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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) W25 審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) W25 審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) W25 |
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管理番号 | 1344111 |
異議申立番号 | 異議2017-900135 |
総通号数 | 226 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2018-10-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-04-27 |
確定日 | 2018-09-12 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5916735号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5916735号商標の商標登録を取り消す。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5916735号商標(以下「本件商標」という。)は,「VANSNEAKER」の文字を標準文字で表してなり,平成28年7月25日に登録出願,同年12月12日に登録査定,第25類「履物」を指定商品として,同29年1月27日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立てにおいて引用する登録第5245474号商標は,「VANS」の文字を標準文字で表してなり,平成20年11月26日に登録出願,第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,同21年7月3日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第8号,同項第10号,同項第11号及び同項第15号に該当するから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第267号証(枝番号を含む。なお,甲号証の枝番号のすべてを引用する場合には,枝番の記載を省略する場合がある。)を提出した。 1 申立人及び引用商標について 申立人は,アメリカ合衆国カリフォルニア州に拠点をもつ,カジュアルシューズその他のアパレル製品を製造販売する企業である。そして,引用商標は,英語等の辞書に記載のない造語であり,申立人の業務に係る商品・役務を示すブランドとして,申立人により独白に創造された標章である。 申立人は,1966年(昭和41年)3月16日に,アメリカ合衆国カリフォルニア州でスニーカーを中心に販売するショップとして誕生した(甲3)。ブランド誕生以来,一貫して履物を中心に取り扱っており,それに付随して被服・帽子等のアパレル製品も展開し,バッグ・サングラス・携帯電話機用ケースやテント,キーホルダー等に至るまで,幅広い商品を加えながら(甲4),一貫した独自ブランドの履物の展開を続けており,履物の分野においてそのブランドを確固たるものとしている。 2 引用商標の周知・著名性について (1)1995年(平成7年)以降,申立人が積極的に次々と各種スポーツ・音楽イベントのスポンサーとなった(甲3)ことによっても,引用商標は,そのブランド名と商品を瞬く間に世界中に知らしめ,著名性を確立した。 2016年(平成28年)にブランド創設50周年を迎えた際には,メディアにおいて多数取り上げられた(甲5?甲28)。 申立人は,本国であるアメリカ合衆国を含む北米のみならず,中南米,ヨーロッパ,ロシア,中東,オセアニア,アジア各国でショップ展開し,別掲のとおりからなる「VANS」(以下「使用商標」という。)を付した商品は,世界中で販売されている。 2011年(平成23年)から2016年(平成28年)の日本における使用商標を付した商品(以下「『VANS』ブランド」という。)の小売分についての売上高は約209億円ないし297億円であり,申立人のロイヤルティ収入は約10億円ないし15億円である。また,2009年(平成21年)から2016年(平成28年)までの日本を含む各地域における宣伝広告費は約3億円ないし6億円である。 「VANS」ブランドは,商品「履物」を中心として展開されており(甲4),また,申立人の宣伝広告活動及び幅広い商品展開により,使用商標及び引用商標は,男女を問わず,これらの多種多様な商品の取引者・需要者に幅広く知られている。 (2)「VANS」ブランドは,日本において,全国に906店舗(2017年(平成29年)2月末時点)を展開する靴・衣料・雑貨等の小売チェーンである株式会社エービーシー・マートがその独占販売権を取得して,全国各地の一般消費者に販売し,使用商標及び引用商標は,申立人を表すブランド及びその名称の略称として広く知られている。 (3)「VANS」ブランドの各種雑誌における掲載 「VANS」ブランドは,現在に至るまで多くの雑誌において繰り返し紹介されている(甲30?甲236)。 (4)以上の事実から,引用商標は,本件商標の登録出願日より前から,履物の商品分野において申立人の商標として周知・著名であって,また申立人の略称としても著名となっており,かつ,それらの状態が本件商標の登録査定時においても継続していたことは明らかである。 3 商標法第4条第1項第8号について 本件商標は,「VANSNEAKER」の文字を表してなるものであるところ,これは「VANS」と「SNEAKER」の二語を結合させてなるものであると需要者が容易に理解することができる。 そして,上記2のとおり,本件商標の指定商品である「履物」との関係では,本件商標の構成中の「VANS」の文字部分は,申立人を示すものとして周知・著名となっていること明らかであるから,需要者は,本件商標を目にした場合,申立人の著名な略称である「VANS」の末尾の「S」と,運動靴又はスニーカーを意味する「SNEAKER」の冒頭の「S」を,一文字の「S」が兼ねる形でこれを結合したものであると即座に理解するものである。このことは,「VANS」の文字部分が,本件商標の外観上,他の部分と切り離されていないことをもっても否定されるものではない。 そして,「SNEAKER」の文字は,本件商標の指定商品との関係では識別力のない要素となっている。 そうすると,本件商標の最初から4文字の部分は,「VANS」として一つの重要な構成要素である。 しかも,申立人の名称は「VANS, Incorporated.」であるところ,「VANS」との表記は,その名称から,会社であることを表す「Incorporated」を省略したものであるから,申立人の略称を表示するものであって,いわゆるハウスマークを表すものである。 したがって,本件商標が申立人の著名な略称である「VANS」を含むものであることは明らかである。 以上を総合すると,本件商標は,申立人の著名な略称を含むものであるから,商標法第4条第1項第8号に該当する。 4 商標法第4条第1項第11号について 本件商標は,「VANS」と「SNEAKER」を,「S」を重ねる形で結合した結合商標であり,その指定商品は「履物」である。 引用商標は,履物の取引者又は需要者の間で申立人の商標として著名なものであるから,本件商標の構成中の「VANS」の文字部分を見た取引者又は需要者は,申立人の商標を示すものとして強く支配的な印象を受ける。 また,本件商標の指定商品は「履物」であるところ,本件商標の構成中の「SNEAKER」の文字部分は,スニーカー又は運動靴を意味する英単語として一般的に認知されているものであるから,当該「SNEAKER」の文字部分からは,出所識別標識としての称呼や観念が生じない。したがって,本件商標と引用商標の類否判断においては,本件商標から「VANS」の文字部分のみを取り出して,引用商標と比較し,その類否が判断されるべきである。 そして,本件商標の構成中の「VANS」の文字部分と引用商標を比較すると,本件商標の「VANS」の文字部分から生じる称呼は「バンズ」であり,引用商標から生じる称呼も同じく「バンズ」であって,両商標の称呼は同一である。 また,本件商標の「VANS」の文字部分も引用商標のいずれも,アルファベットの大文字の「V」,「A」,「N」及び「S」をまとまりよく一体として並べた構成からなり,標準文字で表されているから,両商標の外観も同一である。 また,本件商標に係る指定商品である「履物」は,引用商標に係る指定商品「履物」と同一であり,また,「被服,運動用特殊靴」と類似のものである。 以上を総合すると,本件商標と引用商標とは,称呼及び外観において相紛らわしい類似する商標であり,また,その指定商品も同一又は類似するものである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。 5 商標法第4条第1項第10号及び同項第15号について (1)申立人及び引用商標について 上記のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願日より前から,履物の商品分野において申立人の商標として周知・著名となっており,その状態が本件商標の登録査定時においても継続していたことは明らかである。 (2)本件商標と引用商標の類似性について 本件商標は,上記4のとおり,引用商標に類似する商標である。 (3)混同を生ずるおそれについて ア 引用商標は,上述のとおり英語等の辞書に記載のない造語であり,申立人による独自の創造標章であるから,既成語からなる商標と比較して,自他商品識別力が強いものといえる。とりわけ,引用商標は,申立人の名称の略称を表示するハウスマークであって,履物を中心とするファッション関連商品の業界で,現に履物について申立人の商標として長年にわたり一貫して使用されてきたものであるから,これらの商品との関係で,引用商標は,申立人を指標するものとして,強い出所表示力を発揮するものである。 イ 取引者・需要者の共通性 引用商標を付して販売される多様な商品の主要なものの一つに「履物」が含まれているところ,本件商標の指定商品も,「履物」であるから,取引者・需要者が共通する。 ウ 出所混同のおそれ 引用商標の著名性は上記2のとおりであり,また,本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品の需要者層が共通していることも上記4のとおりであるから,本件商標の指定商品の取引者・需要者が,申立人の商標及び申立人がその商標を付して提供している商品を知っている可能性は極めて高い。 したがって,本件商標は,取引者・需要者が,著名な引用商標を容易に想起・連想し得る類似の商標である。 そうすると,本件商標がその指定商品に使用された場合,本件商標に接する取引者・需要者は,本件商標から,引用商標を容易に想起・認識し,当該商品が,あたかも申立人又はこれに関連する者の業務に係る商品であるかのごとく,その商品の出所について混同して認識するおそれは高い。 エ 申立人の商標に化体した信用を害されるおそれ 申立人は,自己のブランドイメージを維持し,より一層の発展をさせるため,世界中で展開するあらゆる事業において,その商品の品質,役務の質,店舗の営業等について厳重な管理を行っている。現に申立人は,日本でも「VANS」の文字からなる商標について,引用商標の他にも多数の商標登録を保有し管理している(甲241?甲267)。 したがって,本件商標の登録が維持されると,申立人と何ら関係のない者により,申立人の意図とは無関係に,申立人が現にその商標を付して使用している商品及び提供している役務とその取引者層・需要者層を同一にする商品について,引用商標と類似する商標,すなわち本件商標,が自由に使用されてしまうことになる。その結果として,申立人による品質管理が及ばない商品が引用商標と類似する商標によって提供されるという事態が生じ得ることも否定できない。 (4)小括 以上のとおり,本件商標がその指定商品について使用された場合には,当該商品は,取引者・需要者において,申立人の業務に係る商品であるかのごとく認識され,あるいは申立人と経済的又は組織的・人的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく誤認され,その商品の出所について混同を生じるおそれがあったことは明らかである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同項第15号にも該当する。 第4 当審における取消理由 当審において,平成29年10月31日付けで,本件商標権者に対し通知をした取消理由は,商標法第4条第1項第11号に基づくものであり,要旨以下のとおりである。 本件商標は,「VANSNEAKER」の文字からなるところ,その構成中,語頭の「VANS」の文字部分は,申立人の業務に係る商品「スニーカー」について使用する商標として,我が国の取引者・需要者の間で広く認識されているから,本件商標が付された商品「履物」に接する者は,その構成中に含まれる「VANS」の文字部分に着目し,申立人の業務に係る商品あるいはその系列に属する者に関係する商品との強く支配的な印象を受け,これに対し,本件商標の構成中,「S」の文字部分が重なり合う後半の「SNEAKER」の文字部分は,その指定商品「履物」に含まれる商品「スニーカー」を表すものであるから,本件商標の指定商品との関係においては,商品の出所識別標識としての機能は果たし得ないものである。 したがって,本件商標は,「ヴァンスニーカー」の称呼を生ずるほか,「VANS」の文字部分から,「ヴァンズ」の称呼をも生じ,「申立人の業務に係るVANSブランド」の観念を生じる。 他方,引用商標は,「VANS」の文字を標準文字で表してなり,これからは,「ヴァンズ」の称呼を生じ,申立人の業務に係る商品「スニーカー」について使用され,我が国の取引者・需要者の間で広く認識されている商標であるから,「申立人の業務に係るVANSブランド」としての観念を生じるといえる。 以上よりすると,本件商標は,その構成中,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える「VANS」の文字部分は,「VANS」の文字からなる引用商標と文字のつづりを同一にするものであり,両商標からは,同一の「ヴァンズ」の称呼及び「申立人の業務に係るVANSブランド」としての観念を生じるものである。 してみれば,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念において互いに紛らわしい類似の商標というのが相当である。 そして,本件商標の指定商品は,引用商標の指定商品に含まれるものである。 したがって,本件商標は,引用商標と類似する商標であって,引用商標の指定商品と同一又は類似する商品に使用をするものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。 第5 本件商標権者の意見 本件商標は,同書,同大の文字で一連に「VANSNEAKER」と構成されているため,「ヴァンスニーカー」又は「バンスニーカー」と一連に称呼,認識されるものであって,「VANS」の文字が浮き出てくるものではない。 本件商標は,その構成中に「S」はーつしかなく,当該「S」の文字をダブらせて「VANS」と「SNEAKER」の語が認識されると判断されるのかが理解できない。一つの「S」を二つにダブらせて認識することは極めて不自然であり,本件商標に接する者は,本件商標の「SNEAKER」の部分から運動靴を想起したとしても,その残りの語からは「VAN」の文字を認識するものであって,「VANS」を想起するものではない。 仮に「VANS」の部分が想起された場合は,残りの部分は「NEAKER」となり,当該「NEAKER」の部分は「履物」の関係では品質や効能等を表す言葉ではないから,「VANS」と「NEAKER」が結合することにより引用商標「VANS」とは,外観,称呼及び観念が異なると判断するのが自然である。 以上のとおり,本件商標は,その構成から「S」をダブらせて「VANS」と「SNEAKER」の語が認識されると判断することは妥当性を欠くものである。 また,引用商標が登録されているのもかかわらず,「ヴァンズ」又は「バンズ」と同一又は類似の言葉(称呼)が含まれている他人の商標が登録されている(乙1の1?4)。 したがって,本件商標は,引用商標とは類似するものではない。 第6 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)「VANS」について 申立人提出の証拠及び同人の主張によれば,申立人は,1966年(昭和41年)にアメリカ合衆国カリフォルニア州で「靴」を製造,販売するショップとして誕生し,2016年(平成28年)3月16日に50周年を迎え(甲3),「VANS」ブランド50周年記念のキャンペーンを行い,メディアにおいて多数取り上げられた(甲5?甲28)。 我が国においては,株式会社エービーシー・マートが,1994年(平成6年)(職権調査)に,日本国内での独占販売権を取得し,履物を中心とする「VANS」ブランドの販売を開始した。 そして,日本における履物を中心とする「VANS」ブランドの売上高は,2012年(平成24年)に208億9900万円,2013年(平成25年)に210億700万円,2014年(平成26年)に296億8600万円,2015年(平成27年)に271億8200万円及び2016年(平成28年)に221億3400万円であり,当該売上高は,少なくないものといえる。 また,申立人に係る履物を中心とする「VANS」ブランドは,本件商標の登録出願日より前から現在における我が国で発行されている各種雑誌(2012年(平成24年)3月?2017年(平成29年)1月:甲30?甲236)に,「VANS」の文字の見出しの下,特に,商品「スニーカー」が写真とともに掲載され,10代から40代までの需要者をターゲットとして紹介されていることが認められる。 以上によれば,使用商標が付された申立人の業務に係る商品「スニーカー」は,本件商標の登録出願日より前から,「VANS」の文字の見出しの下,多数広告宣伝され,相当程度販売されているものであるから,使用商標及び引用商標は,申立人の業務に係る商品「スニーカー」を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の取引者・需要者の間で広く認識されるものとなっていたと認められる。 (2)引用商標について 引用商標は,「VANS」の文字からなり,これからは,「ヴァンズ」の称呼を生じるものである。 そして,引用商標は,上記(1)のとおり,申立人の業務に係る商品「スニーカー」について使用され,我が国の取引者・需要者の間で広く認識されている商標であるから,「申立人の業務に係るVANSブランド」としての観念を生じるといえる。 (3)本件商標について 本件商標は,「VANSNEAKER」の文字からなるところ,当該文字は,辞書等に掲載がなく,特定の意味を認識させることのない一種の造語といえるものである。 そして,本件商標の構成中,語頭の「VANS」の文字部分は,申立人の業務に係る商品「スニーカー」について使用する商標として,我が国の取引者・需要者の間で広く認識されているから,本件商標が付された商品「履物」に接する者は,本件商標の構成中に含まれる「VANS」の文字部分に着目し,申立人の業務に係る商品あるいはその系列に属する者に関係する商品との強く支配的な印象を受けるものということができる。 これに対し,本件商標の構成中,「S」の文字部分が重なり合う後半の「SNEAKER」の文字部分は,その指定商品「履物」に含まれる商品「スニーカー」を表すものであるから,商品の出所識別標識としての機能は果たし得ないものである。 したがって,本件商標は,「ヴァンスニーカー」の称呼を生ずるほか,「VANS」の文字部分から,「ヴァンズ」の称呼をも生じ,「申立人の業務に係るVANSブランド」の観念を生じるものである。 (4)本件商標と引用商標の類否について 本件商標は,「VANSNEAKER」の文字を表してなるところ,その構成中,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える「VANS」の文字部分は,「VANS」の文字からなる引用商標と文字のつづりを同一にするものであり,両商標からは,同一の「ヴァンズ」の称呼及び「申立人の業務に係るVANSブランド」としての観念を生じるものである。 そうすると,本件商標は,引用商標と,外観,称呼及び観念において互いに紛らわしい類似の商標というのが相当である。 (5)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品について 本件商標の指定商品は,引用商標の指定商品に含まれるものである。 (6)まとめ 以上のとおり,本件商標は,その商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標(引用商標)と類似する商標であって,引用商標の指定商品と同一又は類似する商品に使用をするものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。 2 本件商標権者の主張について (1)本件商標権者は,本件商標は同書,同大の文字で一連構成されているものであり,その構成中の一つの「S」の文字をダブらせて「VANS」と「SNEAKER」の語が認識されるとすることは極めて不自然であり,本件商標に接する者は,本件商標の「SNEAKER」の部分から運動靴を想起したとしても,その残りの語からは「VAN」の文字を認識するものであって,「VANS」を想起するものではない旨主張する。 しかしながら,本件商標に係る構成においては,これに接する者が,その構成中,前半の文字部分を捨象し,後半に表された「SNEAKER」の文字部分に着目した上で,前半の「VAN」の文字部分を認識するものとすべき特段の事情は見受けられない。 そして,本件商標は,その構成中の「VANS」の文字部分が,申立人の業務に係る商品「スニーカー」を表示するものとして,我が国の取引者・需要者の間で広く認識されているのに対し,「SNEAKER」の文字部分は,その指定商品「履物」に含まれる商品「スニーカー」を表す語であることからすれば,これに接する取引者,需要者は,語頭から「VANS」の文字部分に着目して申立人の業務に係る商品「スニーカー」を想起し,「S」の文字を重ね合わせてそれに続く「NEAKER」の文字を認識して商品「SNEAKER」(スニーカー)であることを理解するものというのが相当である。 (2)本件商標権者は,引用商標が登録されているのもかかわらず,「ヴァンズ」又は「バンズ」と同一又は類似の言葉(称呼)が含まれている他人の商標が登録されている(乙1の1?4)旨主張する。 しかしながら,登録出願に係る商標が登録されるか否かの判断は,指定商品等のそれぞれの取引の実情を考慮し,当該商標の全体の構成に基づいて,個々の商標ごとに個別具体的に判断されるべきものであって,本件商標権者が挙げる過去の登録例は,本件商標とは全体の構成等を異にするものであるから,当該登録例が本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性の判断を左右するものではない。 (3)したがって,本件商標権者の上記主張は,いずれも採用することができない。 3 まとめ 以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから,その他の登録異議の申立ての理由について判断するまでもなく,同法第43条の3第2項の規定により,取り消すべきものである。 |
別掲 |
別掲(使用商標) |
異議決定日 | 2018-01-11 |
出願番号 | 商願2016-79297(T2016-79297) |
審決分類 |
T
1
651・
262-
Z
(W25)
T 1 651・ 263- Z (W25) T 1 651・ 261- Z (W25) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 中村 拓哉 |
特許庁審判長 |
田中 亨子 |
特許庁審判官 |
早川 文宏 平澤 芳行 |
登録日 | 2017-01-27 |
登録番号 | 商標登録第5916735号(T5916735) |
権利者 | 株式会社ヴァンヂャケット |
商標の称呼 | バンスニーカー、バン、ブイエイエヌ |
代理人 | 藤沢 則昭 |
代理人 | 達野 大輔 |
代理人 | 岡田 次弘 |
代理人 | 藤沢 昭太郎 |