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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W25354245
管理番号 1346171 
審判番号 無効2017-680001 
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-06-07 
確定日 2018-10-02 
事件の表示 上記当事者間の国際商標登録第1269044号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第1269044号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなるものであり,2015年(平成27年)5月5日に国際商標登録出願され,第25類「Clothing,footwear,headgear.」、第35類「Public business management,business administration.」、第42類「Scientific and technological research and development;computer software design;industrial design;industrial analysis and research services;design and development of computer hardware and software,information technology programming services.」及び第45類「Legal services.」を指定商品及び指定役務として,平成28年11月11日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
請求人が引用する登録商標は,リンゴをモチーフとした別掲2ないし別掲6の構成態様からなる図形商標であり,別掲2を引用商標1,別掲3を引用商標2,別掲4を引用商標3,別掲5を引用商標4及び別掲6を引用商標5という。
なお,これらをまとめていうときは,以下「引用商標」という。
第3 請求人の主張
請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第18号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当し,同法第46条第1項第1号により,無効にすべきものである。
(1)請求人について
請求人Apple Inc.(アップル インコーポレイテッド)は,iMac,MacBook等のパーソナルコンピュータ,多機能情報電子端末iPhone,デジタルオーディオプレーヤーiPod,タブレット型コンピュータiPad,腕時計型コンピュータApple Watch等を製造販売し,音楽・映像配信サービスiTunes等を提供する米国の法人である。請求人は,経済紙出版社であるフォーブス社が選ぶ「世界の最も価値あるブランドランキング」で首位を獲得するなど,高い知名度を誇り,当該ランキングにおいては,2011年から7年連続で首位の座を維持している(甲2)。
上記に例示した製品は,日本を含む世界各国で記録的な売り上げを達成し,請求人とともに需要者の間において広く知られており,請求人の動向や販売する新製品及びサービスについて全世界の消費者・メディアが注目している(甲3)。
また,請求人の商標「APPLE」が日本で周知著名であることは,特許庁の日本国周知・著名商標リストに掲載されているとおりであるが(甲4),これと同様に上記製品等に付されているリンゴの図形(以下「請求人ロゴ」という。)も請求人の商標として著名なものであることは顕著な事実である。特許庁においても請求人ロゴが著名・周知であることは他の事案においても認められている(甲5)。
(2)請求人の著名図形について
請求人にかかるロゴマークは,1976年創業時は「アイザック・ニュートンが木に寄りかかって本を読んでいるところ」をモチーフとしたもので,当時から,ロゴにはリンゴが表されていた(甲6)。
別掲2(引用商標1)のとおり,変更されたロゴは,現在も使用されている馴染みのフォルムをしており,現時点で一番長く使用されている態様である。このように六色に色分けされた請求人ロゴはコンピュータに付され,以下のとおり我が国において多数の登録を有している(甲7)。
第1727952号(登録日1984/11/27)
第1737946号(登録日1984/12/20)
第1927083号(登録日1987/01/28)
第2040538号(登録日1988/04/26)
第2210825号(登録日1990/02/23)
第2265753号(登録日1990/09/21)
第2277572号(登録日1990/10/31)
第2547303号(登録日1993/06/30)
第3037960号(登録日1995/04/28)
第3081884号(登録日1995/10/31)
第3136245号(登録日1996/03/29)
第3136246号(登録日1996/03/29)
第3141738号(登録日1996/04/30)
第3165880号(登録日1996/06/28)
その後,別掲3(引用商標2)のとおり,単色の請求人ロゴが発表された。請求人ロゴは以下のように我が国において多数登録されている(甲8)。また,文字との組み合わせにおいても多数登録が存在する(甲9)。
第2173459号(登録日1989/09/29)
第4684951号(登録日2003/06/20)
第4696655号(登録日2003/08/01)
第4762822号(登録日2004/04/09)
第5054551号(登録日2007/06/15)
第5054552号(登録日2007/06/15)
第5078584号(登録日2007/09/21)
第5137030号(登録日2008/06/06)
第5548200号(登録日2013/01/11)
第5714458号(登録日2014/10/31)
第5779077号(登録日2015/07/17)
第5807989号(登録日2015/11/20)
第5833006号(登録日2016/03/11)
第5940873号(登録日2017/04/14)
文字との組み合わせ
第4120165号(登録日1998/03/06)
第5787457号(登録日2015/08/21)
第5787458号(登録日2015/08/21)
第5799082号(登録日2015/10/09)
第5874282号(登録日2016/08/12)
第5885420号(登録日2016/09/30)
商願2014-076247
商願2014-076248
商願2016-102678
商願2017-049858
以上のとおり,請求人にかかるロゴマークは,当初のロゴマークを除いて,その形状は同一のリンゴの図形である。
そのほかにも,請求人は,別掲4(引用商標3)ないし別掲6(引用商標5)のとおり,リンゴ図形について商標登録を所有している(甲10)。
第872064号(登録日1970/09/07)
第989999号(登録日1972/11/30)
第1509662号(登録日1982/04/30)
第990000号(登録日1972/11/30)
第1509661号(登録日1982/04/30)
インターネットにおける画像検索でも「アップル」の文字を検索すると,野菜としてのリンゴではなく,請求人のリンゴ図形が多く検索結果に表示される状態にある(甲11)。
このように,請求人は請求人ロゴ以外にもリンゴ図形の登録を所有しており,請求人ロゴの著名性からリンゴ図形を出所表示として用いた場合には,需要者は請求人との関連性を想起することとなる。
(3)出所混同の判断基準について
審査基準では,本号に該当するか否かについて以下の点を総合的に判断するものとして例示している。
ア 出願商標とその他人の標章との類似性の程度
イ その他人の標章の周知度
ウ その他人の標章が造語よりなるものであるか,又は構成上顕著な特徴を有するものであるか
エ その他人の標章がハウスマークであるか
オ 企業における多角経営の可能性
カ 商品間,役務間又は商品と役務間の関連性
キ 商品等の需要者の共通性その他取引の実情
以下,これらの該当性の有無を検討するに,
判断基準アについて,本件商標は上記のとおり全体として三段書きの構成をとるものであり,一段目は欧文字の「a」を含む図形,二段目及び三段目にはそれぞれ「ADAMIS」「GROUP」の欧文字が配置されている。文字部分は,デザイン化されて図形部分に組み込まれる態様ではないため,視覚的に分離され得る。また,文字部分が黒色であるのに対し図形部分が赤色であることからも,本件商標は分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものとまではいえない。また,当該図形は,赤色で,目につきやすい上段に配置されているため,本件商標における独立した要部と理解することは難しくない。
本件商標には「リンゴ」のコードが振られていることから,当該図形は「リンゴ」を認識することができるものと理解する。
本件商標の図形部分と別掲3(引用商標2)との対比に見られるように,本件商標はリンゴの果肉部とその上部に葉が中心から右上に傾いた態様で配されている。請求人ロゴも同様に果肉部とその上部に葉が中心から右上に傾いた態様で配されている点で共通している。
本件商標と請求人ロゴは,相違点が存在するが,全体のモチーフの共通性は需要者において記憶されやすく,かかる共通点をもって出所の誤認混同が生じる可能性があるといえる。
そうすると,上記に列挙した請求人の商標は,本件商標の出願時及び査定時において周知著名となっていたものであるから,リンゴの図形を含む本件商標は,その需要者・取引者が出所を混同するおそれがあり,また,請求人と何らかの関係があるような誤認を生じさせ,請求人にかかる商標の識別力希釈化するおそれがあることも明らかである。
イについては,前記のとおり請求人ロゴは周知著名である。
ウについて,請求人ロゴは創造標章であることは明らかである。
エについて,当該リンゴの図形は請求人のハウスマークであることは顕著な事実である。
オに関して,近時においてほとんどの企業が多角経営化を図り,従来では考えられなかった異業種に進出している例も少なくないことは顕著な事実である。請求人における主要な事業はコンピュータ関連であるものの,多角経営化が珍しくない社会状況からすれば,多くの企業と同様に多角経営の可能性がないことは認定できない。
事実,請求人は,コンピュータの分野以外にも様々な事業分野で商品展開している。例えば,アップル社本社では,コンピュータ関連製品の他,マグカップやTシャツ,文房具等が販売されている(甲12)。
したがって,多角経営の可能性は十分に認められる。
カ及びキに関しては,本願商標の指定役務において,コンピュータ関連の事業が含まれているところ,これらは請求人の主力事業であるため,混同が生じる範囲であるおそれがある。
(4)むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当し,商標登録を受けることができないものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は,本件商標中の図形部分は,請求人が主張するように,「リンゴ」であると特定して認識できるものではない,旨を主張している。
そして,被請求人によれば,通常,「リンゴ」を図形化する場合は,「一本の果実」と「果肉部分」の組み合わせを図形化して構成するものである。一方,本件商標の図形部分は,「二本の棒状の部分」と「英文字の『a』のようなデザインを中に配した,楕円のような丸みを帯びた部分」とから構成されるものであり,「楕円のような丸みを帯びた部分」から直接「二本の棒状の部分」が上方に飛び出すように出ていることから,通常「リンゴ」を表現する場合に表す「一本の果軸」とは異なっていること,また,英文字の「a」のようなデザインを中に配していることから,当該図形部分は,「リンゴ」の図形とは構成の軌を異にしているものである,と主張する。
しかし,請求人は自己のウェブサイトでリンゴの図形を用いており(甲13),本件商標の図形部がリンゴではないとする主張はにわかに信用できない。
通常,「リンゴ」を図形化する場合は,「一本の果軸」,「果肉部分」及び「一枚の葉」の組み合わせからなるものである(甲14)。
そこで,本件商標中の図形部分を見ると,本件商標中の図形部分は「一本の棒状の部分」,「楕円のような丸みを帯びた部分」及び「一本の右上に傾いた棒状の部分」から構成されている。上記の「一本の棒状の部分」は,「楕円のような丸みを帯びた部分」の中央から縦方向に延びており,需要者に「果軸部分」を認識させる。また,上記の「一本の右上に傾いた棒状の部分」は,葉を側面から見たときの形状を認識させる。したがって,本件商標中の図形部分は,「一本の果軸」,「果肉部分」及び「一枚の葉」の組み合わせからなるものであり,「リンゴ」を表したものであると容易に特定できるものである。
この点,被請求人は,上記の「一本の右上に傾いた棒状の部分」は,「楕円のような丸みを帯びた部分」から「直接」出ているため,「葉」であると認識されるものではない,と主張している。
しかし,本件商標中の図形部分を考察すると,上記の「一本の右上に傾いた棒状の部分」は,「果軸」と認識される棒状の部分から出ており,果肉部分との間には隙間が存在する。したがって,被請求人の「楕円のような丸みを帯びた部分」から「直接」出ているため,「葉」であると認識されるものではない,との主張は妥当ではない。
また,被請求人は,本件商標中の図形部分中,英文字の「a」のようなデザインを中に配していることから,当該図形部分は,「リンゴ」の図形とは構成の軌を異にしているものである,と主張している。
しかし,英文字の「a」のようなデザインは,「リンゴ」を「apple」と英語で表記した際の頭文字と認識することができ,英文字の「a」のようなデザインを中に配していることによって,本件商標中の図形部分は「リンゴ」であると認識できる。したがって,被請求人の,英文字の「a」のようなデザインを中に配していることから,当該図形部分は,「リンゴ」の図形とは構成の軌を異にしている,との主張は妥当ではない。
さらに,甲第14号証が示すように,通常,「リンゴ」は赤色で表される。そうすると,本件商標中の図形部分及び英文字の「a」のようなデザインが赤色で構成されていることからみても,本件商標中の図形部分は,「リンゴ」を表したものであると容易に特定することができ,「梨」等の他の果物を想起することはない。
(2)さらに,被請求人は,本件商標中の図形部分は,請求人のロゴマークにおける顕著な特徴である「一口かじられている」というような特徴も有していないものであるから,両図形は明らかに類似しないものであり,別異の図形と何人にも認識されるものである,と主張している。
しかし,上記のとおり,本件商標中の図形部分は「リンゴ」を表したものと特定できることから「リンゴ」の観念が生じる。
これに対し,請求人のロゴマークにも「リンゴ」の観念が生じる。
したがって,両図形は少なくとも共通の観念を有し,その共通性は需要者において記憶されやすく,かかる共通点をもって出所の誤認混同が生じる可能性があるといえる。
(3)そうすると,上記に列挙した請求人の商標は,本件商標の出願時及び査定時において周知著名となっていたものであるから,リンゴの図形を含む本件商標は,その需要者・取引者が出所を混同するおそれがあり,また,請求人と何らかの関係があるような誤認を生じさせ,請求人にかかる商標の識別力希釈化するおそれがあることも明らかである。
(4)本件商標は,国際登録であるところ,中国,トルコ,スイス,EUTMの各指定国での出願経過をみても,引用商標を理由としたProvisional Refusalが出されている(甲15?甲18)。
このように,世界中で混同が生じる虞があるとして保護を拒絶され得る状況であることは本件の審理においても参照されるべきである。
第4 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨次のように述べた。
1 商標法第4条第1項第15号の規定に該当しない理由
本件商標の図形部分と引用商標(請求人のロゴマーク)の非類似及び出所の混同を生じないことについて
(1)請求人は,本件商標中の図形部分が独立した要部として理解されるとし,当該図形部分が「リンゴ」を認識できるとした上で,当該図形部分が,請求人のロゴマーク(甲7?甲9)と出所の混同を生ずるおそれがある旨を主張している。
しかし,本件商標中の図形部分は,以下に述べるように,請求人のロゴマークとは類似せず,出所の混同も生じないものである。
(2)本件商標中の図形部分は,請求人が主張するように,「リンゴ」であると特定して認識できるものではないものである。
この点,通常,「リンゴ」を図形化する場合は,「一本の果軸」と「果肉部分」の組み合わせを図形化して構成するものである。
しかし,本件商標中の図形部分は,「二本の棒状の部分」と「英文字の「a」のようなデザインを中に配した,楕円のような丸みを帯びた部分」とから構成されるものである。
ここで,「楕円のような丸みを帯びた部分」から直接「二本の棒状の部分」が上方に飛び出すように出ていることから,通常「リンゴ」を表現する場合に表す「一本の果軸」とは異なっていること,また,英文字の「a」のようなデザインを中に配していることから,当該図形部分は,「リンゴ」の図形とは構成の軌を異にしているものである。
請求人は,上記の「二本の棒状の部分」のうち,右側の「棒状の部分」を「葉が中心から右上に傾いた態様で配されている」と主張しているが,請求人が提出している甲第11号証の中に示されている「リンゴの図形」にも示されているように,リンゴの葉の部分は,図形化する場合に,リンゴの果軸の途中から出ているように表現されるものであるから,本件商標中の図形部分のように,「楕円のような丸みを帯びた部分」から「直接」出ている右側の「棒状の部分」は,「葉」であると認識されるものではないものである。
本件商標中の図形部分は,上記で述べてきたように,「リンゴ」の図形とは,そもそも構成の軌を異にするものであるから,「リンゴ」を表したものであると特定できるものではないものである。
本件商標中の図形部分は,一見,何らかの果実風に見えることはあっても,何を表したものであるかを特定して理解できるまでには至らないものであり,したがって,特定の称呼及び観念を生じない幾何図形の範疇に属するものである。
(3)さらには,請求人が周知著名であると主張している請求人のロゴマーク(甲7?甲9)は,「リンゴの右側を一口かじられている」点を顕著な特徴としているものである。
請求人は,請求人のロゴマークが周知著名であることは,特許庁においても認められている(甲5)旨を主張しているが,特許庁は,「リンゴの右側を一口かじられている」点を顕著な特徴としている図形について,周知著名であると認めているにすぎないものである。
この点,既に述べてきたように,本件商標中の図形部分は,「リンゴ」を表したものであると特定できるものではない,幾何図形の範ちゅうに属するものであると理解される上に,請求人のロゴマークにおける顕著な特徴である「一口かじられている」というような特徴も有していないものであるから,両図形は明らかに類似しないものであり,別異の図形と何人にも認識されるものである。
なお,この「一口かじられている」点については,請求人が提出している甲第6号証の1にも記載されているように,「ほかの果実と見間違われず,リンゴだとひと目で分かるようにしたかったから」と述べられている。
このことからも,例えば,「リンゴ」を図形化するつもりで,「一本の果軸」と「果肉部分」の組み合わせから成る図形を表したとしても,例えば,同様の形の果実として,「梨」等もあるため,必ずしもそれだけでは,何人も「リンゴ」を表したものであると特定できるわけではないことがいえるものである。
まして,本件商標中の図形部分のように,「二本の棒状の部分」と「英文字の「a」のようなデザインを中に配した,楕円のような丸みを帯びた部分」とから構成されている場合は,なおさら,何人にも「リンゴ」を表したものであると特定して理解できるものではないものである。
また,請求人が提出した甲第5号証の異議申立事件においては,当該事件における本件商標の図形について「りんご」を中央に配すると判断されながらも,請求人のロゴマークとは,非類似であると判断され,出所混同のおそれは認められず,請求人の申し立ては,特許庁に認められなかったものである。
よって,そもそも「リンゴ」を表したものであると特定できるものではない,本件商標中の図形部分については,なおさら,請求人のロゴマークとは類似せず,出所混同のおそれはないものと判断されるべきものである。
(4)以上のとおり,本件商標中の図形部分は,「リンゴ」を表したものであると特定できるものではなく,特定の称呼及び観念を生じない幾何図形の範ちゅうに属するものであること,請求人のロゴマークを周知著名たらしめている顕著な特徴である「一口かじられている」というような特徴も有していないことから,両図形は明らかに類似しないものであり,別異の図形であると何人にも容易に認識されるものである。
よって,本件商標から,たとえ,図形部分が取り出されて観察されたとしても,請求人のロゴマークとは,別異の図形として認識されるものであるから,請求人のロゴマークの周知著名性いかんにかかわらず,別異の図形として十分に識別できるものであり,商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれもないものである。
2 結び
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号には該当しない。
第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)商標法第4条第1項第15号における「混同を生ずるおそれ
同号における「混同を生ずるおそれ」の有無は,(ア)当該商標と他人の表示との類似性の程度,(イ)他人の表示の周知著名性及び独創性の程度,(ウ)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度,(エ)並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,(オ)当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきところである(最高裁判所平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日第三小法廷判決参照)。
(2)本件商標と引用商標(請求人の使用する商標)との混同を生ずるおそれについて
ア 本件商標と引用商標との類似性の程度について
本件商標は,別掲1のとおりの構成よりなるところ,これは,図形と文字の結合からなるものであって,図形部分及び文字部分のそれぞれが独立して自他商品の識別標識として機能を果たすものと認められる。
しかして,図形部分は,赤色で,左右に厚みをもった線が上下に細くなっていく線で繋がり,その上部に,2つの葉のようなものが付いており,また,その中心には,「a」の文字が配置されているものである。
そして,この図形部分は,その形状や態様が独特なものであって,仮に,果物をモチーフにしたとしても,何らかの具体的な果物として理解されるような外見ではないことから,これより特定の称呼,観念は,生じないものというべきである。
一方,引用商標1及び引用商標2は,色彩の有無に差異を有するものの,右側から一口かじられた1枚の葉が付いたりんごをイメージさせる図形であるところ,この図形商標は,請求人の強力な宣伝,販売戦略の下,特にパーソナル・コンピュータ関連分野をはじめとする関連商品又は役務において世界的に周知,著名になったものと認められ,それは特許庁において顕著な事実である。
そして,引用商標1及び引用商標2は,パーソナル・コンピュータ関連分野において,請求人の図形商標として,周知,著名なものであることから,これより特定の称呼を生じないものの,観念においては,「(請求人である)アップルのロゴマーク」程の観念を生じるというべきである。
また,引用商標3は,菓柄(果梗)が付いたりんごの輪郭をイメージさせる図形と,その中に,「りんご」を意味する「apple」の文字を有する構成からなるものであるから,これよりは,その構成中の文字に相応して,「アップル」の称呼を生じ,「リンゴ」の観念を生じるものである。
さらに,引用商標4及び引用商標5は,菓柄(果梗)が付いたりんごの断面,及びりんごを真横から見た構図からなる実物様の図形であることから,これよりは,「リンゴ」の称呼を生じ,かつ,「リンゴ」の観念を生じるものである。
そこで,本件商標の図形部分と引用商標を比較するに,本件商標の図形部分は,その形状や態様が独特なものであって,何らかの具体的な果物として理解されるような外見ではないことから,これより特定の称呼及び観念は,生じないものというべきであるのに対し,引用商標1及び引用商標2は,右側から一口かじられた1枚の葉が付いたりんごをイメージさせる図形であって,これより特定の称呼を生じないものの,観念においては,「(請求人である)アップルのロゴマーク」程の観念を生じるというべきである。
また,引用商標3は,菓柄(果梗)が付いたりんごの輪郭をイメージさせる図形と「apple」の文字の結合商標であって,「アップル」の称呼を生じ,「リンゴ」の観念を生じるものである。
さらに,引用商標4及び引用商標5は,菓柄(果梗)が付いたりんごの断面,及びりんごを真横から見た構図からなる実物様の図形であって,「リンゴ」の称呼を生じ,かつ,「リンゴ」の観念を生じるものである。
そうすると,外観においては,本件商標の図形部分は,引用商標と明らかに相違する構成態様であって,全く異なる印象を与えるものである。
また,称呼及び観念については,本件商標の図形部分からは,特定の称呼及び観念を生じないものであることから,例え,引用商標から,「アップル」,「リンゴ(りんご)」の称呼及び観念のほか,請求人の世界的に周知,著名な,いわゆる「(請求人である)アップルのロゴマーク」の観念を想起させる場合があるとしても,両者は,称呼上及び観念上,類似するものということはできない。
したがって,本件商標は図形と文字からなる商標であって,該図形部分と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても互いに紛れることのない非類似の別異の商標といわざるを得ず,本件商標の欧文字部分と引用商標とは,明らかに異なる別異の商標である。
イ 引用商標の周知著名性及び独創性の程度
(ア)引用商標の周知著名性
請求人の提出した証拠及び主張によれば,請求人は,パーソナルコンピュータ,多機能情報電子端末iPhone,デジタルオーディオプレーヤーiPod,タブレット型コンピュータiPad等を製造販売し,音楽・映像配信サービスiTunes等を提供することを主な業務とする企業であって,引用商標1及び引用商標2は,我が国において商標登録されており(甲7,甲8),パーソナルコンピュータ,スマートフォン及びそれに関連する商品又は役務の分野において使用されていることは,特許庁において顕著な事実であるといい得るものであって,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,請求人の業務に係る商品又は役務を表示する商標として,取引者,需要者の間に広く認識されていたといい得るものである。
また,引用商標3ないし引用商標5は,我が国において商標登録されているものの(甲10),請求人の提出した証拠からは,その指定商品及び指定役務において使用され,請求人の業務に係る商品又は役務を表示する商標として,取引者,需要者の間に広く認識されている事実は確認できず,また,それらの図形商標を表示した商品及び役務における使用の態様,その販売数,提供数,市場占有率,広告の範囲,回数等,著名性を判断する客観的な事実を証明する資料の提出もないことから,請求人の提出した証拠からは,引用商標3ないし引用商標5が上記パーソナルコンピュータ,スマートフォン及びそれに関連する商品又は役務以外の商品又は役務について,請求人の業務に係る商品又は役務を表示する商標として,取引者,需要者の間に広く認識されていると認めることはできない。
(イ)引用商標の独創性の程度について
引用商標1及び引用商標2は,親しまれた果物であるリンゴをモチーフにしたものではあるものの,その右上方にかじられたような切り欠きのある簡略化されたリンゴの図形である該図形商標については,独創性を有しているといい得るものである。
また,引用商標3ないし引用商標5は,親しまれた果物であるリンゴをモチーフにしたものであって,独創性の程度が高いものといえない。
ウ 本件商標の指定商品及び指定役務と請求人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度
本件商標の指定役務に係る第42類の「computer software design;design and development of computer hardware and software,information technology programming services.」(参考和訳:コンピュータソフトウエアの設計,コンピュータのハードウエア及びソフトウエアの設計及び開発,情報技術プログラムの設計・作成又は保守)と,引用商標の使用に係るパーソナルコンピュータ,スマートフォン及びその関連商品又は役務とは,関連性のある事業分野であるものの,本件商標の指定商品及び上記役務以外の指定役務については,第25類「Clothing,footwear,headgear.」、第35類「Public business management,business administration.」、第42類「Scientific and technological research and development;industrial design;industrial analysis and research services.」及び第45類「Legal services.」であって,品質(質)や用途,流通経路,提供の方法が全く異なる無関係な事業分野であって,関連性の程度は希薄である。
エ 商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情など
本件商標に係る上記した一部の指定役務については,関連性のある事業分野ではあるものの,その他の本件商標の指定商品及び指定役務と,引用商標の使用に係る商品又は役務との関連性は,上記ウのとおりであって,両者の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者についても,明確に異なるものである。
オ 本件商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力
本件商標に係る上記した一部の指定役務については,コンピュータ関連分野のサービスであって,その分野においては,コンピュータ等に関する一般的な知識のほか,専門的な知識も必要となる場合もあるため,その取引者,需要者においては,少なくとも普通に払われる注意力を有するものというのが相当である。
(3)小括
上記(2)を総合的に考慮してみれば,引用商標1及び引用商標2が請求人のパーソナルコンピュータ,スマートフォン及びそれに関連する商品又は役務の分野において使用されて,同人の業務に係る商品又は役務を表示する商標として,取引者,需要者の間に広く認識されていたとしても,本件商標の指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として判断すれば,本件商標と引用商標1及び引用商標2とは,外観,称呼及び観念のいずれの観点からも類似するとは認められず,互いに異なった印象を有する別異の商標であるため,本件商標の一部の指定役務にコンピュータ等に関連性のある分野の役務があるとしても,取引者及び需要者も異なるものであるから,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品又は指定役務について使用しても,これに接する取引者,需要者をして引用商標1及び引用商標2を連想又は想起させることはなく,その商品及び役務が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
また、引用商標3ないし引用商標5は,請求人のパーソナルコンピュータ,スマートフォン及びそれに関連する商品又は役務の分野において,同人の業務に係る商品又は役務を表示する商標として,取引者,需要者の間に広く認識されていないものであって,かつ,本件商標と引用商標3ないし引用商標5とは,称呼,外観及び観念のいずれの観点からも類似するとは認められず,互いに異なった印象を有する別異の商標であるため,本件商標の指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として判断すれば,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品又は指定役務について使用しても,これに接する取引者,需要者をして引用商標3ないし引用商標5を連想又は想起させることはなく,その商品及び役務が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
2 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号に該当するとはいえないから,同法第46条第1項により,その登録を無効とすることはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 【別記】






審理終結日 2018-05-15 
結審通知日 2018-05-17 
審決日 2018-05-29 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (W25354245)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 内田 直樹 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 榎本 政実
井出 英一郎
登録日 2015-05-05 
商標の称呼 アダミスグループ、アダミス、エイ 
代理人 小出 俊實 
代理人 幡 茂良 
代理人 橋本 良樹 
代理人 蔵田 昌俊 
代理人 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 
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