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審決分類 |
審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない W09 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W09 |
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管理番号 | 1349740 |
審判番号 | 不服2018-1597 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-02-05 |
確定日 | 2019-02-14 |
事件の表示 | 商願2016-119839拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 本願商標 本願商標は,「AI会計」の文字を標準文字で表してなり,第9類「コンピュータソフトウェア,コンピュータプログラム(ダウンロード可能なソフトウェア)」を指定商品として,平成28年10月27日に登録出願されたものである。 第2 原査定の拒絶の理由の要点 原査定は,「本願商標は,『AI会計』の文字を標準文字で書してなるところ,その構成中の『AI』の文字は,『人工知能』等の意味を有する『artificial intelligence』の略語と容易に認められるものであり,『会計』の文字は,『金銭・物品の出納の記録・計算・管理』等の意味を有する語である。そして,会計用ソフトウェアにおいて,『AI(人工知能)が自動的に仕訳をしたり,入力をサポートしたり,作業を判別したりする機能を有する商品』の取引が行われている実情が認められる。そうすると,本願商標を,その指定商品中『AI(人工知能)を利用した会計処理用のコンピュータソフトウェア』に使用した場合,これに接する取引者,需要者は,単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示したものとして認識するというべきである。また,本願商標を前記商品以外の商品に使用するときは,商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,前記商品以外の商品に使用するときは,商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから,商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨を認定,判断し,本願を拒絶したものである。 第3 当審における証拠調べ通知 本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項16号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べを実施した結果発見した事実を,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,請求人に対し,平成30年7月24日付け証拠調べ通知書によって通知し,相当の期間を指定して,意見を述べる機会を与えた。 第4 証拠調べ通知書に対する請求人の回答 請求人は,上記第3の「職権証拠調べ通知書」に対して,指定した期間内に何ら意見を述べていない。 第5 当審の判断 1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について 本願商標は,上記第1のとおり「AI会計」の文字からなるところ,「AI」の文字は,「人工知能」等の意味を有する「artificial intelligence」の略語であり,「会計」の文字は,「金銭・物品の出納の記録・計算・管理」等の意味(ともに「広辞苑 第七版」 株式会社 岩波書店)を有するものであるから,全体として「AI(人工知能)を活用した会計」程の意味合いが理解されるものである。そして,「AI会計」の文字については,以下のインターネット情報や新聞記事によれば,「人工知能を活用した会計」程の意味合いを示すものとして使用され,また,「AI」の文字が本願商標の指定商品との関係で「人工知能」を意味するものとして使用されていることが認められる。 (1) 「AI会計」の文字が「人工知能を活用した会計」程の意味合いを示すものとして使用されている例(下線は合議体による。以下同じ。) ア マイナビ会計士のウェブサイト 「横浜銀行がfreeeと提携し,AI会計をスタート」の見出しの下,「横浜銀行の『AI会計』を利用するためには,freeeが認定する『freee2つ星認定アドバイザー』か『freee3つ星認定アドバイザー』の会計事務所と顧問契約を結んでいることが必要条件になっている。」との記載がある。 https://cpa.mynavi.jp/news/2017/20170104_1.html イ 日本経済新聞(2016年10月10日 朝刊 9ページ) 「茨城県信組,AI会計処理でフリーと提携。」の見出しの下,「信用組合で最大規模の茨城県信用組合は人工知能(AI)を使った会計処理サービスを提供するfreee(フリー,東京・品川)と業務提携を結ぶ。組合員向けに同社のクラウド会計処理ソフトを活用したり,新たな融資サービスの開発を検討したりする。同社と信組の提携は初めて。」との記載がある。 ウ 一般社団法人AI会計協会のウェブサイト 「AI会計協会について」の見出しがある。 http://www.aikaikei.org/about/ エ こくちーずのウェブサイト 「平成30年11月18日 日商簿記検定試験2級・3級講習会」の見出しの下,「平成30年11月18日 日商簿記検定試験の合格に向けた講習会を開催します。AI会計システムを使いこなすための必須の知識を今のうちに取得しよう。」及び「AI会計システムを使いこなすために必須の知識を取得するチャンスです。」との記載がある。 https://kokucheese.com/event/index/523657/ オ ZDNet Japanのウェブサイト 「PwCあらた,AIで異常仕訳を抽出する『会計仕訳検証システム』を開発」との見出しの下,「PwCあらた有限責任監査法人(PwCあらた)は4月16日,『AI会計仕訳検証システム』を開発し,4月から試験運用を開始したと発表した。」との記載がある。 https://japan.zdnet.com/article/35117873/ カ MFクラウド会計のウェブサイト 「小柳会計事務所」の紹介ページに,「事務所の紹介」の見出しの下,「当事務所は従業員5人と小さな会計事務所ですが,MFクラウド会計などAI会計を積極的に取り入れ,色々なお客様に対応しております。」との記載がある。 https://mfc-partner.moneyforward.com/24102/ (2) 「AI」の文字が本願商標の指定商品との関係で「人工知能」を意味するものとして使用されている例 ア ニュースイッチのウェブサイト 「Google,オープンソースAIソフト『テンソルフロー』をアップグレード」の見出しの下,「米グーグルは機械学習によるオープンソースの最新版人工知能(AI)ソフト「テンソルフロー(TensorFlow)1.0」について,15日に提供を始めた。」との記載がある。 https://newswitch.jp/p/8018 イ 日本経済新聞のウェブサイト 「良品だけで不良判断,NECがAIソフト」との見出しの下,「NECは8日,人工知能(AI)を使った工場の品質検査用ソフトで,不良品のサンプルがなくても稼働するソフトを開発したと発表した。AIは良品の画像データだけで不良品のパターンも学習し,良品と不良品の判別ができるようになる。国内工場は不良品の発生率が低い場合が多く,AIが学習する不良品のサンプルが少ないという課題があった。歩留まりが高い工場でもAIを導入しやすくなる。」との記載がある。 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3019506008052018X20000/ ウ WEDGE Infinityのウェブサイト 「『AIソフトも万能ではない』永世7冠・羽生善治氏」との見出しの下,「AI(人工知能)を搭載した将棋ソフトについて『AIソフトも万能ではなくミスをする。人間とは考え方が全く違うので,それを照らし合わせて分析して,前に進むのが理想ではないか』と述べ,AIの手法も取り入れながら将棋が進歩するのが望ましいとの考えを示した。」との記載がある。 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/11396 エ MONOistのウェブサイト 「人工知能ニュース:AIを活用した姿勢推定ソフトウェアを開発,一般のカメラ画像にも対応」との見出しの下,「Morpho Pose Estimatorは,AI(人工知能)の要素技術であるディープラーニングを活用。」との記載がある。 http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1805/29/news054.html オ SankeiBizのウェブサイト 「NEC,米でAIソフト新会社 ビッグデータ解析を省力化」の見出しの下,「NECは26日,人工知能(AI)を使ってデータ分析を行う独自のソフトウエアについて開発・販売などを手がける新会社『dotData(ドットデータ)』を米国に設立したと発表した。」との記載がある。 https://www.sankeibiz.jp/business/news/180427/bsj1804270500005-n1.htm カ 毎日新聞のウェブサイト 「安川電機 AI子会社を設立」の見出しの下,「安川電機は19日,製品検査や故障予知など製造現場向けの人工知能(AI)サービスを開発・販売する完全子会社『エイアイキューブ』(東京)を1日付で設立したと発表した。開発のスピードを上げ,安川電機以外にも幅広くサービスを販売するのが狙い。・・・安川電機の主力製品である産業用モーターやロボットなどを通じ,製造現場で収集できる膨大なデータを生かしてAIソフトを開発する。」との記載がある。 https://mainichi.jp/articles/20180320/k00/00m/020/043000c キ 山陽新聞デジタルのウェブサイト 「『AI』で音声から議事録作成 県がソフト導入,職員負担を軽減」との見出しの下,「人の音声を文字に変換する音声認識技術を活用し,民間企業がクラウドサービスで提供している議事録作成支援ソフトを活用。同ソフトは人工知能(AI)が自ら学習するディープラーニング(深層学習)機能を備え,使うほど変換の精度が高まるという。」との記載がある。 http://www.sanyonews.jp/article/691687 そうすると,本願商標は,全体として,「AI(人工知能)を活用した会計」の意味合いを理解,認識させるものであるから,これをその指定商品中,「AI(人工知能)を利用した会計処理用のコンピュータソフトウェア・コンピュータプログラム(ダウンロード可能なソフトウェア)」について使用した場合,これに接する需要者は,その商品が,AI(人工知能)を活用する機能を備えた,会計処理用途のコンピュータソフトウェア・コンピュータプログラム(ダウンロード可能なソフトウェア)であるという商品の品質を理解,認識するにすぎない。 してみれば,本願商標は,単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示するもので,自他商品の識別標識としては認識し得ないものというのが相当である。 したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,前記商品以外の商品について使用するときには,商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるので同法第4条第1項16号に該当する。 2 請求人の主張 請求人は,本願商標は,全体として原査定において認定,判断された意味合いを暗示させる場合があるとしても,「AI」の語は「愛のローマ字読み」の意味を有する語であり,全体として,「愛の会計」程の意味合いを生じる場合が有り,あるいは,仕訳だけではなく,管理および報告する技法に人工知能を応用することも考えられ,かつ,現実に「AI会計」の語が,原査定において認定,判断された意味合いで使用されている裏付け情報を提示されていないので,いまだ漠然とした意味合いを想起させるにとどまるものであり,これをもって直ちに商品の品質,内容を具体的かつ直接的に表したものと理解,認識させるとまではいい難いものである旨,また,出願人側において調査するも,本願の指定商品を取り扱う業界において,「AI会計」の文字が,商品の具体的な質等を表示するものとして普通に用いられていると認めるに足る事実は発見できなかったから,本願商標は,その構成全体をもって特定の意味を有することのない一種の造語として認識されるというのが相当であり,これをその指定商品について使用しても,商品の品質等を表示したものとはいえず,自他商品の識別標識としての機能を十分に果たし得るものである旨主張する。 しかしながら,本願商標を構成する「AI会計」の文字は,平成30年7月24日付け証拠調べ通知書により通知したとおり,「人工知能を活用した会計」程の意味合いを示すものとして使用されているものであって,本願商標の指定商品との関係においては,「AI(人工知能)を利用した会計処理用のコンピュータソフトウェア」であることを理解,認識させるにすぎないことは,上記1で述べたとおりである。 よって,請求人の主張は採用することができない。 3 まとめ 以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当し,登録することができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-12-12 |
結審通知日 | 2018-12-17 |
審決日 | 2018-12-28 |
出願番号 | 商願2016-119839(T2016-119839) |
審決分類 |
T
1
8・
272-
Z
(W09)
T 1 8・ 13- Z (W09) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 池田 光治 |
特許庁審判長 |
薩摩 純一 |
特許庁審判官 |
大森 友子 須田 亮一 |
商標の称呼 | エイアイカイケー、アイカイケー、カイケー |
代理人 | 佐藤 富徳 |