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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W091641
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W091641
審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない W091641
管理番号 1347794 
審判番号 不服2018-2853 
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-28 
確定日 2018-12-06 
事件の表示 商願2016- 81945拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は,「個性心理学」の文字を標準文字で表してなり,第9類「電子出版物」,第16類「書籍」及び第41類「動物イメージを用いた占いによる運勢判断・心理判断・性格判断・運命相談・相性診断・適性診断・易占・卜占いに関する知識の教授,オンラインによる動物イメージを用いた占いによる運勢判断・心理判断・性格判断・運命相談・相性診断・適性診断・易占・卜占いに関する知識の教授,技芸・スポーツ又は知識の教授」を指定商品及び指定役務として,平成28年8月1日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,以下の1及び2のとおり認定,判断し,本願を拒絶したものである。
1 本願商標は,「個性心理学」の文字を標準文字で表示してなるが,当該文字は,指定商品(指定役務)との関係において,「個人差を扱う心理学」の意味に通じる語として国語辞書の見出し語などに掲載されているばかりか,大学の講義科目などにもなっていることから,本願商標をその指定商品(指定役務)中の「個性心理学に関する電子出版物,個性心理学に関する書籍,個性心理学に関する知識の教授」に使用するときは,これに接する取引者,需要者は,その商品(役務)が「個性心理学に関する内容のものであること」を表示したものと理解するにとどまり,本願商標は,単に商品の品質及び役務の質を普通に用いられる方法で表示したものといえる。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,前記商品(役務)以外の商品(役務)に使用するときは,商品の品質及び役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるので,商標法第4条第1項第16号に該当する。
2 本願商標は,「個性心理学」の文字を標準文字で表示してなるが,当該文字は,指定商品(指定役務)との関係において,「個人差を扱う心理学」の意味に通じる語として国語辞書の見出し語などに掲載されているばかりか大学の講義科目などにもなっており,心理学の一分野の名称として広く知られていることが認められる。そうすると,本願商標をその指定商品(指定役務)に使用しても,これに接する取引者,需要者は,心理学の分野における学問の名称を表示したものと理解するにすぎず,自他商品(役務)の識別標識とは認識し得ないものといえるから,本願商標は,需要者が何人かの業務に係る商品(役務)であることを認識することができない商標であり,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当する。

第3 当審の判断
1 「個性心理学」の語について
原審における平成28年11月1日受付け刊行物提出書に添付された参考資料(以下,資料の番号とともに,「刊行物○」と簡略する。)及び当審における平成30年3月1日付け手続補足書の添付資料(以下,資料の番号とともに,「資料○」と簡略する。)によれば,以下の事実が認められる。
(1)心理学は,人間及び動物の心や行動を組織的に研究する学問であり,その研究領域には,認知(感覚,知覚),学習,記憶,思考,言語,欲求,感情,知能,性格,発達,社会的行動,異常行動などがある。また,心理学の知見や法則を実生活の問題解決に利用しようとする心理学を応用心理学といい,例えば,教育心理学,臨床心理学,犯罪心理学,産業心理学,経営心理学,政治心理学,家庭心理学,体育心理学,芸術心理学,宗教心理学などがある(資料110)。
(2)「個性心理学」に関しては,「日本大学文理学部心理学科」のウェブページに,「日本大学文理学部心理学科の創設者・渡辺徹先生は明治16年福島県に生まれ,同43年に東京帝国大学文学部哲学科を卒業(中略)大正9年に日本大学教授となり,同13年に私学では最初(東大・京大・東北大に次いで日本では4番目)の心理学専攻課程を日大に創設された。」「先生はわが国におけるパーソナリティの心理学の開拓者である。心理学科の創設当初(大正13年)から没年(昭和32年)に至るまで,『個性心理学』という名で独創的な講義をされた。」との記載がある(刊行物19)。
(3)渡辺徹氏については,フリー百科事典ウィキペディアに,「日本の心理学者で,日本におけるパーソナリティ心理学(人格心理学)の開拓者。…没年に至るまで,『個性心理学』という名で独創的な講義をした。」との解説が記載されている(刊行物34)。
(4)論文・紀要関係で「個性心理学」なる語が登場するものとしては,例えば,次のものが挙げられる。
ア 古賀行義「チャーレス・スピアマン?その人物と業績?」心理學研究第20巻第1号58?61頁(昭和24?25年頃)には,「近代心理學における一つの不幸は,一般心理學と個性心理學とが不合理にも分離してゐることであるが,ロンドン學派において,それらの間に緊密な關係がつけられており,個性心理學との関係においては,二因子説,一般心理學との関係においては知生説が構成されてゐる。…」との記載がある(刊行物14)。
イ 城戸幡太郎「ソ連及び中国における心理学の研究」教育心理学研究第4巻第2号110?113頁(昭和31年)においては,執筆者が日本アジア連帯委員会の文化使節団の一員としてソ連中国を訪問した際,レニングラード大学の心理学担当の教授からもらった人格心理学を主題とする学会のプログラムが紹介されており,その中に,「第6会議 高次神経活動の類型と個性心理学的差異 1 レイテス(モスクワ)?個性心理学的差異の問題について」との記載がある(刊行物16)。
また,中国の科学院に設けられた心理学研究室では,「1.発生心理問題,2.知覚心理問題,3.論文心理問題,4.個性心理問題」の4つの問題を研究していることも同論文において紹介されている(同上)。
ウ 高嶋正士(審決注;「高」の文字は異体字が用いられている。)「ゴールトン及びキャテルの生涯とその業績について」基礎科学論集:教養課程紀要2号67?81頁(昭和59年)には,「さて,現代心理学の基礎研究領域は多岐にわたっているが,その中に差異心理学differential psychologyがある。これは個人差の問題を扱う領域で,また個性心理学psychology of individualともいわれる。個人差を代表する問題といえば人格personalityと知能intelligenceをあげなければならない。これらの問題は心理学の基本問題である。差異心理学の歴史は古く,また研究領域も広く遺伝学や環境学と深く関連している。」との記載がある(刊行物17)。
(5)国語に関する辞書・辞典類では,「個性心理学」なる語は,次のとおり掲載されている。
ア 広辞苑(岩波書店)
第2版(昭和44年第1刷発行)には,「個性」の項目に,「【個性心理学】個人差をあつかう心理学。差異心理学。」との記載があり,第3版(昭和58年第1刷発行)にも同様の記載がある(刊行物3,同4)。
第4版(平成3年第1刷発行)以降は,「個性」の項目から「個性心理学」に関する記載がなくなっている(資料121)が,第5版(平成10年第1刷発行)(資料122),第6版(平成20年第1刷発行)(刊行物13),第7版(平成30年第1刷発行)には,「差異心理学」の項目に,「【差異心理学】心理的事象に関して,個人と個人,群と群,人種と人種などを比較し,その差異を研究する学問。特に,個人差を取り扱うものを個性心理学という。」との記載がある。
イ 国語大辞典(小学館)
昭和56年発行の第1版第1刷には,「個性心理学」の項目が設けられており,「個人差を研究対象とする心理学。差異心理学」との記載があり(刊行物5),昭和63年発行の第1版新装版にも同様の記載がある(刊行物6)。
ウ 大辞泉(小学館)
平成7年発行の第1版第1刷には,「個性」の項目に【個性心理学】「個人差を扱う心理学。」との記載があり(刊行物7),平成10年発行の増補・新装版にも同様の記載がある(刊行物8)。平成24年発行の第2版第1刷には,「個性心理学」の項目が設けられており,やはり上記と同様の記載がある(刊行物9)。ウェブサイト上の「デジタル大辞泉」にも,平成30年8月時点で,上記と同様の解説が記載されている。
エ 日本国語大辞典第2版第5巻(小学館・平成16年第4刷発行)
「個性心理学」の項目が設けられており,「個人差を研究対象とする心理学。差異心理学」との記載がある。また,「差異心理学」の項目には,「個人の性質や能力などのちがいを研究する心理学。一般心理学が人間一般に通じる法則を見出そうとするのに対して,個人,男女,民族など,いろいろな形で存在する人間どうしの差異から,個性や民族性などの特質や構造をあきらかにしようとするもの。」との記載がある(刊行物10)。
オ 精選版日本国語大辞典第1巻・第2巻(小学館・平成18年初版第1刷発行)
上記エの日本国語大辞典と同様の記載がある(刊行物11,同12)。
(6)上記(1)ないし(5)で認定した各事実によれば,「個性心理学」は,「差異心理学」ともいわれるもので,心理学のうち個人差の問題を扱う領域として古くから知られており,国内外でこれを研究対象とする研究者・研究室があったこと,一般書である我が国の著名な国語辞書・辞典類においても,その解説が掲載されていることが認められる。
そして,これらの事実によれば,「個性心理学」なる語は,心理学という学問の一分野を示す普通名称として使用され,現在においても心理学の一分野を示す普通名称であるというのが相当である。
2 商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は,「個性心理学」の文字からなるところ,上記の事実によれば,「個性心理学」の文字は,心理学という学問の一分野を示す普通名称であって,「個人差を扱う心理学」を表すものとして理解されるものである。
そして,通常,学問と関連の深い「書籍」等の商品や「知識の教授」等の役務について,学問又は学問の一分野を表す語が使用されているときには,当該学問又は学問の一分野に関する内容について,書籍等に掲載され,教授されるものである。
そうすると,心理学の学問の一分野を示す普通名称と理解される「個性心理学」の文字からなる本願商標を,その指定商品及び指定役務中の第9類「電子出版物」,第16類「書籍」及び第41類「知識の教授」に使用したときには,これに接する取引者,需要者は,当該「書籍」,「電子出版物」及び「知識の教授」が,「個人差を扱う心理学」に関するものであるという,商品の品質及び役務の質を表示したものと認識するにとどまるというのが相当である。
してみれば,本願商標は,その指定商品及び指定役務について,商品の品質及び役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であって,自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものといわざるを得ない。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するものである。
3 商標法第3条第2項該当性について
請求人は,本願商標は,相当の使用実績により,請求人の業務に係る商品「書籍」及び役務「動物イメージを用いた占いによる運勢判断・心理判断等に関する知識の教授」の出所を表示するものとして,商標法第3条第2項の要件を具備している旨主張し,当審において,証拠方法として資料1ないし同99(枝番号を含む。)を提出している。
しかしながら,本願指定商品及び指定役務には,「書籍」及び 「動物イメージを用いた占いによる運勢判断・心理判断等に関する知識の教授」以外の指定商品及び指定役務も含まれているところ,それらの商品及び役務についての本願商標の使用による識別力の獲得については,何ら主張立証がなされていない。また,指定商品及び指定役務も「書籍」及び 「動物イメージを用いた占いによる運勢判断・心理判断等に関する知識の教授」に補正されているものでもない。
したがって,本願商標は,全ての指定商品及び指定役務について使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品及び役務であることを認識することができるに至ったものとはいえず,商標法第3条第2項の要件を具備するということはできない。
なお,請求人が商標法第3条第2項の要件を具備していると主張する商品「書籍」及び役務「動物イメージを用いた占いによる運勢判断・心理判断等に関する知識の教授」に関する証拠についてみても,これらに使用されている標章は,ほとんどが,本願商標を構成する「学」の文字とは異なる旧字体「學」若しくは,旧字体「學」の「メ」の部分がハートマークになっており,本願商標と同一の商標を使用していたものということはできない。
また,請求人の提出に係る各証拠は,「動物キャラナビ」「動物占い」「動物マスコット占い」等として掲載されている例が多数であることに加え,「個性心理学」の文字が,雑誌・記事のサブタイトルとして使用されている例がわずかに見受けられるものの,その記載内容からすれば,これに接する需要者は,書籍の内容及び役務で提供される知識の内容を表示したものとして理解するというのが自然であって,商品及び役務の出所表示として認識されるとはいい難く,これらの事例は,識別力を発揮する形での商標の使用のされ方ではないというべきである。
4 請求人の主張について
(1)請求人は,本願商標と同じ「個性心理学」なる商標や,その構成中に「心理学」を含む商標について,商標登録されているから,本願商標についても同様に登録されるべき旨主張している。
しかしながら,登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かは,当該商標の査定時又は審決時において,指定商品及び指定役務の取引の実情等を考慮し,個別具体的に判断されるべきものであるから,他の商標登録の事例をもって本願商標の登録の適否についての判断基準とするのは,必ずしも適切でない。
(2)また,請求人は,心理学関係の最近の辞典では,「個性心理学」を説明する項目がないこと,学問や研究対象としての心理学という極めて限られた範囲のことであるから,「個性心理学」なる語は識別力を有する旨主張する。
確かに,請求人が提出する証拠(資料100?同122)によれば,最近の一部の国語辞典及び心理学の専門的な辞典では「個性心理学」なる語は取り上げられておらず,また,近時,「個性心理学」が心理学の学界(学会)等で盛んに取り上げられ,議論されていることを示す証拠はない。
しかしながら,上記1のとおり,「個性心理学」が個人差を扱う心理学として古くから存在していることは事実であり,今なお,我が国の著名な国語辞書・辞典類にもその解説が記載されている。そして,「個性心理学」が,近時,心理学の学会等で取り上げられ,議論されることがなかったとしても,心理学の歴史における一つの理論体系としての存在が揺らぐものではなく,それだけでいわゆる死語と化したということはできないから,「個性心理学」は,現在においても心理学の一分野を示す普通名称というべきであり,また,極めて限られた範囲内でしか通用しない用語ということもできない。
したがって,請求人の主張は,いずれも採用することができない。
5 まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,また,同条第2項の要件を具備するものでもないから,その他の拒絶の理由について検討するまでもなく,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2018-09-20 
結審通知日 2018-09-25 
審決日 2018-10-22 
出願番号 商願2016-81945(T2016-81945) 
審決分類 T 1 8・ 272- Z (W091641)
T 1 8・ 17- Z (W091641)
T 1 8・ 13- Z (W091641)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 斎 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 鈴木 雅也
小俣 克巳
商標の称呼 コセーシンリガク、コセー 
代理人 新保 斉 

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