過言ではない。
すなわち、本件商標と引用商標2を除く引用商標とは、文字が模様として付加されているものの、全体としては、上述した図形や模様又はデザインからなる図形商標又はデザイン商標というべきものであり、需要者がその商標を目にしたときのイメージ、フィーリング及び印象といったものが考慮事項として重要である。
なお、引用商標2については、「楕円状リングの図形」と「diptyque」の文字とからなるものであり、当該「diptyque」の文字を単純に模様と言い切ることはできないが、「diptyque」の文字のみからなる商標と比べると、その「楕円状リングの図形」が商標における大きな特徴部分であり、全体として図形商標というべきものである。
イ 引用商標が「diptyque」の文字を有することは事実であるが、引用商標に係る「楕円状リングの図形」及び「diptyque 34 boulevard saint germain paris5e 34 boulevard saint germain」からなる文字が、請求人の商品の出所を表示する商標として長年使用され、それらが一体となって商品「化粧品、せっけん類、アロマキャンドル(芳香性を有するろうそく)」に係る分野において周知、著名となった結果、少なくとも本件商標の登録出願時において、その需要者は、「diptyque」の文字をいちいち見なくとも、当該商品に付された「楕円状リングの図形」の標章を見て、請求人の商品と認識するのが取引の実情である。
また、引用商標3ないし引用商標6及び甲第4号証等において数多く見られる「楕円状リングの図形」とそのリング図形内の各「文字」や「文字+花、植物、自然風景等のデザイン」のパターンによる長年かつ多数の使用実績が、「楕円状リングの図形」に接する需要者をして、請求人を連想させ得るものであることは明らかである。
ウ 被請求人は、本件商標と引用商標における枠状図形の線の太さや本数の違いを指摘するが、商品「化粧品、せっけん類、アロマキャンドル(芳香性を有するろうそく)」の需要者が、その商品を手にしたときに、その線の太さや本数に注意を払うことは、現実にはまずあり得ないことであり、それよりも、その商品の主要な特徴や特性である匂いや肌触り、その他効能等について感じ取ったり、聴取したりするのが取引の実情である。
そうすると、需要者は、相対的に大きくて目に付く「楕円状リングの図形」を見て、請求人の商品と認識するものである。
エ 被請求人が楕円状図形自体はありふれた形状であるとして挙げる商標の登録例(乙1?乙15)は、乙第15号証以外は、商品「化粧品、せっけん類、アロマキャンドル(芳香性を有するろうそく)」とは何ら関係のない商品であり、また、乙第15号証は、香水関係の商品であるが、この一例をもって、楕円状の図形が香水関係の商品のラベルの形態や形状としてありふれているとは到底いえない。
なお、乙第15号証に係るラベルの形状は、縦横比がほぼ1:1であって、楕円というよりは円と隅丸略正方形の中間といった形状であり、本件商標及び引用商標の形状とは大きく異なるものである。
(2)請求人の商標の周知性について
被請求人は、請求人の商標に関し、全てハウスマークと認識され得る識別標識として強い印象を与える「diptyque」の文字との結合商標であり、当該文字を除いた「楕円状リングの図形」のみで周知性を獲得しているといった事情は示されていない旨主張する。
しかし、上述のとおり、引用商標に係る「楕円状リングの図形」及び「diptyque 34 boulevard saint germain paris5e 34 boulevard saint germain」からなる文字が、請求人の商品の出所を表示する商標として長年使用され、それらが一体となって商品「化粧品、せっけん類、アロマキャンドル(芳香性を有するろうそく)」に係る分野において周知、著名となった結果、当該「楕円状リングの図形」は、商品の出所が請求人であり、需要者に請求人の商品であることを認識させるに至ったものであるから、上記被請求人の主張は、失当である。
(3)商標法第4条第1項第10号について
被請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当しないとする理由において、請求人の使用商標は、いずれも「diptyque」を始めとする強く支配的な印象を与える文字やその他の図形等との結合商標であり、「楕円状リングの図形」部分のみが周知性を獲得していることはなく、当該部分を要部として抽出し、類否判断の対象とすべきではない旨主張する。
しかし、請求人の使用商標について、その構成中の「楕円状リングの図形」が、需要者をして、請求人を連想させ得るものであり、請求人の商品であることを認識させるものであることは、上記(1)のとおりである。
(4)商標法第4条第1項第11号について
被請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当しない理由において、請求人が提出した証拠は、いずれも引用商標2ないし引用商標6の構成中の「楕円状リングの図形」部分のみを要部として抽出し、類否判断の対象とするような根拠を示すものではない旨主張する。
しかし、引用商標2ないし引用商標6について、その構成中の「楕円状リングの図形」部分が商標の大きな特徴であり、需要者に請求人の商品であることを認識させるものであることは、上記(1)のとおりである。
(5)商標法第4条第1項第15号について
被請求人は、本件商標について、その構成中に大きく配置された「Dr.Linn Sakurai」の文字が最も強く支配的な印象を与える部分であり、強い識別力を有する部分であると主張し、また、本件商標は、国際的な美容整形外科の第一人者であり、ドクターズコスメの先駆者である桜井麟により開発されたスキンケアブランドであるとして、乙第16号証を提出するが、同号証は、いわば「自称」にすぎず、それのみでは同人が「国際的な美容整形外科の第一人者」であるかどうかは不明である。
他方、請求人は、既述のとおり、「楕円状リングの図形」とそのリング図形内の各「文字」や「文字+花、植物、自然風景等のデザイン」のパターンによる長年かつ多数の使用実績を有することから、需要者においては、その「楕円状リングの図形」が請求人を連想させるものであるところ、本件商標については、かかるパターンの一例として捉え、その使用に係る商品を請求人の商品と誤認するか、又は、請求人と被請求人との間に経済的又は組織的に何らかの関係があるものと混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
なお、被請求人は、そもそも請求人の商標が「楕円状リングの図形」部分のみで出所識別標識として機能している事情は見当たらない旨主張するが、この点については、上記(1)のとおり、当該「楕円状リングの図形」が請求人の商品であることを認識させるものである。
(6)その他
スキンケアや化粧品等を取り扱う被請求人が、化粧品やアロマキャンドル等の分野において、内外で周知、著名な請求人の名声や商標及びロゴ等を知らなかったとは到底考えられないから、本件商標の使用は、かかる請求人の商品の出所表示に便乗し、フリーライドする意図があったものといわざるを得ない。
また、引用商標は、既述のとおり、少なくともフランス及び我が国において周知であり、かつ、取引の実情において顕著な特徴を有するものである。
そうすると、本件商標は、周知性の高い請求人の商標に類似する商標であって、取引上の信義則に反する不正の目的をもって使用するものである。
したがって、請求人は、当事者が申し立てない理由についての職権審理に関し、本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当するものであることを付言する。

第4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第16号証を提出した。
1 本件商標と請求人の商標との類否について
(1)本件商標の構成
本件商標は、別掲1のとおり、枠状の図形要素及び「1970・YOUR SKIN CAN BE YOUR FORTUNE」の文字と、その内側に大きく表された「Dr.Linn/Sakurai」の文字と、当該文字の上方に配置された「1970」及び「YOUR SKIN CAN BE YOUR FORTUNE」の各文字並びに「葉」の図形とを組み合わせた図形要素とからなる。
そして、本件商標の構成中、枠状の図形要素は、外側から二番目の線を太線とし、それ以外を細線とした計5本の線からなり、その全体的な形状は、隅丸略長方形というべき形状であり、その「辺」に相当する部分は、平坦な印象を強く与えるものである。
(2)引用商標の構成
引用商標は、請求人が指摘するように、そのいずれもが、最外及び最内の線を細線としてその内側にあたる2本の線を太線とする計4本の線を有し、かつ、その2本の太線内に文字を配してなるものである。そして、当該太線内に配置された文字をみると、いずれも「diptyque」の文字が図形の頂点付近に配置されている。
また、引用商標3ないし引用商標6の構成中、最も内側の線内の領域は、文字と風景や花といった図形との結合による図形要素により埋められている。
(3)本件商標と引用商標との類否
ア 商標の類否については、原則として、全体的に検討すべきである。この点、本件商標は、その構成中の文字要素に応じて、「ドクターリンサクライ」や「ユア スキン キャン ビー ユア フォーチュン」等の称呼が生じるものである一方、引用商標は、それぞれの構成が様々であるが、少なくとも、その構成中の「diptyque」の文字から「ディプティック」の称呼が生じるものである。
また、本件商標と引用商標とは、それぞれ、上記のような構成からなるため、両商標は、外観及び観念についても明白な差異を有するものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、全体的に考察すれば、称呼、外観及び観念のいずれにおいても著しく異なるものである。
イ 請求人は、「商標の類否判断は本来全体的な観察によるのが原則であるが、出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合やそれ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などは、一部抽出による類否判断が認められる」旨判示した裁判例を示しつつ、これまで請求人が使用してきた商標について、その構成や経緯等から「楕円状リングの図形」が商標の要部であり、当該図形という点において、本件商標と引用商標とは類似する旨主張する。
そこで、請求人がいう「楕円状リングの図形」について、その構成中の文字要素を除いた線要素からなる図形部分にのみ着目して検討すると、当該図形部分は、出所識別標識として機能するのか極めて疑問であり、当該図形部分だけでは識別力が無いか、極めて弱いとみるのが相当であるから、十分な出所識別標識たり得ないものである。
また、上記「楕円状リングの図形」の構成中の文字要素を考慮しても、請求人の商標の「楕円状リングの図形」は、いずれも請求人のハウスマークと認識される「diptyque」の文字と結合されたものである。つまり、引用商標を含む請求人の商標については、いずれも「diptyque」の文字が出所識別標識として強く支配的な部分であるとみるべきものであり、これを勘案すれば「diptyque」の文字が最も出所の識別に重要な役割を果たしているのは明らかであり、当該「diptyque」の文字を無視ないし軽視して類否判断の対象とすべき事情は一切見当たらない。
ウ 念のため、請求人のいう「楕円状リングの図形」の形状について、特にその外観に関して述べると、請求人は、本件商標と引用商標の図形要素を抽出して「楕円状リングの図形」とひとまとめに表現しているが、そもそも、当該図形を構成する要素も形状自体も明らかな差異がある。
上述のとおり、本件商標の構成中の枠状の図形要素は、最外側から2番目の線のみを太線とした計5本の線からなる一方、引用商標においては計4本の線であり、その4本のうち、内側2本の線を太線としているものである。そして、引用商標は、「diptyque」等の文字を配する太線内側部分の間隔が最も広く、続いて広い順に、「最外側の細線と隣の太線による間隔」、「最内側の細線とその隣の太線による間隔」となっているように、線同士による間隔(幅)は、いずれも一定ではない。特に、「最外側の細線と隣の太線による間隔」は広く感じられるため、全体的に中心に偏ったような印象を与えるものである。
他方、本件商標の構成中の枠状の図形要素における線同士による間隔は、「1970・YOUR SKIN CAN BE YOUR FORTUNE」の文字配置部分以外は、いずれも一定間隔(幅)であり、特段、需要者の目を引くような特徴を備えるような構成及び配置ではない。
本件商標と引用商標とでは、上記したような差が存在しているにもかかわらず、「楕円状リングの図形」とひとまとめにしてしまうのは、あまりに乱暴で到底受け入れることができない。
エ そもそも、楕円状図形自体は、昔から容器に付するラベル等の形状として広く使用されており、ありふれた形状であるし、そうした楕円形状の外径等に沿うように文字を配置したり、中央に他の図形や文字が施された本件商標のような構成は、古くから用いられているものである。
この点に関しては、乙第1号証ないし乙第4号証を始め、ワッペンを付す被服等にも人気のある構成であり、商標の登録例が多数確認でき(乙5?乙12)、また、食品等の分野においても、こうした楕円状図形の商標の登録例及び登録出願が確認できる(乙13、乙14)。
さらに、香水の範ちゅうに入ると考えられる商品についても、乙第15号証に示すような図形が使用されており、当該図形は、外径に沿うように配置される英文字を囲む線を共に太線にしているなど、引用商標の構成に近いものである。
オ 上述したように、本件商標と引用商標とは、全体的に観察すれば、称呼、観念及び外観のいずれにおいても著しく相違するものであるため、非類似の商標である。
また、請求人のいう「楕円状リングの図形」に関しても、そもそも、当該図形における線要素だけでは出所識別標識たり得ないと考えられ、また、請求人の商標は、いずれも強い識別力を有する「diptyque」の文字と結合したものであって、請求人のいう「楕円状リング図形」が、その線要素のみで商標登録されている例は発見できない。
これらを考慮すれば、上記「diptyque」の文字を除外して、本件商標と請求人の商標とを類否判断すべき理由がないし、仮に、請求人がいう「楕円状リングの図形」の線要素のみを比較したとしても、その構成や位置関係が全く異なるものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、非類似の関係にあるものである。
2 請求人の商標の周知性について
請求人は、証拠を示しつつ、請求人の商標が周知である旨主張している。
しかしながら、請求人が示した証拠の多くが本件商標の登録出願日後の日付に係るものであり、本件商標の登録出願日前の日付が確認できるものは、特に甲第18号証及び甲第19号証等である。
また、甲第18号証及び甲第19号証を含む請求人の示した証拠において、請求人の商標は、上記1で述べたように、いずれもハウスマークと認識され得る識別標識として強い印象を与える「diptyque」の文字との結合商標であるし、請求人のいう「楕円状リングの図形」のみに注目し、当該図形のみに言及しているような記事等も確認できない。
したがって、請求人が示した証拠のほとんどは、本件商標の登録出願日における周知性の根拠となるものではなく、また、当該証拠は、「diptyque」の文字が結合されていることを前提とするものであり、その文字を無視ないし軽視した「楕円状リングの図形」のみで周知性を獲得しているといった事情を示すものではない。
3 商標法第4条第1項第10号について
本件商標と引用商標とは、上記1のとおり、あらゆる観点から非類似の関係にある商標である。
また、周知性を勘案するとしても、請求人が示した証拠の大部分は、本件商標の登録出願日における周知性を証明するものではなく、本件商標の登録出願日前の日付による証拠も、本件商標とは非類似の商品である「アロマキャンドル」等に関するものを相当数含むものであり、さらに、証拠に示されている請求人の商標は、いずれも「diptyque」を始めとする強く支配的な印象を与える文字やその他の図形等との結合商標であり、請求人のいう「楕円状リングの図形」のみで周知性を獲得していることを示すものではなく、「楕円状リングの図形」のみを要部として抽出し、類否判断の対象とすべき根拠を示すものでもない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。
4 商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標2ないし引用商標6とは、上記1のとおり、あらゆる観点から非類似の関係にある商標である。
また、請求人が示した証拠は、いずれも請求人の商標の構成中の「楕円状リングの図形」のみを要部として抽出し、類否判断の対象とすべき根拠を示すものでもない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
5 商標法第4条第1号第15号について
本件商標は、その構成中、大きく表された「Dr.Linn/Sakurai」の文字が最も強く支配的な印象を与える部分であり、強い識別力を有する部分であるから、当該文字により識別されるものである。
本件商標は、国際的な美容整形外科の第一人者であり、ドクターズコスメの先駆者である桜井麟により開発されたスキンケアブランドである(乙16)。桜井麟は、1940年に東京の原宿に桜井診療所を開設し、我が国の有名な女優やハリウッドスターの治療を手掛け、有名となった人物であり、「Dr.Linn/Sakurai」は、その名に由来するものである。
そして、既述のとおり、本件商標と請求人の商標とは、非類似の関係にあるし、そもそも、請求人の商標が、その構成中の「楕円状リング図形」のみをもって出所識別標識として機能している事情も見当たらない。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品に使用したとしても、請求人の業務に係る商品等と何ら出所の混同を生じさせることはなく、また、そのおそれもない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものではないから、本件審判の請求には理由がない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するについて利害関係を有する者であることについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理する。
1 引用商標1の周知、著名性について
(1)請求人は、引用商標1について、遅くとも本件商標の登録出願日である平成22年9月27日には、請求人の業務に係る商品「香水、アロマキャンドル、化粧品、せっけん類」(以下「請求人商品」という。)を表示するものとして、外国においてのみならず、我が国においても、需要者の間に広く認識されるに至っており、その状況は、本件商標の登録査定日である同24年4月20日においても、継続して維持されていた旨主張する。
そこで、上記請求人の主張に係る甲各号証をみると、請求人が請求人商品について使用する商標(以下「請求人商標」という。)は、引用商標1と同一といえる標章の内側に、例えば、引用商標3ないし引用商標6のように、商品ごとに異なる文字や図形等を配した様々なものであり、我が国において、証拠上、本件商標の登録出願日前の2006年(平成18年)12月頃(甲13の2)から本件商標の登録査定日後にわたり使用されていたと認められる。そして、そのような構成からなる請求人商標の構成において、引用商標1又はその構成中の楕円状リングの図形部分は、いずれもそれのみが特に強調された体裁で表されてはおらず、視覚的に強い印象をもって看取、把握されるとはいい難いものである。
また、請求人商品について、引用商標1又はその構成中の楕円状リングの図形部分が、単独で使用されているといった状況は見いだせない。
なお、請求人は、引用商標1の構成中の楕円状リングの図形の内側のデザインのみを変化させ、ハウスマークのように使用することにより引用商標1の周知性を獲得してきた経緯に鑑みれば、引用商標1と同一又は類似の構成要素を有する商標の要部は、その構成中の楕円状リングの図形部分である旨主張するが、上記した状況を踏まえれば、請求人商標の使用により、引用商標1又はその構成中の楕円状リングの図形部分のみが、独立して自他商品の識別標識として機能し、取引に資されるとは認め難い。
(2)請求人は、遅くとも2002年(平成14年)には我が国において、引用商標1を使用した商品を販売しており、その後、2005年(平成17年)8月のグローバルプロダクトプランニングとの販売代理店契約の締結、2009年(平成21年)のDiptyque Japanの設立により、請求人商品の我が国における売上高が順調に伸びている旨主張する。
そこで、上記請求人の主張に係る甲第16号証の1及び2をみると、2002年度ないし2004年度及び2008年ないし2017年における各年(度)の売上金額は分かるものの、その金額が、いかなる商標の使用に係るいかなる商品についてのものであるかは不明である。そして、上記(1)のとおり、請求人商標が引用商標1と同一といえる標章の内側に商品ごとに異なる文字や図形等を配した様々なものであり、請求人商品について、引用商標1又はその構成中の楕円状リングの図形部分が単独で使用されているといった状況は見いだせないことに鑑みれば、上記金額は、引用商標1を使用した商品についてのものとはいえないと考えられる。
(3)上記(1)及び(2)によれば、請求人提出の甲各号証は、引用商標1が、商品の出所識別標識として、すなわち、商標として単独で需要者の間において広く認識されていたことを立証するに足るものではない。
したがって、請求人の提出した証拠によっては、引用商標1が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品(請求人商品)を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、別掲1に示すとおり、細線と太線からなる二重線で描いた大きな縦長の楕円の内側に、三重の細線で描いた縦長の同心の楕円を配置し、両楕円の間に存する空間に、「YOUR SKIN CAN BE YOUR FORTUNE・1970・YOUR SKIN CAN BE YOUR FORTUNE・1970・」の文字を時計回りに配置し、さらに、当該三重細線の楕円の内側に、「1970」の文字と花のシルエット様の図形とを組み合わせてなるものを円状に配置してなる「YOUR SKIN CAN BE YOUR FORTUNE・YOUR SKIN CAN BE YOUR FORTUNE・」の文字で囲んでなるもの並びに大書してなる「Dr.Linn」及び「Sakurai」の二段書きの文字を配置してなるものである。
そして、本件商標の構成中、大書してなる「Dr.Linn」及び「Sakurai」の二段書きの文字は、全体として、「Linn Sakurai」という医師の名前を表したものと看取、理解される一方、「1970」の文字は「年」を、「YOUR SKIN CAN BE YOUR FORTUNE」の文字は「あなたの肌はあなたの財産となり得る」ほどの意味合いを、それぞれ表したものと看取、理解され得るものといえる。
(2)引用商標1
引用商標1は、別掲2に示すとおり、細線と太線からなる二重線で描いた大きな縦長の楕円の内側に、二重の太線と細線で描いた縦長の同心の楕円を配置し、両楕円の間に存する空間の上方に「diptyque」の文字、下方に「paris5e」の文字を配置するとともに、当該空間の右方及び左方にそれぞれ「34 boulevard saint germain」の文字を配置してなるものであるところ、その構成中、「diptyque」の文字は、特定の意味合いを想起させることのない造語であるのに対し、「paris5e」の文字及び「34 boulevard saint germain」の文字は、その全体をもって、フランスのパリの住所を表したものと看取、理解され得るものといえる。
(3)本件商標と引用商標1との類否
本件商標と引用商標1とは、それぞれ、上記(1)及び(2)のとおりの構成からなり、複数の線により描いた大きな縦長の楕円の内側に、複数の線で描いた縦長の同心の楕円を配置するという点においては近似するものの、それぞれの構成態様に照らせば、当該楕円部分のみが独立して自他商品の識別標識として機能し、取引に資されるとは認め難い。
そして、本件商標と引用商標1の構成中の文字部分についてみれば、本件商標については、その構成中の大書してなる「Dr.Linn」及び「Sakurai」の二段書きの文字部分、引用商標1については、その構成中の「diptyque」の文字部分が、自他商品の識別標識として看者に強く支配的な印象を与えるものというのが相当である。
そうすると、本件商標は、その構成中の「Dr.Linn」及び「Sakurai」の文字部分が要部といえ、当該文字部分から「ドクターリンサクライ」の称呼及び「Linn Sakuraiという名前の医師」の観念を生じるのに対し、引用商標1は、その構成中の「diptyque」の文字部分が要部といえ、当該文字部分から「ディプティック」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
してみれば、本件商標と引用商標1とは、その構成全体における比較はもとより、その構成中の要部たる文字部分の比較においても、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(4)小括
引用商標1は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものであり、また、本件商標と引用商標1とは、上記(3)のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、上記2(1)のとおりの構成からなるものであり、その構成中、「Dr.Linn」及び「Sakurai」の文字部分が要部といえ、当該文字部分から「ドクターリンサクライ」の称呼及び「Linn Sakuraiという名前の医師」の観念を生じることは、上記2(3)のとおりである。
(2)引用商標2ないし引用商標6
引用商標2は、別掲3に示すとおり、細線と太線からなる二重線で描いた大きな縦長の楕円の内側に、二重の太線と細線で描いた縦長の同心の楕円を配置し、両楕円の間に存する空間の上方に「diptyque」の文字を配置してなるものであり、その構成態様は、実質的に引用商標1の構成中のフランスのパリの住所を表したものと看取、理解され得る「paris5e」の文字及び「34 boulevard saint germain」の文字を除いたものといえる。
また、引用商標3ないし引用商標6は、それぞれ、別掲の4ないし7に示すとおり、細線と太線からなる二重線で描いた大きな縦長の楕円の内側に、二重の太線と細線で描いた縦長の同心の楕円を配置し、両楕円の間に存する空間の上方に「diptyque」の文字、下方に「paris5e」の文字を配置するとともに、当該空間の右方及び左方にそれぞれ「34 boulevard saint germain」の文字を配置してなるものであって、さらに、当該内側に配置された楕円内に、引用商標3は、「L’EAU de NEROLI」の文字及び植物等の図形を、引用商標4は、「H」の文字及び植物等の図形を、引用商標5は、「C」の文字及び植物等の図形を、引用商標6は、「L’EAU de TAROCCO」の文字及び植物等の図形を、それぞれ配置してなるものであり、その構成態様は、実質的に引用商標1の構成中の内側に配置された楕円内に、当該各文字及び植物等の図形を配置したものといえる。
(3)本件商標と引用商標2ないし引用商標6との類否
ア 引用商標2は、上記(2)のとおり、実質的に引用商標1の構成中のフランスのパリの住所を表したものと看取、理解され得る「paris5e」の文字及び「34 boulevard saint germain」の文字を除いたものといえるものであるから、その構成中、要部たり得るのは、引用商標1における場合と同様、「diptyque」の文字部分である。
してみれば、本件商標と引用商標2とは、本件商標と引用商標1との比較の結果と同様、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
イ 引用商標3ないし引用商標6は、それぞれ、上記(2)のとおりの構成からなるところ、それぞれの構成態様に照らせば、その構成中の楕円部分のみが独立して自他商品の識別標識として機能し、取引に資されるとは認め難い。
そして、引用商標3ないし引用商標6の構成中の文字部分についてみれば、いずれも「diptyque」の文字部分が、自他商品の識別標識として看者に強く支配的な印象を与えるものというのが相当であり、これを当該各引用商標の要部として本件商標と比較するときは、本件商標と引用商標1との比較の結果と同様、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
また、引用商標3ないし引用商標6の構成中の内側に配置された楕円内にある文字や図形等が、本件商標との比較において、相紛れるおそれがあるとみるべき理由もない。
(4)小括
上記(3)のとおり、本件商標と引用商標2ないし引用商標6とは、いずれも相紛れるおそれのない非類似の商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標1は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
また、請求人は、引用商標2ないし引用商標6について高い周知性を有している旨主張するところ、請求人提出の甲各号証をみても、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標2が、請求人商品について単独で使用され、商品の出所識別標識として、すなわち、商標として単独で需要者の間において広く認識されていたといった状況は見いだせず、また、引用商標3ないし引用商標6が、それぞれ請求人の業務に係る化粧品について使用されていることは見受けられるものの、請求人商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めるに足りない。
さらに、本件商標と引用商標とは、上記2及び3のとおり、いずれも相紛れるおそれのない非類似の商標であり、看者に全く別異のものとして認識されるものである。
してみれば、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして、請求人又は引用商標を連想、想起させることはなく、その商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号に違反してされたものとは認められないから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすることはできない。
なお、請求人は、本件商標の登録について、商標法第4条第1項第19号該当性に言及するところがあるが、その内容をみても、それを当事者が申し立てない理由として審理する必要性は見いだせない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (別掲)
1 本件商標(登録第5498434号商標)


2 引用商標1


3 引用商標2(登録第4598993号商標)


4 引用商標3(国際登録第953461号商標)


5 引用商標4(国際登録第990558号商標)


6 引用商標5(国際登録第990559号商標)


7 引用商標6(国際登録第990560号商標)



審理終結日 2018-04-16 
結審通知日 2018-04-17 
審決日 2018-05-01 
出願番号 商願2010-75087(T2010-75087) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (X03)
T 1 11・ 262- Y (X03)
T 1 11・ 22- Y (X03)
T 1 11・ 261- Y (X03)
T 1 11・ 263- Y (X03)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 飯田 亜紀 
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 小松 里美
田中 敬規
登録日 2012-06-01 
登録番号 商標登録第5498434号(T5498434) 
商標の称呼 ドクターリンサクライ、ドクターリン、リン、サクライ、リンサクライ、サクライリン、ユアスキンキャンビーユアフォーチュンセンキューヒャクシチジュー、ユアスキンキャンビーユアフォーチュンセンキューヒャクナナジュー、ユアスキンキャンビーユアフォーチュンイチキューシチゼロ、ユアスキンキャンビーユアフォーチュンイチキューナナゼロ、ユアスキンキャンビーユアフォーチュン 
代理人 特許業務法人 津国 
代理人 加藤 一真 
代理人 秋元 輝雄 
代理人 津国 肇 
代理人 吉澤 大輔 
代理人 山村 大介 
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