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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W293032
審判 一部申立て  登録を維持 W293032
審判 一部申立て  登録を維持 W293032
審判 一部申立て  登録を維持 W293032
審判 一部申立て  登録を維持 W293032
管理番号 1348937 
異議申立番号 異議2018-900110 
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-05-01 
確定日 2019-01-25 
異議申立件数
事件の表示 登録第6018983号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6018983号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6018983号商標(以下「本件商標」という。)は、「NOSTER」の文字を太字で表してなり、平成29年5月30日に登録出願、第29類「乳製品,食用油脂,食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・食用魚粉・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。),加工野菜及び加工果実,食用たんぱく」、第30類「茶,コーヒー,ココア,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,食用グルテン,食用粉類」及び第32類「乳清飲料,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール,ビール製造用ホップエキス」並びに第1類、第3類、第5類、第16類、第35類、第42類及び第44類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同30年1月16日に登録査定され、同年2月9日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、以下の3件の登録商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである(以下、これらの商標をまとめていうときは「引用商標」という。)。
1 登録第5379390号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:「MONSTER」(標準文字)
登録出願日:平成22年7月8日
設定登録日:平成22年12月24日
指定商品:第32類「アルコール分を含まない飲料,清涼飲料,果実飲料」
2 登録第5057229号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲のとおり
登録出願日:平成18年6月9日
設定登録日:平成19年6月22日
指定商品:第32類「エネルギー補給用清涼飲料,スポーツ用清涼飲料,その他の清涼飲料,果実飲料,エネルギー補給用のアルコール分を含有しない飲料,スポーツ用のアルコール分を含有しない飲料,ビール風味の麦芽を主体とするアルコール分を含有しない飲料,その他のアルコール分を含有しない飲料」
3 登録第5393681号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:「MONSTER ENERGY」(標準文字)
登録出願日:平成22年7月8日
設定登録日:平成23年2月25日
指定商品:第32類「アルコール分を含まない飲料,清涼飲料,果実飲料」

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、その指定商品及び指定役務中の第29類、第30類及び第32類の「全指定商品」(以下「本件申立商品」という。)について、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第7号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第357号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標は、レタリングした英文字で「NOSTER」と横書きしてなるものであるのに対し、引用商標1は、標準文字で「MONSTER」と横書きしてなるものであるところ、本件商標を構成する全6文字は、引用商標1を構成する全7文字中の6文字と一致し、しかも、後半の連続する4文字「STER」がその配列を含めて一致するから、両者は、外観において相紛らわしい類似のものである。
また、本件商標から生じる称呼「ノスター」又は「ノースター」と引用商標1から生じる称呼「モンスター」とは、後半の連続する3音「スター」及びその配列が一致することに加え、語頭の音「ノ」と「モ」とが構成母音「o」を共通にし、音質が近似するもの、中間に位置する音「ー(長音)」と「ン」とが弱音で明瞭に聞き取り難いものであって、本件商標と引用商標1とを一連に称呼した場合は、語調、語感が近似し、明瞭に聴別することが困難であるから、両者は、称呼においても類似する。
さらに、引用商標2は、その構成中の「MONSTER」の文字部分が、爪の図柄及び「ENERGY」の文字部分から物理的に分離して配置されており、かつ、独特のデザインの書体の太字で大きく書され、独立して見る者の注意をひくように構成されていることから、「MONSTER」の文字部分が、取引者及び需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとなり、本件商標と引用商標2の「MONSTER」の文字部分とを比較対照すれば、両者が外観及び称呼において類似することもまた明らかである。
したがって、本件商標は、引用商標1及び引用商標2と類似のものである。
(2)本件申立商品は、引用商標1及び引用商標2に係る指定商品と同一又は類似のものを含む。また、これらの引用商標は、本件商標よりも先に登録出願されたものである。
(3)上記(1)及び(2)によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 申立人の使用に係る商標の著名性
(1)申立人による商標の使用
申立人の使用に係る商標(引用商標1ないし引用商標3を含む「MONSTER」。以下「申立人商標」という。)は、申立人が2002年に創設したエナジードリンク(エネルギー補給飲料)事業の新ブランド「MONSTER」エナジードリンクの基軸商標として、2002年から現在に至るまでの長年にわたり、継続して使用されている。
申立人の「MONSTER」エナジードリンクの製品シリーズは、2002年に米国における最初の製品「MONSTER ENERGY」(オリジナル版)が発売された後、我が国では2012年5月から販売を開始し、現在では我が国を含む世界100以上の国及び地域で販売されている。申立人は、2002年以降、現在まで継続して、当該ブランドから発売された数多くの異なる種類のドリンクの個別商品名の全てに「MONSTER」の文字を採択しており、当該各種ドリンク缶の正面に「MONSTER」の文字を特徴的なデザインの太字を用いて大きく目立つ態様で表示して使用している。
このように、「MONSTER」を基調とする商標を用いた申立人のエナジードリンク事業の成功は、経済界でも高い評価を受けている(甲2?33、51?58)。
現在までに国内発売された「MONSTER」エナジードリンクの製品シリーズは、「MONSTER ENERGY」、「MONSTER KHAOS」、「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」、「MONSTER ENERGY M3」、「MONSTER COFFEE」、「MONSTER ENERGY ULTRA」、「MONSTER ENERGY THE DOCTOR」、「MONSTER CUBA LIBRE」である(甲5?7、10、12?15、59?62、101?103、118、127?131、252?264、291、323?326)。
(2)広告及び販売促進活動
申立人の「MONSTER」エナジードリンクの広告及び販売促進活動は、世界の有名アスリート、レーシングチーム、スポーツ競技会、アマチュアスポーツ選手、音楽祭及びミュージシャンに対するスポンサー提供、スポーツ、音楽、コンピュータゲーム(eスポーツ)などの娯楽イベントの開催、米国ラスベガスの公共交通機関モノレールの「モンスター列車」の走行、これらのイベント開催などと関連して頻繁に実施される「MONSTER」エナジードリンクの販売キャンペーン、各イベント会場におけるサンプリング(サンプル配布)、2013年2月から2018年3月までの約5年の期間に国内で実施された販売プロモーションキャンペーンの応募当選者に対する様々な「モンスター限定グッズ」(爪の図柄や「MONSTER」を付したTシャツ、帽子、キーホルダー、ステッカー、ギター、バッグパック、エナジードリンク、クーラーボックス、冷蔵庫、自動車など総計70万点を超えるアイテム)の提供、「MONSTER」の文字を付したポスター・商品ネームプレート・チラシ・陳列棚・冷蔵庫などの店舗用什器の使用及び展示、遅くとも2013年から現在に至るまで約1?2月の頻度で定期的に発行されている新商品発売・懸賞キャンペーン・イベント開催情報などを掲載したプレスリリース、申立人ウェブサイト並びにソーシャルメディアを通じた情報発信を介して、2002年から現在まで世界規模で継続的に実施されている。これらの広告物及び販売促進物には、「MONSTER」及びその音訳「モンスター」の文字が独立の商品出所識別標識として認識される態様で使用されてきた(甲7?17、34?91、101?133、136?168、225?274、279?296、323?326、別紙3)。
申立人は、2002年から、ブレスレット、ラペルピン、キーホルダー、Tシャツ、スウェットシャツ、帽子、レーシングジャケット、手袋などのアパレル製品、運動用ヘルメット、バッグ類、ステッカー、傘、ビデオゲームなどの「MONSTER」ライセンス商品の製造販売を第三者に使用許諾している。当該ライセンス商品のカタログやオンラインショッピングサイトは、ブランド名及び個別商品名として「MONSTER」「Monster」の文字を単独で表示し、販売及び宣伝広告している。これらのライセンス商品は、国内の実店舗のほか、オンラインショップや通信販売を介して国内の一般消費者にも販売されている(甲47、48、58、92?100、134、135)。
(3)需要者におけるこれらのライセンス商品の人気の高さに便乗して、海外で製造された模倣品が我が国の税関で輸入差止される事案が、遅くとも平成25年7月から現在に至るまで、継統して度々発生している(甲169?224、別紙2)。
(4)世界規模での「MONSTER」の文字の継続的使用に基づき、申立人は、エナジードリンク等の飲料製品及び上記ライセンス商品等について、引用商標を始め、「MONSTER」の文字を基調とする様々な構成の商標について、我が国を含む世界115以上の国及び地域で商標出願し、登録を取得している(甲58、327?357、別紙1)。
(5)第三者による市場調査報告書やエナジードリンクの市場に関する記述によれば、申立人の「MONSTER」エナジードリンクの国内市場占有率は、2013年時点で既に25%を超えており、それ以降も着実に売上げを伸ばし、男子若年層を中心とした従来の主要需要者層にとどまらず、女性層にも知名度、人気を拡大している。また、申立人の「MONSTER」エナジードリンクは、実際の市場で「モンスター」と呼ばれ、「モンスター」の表記で認知されている(甲311?322)。
(6)以上の事柄に照らせば、申立人商標及びその表音「モンスター」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の業務に係る商品及び役務の出所識別標識として、国内外の取引者、需要者の間で広く認識されていた。
3 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
先に述べたとおり、本件商標は、全構成文字の6文字が申立人商標の構成中の6文字と一致し、外観及び称呼において、申立人商標と相紛らわしいものであるから、両者の類似性の程度は高い。
また、本件申立商品は、第29類、第30類及び第32類の飲食料品であり、申立人がその商品出所識別標識として「MONSTER」の文字を長年使用しているエナジードリンクと同一又は類似の商品を含むことが明らかである。
さらに、本件申立商品は、製造部門、販売部門、用途、効能、需要者の範囲がエナジードリンクと一致又は重複するノンアルコール及び低アルコールの飲料製品並びにティータイム、おやつ、軽食等としてエナジードリンクと同時に購入、消費されることが多い加工食品を数多く含んでおり、申立人の取扱商品との関連が密接である。
加えて、本件申立商品の最終的な需要者は一般消費者であるから、通常の需要者の注意力の程度は、高いものとはいえない。
したがって、本件商標が使用された場合、これに接した取引者、需要者は、申立人商標及び申立人を想起連想し、申立人又は申立人と経済的又は組織的関係を有する者の取り扱いに係る商品であると誤信し、その出所について混同を生じるおそれが高い。また、本件商標が使用された場合、申立人の商品出所識別標識として広く認識されている「MONSTER」の出所識別力希釈化するおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標が使用された場合、申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている「MONSTER」の出所表示力が希釈化するおそれが高いものであり、申立人に経済的及び精神的損害を与える。
したがって、本件商標は、社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神及び国際信義に反するため、公の秩序を害するおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審の判断
1 申立人商標の周知性について
(1)申立人の主張及び同人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 申立人は、米国の飲料メーカーであり、2002年にエナジードリンクの新ブランド「MONSTER ENERGY」を創設し、米国において販売を開始した(甲7)。
イ 申立人のエナジードリンク(以下「申立人商品」という。)は、我が国においては、2012年5月8日から「Monster Energy」(モンスターエナジー)及び「Monster KHAOS」(モンスターカオス)の販売が開始され(甲7、8)、その後、2013年5月7日から「モンスター アブソリュートリー ゼロ」(甲10)、2014年8月19日から「モンスターエナジー M3」(甲59)、同年10月7日から「モンスターコーヒー」(甲60)、2015年7月21日から「モンスター ウルトラ」(甲101)が販売されている。
そして、上記各商品のうち、「Monster KHAOS」(モンスターカオス)は、「果実入り飲料(炭酸ガス入り)」、「モンスターコーヒー」は、「コーヒー飲料」であり、その他の商品は、全て「炭酸飲料」である。
ウ アサヒ飲料株式会社のニュースリリースには、申立人商品の発売及び販売と関連して、「アサヒ飲料 国内独占販売権取得!・・・『Monster Energy(モンスターエナジー)缶355ml』『Monster KHAOS(モンスターカオス)缶355ml』・・・アサヒ飲料株式会社(本社 東京、・・・)は・・・エナジードリンク『モンスターエナジー』ブランドの日本国内における独占販売権を取得しました。」(甲7)、「・・・5月8日(火)から新発売したエナジードリンク『モンスターエナジー』ブランドの販売が好調・・・」(甲8)、「・・・『モンスター アブソリュートリー ゼロ 缶355ml』・・・本商品は・・・『モンスターエナジー』ブランドの中でも、・・・2番目に人気のあるカテゴリー、ダイエット系エナジーです。・・・」(甲10)、「2013年度の『モンスターエナジー』ブランドの販売数量は大変好調であり、『モンスターエナジー』『モンスターカオス』『モンスターアブソリュートリーゼロ』の3品で前年比150%となる237万箱を販売し・・・」(甲59)、「『モンスターエナジー』ブランドの販売は大変好調に推移しています。・・・本年は・・・『モンスターエナジーM3』、『モンスターコーヒー』をラインナップに追加・・・」(甲60)、「『モンスターウルトラ』をラインアップに加えることにより、・・・更に『モンスターエナジー』ブランドの強化を図ってまいります。」(甲101)の記載がある。
エ 申立人商品の容器の側面には、以下のような表示がある。
(ア)「Monster Energy(モンスターエナジー)缶355ml」の容器下部には、「MONSTER」の文字(「O」の文字部分には、それを貫く縦線が描かれている。以下、申立人商品の容器上の表示をいうときは、同じ。)、その下には「ENERGY」の文字が表されている(甲14、17)。
(イ)発売当初の「Monster KHAOS(モンスターカオス)缶355ml」の容器下部には、「MONSTER」の文字、その下には「KHAOS」の文字、さらにその下には「ENERGY」及び「+果汁」の文字が表されている(甲14、17)。そして、2016年にリニューアル発売された同商品の容器には、上部に「KHAOS」の文字、その下に爪の図柄の図形を配し、下部に「MONSTER」の文字、その下に「ENERGY」の文字が表されている(甲130)。
(ウ)「モンスター アブソリュートリー ゼロ 缶355ml」の容器下部には、「MONSTER」の文字、その下には「ENERGY」の文字、さらにその下には「ABSOLUTELY ZERO」の文字が表されている(甲13)。
(エ)「モンスターエナジー M3 ワンウェイびん150ml」の容器下部には、「MONSTER」の文字、その下には「ENERGY」の文字、さらにその下には「M-3 SUPER CONCENTRATE」の文字が表されている(甲61)。
(オ)「モンスターコーヒー 缶250g」の容器下部には、「COFFEE」の文字、その下には「MONSTER」の文字、さらにその下には「COFFEE」、「+」及び「ENERGY」の文字が表されている(甲62)。
(カ)「モンスターウルトラ 缶355ml」の容器下部には、「MONSTER」の文字、その下には「ENERGY」の文字、さらにその下には「ULTRA」の文字が表されている(甲101)。
オ 申立人商品の販売促進キャンペーン広告中の宣伝文句の中で、申立人商品の写真とともに、「モンスターを飲んで・・・に行こう」、「モンスターを飲んで・・・に会おう」、「モンスターの対象商品を2本ご購入につき・・・をプレゼント」、「モンスターを買って・・・を当てろ」、「モンスターを飲んで・・・が当たる」、「モンスターを買って・・・に行こう」などと表示することがある(甲63、64、79、113、159、162)。
他方、上記と同様のキャンペーン広告中の宣伝文句の中には、「モンスターエナジーを飲んで・・・に行こう」、「モンスターエナジーを買って・・・当てろ」、「モンスターエナジーを買って・・・ゲットしろ」(甲143、236、268)などと表示するものもある。
カ 申立人商品は、我が国において、2012年5月の発売開始以降、2012年末までの約8か月で157万箱販売された(甲9)。
キ 申立人の最高経営責任者の宣誓供述書(甲58)によれば、申立人商品は、我が国において、2012年5月の販売開始から2015年6月30日までの約3年間で、約2億3,600万缶販売され、その総販売額は1億7,500万米ドル以上、日本円で170億円以上であるとされる。
ク 上記供述書(甲58)によれば、申立人は、申立人商品の広告、マーケティング及び販売促進活動のために、全世界では、2002年以来、30億米ドル以上を支出しているが、「モンスター社のマーケティング戦略は、従来の方法とは異なり、MONSTER商標及び爪の図柄を広めるための広告を、直接テレビやラジオで行わない」とされ、広告などの予算の多くは、「競技選手への支援及び競技大会やその他イベントへのスポンサー活動」に当てている。特に、マーケティングの焦点は、「主要なターゲットとする若年成人層、主に男性が多くの時間を費やすインターネット上で、ネット配信されるイベント」であり、具体的には、ロードレース世界選手権グランプリ(MotoGP)、MotoGPレーシングチーム、F1レーシングチーム、モトクロスチーム、アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ(UFC)、音楽祭、音楽イベント、ミュージシャン及びビデオゲームチームへのスポンサー活動及び促進活動などである。
ただし、我が国においては、2012年5月及び6月に申立人商品の販売開始を支援するために、主要テレビ局のテレビ広告枠を購入し、視聴者にウェブサイトで更なる情報を得るように促す広告を行い、それに約190万米ドルを支出したとされる。
ケ 2016年3月31日付けのアサヒ飲料株式会社のニュースリリース(甲129)によれば、申立人商品につき、「『モンスターエナジー』ブランドは・・・ブランド力とファッション性で世界中の若者からの圧倒的な支持を背景に、急成長しているエナジードリンクです。」と紹介し、「エナジードリンク市場は、『モンスターエナジー』などの海外ブランドの浸透により、最近では10代、20代が『炭酸の刺激を楽しみたい』や『気分転換』を目的に飲用する傾向」との記載がある。
(2)上記(1)の認定事実によれば、申立人商標の使用と関連して、以下のような実情がうかがえる。
ア 申立人商品は、2012年5月の我が国における発売以降、その販売額は、約3年間(2012年5月?2015年6月)で約170億円以上とされ、その販売期間は、発売から本件商標の登録出願時までは約5年間程度と長期にわたるものではないが、ある程度継続した販売実績があることがうかがえる。
しかし、申立人は、テレビなどの一般的なメディアを通じた広告宣伝をそもそも行わない方針であることもあり、我が国におけるテレビCMは、2012年の発売当初の1か月程度の短期間であって、その費用も約1億5,000万円(190万米ドル;80円/米ドルで計算)程度のものであり、また、継続的に行われているスポンサー活動や販売促進キャンペーンについても、我が国における広告宣伝費は明らかではない。そして、その広告宣伝の多くは、主に比較的若い世代が集まるようなモータースポーツ、格闘技、音楽イベントやミュージシャン、ビデオゲームなどと関連したスポンサー活動やプロモーション活動であり、申立人商品の紹介に当たっても、10代や20代の需要者層における支持が言及されていることからすると、申立人商品の主要な需要者層や、広告などを通じて申立人商品を目にする需要者層の範囲も、自ずと若年層を中心としたものとみるのが相当である。
さらに、申立人商品は、エナジードリンクと称されるものではあるが、その実態は専ら「炭酸飲料」又は「コーヒー飲料」であって、清涼飲料の一種というべきものであるところ、我が国で販売されるこれら飲料における申立人商品のシェアは、明らかとはいい難い。
イ 我が国で販売されている申立人商品の容器の側面には、文字配置のレイアウトにバリエーションはあるものの、概ね「MONSTER」の文字の下に「ENERGY」の文字を、比較的近接して配置している。そして、これら申立人商品の個別名称は、「Monster Energy」(モンスターエナジー)、「Monster KHAOS」(モンスターカオス)、「モンスター アブソリュートリー ゼロ」、「モンスターエナジー M3」、「モンスターコーヒー」及び「モンスター ウルトラ」であるが、これら一連の商品を指称する際は、「モンスターエナジー」ブランドと総称されている。
ウ 申立人商品の販売促進キャンペーン広告などの宣伝文句においては、申立人商品を「モンスター」と略称する場合はあるが、必ずしも統一的に使用されているものではない。
(3)上記(2)において述べた実情を踏まえると、申立人商品の販売期間は、比較的短いものであり、また、申立人商品について、幅広い需要者層が目にする機会の多い一般的なメディアを通じた広告宣伝の実績は乏しい上、その広告宣伝などを通じた商品名の露出も、主に若年層に向けた活動を通じて行われているものであり、さらに、我が国で販売されている清涼飲料の市場における申立人商品のシェアも明らかとはいい難いことから、申立人商品は、本件商標の登録出願日前までには、その取引者や若い世代を中心とした需要者の間では、ある程度認知されていたということができても、幅広い需要者層を有する清涼飲料の分野一般においては、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたとまでは認めることができない。
そして、申立人商品は、その容器に「MONSTER」及び「ENERGY」の各文字が比較的近接して表示されており、また、当該商品が「モンスターエナジー」ブランドと総称されている実情があることも踏まえると、申立人商品の獲得した上記認知度は、「Monster Energy」(モンスターエナジー)を中心とした「モンスターエナジー」ブランドのエナジードリンクとして、集合的に生じているというべきである。
なお、申立人商標である「MONSTER」の語は、宣伝文句などにおいて申立人又は申立人商品の略称として用いられる場合があるとしても、必ずしも統一的に使用されているものではなく、上記のとおり、「モンスターエナジー」ブランドと総称されることもあるものであり、また、申立人商品の認知度を紹介するインターネット記事情報においても、飽くまで「モンスターエナジー」(MONSTERENERGY)(甲311、319)の認知度が紹介されており、申立人商標単独での認知度は示されていない。
そのため、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国の取引者、需要者において、申立人商品を表示する商標として、広く認識されているものということはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
申立人は、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当する理由において、引用商標1及び引用商標2を引用しているので、本件商標と引用商標1及び引用商標2との関係について、以下検討する。
(1)本件商標と引用商標1及び引用商標2との比較
ア 本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「NOSTER」の文字を太字で表してなるところ、当該文字は、辞書類に掲載された既成の語ではないため、特定の読み及び意味を有しない造語というべきものである。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応する「ノスター」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標1及び引用商標2について
(ア)引用商標1は、前記第2の1のとおり、「MONSTER」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は「怪物。化け物。」(参照:「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店)の意味を有する平易な英語である。
そうすると、引用商標1は、「モンスター」の称呼及び「怪物。化け物。」の観念を生じるものである。
(イ)引用商標2は、別掲のとおり、申立人が爪の図柄と主張する図形と、その下方に特徴のある書体の太字で表された「MONSTER」(「O」の文字部分には、それを貫く縦線が描かれている。)の文字及び角張った書体で比較的小さく表された「ENERGY」の文字を二段に近接して表してなるところ、当該図形部分と文字部分とは、重なりなく間隔を大きく空けて配置されているため、視覚上、一見して分離して看取されるばかりでなく、当該図形部分については、特定の称呼及び観念を生じるとはいい難く、当該文字部分との間に称呼及び観念上のつながりがあるとはいえないことから、両部分は、それぞれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではない。
そうすると、引用商標2に接する取引者、需要者は、その構成中の図形部分と文字部分のそれぞれを出所識別標識としての機能を有する要部として認識、理解するというのが相当であるから、これら要部をもって他人の商標と比較することにより、対比する商標間の類否を判断することも許されるというべきである。
そして、引用商標2の構成中、「MONSTER」と「ENERGY」の二段の文字部分は、それぞれの文字の書体や大きさは相違するものの、近接して配置されていて、視覚的にまとまりのよい印象を与えるものであり、また、その全体から生じる「モンスターエナジー」の称呼も、無理なく一連に称呼し得るものである。さらに、「MONSTER」の文字は、「怪物。化け物。」の意味を、「ENERGY」の文字は、「力。精力。」の意味を、それぞれ有する平易な英語であるところ、両語を結合して熟語や既成の語となるものではなく、いずれかの語が、引用商標2の指定商品との関係において出所識別標識としての称呼、観念を生じないというものでもない。加えて、申立人商品は、上記1のとおり、「Monster Energy」(モンスターエナジー)として、若い世代の間で一定の認知度がある。
以上を踏まえると、引用商標2の構成中、「MONSTER」と「ENERGY」の二段の文字部分は、そのいずれかの文字部分が強く支配的な印象を与えるものではなく、その構成全体をもって出所識別標識としての機能を発揮するものというべきであるから、これより「モンスターエナジー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標1及び引用商標2との比較
(ア)本件商標と引用商標1とは、称呼において、末尾の「スター」の3音を共通にするが、冒頭における本件商標の「ノ」の音と引用商標1の「モン」の音とは、音の構成及び数に明らかな差異があり、これらを一連に称呼するときは、それぞれ容易に聴別できる。また、両商標は、外観において、語頭部に「NO」と「MON」という明らかな差異があるから、相互に容易に見分けることができる。さらに、本件商標は、特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標1は、「怪物。化け物。」の観念を生じるものであるから、両商標は、観念において、相紛れるおそれがない。
そうすると、本件商標と引用商標1とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても明らかに異なるものといえるから、それぞれを同一又は類似の商品について使用するときでも、互いに誤認、混同するおそれのない非類似の商標というべきである。
(イ)本件商標と引用商標2とは、称呼において、いずれも構成音中に「スター」の音が存するものの、それ以外の音については、音の構成及び数に明らかな差異があり、これらを一連に称呼するときは、それぞれ容易に聴別できる。また、両商標は、外観において、図形の有無や文字構成において明らかな差異があるから、その構成全体についての比較はもとより、その構成中の図形部分又は文字部分の比較によっても、一見して明瞭に見分けることができる。さらに、両商標は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念において、比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標2とは、観念においては比較することができず、外観及び称呼においては明らかに異なるものといえるから、それぞれを同一又は類似の商品について使用するときでも、誤認、混同するおそれのない非類似の商標というべきである。
(2)小括
本件商標は、上記(1)のとおり、引用商標1及び引用商標2とは非類似の商標であるから、本件申立商品と引用商標の指定商品とを比較するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)申立人商標の独創性及び周知性
申立人商標である「MONSTER」は、既成の語であって、独創性が高いものとはいえず、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国の取引者、需要者において、申立人商品「エナジードリンク」を表示する商標として、広く認識されているものでもない。
(2)本件商標と申立人商標との類似性
本件商標は、上記2(1)アのとおり、「NOSTER」の文字を表してなり、「ノスター」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
他方、申立人商標は、「MONSTER」の文字を表してなるところ、その構成文字は、引用商標1と同一であるから、上記2(1)イ(ア)の引用商標1についてと同様に、「モンスター」の称呼及び「怪物。化け物。」の観念を生じる。
そうすると、本件商標と申立人商標とは、上記2(1)ウ(ア)においてした本件商標と引用商標1との比較における場合と同様に、外観、称呼及び観念のいずれにおいても明らかに異なるものであるから、互いの印象が明らかに異なる別異の商標というべきである。
(3)本件申立商品と申立人商品との関連性
申立人商品であるエナジードリンクは、清涼飲料の一種というべきものであるから、本件申立商品のうち、第32類「清涼飲料、果実飲料」のような清涼飲料と関連する商品とは、生産部門や販売部門が一致し、商品の品質、用途が共通し、需要者の範囲も重複するため、これら商品に同一又は類似の商標を使用するときは、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれのある互いに類似する商品であるといえる。
また、上記以外の本件申立商品は、飲料や食品、調味料などの一種であり、最終的に飲食料品店を通じて一般消費者に向けて流通する商品であることから、申立人商品とは、販売部門や流通経路に関連性があるもので、需要者層も一部重複するものといえる。
(4)出所の混同のおそれについて
申立人商標は、上記3(1)のとおり、独創性が高いものとはいえず、また、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品を表示する商標として周知、著名とはいえない上、上記3(2)のとおり、本件商標とは、互いの印象が明らかに異なる別異の商標であるから、上記3(3)のとおり、本件申立商品の一部が、申立人商品と類似又は販売部門や流通経路及び需要者層において一定程度関連があるものであるとしても、本件申立商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標を本件申立商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が、申立人商標を連想又は想起するようなことは考え難い。
そうすると、本件商標は、これを本件申立商品について使用しても、その取引者及び需要者をして、当該商品が申立人の業務に係る商品であると誤信させるおそれがある商標ではなく、また、当該商品が申立人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信させるおそれがある商標ともいえないから、申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じるおそれがある商標ではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、上記2(1)アのとおり、「NOSTER」の文字を太字で表してなるものであり、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。
また、本件商標は、これをその指定商品に使用することが社会公共の利益や社会の一般的道徳観念に反するものではなく、さらに、その使用が他の法律によって禁止されているもの、外国の権威や尊厳を損なうおそれがあって、国際信義に反するものでもない。
加えて、本件商標の商標登録出願の経緯について、社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合等、その出願経緯などに公序良俗に反するおそれがあることを具体的に示す証拠の提出もない。
なお、申立人は、本件商標の使用は、申立人商品の出所識別標識として広く認識されている申立人商標の出所表示力を希釈化するおそれが高いものであり、申立人に経済的及び精神的損害を与えるものであるから、本件商標は、社会一般道徳及び公正な取引秩序を旨とする商標法の精神及び国際信義に反するため、公の秩序を害するおそれがある旨を主張するが、申立人商標は、上記3(1)のとおり、申立人商品を表示する商標として、我が国の取引者、需要者において広く認識されているとは認められないから、申立人による主張は、その前提において失当というべきであり、その他、申立人の主張及び立証を総合勘案しても、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるものと認めるに足る事実も見いだせないから、その主張は、採用し得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、本件申立商品について、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第7号のいずれにも該当せず、同項の規定に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲 (引用商標2)



異議決定日 2019-01-17 
出願番号 商願2017-72491(T2017-72491) 
審決分類 T 1 652・ 271- Y (W293032)
T 1 652・ 261- Y (W293032)
T 1 652・ 263- Y (W293032)
T 1 652・ 262- Y (W293032)
T 1 652・ 22- Y (W293032)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小林 正和 
特許庁審判長 田中 敬規
特許庁審判官 阿曾 裕樹
小松 里美
登録日 2018-02-09 
登録番号 商標登録第6018983号(T6018983) 
権利者 日東薬品工業株式会社
商標の称呼 ノスター、ノステル 
代理人 田村 弥栄子 
代理人 戸崎 富哉 
代理人 高島 一 
代理人 赤井 厚子 
代理人 柳田 征史 
代理人 當麻 博文 
代理人 鎌田 光宜 
代理人 土井 京子 
代理人 北脇 大 

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