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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W092841
審判 一部申立て  登録を維持 W092841
審判 一部申立て  登録を維持 W092841
管理番号 1344110 
異議申立番号 異議2018-900044 
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-02-15 
確定日 2018-09-14 
異議申立件数
事件の表示 登録第5999196号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5999196号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5999196号商標(以下「本件商標」という。)は、「embot」の文字を標準文字で表してなり、平成29年1月6日に登録出願、第9類「通信機械器具,コンピュータソフトウェア,電子計算機用プログラム,その他の電子計算機用プログラム,集積回路,電子応用機械器具及びその部品,教育支援用ロボット(産業用・医療用・遊戯用のものを除く。),電子出版物を記憶させた記録媒体」、第16類「段ボール,紙類,教材」、第28類「ロボットおもちゃ,セットおもちゃ」、第41類「教育,プログラミングの講習会の企画・運営又は開催」及び第42類「電子計算機プログラムの提供」を指定商品及び指定役務として、同年11月2日に登録査定、同年11月24日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由として引用する商標(以下「引用商標」という。)は、「mBot」の欧文字を横書きした構成からなり、商品「通信機械器具,コンピュータソフトウェア,電子計算機用プログラム,その他電子計算機用プログラム,集積回路,電子応用機械器具及びその部品,教育支援用ロボット(産業用・医療用・遊戯用のものを除く。),電子出版物を記憶させた記録媒体,ロボットおもちゃ,セットおもちゃ」及び役務「教育,プログラミングの講習会の企画・運営又は開催」について使用しているとするものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第9類「全指定商品」、第28類「全指定商品」及び第41類「全指定役務」(以下「申立商品・役務」という。)について、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)引用商標の著名性について
ア 申立人は、中華人民共和国広東省深セン市に所在のSTEM教育用ロボットキット、DIYプラットフォーム及びそれに関係するソフトウェアの製造メーカーであり、2013年に設立された会社である(甲2のK1)。設立前の2011年より、主要な商品であるMakeblockをスタートさせている。なお、申立人において、日本語の会社名は、「深セン市創客工場科技有限公司」であり、英語の会社名は、「Makeblock Co.,Ltd」である。
イ 2015年4月には、DIYロボットキット(自作ロボット)である「mBot」を発売し、同年12月までに80カ国以上に輸出されている(甲2のK2)。
ウ 2016年末には、ソフトバンクコマース&サービス株式会社と業務提携し、日本のソフトバンク株式会社とパートナーシップを開始している(甲2のK3)。
エ マイクロソフト社、Intel社、Arduino社、Boulanger社、SPC社、Allnet社、Barnes&Noble社、ソフトバンクコマース&サービス株式会社、John Lewis社など世界有名なプロダクティビティカンパニーとパートナー関係を築いている(甲2のK4)。
オ 申立人のホームページ(甲2のK5)では、アメリカ、カナダ、イギリス、フランスなどの合計61カ国のオンラインショップのリンクを表示しており、各国において、商標mBotを付した商品が販売されている。このように、申立人による引用商標を付したSTEM教育用ロボットキットやソフトウェアは、世界各国で流通、販売されており、当該製品分野においては、世界的に著名である。
カ 申立人による引用商標を付したSTEM教育用ロボットキットやソフトウェアは、申立人が2013年に創業されてから、ソフトウェア及び教育用ロボット業界のトップとして活躍し、世界中の多くのメディアにより取材されている(甲2のS1?S51)。
キ 申立人は、日本で開催される大規模な展示会において、引用商標を付した商品を出展、紹介している(甲2のT1?T4)。
ク 申立人の出資により設立された企業により、引用商標が、中国で商標登録がされている(甲4のB1?B5)。
(2)商標法第4条第1項第10号について
ア 本件商標について
本件商標は、標準文字「embot」の欧文字からなる外観を有する。また、特許庁審査において、称呼(参考情報)として、「エムボット」などが認定されている。
「embot」全体としては特定の観念を生じさせない造語であるが、「bot」の部分において、「robot(ロボット)の短縮形・略称。転じて、コンピュータやインターネットの分野においては、作業を自動化するプログラムの総称。」という解釈が存在する。
イ 引用商標について
引用商標は「mBot」の欧文字からなる外観を有する。また、「エムボット」の称呼が生ずる。
「mBot」全体としては特定の観念を生じさせない造語であるが、「Bot」の部分において、「robot(ロボット)の短縮形・略称。転じて、コンピュータやインターネットの分野においては、作業を自動化するプログラムの総称。」という解釈が存在する。
ウ 本件商標と引用商標の類似について
(ア)外観
外観について、両商標は、語頭の1文字「e」を除き、その他のアルファベットの文字、及び、並びを共通とする。
すなわち、本件商標と引用商標とは、5文字と4文字という少ない構成文字において、その大部分の4文字を共通とするものである。
そして、本件商標において、「e」の文字は、他の「mbot」と同一のフォントであり、特段目立つ形態で表されるものではなく、「e」の部分が観者の注意を引くものではない。
また、本件商標の「b」は小文字である一方、引用商標の「B」は大文字であり、「b」と「B」の違いは、単なる小文字と大文字の違いであって、その相違が観者の注意を引くものではない。
以上を考慮すれば、相違点があるものの、外観構成上、共通の印象を需要者に与えるものである。
したがって、本件商標は、引用商標と、外観において極めて相紛らわしい類似の商標である。
(イ)称呼
本件商標は、その構成文字に照らし「エムボット」の称呼を生じるものである。
これに対し、引用商標も、その構成文字に照らし、「エムボット」の称呼を生じるものである。
したがって、本件商標と引用商標は、称呼において完全に一致するものであると考えるのが妥当であり、称呼上同一と判断すべきである。
(ウ)観念
本件商標と引用商標とは、辞書等に掲載されている既成語などではなく、両商標は全体としては、特定の意味を有しない造語である。
他方、「bot」及び「Bot」の部分において、「robot(ロボット)の短縮形・略称。転じて、コンピュータやインターネットの分野においては、作業を自動化するプログラムの総称。」という解釈が存在し、オンライン百科事典において、前記のような記載が確認できる。
そして、本件商標の指定商品・指定役務は、プログラム(第9類)、ロボット(28類)、プログラミングの講習会の企画等(41類)などであるため、当該分野において使用される商標においては、「bot」の部分から、ロボットやプログラムなどの観念を生じさせるものである。
他方、引用商標が使用されている分野も、ロボットやプログラムに関係するものであるため、「Bot」の部分においても、同様にロボットやプログラムなどの観念を生じさせるものである。
以上のことから、両商標においては、「bot」及び「Bot」の部分において、ロボットやプログラムといった共通の観念を想起させるものであり、また、その他の部分である「em」や「m」の部位からは特定の観念を生じさせないことから、両商標は、全体として共通の観念を有するものであって、観念上共通であると判断されるべきものである。
(エ)取引の実情
上述したように、「bot」や「Bot」の部分において、「robot(ロボット)の短縮形・略称。転じて、コンピュータやインターネットの分野においては、作業を自動化するプログラムの総称。」という解釈が存在し、ロボットやプログラムに関連する取引においては、「bot」や「Bot」の部分が生じさせる観念の共通性により、両商標はより関係性が近いものとして無意識的に認識されるものである。
(オ)全体観察
以上を総合的に考慮すると、両商標を構成する文字の相違部分である「e」の有無の違いや、「b」と「B」の小文字・大文字の違いがあったとしても、このような外観の違いが類似判断に与える影響は、称呼、観念のものと比較すると弱いものである。
つまり、称呼と観念の共通が外観の相違を大きく凌駕するものであるから、両商標は類似するものである。
(カ)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、称呼、観念において同一であり、外観において類似することは明らかであり、その指定商品の需要者の通常有する注意力を基準として、誤認混同を生じることは明らかであるから、両商標が類似することは明白である。
(キ)本件商標の審査経過の参酌
本件商標は、出願経過において、引用商標と類似するものと認定され、本件商標の権利者も類似するものであると主張していることからすると、特許庁、本件商標の権利者及び申立人において、本件商標と引用商標は類似するという共通の認識が存在するものである(甲6のM1、M2)。
エ 本件商標と引用商標の商品、役務について
引用商標は、本件商標の指定商品、指定役務の分野について使用がされており、需要者層が共通することは明らかである。
特に、教育支援用ロボット(産業用・医療用・遊戯用のものを除く。)(9類)、ロボットおもちゃ(28類)、教育、プログラミングの講習会の企画・運営又は開催(41類)については、使用がされていることが顕著である。
オ 本件商標の出願時及び登録時の引用商標の周知性について
本件商標の「出願時」は平成29年(2017年)1月6日であり、周知性を獲得するためには、当該「出願時」よりも前に引用商標が「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識される」ことが必要である。
そこで検討すると、甲第2号証のS12?S14、S24?S28、S46、甲第3号証のT2は、2015年の公開等に関するものである。
また、甲第2号証のS1(8月)、S2(9月)、S3(9月)、S4(10月)、S5(10月)、S6(12月)、S17(12月)、S18(12月)、S19(7月)、S20(12月)、S21(12月)、S22(12月)、S23(12月)、S29(6月)、S30(11月)、S31(11月)、S32(12月)、S33(4月)、S45(1月)、S47(1月)、S48(1月)、S49(1月)、S50(5月)、S51(7月)、T1(5月)は、2016年の公開等に関するものである。
以上に挙げた証拠は、2015年時点において、ウェブサイトでの紹介(甲2のS14)や、エンドユーザーのブログでの紹介(甲2のS12)の事実等によれば、2015年時点で既に需要者、取引者において周知性が獲得されており、2016年においてもその周知性が継続しているものである。
また、他の商品を含めて紹介されることは、引用商標が当該商品役務の分野において広く認知されていることを意味するものである。
以上を考慮すれば、引用商標は、「出願時」において、日本国内において、「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた」ことは明らかである。
また、外国周知についても、2015年4月から「mBot」が販売され、同年12月までに80カ国以上に輸出されていることからすれば(甲2のK2)、外国における周知性は獲得されていることは明らかである。
加えて、申立人は、日本の最大級のIT関連の展示会において、引用商標を付した商品を展示している(甲3のT1、T3)。また、教育分野日本最大の専門である展示会においても、引用商標を付した商品を展示している(甲3のT2、T4)。
ここで、甲第3号証のT2の展示会については2015年5月、甲第3号証のT1の展示会については2016年5月に開催されたものであり、いずれも、本件商標の出願時の半年以上前に実施されたものである。
そしてこれらの展示会は、いずれも「日本最大級」であるから、当該分野の需要者、取引者にとって周知のものであることは明らかであり、この展示会への出品が引用商標の周知性の獲得に寄与することは明確である。
カ 出願経過において主張された内容についての検討
本件商標の出願経過の意見書の主張に基づくと、上記意見書の提出の時点(2017年9月26日)において、「embot」を付した商品の商業化が準備段階であって、スタートアップのレベルであったことが理解できる。
つまり、日本国内の準備・スタートアップの段階に過ぎないレベルのものと、日本を含む世界80カ国以上での販売が実際に行われているレベルのものでは、その周知度は比較の対象とすらならないものであり、周知商標の保護といった商標法の目的に鑑みれば、類似関係にあるいずれの商標を適正に保護すべきかはいうまでもない。
以上のことから、本件商標は、出願時及び登録時において需要者の間で広く認識されている引用商標と類似するものであり、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
上述したように、引用商標は、「出願時」及び「登録時」に周知性を獲得していたことは明らかである。
また、引用商標は、「出願時」及び「登録時」に、外国において著名な標章であって、我が国内の需要者によって広く認識されていたことは明らかである。
そして、本件商標は、引用商標と類似することは上述のとおりであるが、著名な引用商標「mBot」と「e」を結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め、商品等の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して取り扱うべきものである。
また、引用商標は、本件商標の指定する第9類の「教育支援用ロボット(産業用・医療用・遊戯用のものを除く。)」、第28類の「ロボットおもちゃ」について、周知・著名性を獲得していたことは明らかである。
ここで、この2つの指定商品と、本件商標の指定する他の商品、役務については、「商品間、役務間又は商品と役務間の関連性」が強く、「商品等の需要者の共通性」が存在するものと考えられる。
以上のことから、本件商標を指定商品及び指定役務に使用するときは、その取引者及び需要者において、引用商標の使用者である申立人と緊密な関係にある営業主の業務に係る商品として混同を生ずるおそれがあるということができ、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号について
上述のとおり、引用商標は、「出願時」及び「登録時」において需要者の間に広く認識されていたことは明らかである。
また、引用商標は、「出願時」及び「登録時」において、外国、及び、日本国内において周知であったと認められる。
そして、本件商標は、一以上の外国において周知な商標又は日本国内で全国的に知られている商標と極めて類似するものであり、その周知な商標が造語よりなるものであることは、本件商標の取得について、不正の目的の有無について充分勘案されるべきである。
さらに、引用商標について「2015年4月には、DIYロボットキット(自作ロボット)である『mBot』が発売し、同年12月までに80カ国以上に輸出されている」という事実に鑑みると(甲2のK2)、世界的な著名商標へのただ乗りフリーライドの意図があったものと推認されるか、あるいは、その意図がなかったとしても、商標法第4条第1項第19号の制度趣旨からすれば、登録が認められるべきではないものである。
また、引用商標が日本での周知性を確固たるものにする事実が数多くあったことからすると、当該事実をきっかけとして、本件商標の権利者が、「引用商標が我が国で登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせるために先取り的に出願したもの、又は外国の権利者の国内参入を阻止し若しくは代理店契約締結を強制する目的で出願したもの」とも考えられる。
以上のとおり、本件商標は、他人の周知商標と類似で不正の目的をもって使用をする商標に該当することは明らかであり、商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知著名性について
申立人の提出した証拠によれば、商品の内容を説明するインターネット情報、雑誌(甲2のS1?S51、甲7)や日本で開催された展示会(甲3のT1?T4)において、引用商標を付したMakeblock社の「ロボットおもちゃ」等の商品が紹介、出展されていることがうかがえる。
しかしながら、申立人の提出した甲第2号証のK1ないしK3及びS1ないしS51は、外国語で作成されたものも混在しており、それらの翻訳文の提出もないことから、申立人とMakeblock社との関係など、その内容が必ずしも明らかとはいえないものである。
また、申立人は、「世界有名なプロダクティビティカンパニーとパートナー関係を築いている。・・・各国において、商標mBotを付した商品が販売されている。」旨主張し、甲第2号証のK4及びK5を提出しているが、該資料からは、商標の使用態様が確認できない。
さらに、申立人は、日本での周知著名性を証明するための証拠資料として、インターネットの情報(甲2のS1?S51)、雑誌(甲7)、展示会の写真等(甲3のT1?T4)、申立人が引用商標を付した商品を販売した請求書の例(甲5のQ1、Q2)を提出しているが、これらの証拠からは、引用商標に係る広告宣伝の回数や期間及びその方法、我が国及び外国における販売数量等の量的規模(マーケットシェア等)などを客観的かつ具体的に把握することができないことから、申立人により引用商標が使用された実績を把握することができないものといわざるを得ない。
加えて、申立人は、中国において、商標「mBot」を商標登録している旨主張しているが、たとえ引用商標が中国で商標登録されているとしても、そのことをもって、直ちに我が国及び外国における引用商標の周知著名性を立証することはできないものである。
そして、他に申立人の業務に係る商品又は役務に引用商標を使用していることを確認できる具体的な証拠は提出されていない。
したがって、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
(2)商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 本件商標について
本件商標は、「embot」の文字を標準文字で表してなるところ、該文字は、辞書等に載録のないものであって、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として認識されるものである。
そして、一般的に、特定の意味を有さない欧文字からなる造語にあっては、我が国において親しまれた外国語である英語読み又はローマ字読みにならって称呼されるとみるのが一般的であり、本件商標は、ローマ字読みでは、「イーエムボット」の称呼を生ずるものである。
また、語頭部分の「em」について、例えば英語の「emblem(エンブレム)」「emperor(エンペラー)」「emboss(エンボス)」など「em」の文字部分を「エン」と発音する例にならい、「エン」と読まれ、また、後半部の「bot」については、「robot(ロボット)」の「bot」の文字部分を「ボット」と発音する例にならい、「ボット」と読まれていることからすれば、「エンボット」の称呼も、本件商標から生じ得る自然な称呼とみることができるものというのが相当である。
そうすると、本件商標は、構成全体として、「イーエムボット」又は「エンボット」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標について
引用商標は、「mBot」の欧文字を表してなるところ、該文字は、辞書等に載録のないものであって、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として認識されるものである。
そして、一般的に、特定の意味を有さない欧文字からなる造語にあっては、我が国において親しまれた外国語である英語読み又はローマ字読みにならって、称呼されるとみるのが一般的であり、引用商標は、その構成文字に相応して、「エムボット」の称呼を生じるものである。
そうすると、引用商標は、「エムボット」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標の類否を検討すると、外観については、本件商標が「embot」の欧文字(小文字)のみで構成されているのに対し、引用商標は、「B」の欧文字が大文字で表されているばかりでなく、語頭において「e」の欧文字の有無の差異があり、外観上異なる印象を与えるものであるから、両者は、外観上、明確に区別し得るものである。
次に、本件商標から生じる「イーエムボット」の称呼と引用商標から生じる「エムボット」の称呼とを比較すると、称呼における識別上重要な要素を占める語頭部において、「イー」の音の有無という明らかな差異を有するものであるから、称呼上、相紛れるおそれはない。
また、本件商標から生じる「エンボット」の称呼とを比較すると、両者は、第2音において「ン」と「ム」の差異を有するところ、両者の差異音はいずれも弱音であり、それぞれ全体を一連に称呼した場合、全体の音感、語調が近似し、互いに聞き誤るおそれがあり、称呼上、類似するものである。
そして、本件商標と引用商標の観念について比較すると、両者は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、比較することはできない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼において類似する場合があるとしても、全体の外観が著しく相違し、その印象が大きく異なるものであり、観念については比較することができないものであるから、これらを総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきである。
なお、申立人は、「本件商標は、出願経過において、本件商標と引用商標とは類似するものと認定され、本件商標の権利者も類似するものであると主張していることからすると、特許庁、本件商標の権利者及び申立人において、本件商標と引用商標は類似するという共通の認識が存在するものである。」旨主張している。
しかしながら、本件商標は、審査官による審査を経て、拒絶の理由はないものとして登録となったものであるから、上記主張は採用できない。
エ 小括
引用商標は他人(申立人)の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものであり、上記(2)ウのとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、本件商標の申立商品・役務と申立人の業務に係る商品及び役務が類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の周知著名性について
上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
イ 商品の関連性、需要者の共通性について
引用商標が使用されている「ロボットおもちゃ」等の商品(以下「使用商品」という。)と本件商標の指定商品である、第28類「ロボットおもちゃ,セットおもちゃ」との関係においては、取扱業者や販売場所が一致するなど、両者の商品の関連性は高く、取引者、需要者を共通にする場合があるものといえる。
ウ 引用商標の独創性について
引用商標である「mBot」の文字は、辞書等に載録のないものであって、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として認識されるものであるから、独創性を有しているものといえる。
エ 本件商標と引用商標の類似性の程度について
上記(2)ウのとおり、引用商標は、本件商標とは非類似の商標であるから、類似性の程度は低いものである。
オ 出所混同のおそれ
上記アないしエによれば、本件商標の指定商品と引用商標の使用商品とは関連性が高く、両者の取引者、需要者が共通する場合があるとしても、引用商標は、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして我が国の取引者、需要者の間に広く認識されているとはいえず、かつ、本件商標と引用商標の類似性の程度は低いものである。
してみれば、本件商標をその指定商品及び指定役務中、申立商品・役務に使用しても、これに接する取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、該商品及び役務が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
カ 小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の需要者の間で、申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして、広く認識されていたとは認められないものであり、かつ、上記(2)ウのとおり、引用商標は、本件商標とは非類似の商標である。
さらに、申立人は、引用商標が周知著名であることを前提に、本件商標が引用商標の有する周知著名性に便乗し不正の利益を得る目的が認められる旨主張しているが、引用商標は、上記のとおり、周知著名であるとはいえないものであり、申立人が提出した甲各号証を総合してみても、本件商標権者が、申立人に係る引用商標の信用にただ乗り(フリーライド)する意図など、それらを毀損させるものというべき事実は見いだし難いばかりでなく、他に、本件商標が不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって本件商標の使用をするものと認めるに足りる具体的事実を見いだすことができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、申立商品・役務について、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号に該当するものではなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第43条の2第1号に該当せず、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2018-09-06 
出願番号 商願2017-919(T2017-919) 
審決分類 T 1 652・ 271- Y (W092841)
T 1 652・ 222- Y (W092841)
T 1 652・ 25- Y (W092841)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中尾 真由美 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 鈴木 雅也
木住野 勝也
登録日 2017-11-24 
登録番号 商標登録第5999196号(T5999196) 
権利者 額田 一利 脇阪 洋平 株式会社NTTドコモ 山▲崎▼ 健生
商標の称呼 エムボット、エンボット、イイエムボット、ボット、ビイオオテイ 
代理人 宮田 佳代子 
代理人 和田 阿佐子 
代理人 宮城 和浩 
代理人 宮城 和浩 
代理人 中川 拓 
代理人 大上 寛 
代理人 中川 拓 
代理人 宮田 佳代子 
代理人 新井 悟 
代理人 宮城 和浩 
代理人 和田 阿佐子 
代理人 新井 悟 
代理人 和田 阿佐子 
代理人 特許業務法人RIN IP Partners 
代理人 特許業務法人RIN IP Partners 
代理人 宮城 和浩 
代理人 特許業務法人RIN IP Partners 
代理人 新井 悟 
代理人 中川 拓 
代理人 特許業務法人RIN IP Partners 
代理人 中川 拓 
代理人 新井 悟 
代理人 宮田 佳代子 
代理人 和田 阿佐子 
代理人 宮田 佳代子 

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