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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z07
管理番号 1349824 
審判番号 取消2016-300510 
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-07-27 
確定日 2018-12-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第4428495号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
登録第4428495号商標(以下「本件商標」という。)は,「LSG」の欧文字を標準文字で表してなり,平成11年11月30日に登録出願,第7類「交流発電機,直流発電機」を指定商品として,同12年10月27日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。
なお,本件審判の請求の登録日は,平成28年8月8日である(以下,同登録前3年以内の期間を「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条第1項の規定により,本件商標の登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品について,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人の商品に使用される「LSG-○○○」の表示について
ア 乙第1号証のガスエンジン発電機に示される「LSG-5.5IR」は,本件商標に係る製品の製品番号であるか否かが判明していない。さらに,乙第2号証ないし乙第5号証の送り状又は記録には,「LSG-6PR2」,「LSG-6PR」及び「LSG-6PRII」(審決注:「II」はローマ数字の2を表す。以下同じ。)など,本件商標から派生させた類似商標が複数表示されており,本件商標に類似する商標を使用しても本件商標の「使用」には当たらない。
イ 乙第2号証及び乙第3号証の7ないし14をみると,「LSG-6PR2」が表示されている。しかし,「LSG-6PR2」は,「LSG-5.5IR」を含め,共に単なる製品型番号の一部にすぎず,また,乙第5号証の「生産実績アウトプット」に表示されるとおり,本件商標「LSG」に対し,さらに型番を加えて合体させ,派生的に複数の商標として作り出されたものは,「LSG」の文字部分のみで自他商品識別機能を果たすとは認められないため,社会通念上も本件商標と同一と認められる商標とはいえない。
ウ 被請求人は,定置型ディーゼルエンジン発電機を「DSG」及びガスエンジン発電機を「LSG」の表示を採択して,それに続けて「DSG-○○○」及び「LSG-○○○」のごとく,製品の規格・品質に係る仕様を表す英文字・数字を組み合わせて本件商標を表示する旨を主張する。しかしながら,製品の規格・品質に係る仕様を表す英文字・数字は,被請求人の社内において独自に設定して組み合わせているにすぎず,本件商標の使用に当たらない。
エ 被請求人は,「デンヨー製品の概要」(乙7)において,ガスエンジン発電機が「LSG-○○○」である旨を主張するが,「第4章 型式の読み方」には,「DCA-○○○」,「TLG-○○○」及び「GA-○○○」の3種類しか記載されておらず,ガスエンジン発電機を「LSG-〇〇〇」とする規定は存在しない。また,乙第7号証は平成16年5月に作成され,要証期間前のものである。したがって,被請求人は自社内の規定においてさえ,本件商標「LSG」を表示しておらず,乙第7号証は「LSG-○○○」が本件商標の使用に当たらないことを裏付けている。
オ 被請求人は,日本車輌製造株式会社のウェブサイト(乙8)における「可搬式ディーゼル発電機 型式名のつけ方」を引用して,被請求人の本件商標に派生的に英文字・数字を組み合わせた商標が,本件商標と社会通念上同一のものと認められる旨を主張する。しかしながら,(ア)被請求人と異なる別の同業他社の規定が,被請求人の規定と同一とする証拠がないこと,(イ)日本車輌のエンジンはディーゼル発電機であり,本件商標の商品であるガスエンジン発電機ではないこと,(ウ)乙第8号証は,直接,本件商標の使用を立証するものではないことが明らかである。
(2)被請求人とアイシン精機株式会社(以下「アイシン精機」という。)との取引関係について
ア ガスエンジン発電機について
ガスエンジン発電機はガス(都市ガス又はLPGガス)を燃料とするため,一般的に,都市ガス又はLPGガス事業者(以下「ガス事業者」という。)からガスエンジン発電機のエンドユーザー(購入者)へ販売される商品であり,被請求人は,エンドユーザーには販売していない。そこで,ガスエンジン発電機について,アイシン精機と同じ愛知県に本社が存在し当該商品を販売しているガス事業者の東邦ガス株式会社(以下「東邦ガス」という。)を経由して,アイシン精機に照会したところ,以下の回答があった。
アイシン精機は,
(ア)ガスエンジン発電機を使用して,給湯器,貯湯槽及びリモコンなどを組み合わせて,「ガスエンジンコージェネレーションユニット」(カタログ,甲2)としてガス事業者へ販売している。
(イ)ガスエンジン発電機は,販売の当初,自社で内製していたが,小型ガスエンジンは,他のコージェネレーション(熱電併給)商品の台頭で,競争力が低下するとともに市場が縮小し販売数量が減少したため,自社内製から「委託生産」に切り替え,生産委託先を被請求人とした。
(ウ)ガスエンジン発電機は,アイシン精機が被請求人に「委託生産」しているものであるため,被請求人は,アイシン精機以外の他社には販売できない。
(エ)アイシン精機がガス事業者向けにガスエンジン発電機を出荷する際,該商品に本件商標「LSG」を表示していない。また,アイシン精機のガスエンジン発電機を組み込んだ「ガスエンジンコージェネレーションユニット」のカタログ(甲2)には,仕様として「発電機 形式 デンヨー株式会社製 MG-6」と表示しており,本件商標は使用していない。
(オ)東邦ガスがガスエンジン発電機を販売する際は,該商品にはアイシン精機と東邦ガスの商標又は社名のみが表示され,デンヨー株式会社(以下「デンヨー」という。)の本件商標又は社名は表示されていない。
よって,ガスエンジン発電機は,アイシン精機が被請求人に対し,1対1の契約下において委託生産しているものであり,該商品には本件商標は使用されていない。
イ 乙第9号証の第7条(覚書期間)には,「本覚書の期間は,2000年10月1日から2002年3月31日までとする。(略)量産が決定した場合には,量産開始時に部品取引基本契約を締結すべく協議する。」と定められるとおり,要証期間前において有効な契約であり,かつ,量産開始時に部品取引基本契約も締結していない。次に,乙第10号証の第7条(有効期間)には,「本覚書の有効期間は,本覚書締結日(平成11年10月19日)から平成12年9月30日までとする。(略)当該期間を延長または短縮することができるものとする。」と定められるとおり,同じく,要証期間前において有効な契約であり,かつ,同覚書は平成15年3月31日まで延長されているが,要証期間まで延長されて契約されていない。次に,乙第11号証の第7条(契約期間)には,「本契約は,2011年4月25日から2012年3月31日まで有効とする。」と定められるとおり,同じく,要証期間前においてのみ有効な契約である。したがって,乙第9号証ないし乙第11号証は,全て要証期間前のものであるため,本件商標の「使用」に当たらない。なお,被請求人は「それ以降は,当事者間での黙示の合意の下,要証期間を含めて現在も継続している状況となっています。」としているが,契約書がない状況で“当事者間での黙示の合意”で契約が継続していることなど,実商取引上,あり得ないことであり,論外であり認められない。
ウ 乙第9号証及び乙第10号証は,共に「マイクロガスコージェネレーションシステムの開発」に関するものであるため,被請求人がアイシン精機と開発の共同研究を行ったことはうかがえるが,開発期間が終了しており,その後,両者が当該製品の製造に関する契約を締結したものではない。また,乙第11号証は,その第1条のとおり「新タイプの技術的実現性の検討」に関するものであり,同様に,両者が当該製品の製造に関する契約を締結したものではない。
エ 乙第12号証ないし乙第14号証の「電子メール」も,全て要証期間前のものである。
オ 乙第15号証の1及び2の「図面」も,全て要証期間前のものである。また,共に「型式」として「LSG-6PR」と表示されており,本件商標の使用を表すものではない。さらに,乙第9号証ないし乙第11号証との関連も明示されていない。
カ 乙第16号証の「送り状」は,乙第2号証及び乙第3号証の1ないし17と同じものであり,「送り状」は,商品の取引の存在を示すものにすぎず,商標法第2条第3項第1号及び第2号が示す「商品又は商品の包装に標章を付する」ものではないため,商標法が定める商標の「使用」には当たらない。
キ 乙第17号証の「物品受領書」のうち,同号証の1及び3は,要証期間前のものであり,要証期間において有効な記録とは認められない。残る同号証の4ないし8の「物品受領書」は,上記カの「送り状」と同様に,商標法第2条第3項第1号及び第2号が示す「商品又は商品の包装に標章を付する」ものではないため,商標法が定める商標の「使用」には当たらない。
(3)被請求人が「LSG-○○○」を表示した図面及び送り状をアイシン精機に送付する行為について
ア ガスエンジン発電機の商標が本件商標であったとしても,1対1の「委託生産」においては,商取引の実態上,本件商標の機能は失われている。
イ 披請求人がガスエンジン発電機の自社規定であると主張する乙第7号証の「デンヨー製品の概要」には,「LSG-○○○」に関する記載は存在しない。
自社規定にない製品番号を図面に表示しても,製品,図面及び本件商標の関係が不明であり,本件商標の「使用」とはならない。
ウ 被請求人の社内規定である乙第7号証の「デンヨー製品の概要」には「LSG-○○○」に関する規定が存在しない以上,社内においても同一の製品であることが認識されていないため,そもそも,取引者及び需要者において,「LSG-○○○」が本件商標と社会通念上同一の商標と判断されることは常識的にあり得ない。
エ 「図面」及び「送り状」は,本来,広告的使用を目的としたものではない。「図面」は,製作上の必要性からガスエンジン発電機の詳細仕様の表示を目的とするものであり,かつ,アイシン精機へは送付されていない。「送り状」(物品受領書を含む)は,被請求人,製品の受領者及び運送業者の3者間において,商品の受渡しを確認する目的のために作成され使用されているものである。したがって,「取引書類」には送り状及び物品領収書が含まれるが,本件においては,1対1の取引しか存在しないため,「送り状」に本件商標又はそれに類似する商標を記入しても,商標法第2条第3項第8号が定める「取引書類に標章を付して展示,若しくは頒布」する行為には当たらないため,広告的使用にはならず,商標の「使用」にはならない。この点,「頒布」とは「広く分けて配ること」を意味するため,少なくとも2者以上に配られていなければ頒布とはいえず,本件のように1者のみの場合,広告的使用にはならない。
(4)被請求人とアイシン精機のガスエンジン発電機の製造に係る契約書の不存在について
ア 請求人は,文書提出命令申立書(平成29年6月20日)を提出し,被請求人が,アイシン精機との間で,(ア)ガスエンジン発電機の製造に関するOEM契約書を締結している事実,(イ)1対1の部品供給契約書を締結している事実,又は,(ウ)契約が締結されていない事実について,いずれの契約状態にあるかを明らかにすることを求めたが,これに対して,被請求人は第1回口頭審理において,「契約書は存在しない」と主張したため,請求人は本申立てを取り下げた。
イ したがって,被請求人とアイシン精機との間でガスエンジン発電機の製造に関するOEM契約書及び製造契約書は存在しないことが確定した。ところで,アイシン精機はトヨタグループの1社で(甲5),資本金450億円,従業員数110,357人(連結)の大企業であり(甲6),海外企業を含めて国際的な取引を行っているため,その部品調達に際して同社が発注先企業と製造に関する契約書を締結せずに,製造を委託することは,工業製品製造上の商習慣としてあり得ないものである。
(5)被請求人は,ガスエンジン発電機の最終需要者からガス会社へ注文があり,そのガス会社がアイシン精機へ注文し,アイシン精機がガスエンジン発電機の部品として被請求人へ発注すると主張するが,ガス会社からの発注書は提示されなかった。また,アイシン精機からの発注書も提示されず,乙第28号証の1及び7の「生産台数連絡書」が提示されたのみであり,同連絡書には契約事項はまったく記載されていない。しかも,同連絡書に記載されている形式は「GECC60A2ND」又は「GECC60A2NRD」であり,本件商標ではない。したがって,被請求人とアイシン精機との間に契約書がなく発注書もない状況下で,被請求人がガスエンジン発電機をアイシン精機に製造納品しているとはいえず,本件商標も使用されていない。
(6)使用に係る新規の証拠について
ア 乙第22号証の1ないし17(マスキングのないアイシン精機への送り状)について,アイシン精機1社宛てのものしか存在しないから,少なくとも,被請求人は,ガスエンジン発電機について,アイシン精機との1対1の部品供給に限定されていることが裏付けられている。また,乙第22号証の1及び2には「発電機LSG-6PR2」と表示され,乙第22号証の3には「LSG-6PR」,乙第22号証の4には「LSG-6PRII」,乙第22号証の5ないし17には「LSG-6PR2」と表示され,それぞれ異なる商標が使用されており,これらの派生的な商標の全てが本件商標「LSG」の使用となることはあり得ない。よって,本件商標の使用には当たらない。
イ 乙第23号証(マスキングのない販売管理システムの出荷データのアウトプット)について,乙第22号証の各号と照合すると,例えば,乙第22号証の3(製造番号3860075)には「LSG-6PR」とされているが,それに対比する乙第23号証の1頁No.24(製造番号3860075)では「発電機LSG-6PR2」と表示されており相違している。また,乙第22号証の4(製造番号3873575?578)には「LSG-6PRII」とされているが,それに対比する乙第23号証の1頁No.25?28(製造番号3873575?578)では「発電機LSG-6PR2」と表示されており相違している。したがって,送り状(乙22)と出荷データのアウトプット(乙23)において,付された商標が相違しているため,被請求人が統一的に本件商標の商標権を管理していたとはいえない。よって,本件商標の使用には当たらない。
ウ 乙第24号証(アイシン精機の部品表)について,被請求人は,乙第24号証の図面の作成年を2014年とするが(証拠説明書),乙第24号証では2014年に作成されたものであることが判読できないため確認できず,証拠にはならない。
エ 乙第25号証(被請求人のガスエンジン発電機の図面)について,乙第25号証の1は作成年が2012年のもので「LSG-6」と記載され,乙第25号証の2は作成年が2004年のもので「LSG-6PR」と記載されている。そして,「P」「R」の記号は,被請求人の主張によれば,「P:系統連系仕様」,「R:ラジエータ仕様」である。したがって,新しいものが「-6」であるのに対して,古いものが「-6PR」として新規の仕様が追加されているため相矛盾しているので,乙第25号証は信用できない。また,乙第25号証はいずれも要証期間外のものである。よって,本件商標の使用には当たらない。
オ 乙第26号証(アイシン精機の図面)について,被請求人は乙第26号証に「LSG-6」を組付けしたものである旨が表示されていると主張する。しかしながら,「LSG-6」は乙第22号証(送り状)及び乙第23号証(出荷データのアウトプット)には全く表示されていない呼称で,乙第26号証で新規に派生した商標であり,本件商標とも異なっているため,ここでも統一的な商標の管理が行われていない。また,乙第26号証は2004年のものであり,要証期間外のものである。よって,本件商標の使用には当たらない。
カ 乙第27号証(アイシン精機からの設計変更書)について,被請求人は,乙第27号証の品名に「発電機LSG-6PR」が表示されていると主張するが,乙第27号証の品名は(カタカナで記入)と指定されているにもかかわらず,乙第27号証には漢字と記号で「発電機LSG-6PR」と表記されているため,記載ルールから逸脱している。その理由は,アイシン精機が社外へ送付する「設計変更申請書」又は「設計変更申入書」で社内ルールから外れた書類を社外へ送付するとは考えられないため,被請求人が,本件の証拠にするために,特許庁へ提出前に「発電機LSG-6PR」と書き直したものとうかがわれる。また,乙第27号証は2005年のものであり,要証期間外のものであるから,本件商標の使用には当たらない。
キ 乙第28号証の1及び2(アイシン精機の生産台数連絡書)について,被請求人は,アイシン精機の「GECC60A2N」及び「GECC60A2ND」の表示が,ガスエンジン発電機であるとし,乙第27号証の品番及び品名を示し,並びに甲第2号証にも「GECC60A2ND」の表示があると主張するが,(ア)乙第27号証にはいずれも「GECC60A2N」と表記されるが,甲第2号証には「GECC60A2ND」と表示され相違している。(イ)そもそも,乙第28号証はアイシン精機の書類であり,自社の形式を表示しているもので,本件商標を表示しているものではない。(ウ)甲第2号証は,アイシン精機のカタログであり,3枚目の仕様欄に機種「GECC60A2ND」と表示されているが,一方,発電機は「デンヨー株式会社製 MG-6」と表示されているとおり,アイシン精機がデンヨー製のガスエンジン発電機を採用して,それが本件商標を使用する商品であるとの関係を明示するものではない。(エ)乙第28号証の2の最下段の2016年5月分の計画で,希望納期の「日」が削除されており,証拠が改変されていることがうかがえ,信用できない。よって,乙第28号証の1及び2は,本件商標とガスエンジン発電機との関係を示すものではなく,また,本件商標の使用にも当たらない。
ク 乙第28号証の3(被請求人の生産計画書)について,再び,「LSG-6PR2」の商標を使用している。その理由は,被請求人の社内基準書の「デンヨー製品の概要」(乙7)において,ガスエンジン発電機も本件商標「LSG」を呼称する製品も掲載されていないためであり,統一的な商標の使用が行われていないものである。よって,本件商標の使用には当たらない。
ケ 乙第28号証の4(被請求人の生産工程表)について,2016(平成28年)5月の生産工程表と思われるが,2016年3月以降の送り状が提出されていないため,乙第28号証の4(生産工程表)と照合ができない。よって,乙第28号証の4は証拠として認められない。
コ 乙第28号証の5(被請求人の社内発注入力)について,2016年3月以降の送り状が提出されていないため,乙第28号証の5(被請求人の社内発注入力)と照合できない。よって,乙第28号証の5は証拠として認められない。
サ 乙第28号証の6(アイシン精機の電子メール)について,被請求人は,ガスエンジンコージェネレーションユニットの納期変更の電子メールであると主張するが,乙第28号証の6の電子メールは,本件商標もガスエンジン発電機も表示されていないため,どのような製品に関するものかが不明である。よって,乙第28号証の6は証拠として認められない。
シ 乙第28号証の7(アイシン精機の生産台数連絡書)について,乙第28号証の1及び2と同様に,「GECC60A2N」及び「GECC60A2ND」の表示のみにより,アイシン精機がデンヨー製のガスエンジン発電機を採用して,それが本件商標を使用する商品であるとの関係を明示できるものではない。よって,乙第28号証の7は証拠として認められない。
ス 乙第28号証の8(被請求人の生産計画書)について,乙第28号証の3と同様に,本件商標の使用には当たらない。また,被請求人は,「当初計画通り,5月に生産されることとなりました(乙28の8)」と主張しているが,乙第28号証の8では7月に生産することになっており,相違している。
セ 乙第28号証の9(被請求人の検査成績表)について,全て「形式LSG-6PR2(GEGC60A2)」と表示されており,乙第28号証の1,2及び7には「GECC60A2N」及び「GECC60A2ND」と表示されたものと相違している。よって,乙第28号証の9は,その他の乙第28号証とは関係がないものであり,証拠として認められない。
ソ 乙第36号証の陳述書は,元アイシン精機の社員によるものであるところ,同人は,製品カタログ(甲2)において,デンヨー製の発電機の型式として「MG-6」が使用され,「LSG-6」が使用されていないことについては,「少し戸惑っております」と述べた上で,「LSG-6」がアイシン精機の社内で使用されていない理由を,同社の技術部門からカタログを作成する部門に,デンヨー製品の型式が「MG-6」から「LSG-6」に変わったことが伝わっていなかったものと考えられる旨述べているが,単なる憶測にすぎず,本陳述書では,「LSG-6」と「MG-6」が同一の工業製品であることは証明されていない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第36号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標権者について
本件商標権者は,発電機,溶接機,コンプレッサその他の製品の製造・販売及びそれらに関連するサービスの提供を事業内容とする企業で,取扱製品のうち「エンジン発電機」は業界一の実績を有する被請求人の主力製品である。
2 本件商標の使用について
(1)被請求人の商品に使用される「LSG-○○○」の表示について
ア 被請求人は,エンジン駆動発電機(エンジン発電機)を主力製品の一つとしており,これまで,ガソリンを燃料とするガソリンエンジン発電機,軽油を燃料とするディーゼルエンジン発電機を製造し,需要者に提供してきた実績がある。そして,ディーゼルエンジン発電機の一つのモデルである定置型ディーゼルエンジン発電機(機種名は「DSG-○○○」)に加えて,燃料をLPガス又は都市ガスとするガスエンジンモデルという位置づけで,「LSG-○○○」を機種名とするガスエンジン発電機を開発・製造している。
すなわち,被請求人は,定置型ディーゼルエンジン発電機及びガスエンジン発電機を表す標識として,それぞれ,「DSG」及び「LSG」の表示を採択し,それに続けて「DSG-○○○」,「LSG-○○○」のごとく,製品の規格・品質等に係る仕様を表す英文字・数字を表示することとしており,具体的には,以下に示すような規格・種別等に係る仕様を表す英文字・数字の組合せをもって,その表示をしている(乙6,乙7)。
頭に位置する数字:発電機定格出力(kW)
P:系統連系仕様(「Grid Parallel」の「P」)
M:マルチ切替器仕様
I:自立型(「Independence」の「I」)
R:ラジエータ冷却仕様
末尾の数字「2」:モデルチェンジを表す
イ 小括
このように,被請求人は,ガスエンジン発電機を表す「LSG」の標識に続く形で,ハイフンを介して製品の規格・品質等に係る仕様を表す英文字・数字の組合せで構成される記号を結合させた「LSG-○○○」の表示(乙1?乙5)をもって,ガスエンジン発電機の取引(製造・販売)をしている。なお,形式名を「機種名/シリーズ名+定格出力+エンジンメーカー・仕様等」とする表示構成は同業他社においても採られているところ(乙8),このような実情に照らしたときには,「LSG-○○○」の表示において,「LSG」の部分のみが自他商品識別標識として機能し得る状況にあるといえるものである。
(2)被請求人とアイシン精機との取引関係について
ア アイシン精機に供給する製品について
被請求人は,平成11年(1999年)から,アイシン精機との間でガスエンジン発電機の開発・設計・委託製造に関する計画,商談を進めており,ガスエンジン発電機「マイクロガスコージェネレーションシステム」の開発に関する覚書(乙9。以下「覚書」という。),秘密保持覚書(乙10。以下「秘密保持覚書」という。)及び秘密保持契約書(乙11。以下「秘密保持契約書」という。)を交わしている。
なお,覚書の有効期間は,2000年10月1日から2002年3月31日となっているが,それ以降は,当事者間での黙示の合意の下,要証期間を含めて現在も継続している状況となっている(乙9)。
この点に関連し,被請求人とアイシン精機との間にガスエンジン発電機の開発・設計・委託製造に関する取引関係があることを示唆するものとして,両者のメンバーが参加した会議の議事録,被請求人がアイシン精機に配布した製品の説明資料,アイシン精機のメンバーから被請求人のメンバー宛てに送信された電子メールのプリントアウトを提出する(乙12?乙14)。
上記覚書の第1条及び第2条にあるとおり,アイシン精機は,東京ガス株式会社(以下「東京ガス」という。)から受注したガスエンジン発電機の開発を被請求人に委託することとなっており,被請求人は,エンジンその他の部品・パーツの有償支給を受けて,自社の発電機を搭載した「マイクロガスコージェネレーションシステム」の総合組立て及び設定を行い,最終製品としてのガスエンジン発電機を製造して,アイシン精機に供給することになっている(乙9)。
また,被請求人は,ガスエンジン発電機の開発・設計・製造にあたって図面を作成し,製造委託者,すなわち,アイシン精機との間でも図面をもって製品の確認を行っており,その際には,図面には被請求人が製造・販売する「LSG-6PR」の表示がなされており(乙15の1・2),これらの図面は,アイシン精機の製品カタログ(甲2)2枚目下方に表示された図面に対応するものとなっている。
したがって,被請求人は,アイシン精機から製造委託を受けたガスエンジン発電機を,「LSG-6PR」その他の「LSG-○○○」を機種名のもとでアイシン精機と取引を行っているものである。
イ ガスエンジン発電機の製造から納品について
被請求人は,アイシン精機から製造委託を受けたガスエンジン発電機を福井工場で製造し,それをアイシン精機に直接納品する流通形態を採っている(乙6)。さらに,当該製品を納品するに際しては,被請求人は,複写式の送り状(乙16)に,送付先,機種名,製造番号,数量,日付その他の必要事項を記入し,捺印した上で,「送り状(控・正)」又は「送り状(控)」を切り取り,残りの「送り状(正)」又は「送り状」及び「物品受領書」を封筒に入れて運送するドライバーに託すとともに,アイシン精機は,製品が届いたら,製品現品を確認して,「送り状(正)」又は「送り状」及び「物品受領書」に受領印を押印又は署名し,運送ドライバーに託すか,又は,郵送で営業企画部物流課(福井工場)に返送することになる(乙6)。そして,「送り状(控)」及び「物品受領書」等は,発行者の営業企画部物流課(福井工場)で一定期間保管することになっている(乙6)。
上記のような状況の下,被請求人は,乙第2号証及び乙第3号証の1ないし17をもって「送り状(控・正)」又は「送り状(控)」を提出しているが,これらは当該複写式の送り状の一部を構成するものであり,これらに対応する,アイシン精機から被請求人に返送された「物品受領書」の写しを併せて提出する(乙17の1?8)。
ウ 小括
以上のとおり,被請求人は,アイシン精機から製造委託を受けた「LSG-6PR」,その他の「LSG-○○○」の品名に係るガスエンジン発電機を福井工場で製造し,送り状とともにアイシン精機に発送して,アイシン精機が現実に製品を受領し,その証として,被請求人に「物品受領書」を返送していることが認識できる。
(3)被請求人が「LSG-○○○」を表示した図面及び送り状をアイシン精機に送付する行為について
ア 本件商標と「LSG-〇〇〇」の表示との関係について
被請求人からアイシン精機宛ての送り状(乙2,乙3),図面(乙15),物品受領書(乙17)では,ガスエンジン発電機の機種名として「LSG-○○○」の表示が使用されている。
そして,実際の取引で使用されている機種名「LSG-○○○」において,「LSG」の表示部分はガスエンジン発電機を表す標識として,「○○○」の表示部分はガスエンジン発電機の規格・種別等に係る仕様を表す記号として位置づけられ,自社が製造するガスエンジン発電機を製品の仕様(○○○で表示)により使い分けがなされて,「LSG」シリーズのガスエンジン発電機の取引(製造・販売)に資されているものである。
よって,アイシン精機その他の取引者及び需要者もまた,取引で使用する「LSG-○○○」の表示のうち,「○○○」を商品の規格・種別等を表す記号・符号と理解,認識し,この部分を捨象した「LSG」の表示をもって,被請求人の商品と他社の商品(ガスエンジン発電機)とを区別する標識と捉えると考えられる。
したがって,被請求人がアイシン精機との取引において,ガスエンジン発電機について使用する「LSG-6PR」その他の「LSG-○○○」の表示は,本件商標と社会通念上同一の商標に当たるものである。
イ 被請求人が「LSG-○○○」を表示したガスエンジン発電機に係る図面及び送り状をアイシン精機に送付する行為について
被請求人は,アイシン精機から製造委託を受けたガスエンジン発電機の開発・設計・製造の段階で使用する図面に「LSG-6PR」その他の「LSG-○○○」の機種名を表示し,また,製品をアイシン精機に出荷する際に,同じく「LSG-6PR」その他の「LSG-○○○」の機種名を送り状に記載して発送し,さらに,アイシン精機が,製品を受領後に被請求人に返送する,複写式の送り状の一部を構成する「物品受領書」にも,同じく「LSG-6PR」その他の「LSG-○○○」の機種名が表示されている。
これらの図面及び送り状は,ガスエンジン発電機を製造する被請求人が,その供給先であるアイシン精機に対して送付するものであり,そのような行為は,商標法第2条第3項第8号でいうところの「商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為」に該当するものである。また,乙第2号証及び乙第3号証が示す送り状並びにそれらに対応する乙第17号証の物品受領書の一部は,要証期間中のものであり,被請求人とアイシン精機との間で取引されるガスエンジン発電機が本件審判の請求に係る指定商品「交流発電機,直流発電機」に包含されることも明らかである。
(4)本件商標の使用の事実について
ア ガスエンジン発電機が取引される場面での本件商標の使用について
(ア)被請求人がアイシン精機から製造委託を受けたガスエンジン発電機に,両者が共通の番号・記号を使用し,共有していることについて
被請求人が,アイシン精機から製造委託を受けたガスエンジン発電機の開発・設計・製造にあたって図面を作成し,アイシン精機との間でも図面をもって製品の確認を行い,その際に,被請求人の図面に「LSG-6PR」の表示が記載されている(乙15の1・2)。
アイシン精機の「部品表」(乙24)は,アイシン精機が業務上使用し,管理するものであり,ここには,大別して「アイシン部品一覧表」と「デンヨー(株)一覧表」が掲載されている。そして,「デンヨー(株)一覧表」の左側第1行目の「デンヨー(株)部品番号」及び「品名」の欄に「A5100 000203B」及び「発電機」の記載が,同じく,「デンヨー(株)一覧表」の左側第2行目の「デンヨー(株)部品番号」及び「品名」の欄に「A52130 00312A」及び「制御箱」の記載がある。
これらの「部品番号」及び「品名」に対応するのが,被請求人の図面(乙25の1)の右下「図面番号」に記載された「A51000 00203B」,及び,同じく,被請求人の図面(乙25の2)の右下「図面番号」に記載された「A52130 00312A」である。なお,これら2つの図面の右下「型式」の欄に,それぞれ,「LSG-6」(乙25の1)及び「LSG-6PR」(乙25の2)の記載があるのが確認できる。
さらに,アイシン精機が業務上作成し,被請求人に支給する品名「エンジンアッセンブリ,エムジーシー,クイズジェネレーター」の図面(乙26)は,アイシン精機から被請求人に支給されるエンジンと乙第25号証の1の図面が示す被請求人の発電機との組立図で,右下に「本部品は,エンジンアッセンブリ,エムジーシーに,デンヨー(株)製発電機 型式LSG-6を組付けしたものである。」との記載がある。
以上のとおり,被請求人とアイシン精機との間でのガスエンジン発電機の取引関係においては,両者は,共通の番号・記号を使用し,製品の番号・記号に対する認識を共有して,そのもとで取引がなされているものである。
(イ)本件商標及びアイシン精機が使用する品名(機種名)が同一の商品について使用されていることについて
被請求人とアイシン精機との間で行われるガスエンジン発電機の委託製造に係る取引では,製品の設計変更の申請が行われることもある。そこで,被請求人は,ボンネット塗装の塗料の変更を申し入れるためにアイシン精機に提出した複写式の「設計変更申請書」及びその申請どおりに対応することを示唆するアイシン精機からの回答書に相当する「設計変更申入書」の写しを提出する(乙27の1・2)。同「設計変更申請書」及び「設計変更中入書」の「品番」及び「品名」の欄には,それぞれ,「GECC60A2N」及び「発電機LSG-6PR」の表示が記載されていることが確認できる。
すなわち,被請求人とアイシン精機との間でのガスエンジン発電機の委託製造に係る取引においては,前者が使用する「LSG-6PR」の表示と,後者が使用する「GECC60A2N」の表示とが同一の商品(ガスエンジン発電機)について使用されており,被請求人及びアイシン精機は,自社の表示(品名・機種名等)と共に取引先の表示(品名・機種名等)をも認識,共有し,両者の表示をもって,開発・設計・製造・供給といったガスエンジン発電機の取引を行っていることは明らかである。
なお,アイシン精機が使用する「GECC60A2ND」の表示(乙24)は,同社の製品カタログ(甲2)の3枚目にある「仕様」及び「価格」欄に「機種(名)」として記載されており,同「仕様」欄の「発電機(形式)」の項目には「デンヨー」の記載がある。これは,「GECC60A2ND」を機種名とするアイシン精機の商品「ガスエンジンコージェネレーションユニット」に被請求人が製造するガスエンジン発電機が搭載されていることを示唆するものである。なお,「GECC60A2N」及び「GECC60A2ND」は,アイシン精機の「ガスエンジンコージェネレーションユニット」の「GECC60A」シリーズの機種である。
イ 被請求人とアイシン精機との間でのガスエンジン発電機の実際の取引の流れ及びその裏付けとなる取引の一連の流れにおける書類等について
「送り状」(乙2)及び「物品受領書」(乙17の8)は,被請求人が,品名「LSG-6PR」のガスエンジン発電機6台を,要証期間中の平成28年7月11日にアイシン精機に出荷したことを示すものである。
アイシン精機は,平成27年12月24日付けの「6kWコージェネ生産台数連絡書」により,同社機種名「GECC60A2ND」の商品「ガスエンジンコージェネレーションユニット」を平成28年4月11日納期で6台希望することを被請求人に通知し(乙28の1),その後,同連絡書で発注した商品の納期を平成28年5月23日に変更する旨の連絡書を平成28年1月26日付けで被請求人に送付した(乙28の2)。
被請求人は,アイシン精機を含む各取引先からの受注を受けて,ガスエンジン発電機の製造現場である福井工場での「生産計画書(平成28年3月)」及び「生産日程表」を作成し,受注内容を自社の販売管理システムに入力して「社内発注書」を作成し,正式な受注とする(乙28の3?5)。上述した,アイシン精機からの受注内容は,「生産計画書(平成28年3月)」では,6/10頁の中ほどに記載されたNo.266,型式「LSG-6PR2」で,生産月「5月」のロットNo「S1605-266」の6台に反映されている(乙28の3)。また,「生産日程表」では,1/5頁の中ほどに記載された機種コード「001083」,機種名「LSG-6PR2」,ロットNo「S1605-266」,S No.「3910165?3910170」(製造番号)で,5月16日生産予定とされている(乙28の4)。そして,販売管理システムでは,社内発注番号「F1610210」,ロットNo「S1605-266」,機種名「LSG-6PR2」とする「社内発注書」が作成され,正式な受注となった(乙28の5)。
この受注に関連して,その後,アイシン精機から,被請求人に供給すべき部品の一部の納期が遅れる旨の連絡が被請求人にメールでなされ(乙28の6),これを受けて,アイシン精機は,本件発注に係る,同社機種名「GECC60A2ND」の商品「ガスエンジンコージェネレーションユニット」6台の納期を平成28年7月1日に変更する旨の「6kWコージェネ生産台数連絡書」を平成28年5月13日付けで被請求人に送付した(乙28の7)。なお,この結果,「生産計画書(平成28年5月)」では,被請求人の「生産計画書(平成28年3月)」(乙28の3)に記載された生産計画に影響があったものの,本件受注に係る,No.266,型式「LSG-6PR2」,生産月「5月」のロットNo「S1605-266」のガスエンジン発電機6台は,当初の計画どおり,5月に生産されることとなった(乙28の8)。
そして,本件受注に係るガスエンジン発電機6台は,平成28年7月5?7日に完成し,同7月11日に外観検査を受けている(乙28の9)。これに続いて,「送り状」(乙2)及び「物品受領書」(乙17の8)が示すとおり,ガスエンジン発電機6台は被請求人の福井工場からアイシン精機に出荷され,被請求人の販売管理システムに本件受注に係る出荷データが記録された(乙28の10)。
したがって,要証期間である平成28年7月11日付けの「送り状」(乙2)及び「物品受領書」(乙17の8)が示すとおり,同日に,被請求人がアイシン精機にガスエンジン発電機を現実に出荷したことはより明らかなものとなった。
ウ アイシン精機の製品カタログにある発電機「MG-6」と使用商品に搭載する発電機「LSG-6」について
アイシン精機の製品カタログ(甲2)の「仕様」欄に発電機の形式として記載されている「MG-6」は,ガスエンジン発電機についての被請求人とアイシン精機との商談の初期段階で発電機単体の仮の型式名として使われていたものであり,その際に用いたのが仕様書(案)(乙32)である。その後の納入仕様書(乙34)には,アイシン精機の「ガスエンジンコージェネレーションユニット」の「GECC60A1N」「GECC60A1P」とともに,「デンヨー型式LSG-6PR」の表示が,また,外形図の下方に,発電機単体としての型式として「発電機型式:LSG-6」,その右方「型式」欄にガスエンジン発電機としての型式として「LSG-6PR」の表示が確認できる。
製品カタログ(甲2)に,被請求人の型式名「LSG○○○」ではなく「MG-6」の表示があることについては,乙36の陳述者が取引の現場で業務に携わっていた当時の状況から察するところ,製品の開発・設計・製造を行う技術部門からカタログを作成する部門に,被請求人の型式名である「LSG-6」「LSG-6PR」「LSG-6PR2」が伝わっていなかったために,仮の型式名として使用された「MG-6」が変更されることなく,そのまま今日の製品カタログまで使用され続けているのではないかと考えられ,これが,製品カタログにおける型式名の記載についてのアイシン精機としての認識ということになる。
エ 小括
以上のとおり,東京ガスその他のガス事業者がアイシン精機にガスエンジン発電機を搭載した製品の製造を発注し,これに基づいて,アイシン精機が被請求人にガスエンジン発電機の製造委託を行い,当該製造委託に基づいて被請求人がガスエンジン発電機を製造し,アイシン精機に納品して,さらに,アイシン精機が,自社に納品されたガスエンジン発電機を搭載した製品をガス事業者に販売しているという一連の取引関係が存在することが明らかとなり,さらに,被請求人が,当該取引において,要証期間に,本件商標をガスエンジン発電機について現実に使用していることがより明白な事実として認識できる。
(5)総括
以上のとおり,被請求人の提出に係る,乙各号証を総合的に勘案すれば,本件商標と社会通念上同一の商標が,本件商標権者により,ガスエンジン発電機について日本国内で継続して使用されていると認められるところであり,本件商標は,要証期間に,日本国内において,取消しの請求に係る指定商品について,本件商標権者により使用されているものである。

第4 当審の判断
1 証拠及び当事者の主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)本件商標権者は,発電機,溶接機,コンプレッサその他の製品の製造・販売を事業とする企業である。同社が製造するガスエンジン発電機は,平成15年度に「LSG-6PR」,同16年度ないし同18年度に「LSG-5.5IR」,同16年度ないし同27年度に「LSG-6PR2」などの機種名にて販売されてきたが,同21年度ないし同27年度においては,専ら「LSG-6PR2」のみが製造,販売された(乙1,5)。
(2)本件商標権者は,平成11年10月19日から同23年6月20日にかけて,アイシン精機との間で,「6kWクラス マイクロガスコージェネレーションシステム」と称するコージェネレーション機能を備えたガスエンジン発電機(以下,同発電機の改良型を含めて「使用商品」という場合がある。)の製品開発について,アイシン精機からエンジン,付属部品及びインバータ等の有償支給を受け,本件商標権者の発電機を搭載した使用商品の総合組立て,ぎ装設計及び制御設計業務を行い,アイシン精機に納入することを条件に,「覚書」,「マイクロコージェネ開発に関する秘密保持覚書」,「秘密保持契約書」,「マイクロガスエンジン発電機の開発 会議議事録」,「マイクロガスコージェネセット新規開発 概要説明」,「図面」及び「設計変更申請書」などの使用商品に関する契約書,説明資料及び製品図面等を取り交わした(乙6,9?15,24?27(枝番号を含む。))。
なお,使用商品に関する契約書で最新のものは,平成23年6月20日付けの「秘密保持契約書」(乙11)であって,その有効期間は,同年4月25日から同24年3月31日までであるところ,その後,当事者間で書面による契約が行われた事実は認められない。
(3)本件商標権者は,使用商品及びそれに搭載する発電機の型式名(機種名)をそれぞれ「LSG-6PR」及び「LSG-6」として製品化した後,平成16年に,使用商品の配管出入位置の変更,吸排気口の改良などを行い,その型式名(機種名)を「LSG-6PR2」に変更した以降も,要証期間内である平成28年7月11日に至るまで継続して,アイシン精機とは使用商品に係る取引を行っていた(乙2?6,14,15,17,22,23,25?27,28の3?5・8?10,34)。
なお,使用商品の型式名(機種名)については,ハイフンの前にある「LSG」が「定置型ガスエンジン発電機」を,ハイフンの後にある「6」が「発電機定格出力(kW)」を,「P」が「系統連系仕様」を,「R」が「ラジエータ冷却仕様(水道冷却などのラジエータ無し仕様との区別のため)」を,「2」が「モデルチェンジ・バージョン2」を示している(乙6)。
(加えるに,当初,本件商標権者がアイシン精機向けに作成した平成11年12月7日付けの「仕様書(案)」(乙32)には,マイクロコージェネ用発電機(発電機単体)の型式が「MG-6」と記載されていたが,その後,本件商標権者が同社向けに作成した平成14年4月付け訂正(当初同13年12月作成)の「納入仕様書」(乙34。なお,当該納入仕様書には,アイシン精機の開発担当者による承認印がある。)には,常用ガスエンジン発電機(使用商品)の型式が「GECC60A1N」「GECC60A1P」(デンヨー型式 LSG-6PR)と記載されており,かつ,当該発電機の外形図に搭載される発電機単体の型式は「LSG-6」であることが明記されている。)
(4)アイシン精機の商品「ガスエンジンコージェネレーションユニット」(機種名:GECC60A2ND)に係るカタログ(甲2。平成26年6月現在のもの。)によれば,当該商品は,コージェネレーション機能を備えたガスエンジン発電機(発電機定格出力は6kW,系統連系仕様,水冷エンジン仕様。)であると認められる。
また,当該カタログ(甲2)に掲載されている当該商品の外形図面(左側面図,正面図)は,本件商標権者が作成した平成14年4月12日付け及びその改良版と思われる同16年8月24日付けの使用商品(型式名:LSG-6PR)に係る外形図面(乙15の1・2)のうち,特に後者の改良版と思われる外形図面(乙15の2)と対応していることが認められる。
そして,当該カタログ(甲2)の3葉目の「仕様」の欄には,「発電機 型式 デンヨー株式会社製MG-6」と記載されている。
さらに,アイシン精機が平成26年に作成したガスエンジン発電機(機種名「GECC60A2ND」)に係る部品表(乙24,35)には,これに搭載される発電機が,本件商標権者の発電機「LSG-6」であることが記載されている。
(5)平成17年2月に,本件商標権者が申請し,アイシン精機の承認を得た使用商品(型式名:LSG-6PR)の塗装仕様の変更に係る設計変更申請書及び設計変更申入書(乙27の1・2)には,「納入品番」欄に「GECC60A2N」及び「品名(カタカナで記入)」欄に「発電機 LSG-6PR」とそれぞれ手書きによる記載がある。
(6)アイシン精機は,本件商標権者に対して,平成27年12月24日付けの「6kWコージェネ生産台数連絡書」と題する書面をもって,「型式」を「GECC60A2ND」とする商品6台につき,その希望納期を同28年4月11日として生産するよう連絡したが,その後,当該商品に係る本件商標権者への支給部品の遅れなどから,最終的に,その希望納期を同年7月1日とする旨の変更連絡を同様の書面にて同年5月13日に行った(乙28の1・2・6・7)。
上記生産連絡を受けた本件商標権者は,当該商品6台の「型式」を「LSG-6PR2」,各「製造番号」を「3910165」から「3910170」として製造し,いずれも,平成28年7月11日までに性能検査,外観検査を終え,同日,当該製造に係る商品をアイシン精機に出荷した(乙2,17の8,28の8・9)。
(7)本件商標権者は,上記(6)のアイシン精機への出荷の際,同社宛てに,「品名・型式」欄に「LSG-6PR2」,「製造番号」欄に「3910165-170」及び「数量」欄に「6」と手書きした平成28年7月11日付けの「送り状」及び同「物品受領書」を発行し,これらの伝票を受け取ったアイシン精機から,同月12日付けの受領印が押印された当該「物品受領書」の返却を受けた(乙2,17の8)。
(8)元アイシン精機の技術開発部門エネルギー技術部エンジンチームリーダーによる陳述書(乙36)には,要旨,(ア)当初,アイシン精機が,ガスエンジン発電機の試作用として,本件商標権者に製造を依頼した発電機単体の型式名は,本件商標権者から「MG-6」であると伝えられたこと,(イ)その後,アイシン精機は,本件商標権者に対し,発電機単体ではなく,ガスエンジン発電機自体の製造を依頼することになり,それに伴って,本件商標権者が,当該ガスエンジン発電機の自社型式名を「LSG-6PR」ないし「LSG-6PR2」として,また,当該ガスエンジン発電機に搭載する発電機単体の自社型式名を「LSG-6」として使用していたことをアイシン精機の技術部門は認識していたこと,(ウ)アイシン精機の製品カタログ(甲2)に,当該ガスエンジン発電機に搭載される本件商標権者製の発電機単体の型式名が「LSG-6」ではなく,「MG-6」となっていたのは,アイシン精機の技術部門からカタログ作成部門に,同発電機単体の型式名が上記のとおり変更されたことが伝わっていなかったことによるものと思われること,の各記載がある。
2 上記1認定の事実によれば,以下のとおり認めることができる。
(1)本件商標の使用時期及び使用商品について
ア 本件商標権者は,アイシン精機から,当初,平成27年12月24日付けで発注(生産連絡)を受けた,アイシン精機における型式(機種名)を「GECC60A2ND」とするコージェネレーション機能を備えたガスエンジン発電機(発電機定格出力は6kW,系統連系仕様,水冷エンジン仕様。)6台を,本件商標権者においては自社型式(機種名)を「LSG-6PR2」,各「製造番号」を「3910165」から「3910170」として製造管理し,いずれも,平成28年7月11日までに性能検査及び外観検査を終え,同日,当該製造に係る商品を出荷し,翌12日,アイシン精機に納品しているところ,本件商標権者における型式(機種名)を「LSG-6PR2」とする商品は,同社の発電機「LSG-6」を搭載した使用商品,すなわち,アイシン精機との間で共同開発したコージェネレーション機能を備えたガスエンジン発電機(発電機定格出力は6kW,系統連系仕様,ラジエータ冷却仕様。)を指すのであるから,本件商標権者は,アイシン精機から発注を受けたコージェネレーション機能を備えたガスエンジン発電機を同社に6台納品したものと認められる。
イ そして,上記アの納品にあたって本件商標権者とアイシン精機との間で接受された伝票(「送り状」及び「物品受領書」)には,「品名・型式」欄に「LSG-6PR2」,「製造番号」欄に「3910165-170」及び「数量」欄に「6」と手書きされており,これらを受け取ったアイシン精機から,平成28年7月12日付けの受領印が押印された当該「物品受領書」の返却を受けていることから,本件商標権者は,アイシン精機にコージェネレーション機能を備えたガスエンジン発電機(使用商品)を納品する際,これらの伝票に,当該ガスエンジン発電機に関して「LSG-6PR2」との標章を付したものと認められる。
ウ よって,本件商標権者は,要証期間に含まれる平成28年7月12日,アイシン精機に対し,コージェネレーション機能を備えたガスエンジン発電機(使用商品)に関する取引書類(送り状)に,「LSG-6PR2」との標章(以下「本件使用商標」という。)を付して頒布したものと認めることができる。
そして,使用商品は,本件審判の請求に係る指定商品の範ちゅうに含まれる商品である。
(2)本件商標と本件使用商標の社会通念上の同一性について
本件使用商標は,「LSG-6PR2」の文字からなるところ,その構成は,「LSG」の文字と「6PR2」の文字とを「-(ハイフン)」を介して表してなるものであるから,視覚上,「LSG」と「6PR2」とに分離して把握されるものと認められる。
そして,本件商標権者においては,本件使用商標の構成中,「LSG」の文字部分は,「定置型ガスエンジン発電機」であることを表示する部分として,また,「6PR2」の文字部分は,「6」が「発電機定格出力」を,「P」が「系統連系仕様」を,「R」が「ラジエータ冷却仕様」を,「2」がモデルチェンジのバージョン番号を,それぞれ表示する部分として使用している(乙6)ことからすれば,ハイフンの後にある「6PR2」の文字部分は,当該商品の性能,バージョン等を表示する部分であるにすぎないといえる。このことは,本件商標権者とともに使用商品の開発・設計に携わったアイシン精機においても,使用商品が本件商標権者の発電機「LSG-6」を搭載した定格出力が6kW,系統連系仕様,ラジエータ冷却仕様からなる商品(コージェネレーション機能を備えたガスエンジン発電機)であって,その型式名(機種名)が「LSG-6PR」から平成16年の改良によって「LSG-6PR2」に変更されたこと(乙2,17の8,24,27の1・2)も承知していたのであるから,ハイフンの後ある「6PR2」の文字部分は,当該商品の性能,バージョン等を表示する部分であるにすぎないことを十分理解していたはずであって,本件使用商標は,「LSG」の文字部分を独立した要部として認識し得る。
本件商標は,「LSG」の欧文字よりなるところ,本件商標と本件使用商標の構成中「LSG」の文字部分とは,そのつづりを同一にするものであるから,本件使用商標は,その他の文字を伴っている構成であるが,当該文字部分を要部として認識し得る以上,本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
(3)小括
上記(1)及び(2)によれば,本件商標権者は,要証期間に含まれる平成28年7月12日に,日本国内において,本件審判の請求に係る指定商品に含まれる使用商品の取引書類に,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して頒布したものと認められる。
本件商標権者による上記行為は,商標法第2条第3項第8号にいう「商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為」に該当する。
3 請求人の主張について
(1)請求人は,本件商標権者とアイシン精機との1対1の取引しか存在しないから,「送り状」に本件商標又はそれに類似する商標を記入しても,商標法第2条第3項第8号が定める「取引書類に標章を付して展示,若しくは頒布」する行為には当たらないため,広告的使用にはならず,商標の「使用」にはならない,また,「頒布」とは「広く分けて配ること」を意味するため,少なくとも2者以上に配られていなければ頒布とはいえない旨主張する。
しかしながら,上記2(1)のとおり,本件商標権者は,要証期間に含まれる平成28年7月12日,アイシン精機に対し,コージェネレーション機能を備えたガスエンジン発電機(使用商品)を納品する際に使用した取引書類(送り状)に,「LSG-6PR2」との標章(本件使用商標)を付して頒布したものと認めることができるから,当該行為は,商標法第2条第3項第8号にいう「商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為」に該当する。なお,当該送り状は,使用商品の取引相手であるアイシン精機に交付されるものであるから,現実に取引相手に交付されている以上,これを頒布したということができる(参考:東京高裁平成16年(行ケ)第150号同1610月27日判決,知財高裁平成18年(行ケ)第10105号同18年8月9日判決)。
(2)請求人は,要証期間内において,本件商標権者とアイシン精機との間で使用商品の製造に関するOEM契約書又は製造契約書は存在しないことが明らかになっているから,本件商標権者は,本件商標に係るガスエンジン発電機をアイシン精機に納品していないものとみなすべきである旨主張する。
しかしながら,上記1(3),(5)ないし(7)のとおり,本件商標権者は,使用商品及びそれに搭載する発電機単体の型式(機種名)をそれぞれ「LSG-6PR」及び「LSG-6」として製品化した後,平成16年に,使用商品の配管出入位置の変更,吸排気口の改良などを行い,その型式(機種名)を「LSG-6PR2」に変更した以降も,アイシン精機とは使用商品に係る取引を継続し,要証期間内である平成27年12月24日に,アイシン精機から,コージェネレーション機能を備えたガスエンジン発電機(使用商品)6台分の発注を受けたことから,同28年7月12日に,本件使用標章を付した送り状及び物品受領書とともにその完成品を同社に納品したものと認められる。
(3)請求人は,使用商品に係る設計変更申請(申入)書(乙27)の品名欄は「(カタカナで記入)」と指定されているにもかかわらず,漢字と記号で「発電機LSG-6PR」と表記されているため,記載ルールから逸脱しており,また,生産台数連絡書(乙28の2)の最下段にある2016年5月分の計画で,希望納期の「日」が削除されており,証拠が改変されていることがうかがえ,信用できない旨主張する。
しかしながら,当該設計変更申請(申入)書(乙27)及び当該生産台数連絡書(乙28の2)において,請求人が指摘するような軽微な記載ルールの逸脱や今回発注分とは関係のない日にちの削除が認められるとしても,それだけでは各記載内容が信用できないということにはならない。
(4)請求人は,アイシン精機の生産台数連絡書(乙28の1・2・7)について,型式名「GECC60A2N」及び「GECC60A2ND」との表示しかなく,それが本件商標「LSG」を使用する商品であるとの関係を明示できるものではなく,また,本件商標権者の検査成績表(乙28の9)は,全て「形式LSG-6PR2(GEGC60A2)」と表示されており,「GECC60A2N」及び「GECC60A2ND」と表示されたものと相違している旨主張する。
しかしながら,上記2(1)のとおり,本件商標権者は,アイシン精機からの生産台数連絡書(乙28の1・2・7)に基づいて,アイシン精機における型式(機種名)を「GECC60A2ND」とするコージェネレーション機能を備えたガスエンジン発電機6台を,本件商標権者においては自社型式(機種名)を「LSG-6PR2」,各「製造番号」を「3910165」から「3910170」として製造管理し,いずれも,平成28年7月11日までに性能検査及び外観検査(乙28の9)を終え,同日,当該製造に係る商品を出荷し,翌12日,アイシン精機に納品しており,その際,本件商標権者とアイシン精機との間で接受された伝票(「送り状」及び「物品受領書」)には,「品名・型式」欄に「LSG-6PR2」,「製造番号」欄に「3910165-170」及び「数量」欄に「6」と手書きされており,これらを受け取ったアイシン精機から,平成28年7月12日付けの受領印が押印された当該「物品受領書」の返却を受けていることから,アイシン精機と本件商標権者とが使用するそれぞれの型式に係る商品は,同一の使用商品であると認めることができる。
また,本件商標権者の検査成績表(乙28の9)は,全て「形式LSG-6PR2(GEGC60A2)」と表示されているとしても,括弧書きされた「(GEGC60A2)」と「GECC60A2N」及び「GECC60A2ND」との相違は,末尾における「N」及び「ND」部分の有無にすぎず,そのことのみをもって,使用商品「LSG-6PR2」とは別の商品を示唆させるものとまではいえない。
(5)請求人は,乙第25号証の1の作成年が2012年(平成24年)で「LSG-6」と記載され,乙第25号証の2の作成年が2004年(平成16年)で「LSG-6PR」と記載されており,新しいものが「-6」であるのに対して,古いものが「-6PR」として新規の仕様が追加されているため相矛盾している旨主張する。
しかしながら,乙第25号証の1は,使用商品に搭載される本件商標権者の発電機「LSG-6」単体の組立図であるから,そもそも,使用商品において「系統連系仕様」を表す「P」や「ラジエータ冷却仕様」を表す「R」が付されるものではないと解されるし,請求人が「作成年が2012年(平成24年)」と述べているのは,当該組立図の2回目の訂正年をいうのであって,1回目の訂正は2001年(平成13年)になされている。これに対し,乙第25号証の2は,使用商品の制御箱に関する図面であって,その作成年は2004年(平成16年)になされた2回目の訂正年に相当するものであるから,その型式が「LSG-6PR」となっていたとしても,発電機単体の型式との関係で何ら矛盾するものではない。
(6)請求人は,本件商標権者の生産工程表(乙28の4)は,平成28年3月以降の送り状(乙3又は乙22)が提出されていないため,当該生産工程表と照合ができない旨主張する。
しかしながら,当該生産工程表に記載のS No.(製造番号)「3910165?3910170」は,送り状(乙2)及び物品受領書(乙17の8)に記載の製造番号「3910165-170」と一致しているといえる。
(7)請求人は,本件商標権者の社内発注入力(乙28の5)は,平成28年3月以降の送り状が提出されていないため,当該社内発注入力と照合できない旨主張する。
しかしながら,当該社内発注入力に記載の社内発注番号「F1610210」は,送り状(乙2)の「適要」欄に記載された「(F1610210)」と一致する。
(8)請求人は,アイシン精機の電子メール(乙28の6)は,本件商標もガスエンジン発電機も表示されていないため,どのような製品に関するものかが不明である旨主張する。
しかしながら,上記1(2)のとおり,本件商標権者は,アイシン精機からエンジン,付属部品及びインバータ等の有償支給を受けて,使用商品であるコージェネレーション機能を備えたガスエンジン発電機を製造しているところ,当該電子メールの件名には,「5月,6月 生産分のアイシン コージェネ支給依頼書を送信」とあり,メール本文には,アイシン精機からのインバータ等の部品の支給が遅れることを本件商標権者に連絡する旨の記載があるから,当該電子メールは使用商品に関するものであると推認できる。
(9)請求人は,アイシン精機の製品カタログ(甲2)には,ガスエンジン発電機(機種名:GECC60A2ND)に搭載されているデンヨー製の発電機は「MG-6」と記載されており,使用商品に搭載されている「LSG-6」とは異なっているから,両者が同一の工業製品であることは証明されていない旨主張する。
しかしながら,本件商標権者が,マイクロコージェネ用発電機の仕様書(案)として,平成11年12月の段階でアイシン精機に提示していた発電機単体の型式は「MG-6」(乙32)であったが,その後,平成14年4月付け訂正(当初同13年12月作成)の常用ガスエンジン発電機(使用商品)の納入仕様書の段階では,これに搭載される発電機単体の型式は「LSG-6」となっており,アイシン精機の開発担当者(技術部門)も当該納入仕様書を承認していた(乙34)のであるから,少なくともアイシン精機の開発担当者においては,使用商品に搭載される発電機単体の型式が「MG-6」ではなく,「LSG-6」であることを理解していたものと認められる。
そうすると,当該カタログに発電機単体の型式名として「MG-6」と表示されていたことをもって,アイシン精機のガスエンジン発電機(型式:GECC60A2ND)と使用商品(型式:LSG-6PR2)とが同一の商品であることを否定する理由にはならない。
(10)以上のとおり,請求人の主張は,いずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり,被請求人は,要証期間に日本国内において,本件商標権者が,本件審判の請求に係る指定商品に含まれる「ガスエンジン発電機」について,本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)の使用をしていたことを証明したと認められる。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すことはできない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2018-09-28 
結審通知日 2018-10-01 
審決日 2018-10-29 
出願番号 商願平11-109501 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Z07)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 巻島 豊二板谷 玲子 
特許庁審判長 小出 浩子
特許庁審判官 田村 正明
平澤 芳行
登録日 2000-10-27 
登録番号 商標登録第4428495号(T4428495) 
商標の称呼 エルエスジイ、エルエスジー 
代理人 柏 延之 
代理人 佐藤 泰和 
代理人 今岡 智紀 
代理人 宮嶋 学 
代理人 高田 泰彦 
代理人 朝倉 悟 
代理人 永井 浩之 
代理人 中村 行孝 
代理人 本宮 照久 
代理人 矢崎 和彦 

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