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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W4143
審判 全部申立て  登録を維持 W4143
管理番号 1348950 
異議申立番号 異議2017-900335 
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-01 
確定日 2019-02-01 
異議申立件数
事件の表示 登録第5970451号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5970451号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5970451号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成よりなり、平成28年4月4日に登録出願、第41類「ショーの運営及び上演,ショーの演出,興行場の座席の手配,娯楽の提供,ディスコの提供,ナイトクラブの提供,音楽イベントの企画,コンサートによる演奏,パーティーの企画」及び第43類「レストラン及びバーにおける飲食物の提供,喫茶店・ビヤホールにおける飲食物の提供,ケータリング,ホテルにおける宿泊施設の提供」を指定役務として、同29年6月14日に登録査定、同年8月10日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第23号証を提出した。
1 引用商標
申立人が、登録異議の申立ての理由として引用する商標は、以下の5件である(甲2)。
(1)欧州連合商標登録第1470772号(以下「引用商標1」という。)は、別掲2に示すとおりの構成からなり、EUIPO(欧州連合知的財産庁)において、商標登録されているものである。
(2)欧州連合商標登録第4067302号(以下「引用商標2」という。)は、別掲3に示すとおりの構成からなり、EUIPO(欧州連合知的財産庁)において、商標登録されているものである。
(3)欧州連合商標登録第5798939号(以下「引用商標3」という。)は、別掲4に示すとおりの構成からなり、EUIPO(欧州連合知的財産庁)において、商標登録されているものである。
(4)欧州連合商標登録第5859574号(以下「引用商標4」という。)は、別掲5に示すとおりの構成からなり、EUIPO(欧州連合知的財産庁)において、商標登録されているものである。
(5)欧州連合商標登録第6741722号(以下「引用商標5」という。)は、別掲6に示すとおりの構成からなり、EUIPO(欧州連合知的財産庁)において、商標登録されているものである。
以下、これらをまとめていうときは「引用商標」という。
2 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、もともと商標権者と2名の申立人の計3名の共同所有であるところ、商標権者が申立人の承諾を得ることなく、自己の単独名義にて出願したものであるから、悪意に基づく出願であることは明らかである。さらに、健全な法感情からして、共同所有に係る商標を他の共有者の承諾を得ることなく単独で出願する行為は、条理上許されるべきものではなく、また、公正な取引秩序の維持を究極の法目的とする商標法の精神からしても、かかる行為は認められるべきでないことは明らかであるから、いわば剽窃的な出願と同視し得るものであり、公序良俗に反するものである。
3 商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、少なくともスペインにおいて「カフェにおける飲食物の提供」及び「音楽の演奏」の出所を表示する申立人等の商標として広く認識されている引用商標と同一又は類似であって、もともと共同所有であるにもかかわらず、他の共有者の承諾を得ることなく、商標権者が単独で出願したものであるから、申立人に高額で買い取らせたり、申立人の国内参入を阻止する等の目的で、いわば先取り的に出願されたものである。

第3 当審における審尋
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第19号に該当する旨主張しているところ、当該主張において明確とはいえない点があることから、次の事項について、申立人に対し、平成30年5月28日付けで審尋をし、回答書を求めた。
1 引用商標が、スペインにおいて「カフェにおける飲食物の提供」及び「音楽の演奏」について周知性を獲得しているといえること及びそれを示す証拠。また、申立人が提出した甲第3号証(「アリカンテ上訴裁判所の判決文」)について、その経緯及び内容の詳細についての説明。
2 スペインで周知性を獲得しているとされる引用商標は、誰の業務に係る役務を表示するものと需要者に認識されているのか、そしてその業務の主体となる者との関係で、本件商標権者が「他人」であるといえること及びそれを示す証拠。
3 本件商標が、我が国において「不正の目的をもって使用するもの」とする具体的な証拠。
4 我が国での商標登録出願の経緯が「公序良俗を害するおそれがあるもの」とする具体的な証拠。

第4 申立人の回答
前記第3の審尋に対し、申立人は以下のとおり回答した。
1 引用商標のスペインにおける周知性について
引用商標が少なくともスペインにおいて名声(評判)を得ていたことを立証する証拠として、WIPO仲裁調停センターによる2016年9月21日付けの決定書を提出する(甲10)。
この事件は、カナダ国オンタリオ州トロント所在のContact Privacy Inc.Customer011235504が登録したドメイン名「cafedelmar.com」の移転を求めて、スペイン国イビザ在住のカルロス アンドレア ゴンサーレス氏(以下「申立人ゴンサーレス」という。)、ホセ レス ビアモンテ氏(以下「申立人ビアモンテ」という。)及びラマン ギラル ブロト氏(以下「商標権者ブロト」という。)の3名が2016年7月20日付けでWIPO仲裁調停センターに紛争処理の解決を申し立てた事案である。
この決定書中の「C..Registered and Used in Bad Faith」の第4及び第5パラグラフには以下の記述がある。
「申立人は、1980年にイビザにおいてCafe del Mar(決定注:「Cafe」の文字中の「e」の文字は、アクセント記号が付されたもの。以下同じ。)という名称のバーを開業し、CAFE DEL MARというタイトルの下で商業化された音楽制作に鑑みて、申立人の事業が1990年代に少なくともスペインにおいて評判(名声)を得たことが証明された。被申立人は、申立人及び商標登録CAFE DEL MARの下での彼らの事業について肯定も否定もしなかったが、紛争処理パネルは、問題のドメイン名の登録前に音楽制作に関連して申立人が証明した商標の名声に鑑みて、被申立人はCAFE DEL MARに関する申立人の権利を認識していたと認定する。」(決定注:当該パラグラフにおける申立人は「カルロス アンドレア ゴンサーレス氏、ホセ レス ビアモンテ氏及びラマン ギラル ブロト氏」の3名であり、被申立人は「Contact Privacy Inc.Customer011235504」である。)
上記から明らかなとおり、引用商標が、少なくともスペインにおいて1990年代からバーにおける飲食物の提供及び音楽の演奏について周知であることは立証できたものと思料する。
なお、2016年7月20日の紛争処理申立時には、商標「Cafe del Mar」の登録が共有であったことから、我が国における商標権者ブロトも申立人の一人であったが、 現在では、欧州における商標「Cafe del Mar」の登録は、全て我が国における申立人ゴンサーレス及び申立人ビアモンテの2名のみとなっていることを付言する(甲2、甲4、甲6)。
また、商標「Cafe del Mar」の周知性を示す多数のウェブサイト等の資料を提出する(甲11?甲23)。
2 アリカンテ上訴裁判所の判決事案の経緯及び内容について
本件事案の主な経緯は、以下のとおりである。
(1)経緯
申立人ゴンサーレス、申立人ビアモンテ及び商標権者ブロトの3名は、ともに友人であり、1978年に事業のパートナーとなり、CAFE DEL MARに関する事業プロジェクトを共同で計画し、イビサのCAFE DEL MARという場所で事業を開始した。後に、当該プロジェクトは、商標CAFE DEL MARが多大な名声、評判を得た他の分野、例えば、音楽制作、生演奏、被服、商品化などの分野にも事業を拡大した。
同プロジェクトは、当初3名の事業パートナーが等しく資本提供し、申立人ゴンサーレス、申立人ビアモンテ及び商標権者ブロトのそれぞれがいくつかの特定の業務(例えば、会計、事務処理、広報、バーの日常管理など)を担当していた。この業務の配分の中で、申立人ゴンサーレス及び申立人ビアモンテの両名は、その当時、事務処理や会計業務および同様の業務の担当を身近な友人である商標権者ブロトを信じて任せていた。
CAFE DEL MARという名のバーは1980年6月に一般向けに営業を開始し、瞬く間に成功を収めた。3名のパートナーが費やした時間と努力により、この成功はもたらされたものであり、翌年以降もこのバーはその成功を拡大していった。それに続いて、商標CAFE DEL MARの下での音楽制作、生演奏、被服、商品化の分野についても、その著名な評判は、スペインだけにとどまらずに、世界的な規模で浸透していった。
ある時点で、共通の事業プロジェクトを正式なものにするために、3名のパートナーは、各々等分の資本参加によりいくつかの企業を設立するとともに、商標権者ブロトが共通の事業プロジェクトを代表して活動できるように、申立人ゴンサーレス及び申立人ビアモンテの両名は、商標権者ブロトの担当業務に関し、代表としての権限を付与した。この他にも、3名のパートナーは、「CAFE DEL MAR」の標章の下での共通の事業プロジェクトから生じる商標を含む知的財産権の主体となることが期待される企業として、各々等分の資本参加によりCAN GANGUIL、SOCIEDAD LIMITADAという会社を設立した。
しかし、実際には、商標権者ブロトは、彼のパートナー兼友人達からの信頼と、彼が共通の事業プロジェクトにおいて付与された役割(事務所処理及び管理業務)を自己利用しただけであり、しかも、あからさまな不誠実性、背信性に基づいて、彼は、彼のパートナー及び共同設立した企業を出し抜いて(除外して)、自己名義にて複数の商標「CAFE DEL MAR」を出願し登録を取得するに至った。
この点に関しては、上述したとおり、商標権者ブロトが共通の「CAFE DEL MAR」事業プロジェクトに帰属する複数の商標「CAFE DEL MAR」を出願し登録したとしても、これらの目的に使用された資金はすべて、「CAFE DEL MAR」事業プロジェクトを運営するために、商標権者ブロトが他の2名のパートナーと一緒に設立した共通の会社から投入されたものである。
換言すれば、スペインの裁判所によって肯定されたとおり、商標権者ブロトは、彼のパートナーの権利を詐欺して、「CAFE DEL MAR」事業プロジェクトの3名の創業者兼パートナーに帰属する複数の商標「CAFE DEL MAR」を彼の単独名義にて出願し登録しただけでなく、当該共通の事業プロジェクトからの資金を自己のために使用したのである。
申立人ゴンサーレス及び申立人ビアモンテの両名は、彼らのパートナーである商標権者ブロトの不道徳な行為を発見した後、いくつかの商標「CAFE DEL MAR」のスペイン登録及び欧州連合登録の共有所有権及び登録の取消し(事件によって異なるが)を求めて、 スペイン裁判所(欧州連合商標裁判所)に対し、彼を訴えたのが、本件訴訟である。
(2)判決の内容
判決の主な内容は、概略以下のとおりである。
商標権者ブロトの不誠実性、背信性を認定した第1審判決に続いて、上訴裁判所は以下の判決を下した。
「CAFE DEL MAR」事業プロジェクトは、申立人ゴンサーレス、申立人ビアモンテ及び商標権者ブロトの3名のパートナーに共通の共有プロジェクトである。「CAFE DEL MAR」の標章は、申立人ゴンサーレス、申立人ビアモンテ及び商標権者ブロトの3名のパートナーの共同所有である。「Cafe del Mar」標章の権利は、原告である自然人と被告の共同所有であることが確認できる。
したがって、裁判所の判決に従い、スペイン国及び欧州連合における「CAFE DEL MAR」の商標権は、申立人ゴンサーレス及び申立人ビアモンテ並びに商標権者ブロトの3名によって共有されている(即時手続における監視の対象となった商標であるため)。
商標権者ブロトは、「CAFE DEL MAR」の商標を自己名義にていくつか出願し登録したときに、背信行為をし(彼のパートナーを除外することにより)、彼のパートナーの権利を毀損した。
「商標権者ブロトが行った商標登録は、彼のパートナーの標章に化体する同一の法的期待権を持つ者の権利を毀損して背信的になされた。」
判決は、前述の共同所有権制度をスペイン商標法第46条の条項に明示的に求めており、これはスペイン民法典において共同所有制度に関する規則に由来する。この制度(当該民法典法392条および当該法律の以下の条項)によれば、
● 共同所有者は誰でも、当該共同体を毀損しない範囲に限り、共同所有のものを使用することができる。
● 共同所有のものを処分、使用許諾又は移転するためには、共同所有者の過半数の有効な合意が必要となる。
なお、この判決の結論は、甲第3号証の訳文中の第34頁目の中段の「私達は判決する。」以下に記載のとおりである。
3 引用商標の業務主体となる者との関係で、本件商標権者が「他人」であることについて
上述のとおり、商標権者ブロトが、共同所有者である他の2名、すなわち、申立人ゴンサーレス及び申立人ビアモンテを背信行為により裏切るまでは、この3名の業務に係る役務を表示するものとして需要者に認識されていた。
しかし、商標権者ブロトは、他の2名のパートナーから承諾を得ることなく背信行為により自己名義にて単独で本件商標を出願し登録を取得するに至ったものであることから、本件商標の登録出願時(2016年4月4日)はもとより、登録査定時においても、「他人」と同視すべきであることは疑いのない事実である。
4 我が国において「不正の目的をもって使用するもの」とする証拠について
スペインや欧州連合地域でもそうであったように、我が国においても、本来3名の共同所有に係る商標「CAFE DEL MAR」を他の2名の共有者の事前承諾を得ることなく、単独名義に出願し登録した事実は、とりもなおさず、我が国において第41類及び第43類の役務に関し、商標登録されていないことを奇貨として、抜け駆け的に権利化し、他の2名の共有者の市場参入を阻止する目的があったことは容易に推認できる。
つまり、上述した状況下において、本件商標権者が、我が国においても単独名義にて商標「CAFE DEL MAR」を登録した行為自体が我が国において「不正の目的をもって使用するもの」とする具体的な証拠となり得るものである。
5 我が国での商標登録出願の経緯が「公序良俗を害するおそれがあるもの」とする証拠について
東京高裁平成14年(行ケ)第94号、同年7月16日判決によれば、「商標法第4条第1項第7号に規定する『公序良俗を害するおそれがあるもの』には、社会の一般道徳観念に反するような商標等が含まれる、と解すべきであり、そして、上記『社会の一般道徳観念に反する』ような場合には、ある商標をその指定商品又は指定役務について登録し、これを排他的に使用することが、該商標出願人よりもより密接な関係を有する者等の利益を害し、剽窃的行為であると評することのできる場合も含まれ、このような商標を出願し登録する行為は、商標法第4条第1項第7号に該当するというべきである。」と判示されている。
してみれば、本件商標権者は、スペイン又は欧州連合において、自己と2名の申立人の共同所有にかかる商標「CAFE DEL MAR」を、他の共有者の承諾を得ることなく、無断で自己の単独名義にて出願した行為は、背信行為に基づく出願であることは明らかであり、さらには、健全な法感情からしても共同所有にかかる商標を他の共有者の承諾を得ることなく単独で出願する行為は、条理上到底許されるべきものでないばかりか、公正な取引秩序の維持を究極の法目的とする商標法の精神からしても到底容認されるべきものでないから、いわば剽窃的な出願と実質的に同視し得るものであり、公序良俗に反することは明らかである。
つまり、上述した状況下において、本件商標権者が、我が国においても単独名義にて商標「CAFE DEL MAR」を登録した行為自体が我が国において「公序良俗を害するおそれがあるもの」とする具体的な証拠となり得るものである。
最後に、商標法には、他の知的財産法規とは異なり、いわゆる冒認出願を直接規制する規定はないが、我が国における本件商標の出願経緯が本来3名の共有財産にかかる、少なくともスペインにおいて名声、評判を得た商標を他の2名の共有者の事前承諾なしに単独名義にて抜げ駆け的に出願した行為は、明らかに背信行為であり、剽窃的出願と実質的に同視し得るものであり、他の2名の共有者の我が国市場への参入を阻止することは容易に推認できることから、到底許容されるべきではなく、このような事案こそ、他の規定の弾力的な運用により、極力排除されねばならない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条1項第7号について
商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は商標登録をすることができないと規定しているところ、同号は、商標自体の性質に着目したものとなっていること、商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については、同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていること、商標法においては、商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば、商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条第1項第7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである。
そして、同号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきである(平成14年(行ケ)第616号、平成19年(行ケ)第10391号)。
2 本件商標の商標法第4条1項第7号該当性について
(1)本件商標は、別掲1に示すとおり、「Cafe del Mar」(「Cafe」の文字中の「e」の文字は、アクセント記号が付されたもの。以下同じ。)の文字を筆記体風に図案化した構成からなるものである。そして、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではなく、商標の構成自体が公序良俗に違反するようなものではない。
一方、引用商標2及び引用商標3は別掲3及び別掲4に示すとおり、本件商標と同一又は類似の標章であり、また、引用商標1、引用商標4及び引用商標5は、それぞれ別掲2、別掲5及び別掲6に示すとおり、本件商標と同一の構成文字からなる標章がその構成中に含まれているものである。
(2)申立人は、申立書及び回答書において、スペインでの裁判例(甲3)等を引用し、スペインにおいて引用商標は異議申立時点で商標権者と申立人の共有であったものであり、本件商標を他の共有者の承諾を得ることなく、無断で自己の単独名義で出願した行為は悪意に基づく出願であり、さらに、健全な法感情からして、共同所有にかかる商標を他の共有者の承諾を得ることなく単独で出願する行為は、条理上許されるべきものではなく、また、公正な取引秩序の維持を究極の法目的とする商標法の精神からしても、かかる行為は認められるべきでないことは明らかであるから、いわば剽窃的な出願と同視し得るものであり、公序良俗に反するものであると主張している。
(3)確かに、申立人が提出した回答書によれば、スペインでの判決(甲3)の内容として、前記第4の2(2)のとおり、「スペイン国及び欧州連合における『CAFE DEL MAR』の商標権は、申立人ゴンサーレス及び申立人ビアモンテ並びに商標権者ブロトの3名によって共有されている。商標権者ブロトは、『CAFE DEL MAR』の商標を自己名義にていくつか出願し登録したときに、背信行為をし(彼のパートナーを除外することにより)、彼のパートナーの権利を毀損した。商標権者ブロトが行った商標登録は、彼のパートナーの標章に化体する同一の法的期待権を持つ者の権利を毀損して背信的になされた。」及び「判決は、前述の共同所有権制度をスペイン商標法第46条の条項に明示的に求めており、これはスペイン民法典において共同所有制度に関する規則に由来する。」とされており、引用商標を含む「Cafe del Mar」の文字からなる標章の商標権は、スペインにおいては申立人及び商標権者の共有であるべきことがうかがわれる。
(4)しかしながら、我が国における本件商標の登録出願が上記判決のいう「背信行為」に該当するかについては具体的な記載は見当たらず、むしろ、前記第4の2(1)のとおり、商標権者と申立人とはもともと友人であり、1978年に事業のパートナーとなり、CAFE DEL MARに関する事業プロジェクトを共同で計画し、イビサのCAFE DEL MARという場所で共同で事業を行ったとされ、「CAFE DEL MARという名のバーは1980年6月に一般向けに営業を開始し、瞬く間に成功を収めた。3名のパートナーが費やした時間と努力により、この成功はもたらされたものであり、翌年以降もこのバーはその成功を拡大していった。・・・ある時点で、共通の事業プロジェクトを正式なものにするために、3名のパートナーは、各々等分の資本参加によりいくつかの企業を設立するとともに、商標権者ブロトが共通の事業プロジェクトを代表して活動できるように、申立人ゴンサーレス及び申立人ビアモンテの両名は、商標権者ブロトの担当業務に関し、代表としての権限を付与した。」との経緯もあるとされていることからすれば、商標権者ブロトが我が国において単独でした本件商標に係る登録出願は、3名のパートナーを代表して出願したものとみることもでき、直ちに剽窃的な出願と同視し得るということはできない。
さらに、申立人の主張及び提出した甲各号証を検討しても、商標権者が申立人の我が国への参入を阻止していることを認めるに足りる具体的な事実や、商標権者が申立人の事業を妨害し、不正の目的があることを裏付ける具体的な証拠を見いだすこともできない。
してみれば、スペインにおいて申立人と商標権者の共有に係る商標について、我が国において商標権者が単独で本件商標に係る登録出願を行ったとしても、当該出願は、その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような特段の事情があるものとまでは認められず、上記1にいう公序良俗を害するおそれがあるものとはいい難い。
その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足る証拠も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
商標法第4条第1項第19号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されているところ、申立人が提出した甲各号証からは、本件商標権者が我が国において不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実を見いだすことはできない。
また、スペインでの判決中に引用商標がスペインにおいて周知性を有する旨記載されているとしても、本件商標について他人の業務に係る役務を表示するものとしてスペインにおける需要者の間に広く認識されていることを認めるに足る具体的な証拠を見いだすことはできない。
してみれば、本件商標が当該引用商標と同一又はその構成中に含まれる標章と類似するとしても、本件商標は商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。
申立人は、「共有者の事前承諾を得ることなく、単独名義に出願し登録した事実は、とりもなおさず、我が国において第41類及び第43類の役務に関し、商標登録されていないことを奇貨として、抜け駆け的に権利化し、他の2名の共有者の市場参入を阻止する目的があったことは容易に推認できる。商標権者が、我が国においても単独名義にて商標『CAFE DEL MAR』を登録した行為自体が我が国において『不正の目的をもって使用するもの』とする具体的な証拠となり得るものである。」と主張しているが、スペインにおいて引用商標が申立人と商標権者の共有に係るものであったとしても、本件においては上記2(4)のとおり、商標権者が我が国において単独でした本件商標に係る登録出願が直ちに剽窃的な出願と同視し得るものであるとはいえないものであり、共有者の事前承諾を得ることなく、単独名義に出願し登録した事実のみをもって、直ちに我が国において不正の目的をもって使用するものであるとはいい難いから、申立人のかかる主張は採用できない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同第19号のいずれにも該当するものでなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標1) (色彩は原本参照。)


別掲3(引用商標2)


別掲4(引用商標3)


別掲5(引用商標4) (色彩は原本参照。)


別掲6(引用商標5) (色彩は原本参照。)


異議決定日 2019-01-24 
出願番号 商願2016-38337(T2016-38337) 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (W4143)
T 1 651・ 22- Y (W4143)
最終処分 維持 
前審関与審査官 飯田 亜紀 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 真鍋 恵美
鈴木 雅也
登録日 2017-08-10 
登録番号 商標登録第5970451号(T5970451) 
権利者 ラマン ギラル ブロト
商標の称呼 カフェデルマ、カフェデルマー、デルマ、デルマー 
代理人 特許業務法人RIN IP Partners 
代理人 黒川 朋也 
代理人 魚路 将央 
代理人 宮城 和浩 
代理人 宮城 和浩 
代理人 特許業務法人RIN IP Partners 
代理人 長谷川 芳樹 
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