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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W33 審判 全部申立て 登録を維持 W33 審判 全部申立て 登録を維持 W33 審判 全部申立て 登録を維持 W33 審判 全部申立て 登録を維持 W33 審判 全部申立て 登録を維持 W33 |
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管理番号 | 1346914 |
異議申立番号 | 異議2017-685024 |
総通号数 | 229 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2019-01-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-08-10 |
確定日 | 2018-08-16 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 国際登録第1316598号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 国際登録第1316598号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件国際登録第1316598号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,2016年3月23日にAustraliaにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して,2016年(平成28年)9月23日に国際商標登録出願,第33類「Wine.」を指定商品として,平成29年6月2日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する登録第4258292号商標(以下「引用商標」という。)は,「INSIGNIA」の欧文字を標準文字で表してなり,平成9年11月7日に登録出願,第33類「ぶどう酒,その他の果実酒,日本酒,洋酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として,同11年4月2日に設定登録され,その後,同21年3月31日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第10号,同第11号,同第15号及び同第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第36号証を提出した。 1 商標法第4条第1項第11号について 本件商標は,申立人の登録商標である引用商標に類似するものであって,その指定商品は同一又は類似のものである。 2 商標法第4条第1項第10号について 本件商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている引用商標に類似するものであって,その指定商品は同一又は類似のものである。 3 商標法第4条第1項第15号について 引用商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているから,本件商標がその指定商品に使用された場合,商品の出所について混同を生ずるおそれがある。 4 商標法第4条第1項第19号について 引用商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されており,本件商標と引用商標とは互いに類似するものであって,本件商標は不正の目的をもって使用をするものである。 第4 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標 本件商標は,別掲のとおり,線で表した8角形の中に,正方形の線を重ねた幾何学図形(以下「図形部分」という。)とその図形の上に重なるように「INSIGNIS」の欧文字(以下「文字部分」という。)を配してなるところ,図形部分と文字部分とは,「INSIGNIS」の欧文字の語頭の「I」の文字と語尾の「S」の文字が図形部分からはみ出るように左右均等に配置され,まとまりよく組み合わせた構成からなるものであり,視覚上,上記各要素を組み合わせてなる結合商標として,強く印象付けられ,一体的に認識され,把握されるものである。 そして,図形部分は,我が国において特定の事物を表したもの又は何らかの意味合いを表すものとして認識され,親しまれているというべき事情は認められないことから,図形部分からは,特定の称呼及び観念を生じないものである。 また,該「INSIGNIS」の欧文字は,同書,同大,等間隔でまとまりよく一体に表され,該文字は,辞書に載録のない語であるから,特定の意味合いを有しない造語といえるものであるところ,欧文字からなる造語の場合は,我が国で一般に普及したローマ字又は英語の読みに倣って称呼されるものであるから,英語の読みに倣って「インシグニス」の称呼を生じるものであり,また,特定の意味合いを生じないものである。 したがって,本願商標は,図形部分からは,特定の称呼及び観念を生じないものであり,文字部分の構成文字に相応して,「インシグニス」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標 引用商標は,前記第2のとおり,「INSIGNIA」の欧文字からなるところ,該文字は「記章,バッジ,しるし」等を意味する英語ではあるが,我が国において,親しまれた語ではなく特定の読みをもった既成の語を表したとは認識され得ないものと認められる。 そうすると,これに接する取引者,需要者は,これをローマ字又は英語の読みに倣って称呼されるものであるから,英語の読みに倣って「インシグニア」の称呼を生じるものであり,また,特定の意味合いを生じないものである。 したがって,引用商標は,その構成文字に相応して,「インシグニア」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。 (3)本件商標と引用商標との類否 本件商標と引用商標を比較するに,外観においては,両者は,上記(1)及び(2)のとおりの構成態様よりなるところ,その構成文字の8文字中7文字を共通にするとしても,本件商標の文字部分の背景にある図形の有無において顕著な差異を有するものであるから,外観上,明確に区別できるものである。 次に,称呼においては,本件商標は,上記(1)のとおり,文字部分の構成文字に相応して「インシグニス」の称呼を生じるのに対し,引用商標は,上記(2)のとおり,その構成文字に相応して「インシグニア」の称呼を生じるものであるところ,両称呼は,「インシグニ」の称呼を共通にし,語尾音のみ「ス」と「ア」という音の差異があり,その音は語尾音といえどもその差異は明らかに相違するものであるから,それぞれを一連に称呼するときは,語調,語感が相違して聴取されるものであるから,称呼上,明瞭に聴別できるものである。 さらに,観念においては,本件商標と引用商標とは,いずれも特定の観念を生じないから,観念上,比較することができない。 してみれば,本件商標と引用商標とは,観念において比較することができないとしても,外観及び称呼において相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第10号該当性について (1)引用商標の周知性について ア 申立人の提出した証拠及び申立ての理由によれば,以下の事実が認められる。 (ア)申立人は,アメリカ合衆国カリフォルニア州において1972年からワインの生産に着手し,1978年には引用商標に係る商品「INSIGNIA」ワインを世に出している(甲9)。そして,申立人の生産する「INSIGNIA」ワインは,40年以上の歴史を有する。 (イ)「INSIGNIA」ワインは,「The New York Times」,「The Wall Street Journal」,「Forbes」等の著名な外国紙に度々取り上げられている(甲13?甲15)。例えば,甲第13号証の「The New York Times」紙において,1993年の時点で既に「『INSIGNIA』ワインは,約20年間カリフォルニア産赤ワインの中でも本物のエリート(選び抜かれた銘柄)として存在し続けている。」と紹介されている。 (ウ)ワイン専門誌「Wine Spectator(ワイン・スペクテーター)」が選ぶ年間ベストワイン100選において,1997年には10,000種類以上あるワインの中から,第3位を獲得し(甲16),2005年には同ランキングにおいて,第1位を獲得した(甲17)と記載されている。 (エ)上記の他,「INSIGNIA」ワインが外国の様々な広告媒体,例えば,新聞,インターネット及び雑誌(甲18?甲22)に取り上げられた。 (オ)「INSIGNIA」ワインは,我が国においても,上記と同様の内容が紹介されている(甲23?甲28)。 イ 上記アで認定した事実によれば,以下のとおり判断できる。 申立人は,アメリカ合衆国カリフォルニア州において1972年からワインの生産に着手し,1978年には「INSIGNIA」ワインを世に出し,40年以上の歴史を有する企業である。 そして,申立人が提出した証拠によれば,ニューヨークタイムズやウォールストリートジャーナル等に,「約20年間カリフォルニア産赤ワインの中でも本物のエリート(選び抜かれた銘柄)として存在し続けている。」と紹介され,また,ワイン専門誌であるワイン・スペクテーターが選ぶ年間ベストワイン100選において,1997年には10,000種類以上あるワインの中から,第3位を獲得し,2005年には同ランキングにおいて,第1位を獲得したこと等が記載されている。 しかし,これらの証拠は,ある一時期にベストワイン100選において,3位,1位を獲得したことや「約20年間カリフォルニア産赤ワインの中でも本物のエリート(選び抜かれた銘柄)として存在し続けている。」ことが記載されているとしても,我が国及び外国における広告宣伝の回数や期間及びその方法,売上高,販売数量,量的規模(市場シェア)等を証明する証拠の提出もないため,これらを具体的に把握することができないものである。 また,申立人は,引用商標が周知あることの証拠として提出した証拠(甲13?甲22)は,外国語で掲載されたものであって,翻訳文の提出もないことから,記事の内容も不明で評価することができない。 したがって,引用商標は,申立人の業務に係る商品「ワイン」を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国及び外国の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 (2)小括 以上によれば,引用商標は,上記1のとおり,本件商標と引用商標とは,非類似の商標であり,また,上記(1)のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認められないものである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について 本件商標と引用商標とは,前記第1及び第2のとおり,本件商標は図形部分と文字部分が一体に書されたものであり,引用商標は,文字のみである。 そうすると,8文字中7文字が共通するとしても,本件商標の文字部分の背景にある図形部分を有することにより,図形の有無が需要者に強く印象され,異なるものとして看取されるものであり,上記1のとおり互いに紛れるおそれのない非類似の商標として,その類似性の程度は,決して高いとはいえないものである。 次に,引用商標は,上記2(1)のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品「ワイン」を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものである。 さらに,引用商標は,我が国において,親しまれた語ではなく特定の読みをもった既成の語を表したものとは認識されないものではあるが,「記章,バッジ」等を意味する英語の成語であることから,その独創性の程度はそれほど高いとはいえないものである。 また,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは,ともに第33類の「ぶどう酒」の商品であるから,取引者,需要者は共通しており,その生産者や販売経路などの取引の実情も共通している。 そうすると,本件商標と引用商標とは,明らかに相違するものであって,類似性の程度は決して高いものではなく,また,引用商標は,申立人の業務に係る商品を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたものではなく,さらに,その独創性の程度は低いことから,両商標の指定商品の取引者,需要者及び取引の実情が共通するとしても,本件商標をその指定商品について使用した場合には,これに接する取引者,需要者が引用商標ないしは申立人を連想,想起するようなことはないというべきである。 してみれば,該商品が申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものと判断するのが相当である。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第19号該当性について 本号は,「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて,不正の目的(不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。 そうすると,上記1(3)及び2(1)のとおり,本件商標と引用商標とは非類似の商標であり,かつ,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国及び外国の需要者の間で,申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして,広く認識されていたとは認められないものであるから,商標法第4条第1項第19号に該当する要件を欠くものといわざるを得ない。 さらに,不正の目的についても,申立人は,引用商標が周知著名であることを前提に,本件商標が引用商標の有する周知・著名性に便乗し不正の利益を得る目的が認められる旨を主張しているが,引用商標の周知著名性は上記のとおりであり,申立人が提出した甲各号証を総合して勘案しても,本件商標権者が,申立人に係る引用商標の信用にただ乗り(フリーライド)する意図など,それらを毀損させるものというべき事実は見出し難いばかりでなく,他に,本件商標が不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって本件商標の使用をするものと認めるに足る具体的事実を見いだすことができない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。 5 むすび 以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第10号,同第11号,同第15号及び同第19号のいずれにも違反してされたものとはいえないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
【別記】 |
異議決定日 | 2018-08-10 |
審決分類 |
T
1
651・
263-
Y
(W33)
T 1 651・ 271- Y (W33) T 1 651・ 222- Y (W33) T 1 651・ 262- Y (W33) T 1 651・ 261- Y (W33) T 1 651・ 255- Y (W33) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 駒井 芳子 |
特許庁審判長 |
井出 英一郎 |
特許庁審判官 |
大森 友子 榎本 政実 |
登録日 | 2016-09-23 |
権利者 | Savitas Wines Pty Ltd |
商標の称呼 | インシグニス |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |