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審決分類 審判 査定不服 外観類似 登録しない W3543
審判 査定不服 称呼類似 登録しない W3543
審判 査定不服 観念類似 登録しない W3543
管理番号 1346051 
審判番号 不服2018-6142 
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-07 
確定日 2018-10-26 
事件の表示 商願2017-1990拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は,別掲1のとおりの構成からなり,第35類及び第43類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として,平成29年1月12日に登録出願され,その後,指定役務については,原審における同年7月11日付の手続補正書により,第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,広告業,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,職業のあっせん,求人情報の提供」及び第43類「飲食物の提供,レストラン等の飲食店に関する情報の提供,宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,動物の宿泊施設の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与,業務用加熱調理機械器具の貸与,加熱器の貸与,食器の貸与,調理台の貸与,流し台の貸与」に補正されたものである。

2 引用商標
原査定において,本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして,本願商標の拒絶の理由に引用した登録第5934298号商標(以下,「引用商標」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,平成28年8月9日に登録出願,第43類「飲食物の提供」の役務を指定役務として,同29年3月24日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。

3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本願商標について
本願商標は,別掲1のとおりの構成よりなるところ,ほぼ左右対称にデザインされた図形を上部に配し,その図形の下に,「Le BENKEI」の欧文字及び「ル・ベンケイ」の片仮名を二段に書してなるところ,その構成中の「Le BENKEI」の文字部分中,「Le」の文字はフランス語の定冠詞であり,「BENKEI」の文字は辞書等に掲載がないものであることから,全体としてフランス語風の造語として認識されるものである。また,「ル・ベンケイ」の文字部分は,「Le BENKEI」の欧文字の読みを表したものと理解されるものである。
そして,図形部分は,我が国において特定の事物を表したもの,又は意味合いを表すものとして認識され,親しまれているというべき事情は認められないことから,該図形部分からは,特定の称呼及び観念は生じないものである。
してみれば,本願商標において,図形部分と文字部分は,視覚上,明確に分離して看取されるだけでなく,特別な関連性を有するものではないことからすると,これらは分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえないものであるから,図形部分と文字部分とが,それぞれ独立して出所識別機能を果たす部分として認識されるものといえる。
そうすると,本願商標は,その構成中の「Le BENKEI」及び「ル・ベンケイ」の文字部分を要部として抽出し,引用商標と比較して,商標の類否を判断することができるものである。
したがって,本願商標は,その構成中の「Le BENKEI」及び「ル・ベンケイ」の文字部分に相応して,「ルベンケイ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標について
引用商標は,別掲2のとおり,Bの欧文字をモチーフにしたと思しき図形を上部に配し,その図形の下に,「BOULANGERIE」の欧文字,「LE BENKEI」の欧文字及び「ブーランジェリー ル ベンケイ」の片仮名を三段に書してなるところ,構成中の「BOULANGERIE」の文字は「パン屋」の意味を有するフランス語(「クラウン仏和辞典 第7版」株式会社三省堂),「LE」の文字はフランス語の定冠詞であり,「BENKEI」の文字は辞書等に掲載がないものであることから,全体としてフランス語風の造語として認識されるものである。
また,「ブーランジェリー ル ベンケイ」の文字部分は,その上段に書された「BOULANGERIE」及び「LE BENKEI」の欧文字の読みを表したものと理解されるものである。
そして,図形部分は,我が国において特定の事物を表したもの,又は意味合いを表すものとして認識され,親しまれているというべき事情は認められないことから,該図形部分からは,特定の称呼及び観念は生じないものである。
してみれば,引用商標において,図形部分と文字部分は,視覚上,明確に分離して看取されるだけでなく,特別な関連性を有するものではないことからすると,これらは分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえないものであるから,図形部分と文字部分とが,それぞれ独立して出所識別機能を果たす部分として認識されるものといえる。
また,引用商標構成中の「BOULANGERIE」及び「ブーランジェリー」の文字は,「パン屋」の意味を有する語であり,その指定役務である「飲食物の提供」との関係においては,識別力がないか,極めて弱いといえるものである。
そして,中段の「LE BENKEI」の欧文字は,フランス語風の造語として認識されるものであるところ,上段の「BOULANGERIE」の欧文字及び「ブーランジェリー ル ベンケイ」の片仮名よりも明らかに大きく太く書された構成からなることから,引用商標に接する取引者,需要者は,該「LE BENKEI」の文字に着目して取引にあたる場合も決して少なくないものというのが相当である。
そうすると,引用商標は,その構成中「LE BENKEI」の文字部分を要部として抽出し,本願商標と比較して,商標の類否を判断することができるものである。
したがって,引用商標は,その構成中の全体の文字部分に相応して,「ブーランジェリールベンケイ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。また,引用商標の要部として,その構成中の「LE BENKEI」の文字部分の構成文字に相応して,「ルベンケイ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
ウ 本願商標と引用商標の類否について
そこで,本願商標と引用商標の類否を検討するに,本願商標の要部である「Le BENKEI」の文字部分と引用商標の要部である「LE BENKEI」の文字部分について比較すると,外観においては,2文字目において大文字と小文字の差異はあるものの,それぞれ同じ綴りの文字からなるものであり,これに接する取引者,需要者に,近似した印象を与えるものであって,両者は,外観上,類似するものである。
次に,称呼においては,本願商標の要部と引用商標の要部は,共に「ルベンケイ」の称呼を生じるものであるから,称呼上,両者は同一である。
さらに,観念においては,本願商標の要部及び引用商標の要部は,ともに特定の観念を生じないものであるから,両者は観念において比較することはできない。
そうすると,本願商標と引用商標は,上記のとおり,それぞれの要部として看取される「Le BENKEI」の文字部分と,「LE BENKEI」の文字部分において,観念において比較することはできないとしても,外観上,近似した印象を与えるものであって,かつ,その称呼を同一にするものであるから,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合的に勘案すれば,両者は互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきものである。
エ 本願商標の指定役務と引用商標の指定役務の類否について
本願商標の指定役務中,第43類「飲食物の提供,レストラン等の飲食店に関する情報の提供」は,引用商標の指定役務の第43類「飲食物の提供」と同一又は類似の役務である。
オ 小括
本願商標と引用商標は,互いに相紛れるおそれのある類似の商標であり,かつ,本願商標の指定役務は,引用商標の指定役務と類似するものである。
したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は,「需要者には『弁慶』と『BENKEI』は事実上同義語として認識され,『弁慶』の語は,商標審査基準の『八,第3条第1項第6号 9.店名として多数使用されている商標について』に例示されている『需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標』であると認識されるものであり,指定役務『飲食物の提供』について『弁慶』の語に自他役務識別力がないのと同様に,『弁慶』の表音に過ぎない『ベンケイ』や定冠詞『Le(ル)』を付した『Le BENKEI/ル・ベンケイ』もまた,『飲食物の提供』については,自他役務識別力がないと解される」,及び「上記甲第19?30号証を総合して考察すれば,取引者及び需要者(一般消費者)が,『BENKEI(benkei)』『ベンケイ』の語から想起する観念は,明らかに『弁慶(武蔵坊弁慶,弁慶という名の鎌倉時代初期の僧)』であり,『BENKEI(benkei)』『ベンケイ』と『弁慶』は観念上同一と解されます。」旨を主張している。
しかしながら,「弁慶」が店名として使用され,その欧文字表記が「BENKEI」であるとしても,国語辞書等によれば,「BENKEI(benkei)」や「ベンケイ」の文字は,「弁慶」を意味を有する語として掲載されていないものであって,直ちに,これらの文字が「弁慶」を表すものではないというべきである。
そして,本願商標構成中の「Le BENKEI」の文字部分は,フランス語の定冠詞である「Le」と「BENKEI」の文字を連結したものであるから,全体として何らかのフランス語的な語を表したものと理解されるものというのが相当であって,フランス語風の造語であると理解されるというのが相当である。
また,請求人の提出した証拠(甲37?甲46)によっては,「Le BENKEI」,及び「BENKEI」の文字がありふれた店名であるという事実を認めることができない。
してみれば,本願商標構成中の「Le BENKEI」の文字部分は,「飲食物の提供」について,自他役務の識別力を有するものである。
イ 請求人は,「またもし仮に,本願商標中の『Le BENKEI』『ル・ベンケイ』が自他役務識別力を有すると解するならば,引用商標は,未登録周知商標と類似するにもかかわらず登録されたものであり,無効理由を有する商標と解さざるを得なくなる。すなわち,本願商標中の『Le BENKEI』『ル・ベンケイ』は,引用商標の出願日には,出願人の業務に係るフランス料理店の名称として既に周知性を獲得していたものであり,引用商標は本来ならば商標法第4条第1項第10号により拒絶されるべき商標である。」旨を主張している。
しかしながら,引用商標は,仮に,無効理由を有する商標であるとしても,現在もその商標権は有効に存続しており,商標法第4条第1項第11号に規定する先願に係る他人の登録商標として有効である。
また,当審の手続においては,引用商標に関する無効事由を判断するものではないものであるが,念のため「Le BENKEI」又は「ル・ベンケイ」の文字が周知性を獲得しているかどうかを検討すると,レストラン「ル・ベンケイ」が,ミシュランガイドの2012年版及び2013年版に掲載されたこと,該レストランのオーナーシェフである尾川欣司氏の業績について新聞に掲載されたこと,雑誌において広告を行ったことなどは確認ができるものの,本願商標を付した商品の売上高,その使用期間,使用地域,広告宣伝の規模等について証明し得る資料は提出されておらず,広告,宣伝の費用,期間,地域及び規模も明らかにされていないから,どの程度の範囲の需要者に知られているか不明であって,その周知性を判断することができない。
したがって,本願商標と引用商標が類似するものであって,その指定役務も同一又は類似するものであることは,上記(1)のとおりであるから,上記の主張によっては,本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当することについての判断を覆す理由とはなり得ない。
ウ 請求人は,「ネットの『weblio辞書』で『BENKEI』を検索してみても,『武蔵坊弁慶』(つまり『弁慶』)の意とのみ記載されている。また実際,他の区分には,『弁慶』と『BENKEI』を併記した登録商標の例も複数あり,需要者(一般消費者)には『弁慶』と『BENKEI』は事実上同義語として認識され易くなっている。さらに,過去の審決例を見ても,異なる文字種(漢字・カタカナ・欧文字)であっても観念を共通にすると判断されている例が多数存在している。上記甲第19?30号証を総合して考察すれば,取引者及び需要者(一般消費者)が,『BENKEI(benkei)』『ベンケイ』の語から想起する観念は,明らかに『弁慶(武蔵坊弁慶,弁慶という名の鎌倉時代初期の僧)』であり,『BENKEI(benkei)』『ベンケイ』と『弁慶』は観念上同一と解される。」旨を主張している。
しかしながら,「BENKEI(benkei)」「ベンケイ」の語から直ちに「弁慶」を表すものとはいえないことは,上記アのとおりである。
そして,「弁慶」及び「BENKEI」を併記した登録例が存在し,異なる文字種であっても観念を共通にすると判断されている過去の審決例が存在するとしても,請求人の挙げる登録例及び審決例は,本件とは事案を異にするものであり,それらの登録例及び審決例が上記判断を左右するものではない。
エ 請求人は,「甲第36号証の判決は,商標『ル・ヴェルジェ/Le Verger』と商標『Verger/ヴェルジェ』の類否を考察したものであり,『第4 当裁判所の判断』の中で『「Le」は,フランス語では定冠詞であって,それ自体に格別の意味がないものであるから,取引者,需要者は,欧文字部分のうち「Verger」の文字部分を出所を示す識別標識として顕著な部分と認識し,これから生ずる称呼をもって取引に当たる場合も少なくないものと推認し得る。』と考察し,両商標は類似の商標であると判断している。これら甲第31?36号証の審決及び判決から類推すれば,それ自体に格別の意味がない『Le(ル)』を付した『Le BENKEI/ル・ベンケイ』は,前記『BENKEI』『ベンケイ』と同様に,明らかに『弁慶』の観念が生じる語であると解される。よって,『飲食物の提供』について『弁慶』の語に自他役務識別力がないのと同様に,『弁慶』の表音に過ぎない『ベンケイ』や定冠詞『Le(ル)』を付した『Le BENKEI/ル・ベンケイ』もまた,『飲食物の提供』については,自他役務識別力がないと解されてしかるべきである。」旨を主張している。
しかしながら,「Le」の文字が,フランス語における定冠詞であることからすれば,本願商標構成中の「Le BENKEI」の文字部分は,全体として何らかのフランス語的な語を表したものと理解されるものであって,特定の観念を生じないフランス語風の造語として理解されるものである。
そうすると,該「Le BENKEI」の文字は,「弁慶」の観念を直ちに認識させるものとはいえないことから自他役務の識別力を有するというのが相当である。
オ 請求人は,「引用商標はその構成中に『BOULANGERIE』『ブーランジェリー』の語を有しているが,この語は英語の『ベーカリー/Bakery』と同様に,現在では『パン屋』を表す語として店名などに頻繁に使用されている語である。よって,取引者及び需要者は引用商標の構成から,『パン屋の〇〇〇』の観念を想起することは明らかであり,もし仮に構成中の『LE BENKEI』から称呼・観念が生ずるとすれば,引用商標の観念は明らかに『パン屋の弁慶』となる。したがって,本願商標と引用商標は,上部の図形部分から受ける印象の差異のみならず,観念における顕著な差異によっても容易に識別し得る商標である。」旨を主張している。
しかしながら,引用商標の構成中の「BOULANGERIE」及び「ブーランジェリー」の語は,「パン屋」を表すフランス語として,店名などに頻繁に使用されている語であることが普通に認められるものであって,該文字は,その指定役務である「飲食物の提供」との関係においては,識別力がないか,極めて弱いといえるものであるから,上記(1)のとおり,引用商標に接する取引者,需要者は,構成中の「LE BENKEI」の文字部分に着目し,該文字部分より生じる称呼,観念をもって,商取引にあたる場合も決して少なくないといえるものである。
そうすると,引用商標は,その構成中「LE BENKEI」の文字部分を要部として抽出し,本願商標と比較して,商標の類否を判断することができるものである。
そして,該「Le BENKEI」の文字は,フランス語風の造語であると理解されるというのが相当であるから,引用商標からは,特定の観念を生じないものであって,請求人のいう「パン屋の弁慶」の観念は生じないものである。
したがって,請求人の上記主張は,いずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第4条第1項第11号に該当し,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本願商標)


別掲2(引用商標)



審理終結日 2018-08-27 
結審通知日 2018-08-29 
審決日 2018-09-13 
出願番号 商願2017-1990(T2017-1990) 
審決分類 T 1 8・ 262- Z (W3543)
T 1 8・ 261- Z (W3543)
T 1 8・ 263- Z (W3543)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉本 克治 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 須田 亮一
薩摩 純一
商標の称呼 ルベンケイ、ルベンケー、ベンケー 
代理人 辻本 一義 

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