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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 取り消して登録 W33
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 取り消して登録 W33
管理番号 1348857 
審判番号 不服2017-13391 
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-08 
確定日 2019-02-13 
事件の表示 商願2015- 3096拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願商標は、登録すべきものとする。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第33類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成27年1月15日に立体商標として登録出願され、その後、指定商品については、審判請求と同時に提出された同29年9月8日受付の手続補正書により、第33類「缶入り酎ハイ」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、中央部分にひし形模様の凹凸状の装飾的な特徴を有しており、正面方向からは円筒状、真上方向からは丸状で飲み口が配置された形態であり、全体として飲料の容器を容易に認識させる立体的形状を表してなるものである。そして、上記のような特徴は、『ダイヤカット』又は『ダイヤモンドカット』と呼ばれ、容器内部の圧力を吸収し強度を向上する機能と、その独特な美観により顧客吸引力を高めることを目的として、本願の指定商品を含む飲料を取り扱う業界において、実際にこのような形状を有する飲料の容器が製造、販売されている実情があるから、このような形状は商品の機能又は美観を効果的に高める範囲内の形状にすぎないものと認められる。以上のことから、本願商標は、本願指定商品との関係においては、飲料の容器において通常採用されている形状の範囲を大きく超えるものからなる商標とはいえず、全体として指定商品の包装容器の形状を表示してなるものと認識するにとどまるものである。そうすると、本願商標を、その指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品の包装容器の一形態を表示したものと認識するにとどまるものであるから、本願商標は、単に商品の包装の形状を普通に用いられる方法で表示するものと判断するのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、 出願人は、同条第2項の規定によって、本願商標は登録を受けることができるものである旨主張するが、提出された証拠からは、同項の要件を具備するものとは認められない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審においてした証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、商品の包装用容器について、別掲2に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、平成30年7月19日付け証拠調べ通知書によってこれを開示し、相当の期間を指定して意見を述べる機会を与えた。

4 証拠調べの結果に対する請求人の意見(要点)
証拠調べ通知書に示された事実は、本願商標の自他商品識別力を否定する根拠となるものではない。
したがって、本願商標は商標登録されるべきものである。

5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、その指定商品「缶入り酎ハイ」に係る立体商標であって、別掲1のとおり、側面に三角形を組み合わせた凹凸状の模様を有した飲料の容器を認識させる立体的形状からなるところ、その形状は、液体等を格納する容器そのものを表したものである。
また、別掲2のとおり、飲料を取り扱う業界においては、その容器の側面に凹凸状の模様を有した容器がある実情がうかがえる。
以上の状況を踏まえて、本願商標に係る立体的形状を考察すると、その形状は、液体等を格納する容器であり、該容器の側面にある三角形を組み合わせた凹凸状の模様は、需要者をして、その商品を格納する容器の機能又は美感上の理由による形状の変更又は装飾等と予想し得る範囲のものであるというべきであって、商品の容器(包装)の機能又は美感に資する目的のために採用されたものと認められるものである。
そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、需要者は、商品を格納する容器の形状の一形態を表したものとして理解するにとどまり、自他商品を識別するための標識としては認識し得ないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商品の包装の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であることから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項該当性について
請求人は、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、請求人が使用をした結果、現在では取引者、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識する状態に至っていることから、同条第2項に該当する旨を主張し、証拠方法として、原審において甲第1号証ないし甲第25号証(枝番号を含む。)及び当審において甲第26号証ないし甲第34号証(枝番号を含む。)を提出したところ、請求人の主張及び甲各号証によれば、以下の事実が認められる。
なお、枝番号を含む号証で枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。
ア 請求人による使用
請求人は、2001年7月から、本願商標の立体的形状と同一視し得る形状の容器を本願の指定商品である「缶入り酎ハイ」について、現在に至るまで継続して使用している(甲2)。
イ 販売実績、広告宣伝
請求人が製造、販売するキリン「氷結」シリーズは、2015年までに、累計販売数が100億本を超えており(甲1、甲4?甲8)、該商品について請求人は、全国的に新聞やテレビCM、ウェブサイトなどで、広告宣伝を継続的に行っている(甲9?甲11、甲13?甲25)。
ウ アンケート結果
請求人の提出した甲第30号証の「キリン株式会社の立体商標(商願2015-003096)の認識度調査 報告書」と題するアンケート調査によれば、本願商標の立体的形状を見て、請求人が製造、販売するキリン「氷結」シリーズに係る回答を行った人の割合は、メーカー名、ブランド名又は商品名を回答欄に自由に記載させる自由回答式のアンケート調査で56.89%?57.21%、缶チューハイの主要メーカーの主要ブランド又は商品を選択肢として提示し選択させる選択式のアンケート調査で70.20%であり、手に取って見たと回答した人に限定すれば、自由回答式で69.32%?69.78%、選択式で81.31%であった。
エ 小括
以上のことからすれば、請求人は、2001年以降、本願商標が登録出願されるまでの約14年間、継続して本願の指定商品である「缶入り酎ハイ」に、本願商標の立体的形状と実質的に同一と認められる商標を使用しているものであり、テレビCM、新聞、ウェブサイト等においても継続してその広告宣伝を行い、請求人が製造、販売するキリン「氷結」シリーズは、多数の新聞、ウェブサイトで紹介され、2015年における累計販売数は100億本を超えていることが認められる。
また、アンケート調査(甲30)によれば、本願商標の立体的形状について、自由回答式のアンケート調査で約60%?70%、選択式のアンケート調査で約70%?80%という、全体の3分の2前後又はそれ以上の者が、請求人が製造、販売するキリン「氷結」シリーズに係る回答を行っていることが認められる。
さらに、職権による調査によれば、本願商標の立体的形状の特徴である側面に三角形を組み合わせた凹凸状の模様を有した飲料の容器は、本願の指定商品を含むアルコール飲料の分野において、他人が使用している事実は発見できなかった。
そうすると、本願商標は、その指定商品について、請求人により長年にわたり継続的に使用された結果、需要者が、請求人の業務に係る商品を表示する商標として認識されるに至ったものとみるのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものというべきである。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものの、同条第2項の規定により商標登録を受けることができるものであるから、原査定は、取消しを免れない。
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 本願商標(色彩については、原本参照。)


別掲2(平成30年7月19日付け証拠調べ通知書で示した事実)
容器の形状において凹凸のある缶の例
(1)「宝酒造株式会社」のウェブサイトにおいて、商品の写真が掲載されている。
(http://shochu-hiball.jp/lineup/index.html#pageList1)


(2)「サントリーホールディングス株式会社」のウェブサイトにおいて、商品の写真が掲載されている。
(https://www.suntory.co.jp/whisky/kakubin/product/kakuhigh.html)
(https://www.suntory.co.jp/softdrink/boss/lineup/premium_limited_koku.html)
(https://www.suntory.co.jp/softdrink/boss/lineup/premium_latte.html)


(3)「アサヒ飲料株式会社」のウェブサイトにおいて、商品の写真が掲載されている。
(https://www.asahiinryo.co.jp/products/coffee/wonda_gold/)
(https://www.asahiinryo.co.jp/products/coffee/wonda_extra/)


(4)「ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社」のウェブサイトにおいて、商品の写真が掲載されている。
(https://www.pokkasapporo-fb.jp/products/coffee/pokkacoffee/GK98.html)
(https://www.pokkasapporo-fb.jp/products/coffee/pokkacoffee/HJ82.html)



審決日 2019-01-23 
出願番号 商願2015-3096(T2015-3096) 
審決分類 T 1 8・ 13- WY (W33)
T 1 8・ 17- WY (W33)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川崎 萌未真鍋 恵美駒井 芳子太野垣 卓 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 木住野 勝也
小俣 克巳
代理人 飯島 紳行 

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