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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W09
管理番号 1349860 
異議申立番号 異議2016-685032 
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-04-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-12-21 
確定日 2018-12-04 
異議申立件数
事件の表示 国際商標登録第1285288号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 国際商標登録第1285288号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第1285288号商標(以下「本件商標」という。)は,「PIANO TILES」の欧文字を横書きしてなり,2015(平成27)年9月16日にFranceにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張し,2016年2月29日に国際商標登録出願(事後指定)され,第9類に属する「Computer programs and software on any recording or distribution media,computer software recorded on magnetic media or downloaded from an external computer network;magnetic recording media,optical or sound recording disks;compact disks,DVDs and other digital recording media;equipment for data processing and computers;game software;software(recorded programs);computer peripheral devices;electric batteries;cables for computer hardware;memory cards or integrated circuit cards;bags designed for laptop computers.」の商品を指定商品として,平成28年9月9日に登録査定,同年11月4日に日本国において設定登録され,同月15日発行の国際商標公報に掲載されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由(要旨)
商標登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第10号,同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1項の規定に基づき取り消されるべきであると申し立て,証拠方法として甲第1号証ないし甲第30号証を提出した。
第3 当審における取消理由の要旨
当審において,本件商標権者に対し,「本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当するものであるから,同法第43条の3第2項の規定により取り消すべきものである。」旨の取消理由を平成29年10月3日付けで通知し,相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。
第4 商標権者の意見
商標権者は,上記第3の取消理由の通知に対して,指定した期間内に何ら意見を述べていない。
第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第19号該当について
(1)引用商標
申立人が登録異議申立ての理由において引用する同人の使用に係る商標は,「Piano Tiles」の欧文字並びに「Piano Tiles 2」の欧文字及び数字を,それぞれ一連に書してなり(以下,まとめて「引用商標」という場合がある。),スマートフォン用のゲームソフトウェアの名称として,申立人が米国において2014年3月26日から(甲9),我が国では同年3月29日から使用しているものである(甲3)。
(2)引用商標の周知著名性について
申立人が提出した証拠によれば,以下のことがいえる。
ア 申立人による引用商標の使用状況について
(ア)アップル社のスマートフォン・タブレットコンピュータ用のソフトウェアのダウンロードサイトであるApple App Storeに「Piano Tiles」の標章を使用したiOS用ゲームソフトを申立人がリリースしたことが,日本語版のApp Storeにおいて,バージョン2.7の掲載日「2014年8月19日」であることをもって確認できる(甲2)。
(イ)日本語のゲームソフトの紹介サイトであるCatch Appで,申立人のゲームソフトがリリース日「2014年3月29日」と紹介されている(甲3)。
(ウ)ゲームソフトウェアの紹介サイトであるMoby Gamesに申立人のゲームソフト「Piano Tiles」について,アンドロイド用が2014年3月,iPAD用及びiPhone用が同年3月28日にリリースされた旨掲載されている(甲4)。
(エ)フランスのソフトウェアダウンロードサイトであるLogitheQueで申立人のゲームソフト「Piano Tiles」が2014年4月23日にリリースされた旨記載されている(甲5)。
(オ)Facebookにおいて,申立人のゲームソフト「Piano Tiles」について投稿コメントが掲載されており,その最初のコメントは2014年5月4日である(甲6)。
(カ)申立人が米国で「PIANO TILES」を第9類「Computer game software for use on computers,mobile phones,and wearable electronic devices」について商業的使用を開始した日を2014年3月26日として使用に基づく商標登録出願をし,そして,同年5月27日にApp Storeのダウンロード画面を使用証拠(Specimen)として提出し,該登録出願は,2015年6月9日に登録された(甲9)。
(キ)フランスのゲームソフト紹介サイトであるbonjourdemain.comにおいて申立人のゲームソフト「Piano Tiles」が2014年6月6日にリリースされたことが紹介された(甲10)。
(ク)フランスのゲームソフト紹介サイトであるSensCritique.comにおいて申立人のゲームソフト「Piano Tiles」のアンドロイド版に関する2014年6月17日付けの論評が掲載されている(甲11)。
(ケ)フランスのソフトウェア紹介サイトであるGeekeriesにおいて申立人のゲームソフト「Piano Tiles」に関するコメントが2014年11月10日付けで掲載された(甲12)。
(コ)キングソフト株式会社に関するウェブサイト(甲13,甲14)からは,2015年8月15日,申立人が「Piano Tiles」の続編である「Piano Tiles 2」をApp Store及びGoogle Playにリリースしたことが分かり,該ウェブサイトには「『ピアノタイル2』は,AppStoreなど全世界のアプリストアの音楽ゲームカテゴリランキングにおいて,155力国で1位を獲得し,GooglePlayの『Beat Of Game 2015』では87力国で選出された実績を持つ,誰でもピアニストになったような気分を味わえる人気音楽ゲームです。本日8月15日(月),リリース1周年を記念し,『ピアノタイル2』1周年記念エディションをリリースいたします。」などの記載があるほか,「Piano Tiles 2」について,合計インストール数として「10億」との記載がある。
(サ)人気アイドルグループ「欅坂46」に関する情報が掲載された「欅坂46にゅーすらぼ」の2016年1月9日付けのブログにおいて,「世界96力国で総合1位を獲得し,日本でも去年の12月には1週間以上1位の座に居座っていたという人気アプリですが,実は,欅坂46のメンバーもハマつているみたいなんです。」との記載がある(甲23)。
(シ)App StoreのウェブサイトのiTunesプレビュー(更新日:2017年3月15日)において,「ピアノタイル2は全世界で6億人がプレイしている人気爆発なゲーム。」との記載がある(甲24)。
(ス)GooglePlayのウェブサイトにおいて,「ピアノタイル2」の表題の下,「ピアノタイル2は全世界で5億人がプレイしている人気爆発なゲーム。」との記載がある(アップデート:2017年3月27日,甲25)。
(セ)申立人の会社情報のウェブサイトにおいて,「『ピアノタイル2』は,Google Playの2015年ベストゲーム賞を受賞しており,2016年2月には,米国,英国,日本などの主要市場において,Apple App StoreとGoogle Playの両ストアでダウンロード件数1位を獲得しています。また,Apple App Storeでは,世界117力国で総合ランキング1位に輝き,146力国のゲーム総合ランキング,148力国のアーケードゲームランキング,155力国の音楽ゲームランキングにおいても各国で首位を獲得しています。」との記載がある(甲26)。
(ソ)Face bookのウェブサイトにおいて,フェースブックの開発者向けケーススタディで「2015年12月時点でチーターモバイルの『Piano Tiles 2』がiOSのソフトウェア部門において109か国でトップ,ゲームソフト部門では142か国でトップとなり,アンドロイドのソフトウェア部門においては38か国でNo.1,ゲームソフト部門では85か国でNo.1となった。」旨紹介されている(甲28)。
(タ)PR Newswireのウェブサイトにおいて,13か国でGoogle Playの2015年の最優秀ゲーム賞を受賞したことが記載されている(甲29)。
(チ)Business Wireのウェブサイトにおいて,Piano Tiles 2はゲームデザイン部門でレッドドット賞を受賞したと申立人が発表したことが掲載されている(2016年11月7日01:16PM東部標準時間,甲30)。
イ 上記アによれば,「Piano Tiles」は,スマートフォン等に用いられるゲームソフトウェアの名称として,申立人が米国において2014年3月26日から,我が国では同年3月29日から使用され,米国及び我が国のほか,フランスを始めとするその他の外国においても使用されていたことが認められ,本件商標の登録出願時(事後指定日)には,少なくともフランスにおいて需要者の間に広く認識されていたものということができる。
また,2015年8月15日にApp Store及びGoogle Playにリリースした「Piano Tiles 2」も各国において相当数のダウンロードがされ,さらに,Google Playの2015年ベストゲーム賞を受賞するなど各種の賞も受賞し人気を博していることが認められる。
してみれば,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係るゲームソフトウェアを表示するものとして,外国及び我が国における需要者の間に広く認識されていたとみるのが相当である。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標との類否について検討するに,本件商標は,「PIANO TILES」の欧文字を通常の書体で書してなり,他方,引用商標は,「Piano Tiles」の欧文字並びに「Piano Tiles 2」の欧文字及び数字を,それぞれ通常の書体で書してなるところ,上記(2)のとおり,引用商標は我が国においても広く認識されていたものであり,そして「Piano Tiles 2」において,その構成中の「2」の数字は,これを付した商品が「Piano Tiles」の続編であることを表す番号表示として理解されるものであるから,その要部は「Piano Tiles」の文字部分であるといえる。
そうすると,「PIANO TILES」の文字からなる本件商標と,「Piano Tiles」及び該文字を要部とする引用商標とは,大文字と小文字の相違はあるとしても,同一の綴り字であり,両者は,外観上近似した印象を与えるものである。
そして,本件商標と引用商標は,それぞれの構成文字(要部)から生じる「ピアノタイルス」の称呼を共通にするものである。
また,本件商標と引用商標は,いずれも特定の意味合いを想起させることのない一種の造語といえるものであるから,観念上,両者を比較することはできない。
してみれば,本件商標と引用商標とは,観念においては比較することができないとしても,外観において近似した印象を与えるものであって,称呼を共通にするものであるから,これらを総合的に勘案すれば,本件商標と引用商標とは,互いに紛れるおそれのある類似の商標である。
(4)本件商標が不正の目的をもって使用するものであることについて
ア 本件商標及び引用商標に係る商標登録の経緯等
(ア)本件商標権者は,本件商標についてフランスで2015年9月16日に商標登録出願をし,その後,該登録出願を基礎として,イギリス,大韓民国,メキシコ,ベネルクス知的財産庁,ドイツ及びイタリアを領域指定して同年11月23日に国際出願をし,国際登録を得た(甲15,職権調査)。
(イ)本件商標権者は,上記国際登録について,2016年2月29日,日本を含む11か国(インド,日本,フィリピン,トルコ,エジプト,スペイン,カザフスタン,モンゴル,ポーランド,ロシア連邦,ベトナム)に事後指定をした(甲15,職権調査)。
(ウ)申立人の100%子会社であるベイジン・キングソフト・インターネット・セキュリティ・ソフトウェア有限公司が中国で「PIANO TILES」を第9類及び第41類について2014年5月19日に商標登録出願し,2015年6月28日に登録された(甲7,申立人の主張)。
(エ)申立人が米国で「PIANO TILES」を第9類「Computer game software for use on computers,mobile phones,and wearable electronic devices」について商業的使用を開始した日を2014年3月26日として使用に基づく商標登録出願をし,そして,同年5月27日にApp Storeのダウンロード画面を使用証拠(Specimen)として提出し,該登録出願は,2015年6月9日に登録された(甲9)。
イ 本件商標は,前記第1の記載及び上記アの経緯のとおり,2015年9月16日にフランス国においてした商標登録出願を基礎出願として,また,それに基づきパリ条約第4条による優先権を主張して,2016年2月29日に我が国を事後指定したものである。そして,本件商標は,我が国において,平成28(2016)年9月9日に登録査定され,同年11月4日に設定登録されている。
他方,引用商標は,前記(2)イのとおり,スマートフォン等に用いられるゲームソフトウェアの名称として,「Piano Tiles」については,申立人が米国において2014年3月26日から,我が国では同年3月29日から使用され,米国及び我が国のほか,フランスを始めとするその他の外国においても使用されていたことが認められ,また,2015年8月15日にApp Store及びGoogle Playにリリースした「Piano Tiles 2」も各国において相当数のダウンロードがされており,本件商標の登録出願時(我が国を事後指定した2016年2月29日)及び登録査定時(2016年9月9日)において,申立人の業務に係るゲームソフトウェアを表示するものとして,外国及び我が国における需要者の間に広く認識されていたといえるものである。
そして,本件商標の指定商品は,前記第1のとおりであり(参考和訳:第9類「あらゆる記録媒体上又は配布媒体上のコンピュータプログラム及びソフトウェア,磁気媒体に記録された又は外部コンピュータネットワークからダウンロードされたコンピュータソフトウエア,磁気記録媒体(未記録のもの),光学式記録ディスク又は音響記録ディスク,コンパクトディスク・DVD及び他のデジタル記録媒体,データ処理装置及びコンピュータ,家庭用・業務用・コンピュータ用ゲームソフトウェア,コンピュータ用プログラムを記憶させた記録媒体,コンピュータ周辺機器,蓄電池,コンピュータハードウェア用ケーブル,メモリカード又はICカード,ノートブック型コンピュータ用かばん」),引用商標が使用されているゲームソフトウェアを含んでおり,その余の指定商品もこれと極めて関連性が強いものばかりである。
そうとすれば,本件商標の我が国への事後指定の時において,本件商標権者が引用商標の存在を知らないということはあり得ないことである。
また,引用商標は,2015年6月9日に米国で,同年6月28日には中国でそれぞれ登録されているところ,本件に係る国際登録は,6か国を領域指定し,その後11か国を事後指定しているにもかかわらず,世界において商品の主要マーケットである米国及び中国を外していることからしても,商標権者が引用商標の登録状況を十分に認識していたことがうかがえる。
ウ 以上を総合的に考察すれば,本件商標権者は引用商標の存在及びその周知性を十分に認識しつつ,一部の国で引用商標がいまだ登録されていないことを奇貨として,商標登録を取得して,引用商標の周知性にあやかり,その名声にフリーライドして使用するものであるとみるのが相当である。
よって,本件商標は,不正の目的をもって使用するものである。
(5)小活
したがって,本件商標は,申立人の業務に係る商品「ゲームソフトウェア」を表示するものとして日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されている引用商標と同一又は類似の商標であって,不正の目的をもって使用するものであるから,商標法第4条第1項第19号に該当する。
2 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第19号に該当し,同条第1項の規定に違反してされたものであるから,その他の登録異議の申立ての理由について判断するまでもなく,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
異議決定日 2018-07-30 
審決分類 T 1 651・ 222- Z (W09)
最終処分 取消  
前審関与審査官 目黒 潤 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 網谷 麻里子
薩摩 純一
登録日 2016-02-29 
権利者 DESNENKO Yuriy
商標の称呼 ピアノタイルズ 
代理人 恩田 誠 
代理人 恩田 博宣 

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