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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W25
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審判 全部申立て  登録を維持 W25
管理番号 1343236 
異議申立番号 異議2017-685021 
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-07-20 
確定日 2018-03-09 
異議申立件数
事件の表示 国際登録第1314146号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 国際登録第1314146号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第1314146号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりからなり,2016年(平成28年)5月30日に国際商標登録出願,平成29年1月24日に登録査定,第25類「Clothing;layettes[clothing];shoes;heelpieces for footwear and boots;insole;hats;hosiery;gloves[clothing];neckties;braces for clothing[suspenders].」を指定商品として,同29年5月12日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
商標異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立てにおいて引用する登録商標は,以下のとおりであり,いずれの商標権も現に有効に存続しているものである(以下,まとめていうときは「引用商標」という。)。
1 国際登録第1099482号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲2のとおりからなり,2010年(平成22年)10月5日にEUIPOにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,2011年(同23年)3月24日に国際商標登録出願,第25類「Clothing,footwear,headgear.」,並びに第9類,第10類,第17類,第18類及び第28類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同25年2月22日に設定登録されたものである。
2 登録第2447869号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲3のとおりからなり,平成元年10月20日に登録出願,第22類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同4年8月31日に設定登録されたものであり,その後,指定商品については,同16年9月15日に,第25類「履物」及び第18類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
3 登録第3240299号商標(以下「引用商標3」という。)は,別掲4のとおりからなり,平成6年7月11日に登録出願,第25類「履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として,同8年12月25日に設定登録されたものである。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は第25類「全指定商品」について,商標法第4条第1項第15号,同項第19号,同項第10号,同項第11号及び同項第7号に違反して登録されたものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第76号証を提出した。
1 申立人が使用する商標の著名性について
(1)申立人は,イタリアの靴底メーカーであり,世界屈指のソールブランドとして知られており,その歴史は,登山家であるVitale Bramani氏が,登山仲間を亡くしたことをきっかけに,優れた機能性・安全性を持つゴム製の靴底の開発に挑むことから始まる。
1937年(昭和12年),同氏は申立人を設立して,加硫ゴム(ゴムと硫黄を混ぜることにより製造される耐熱,柔軟,強度に優れたゴム)を使用した靴底「CARRARMATO」の製造を始め,それは,その機能性の高さから,登山家たちに広まり,高い人気を得た。
そして,1954年(昭和29年)に,世界で最も登頂するのが困難とされているカラコラム山脈の通称「K2」に初登頂した際に,イタリア人登山家が使用した登山靴の靴底が申立人の製品であったことから,申立人の靴底の機能性の高さが世界中に認知されることとなった。
その後,申立人は,現在本社のある北イタリアのアルビッザーテに自社工場を設立し,長年にわたる商品改良を重ね,世界の登山家に最も愛されるソールメーカーとして,広く知られるに至った(甲5,甲6)。
(2)申立人は,世界各国の有名シューズメーカーに対し,「ヴィブラムソール」を提供している(甲7?甲15)。
(3)現在では,申立人の製品は,登山靴のみならず,スニーカーやブーツ,サンダル,カジュアルシューズ等,多様な靴にも使用されている。
「ヴィブラムソール」は,丈夫で滑りにくく,強いグリップカを持つといった機能性の他,耐久性にも優れており,また洗練された豊富なデザインも大きな魅力となって,世界を代表するソールブランドとして唯一無二の存在感を誇っている。日本でも,「ヴィブラム」の語が「英和辞典」や「英和商品名辞典」に掲載されている(甲16の1及び2)。
2 申立人による八角形の黄色い図形の使用について
(1)申立人が長年にわたり使用し,ヴィブラムソールのトレードマークとなっている八角形の黄色いプレートは,1969年に誕生した(甲6)。
「Vibram」の名称は,創業者の名前の文字からとったもので,八角形の黄色いプレートも,創業者が,製品の品質の高さを象徴する金色の代わりに黄色を用い,ユニークな図形として八角形を選んで作ったものである(甲5)。
申立人は,1969年(昭和44年)に八角形の黄色い図形を採択してから,高い品質と機能性を誇る「ヴィブラムソール」の証として,靴底にワンポイントマークのようにこれを付し,世界中で使用している(甲17?甲25)。
また,申立人は,数多くの商標を世界各国で登録し(甲26),一部の国では著作権登録し(甲27?甲31),保護してきた。
(2)申立人の八角形の黄色い図形は,日本においても使用されている。例えば,靴の補修業者のウェブページでは,「ヴィブラムソール」の語が使われ,申立人製のソールが紹介されている(甲32?甲40)。
各シューズメーカーは,「ヴィブラムソール」を積極的に採用し,申立人と共同開発した靴を製品化するなど,「ヴィブラムソール」を取り入れている(甲41?甲51)。
これら靴の業者等のウェブサイトでは,「ヴィブラムソール」であることを示す写真として,八角形の黄色い図形が付された靴底が並べられている。
申立人が2005年(平成17年)に開発した「ヴィブラムファイブフィンガーズ」は,裸足感覚で履けるフィット感が好評で,日本でも大人気の商品であり(甲52?甲54),テレビドラマの中でも登場した(甲55)。
(3)申立人の直近の売上高の推移は,グローバルベースで1.56億ユーロから2.24億ユーロという巨額であり,そのうち日本は,2013年(平成25年)から2015年(同27年)の間で毎年200万ユーロ以上である。
また,申立人は,日本に向けた輸出及び積極的な取引を行っている(甲56?甲61)。
(4)このように,申立人の八角形の黄色い図形は,「ヴィブラムソール」の高い品質を証する表示として永年にわたって使用され,需要者,取引者の間で周知,著名に至っている商標であり,取引者,需要者の間では,申立人と黄色い八角形の図形との強い連想性,関連性が定着している。
3 商標法第4条第1項第15号該当性
(1)申立人の表示の周知著名性
申立人は,世界を代表するソールブランドであり,引用商標は日本において高い著名性がある。
(2)本件商標と引用商標との類似性
ア 本件商標は,デザイン化された「bissell」の欧文字と八角形の図形から構成されるところ,当該欧文字は丸みを帯びた文字で表され,その構成文字が,八角形の図形の中に,横一連に繋がっているかのようなデザインで配置されている。
これらの特徴は,申立人の表示の書体の特徴と酷似するものである。例えば,引用商標と構成文字の「b」や「i」を比べてみると,完全同一に近い書体で表されており,「bissell」の欧文字を内包する八角形の図形は,その輪郭や文字との位置関係が非常に似通っている。
そのため,本件商標は,その特徴的な文字書体及び八角形の図形が看者に対し強く支配的な印象を与えるところ,これらの特徴は引用商標の外観上の特徴と酷似している。
イ 本件商標の指定商品である被服や履物類の分野においては,商標をワンポイントマークとして小さく付することが多く,また,商品の性質上,店頭において必ずしも十分な注意が払われずに短時間のうちに購入が決定される場合も多いことから,需要者は,商標の細部に注意を払うというよりは,その全体的な印象から商標を区別していると考えるのが自然である(平成17年(行ケ)第10230号,平成24年(行ケ)第10454号)。
ウ 引用商標は,靴底にワンポイントマークのように付され使用されているが,例えば,靴の修理業者のウェブサイトを見ても,図形の細部は視認できないものの,黄色の八角形図形が靴底に付されているという外観上の特徴をもって,一目で「ヴィブラムソール」であることがわかる(甲32,甲35?甲40)。
特に,申立人が製造するゴム製の靴底では,凹凸のある面に記載された小さな文字を瞬時に読み取ることは容易ではなく,商標を区別するに際し,文字の書体の特徴や図形,色彩といった全体的な印象が大きな手掛かりとなると考えられる。
よって,靴底に小さく付された商標を見た需要者は,そこに記載された文字を丁寧に読み取るというよりは,靴底に独特の八角形の図形が付されているという外観上の特徴をもって申立人の表示を区別していると考えられる。
そして,本件商標権者は,申立人と同様に靴の底面に本件商標を黄色で表した表示を付しており,申立人の表示と本件商標権者が使用する表示は,一目しただけではその違いを判別するのが非常に困難であるほど酷似している(甲63?甲66)。
エ 「登録商標」は,その登録商標に類似する商標であって,色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含むと規定されているところ(商標法第70条),引用商標の周知,著名性や写真に示す(もはや模倣品といっても過言ではないほど)酷似した使用態様に照らし,本件商標権者が引用商標を熟知していることは詳説するまでもなく,おそらく,本件商標権者は,黄色の色彩を付して商標を出願すれば,周知・著名な引用商標と類似する可能性が高まることを危惧し,あえて色彩を付さずに本件商標を出願したものと優に推認することができる。
しかし,本件商標に色彩が付されていないとしても,商標法第70条の規定趣旨に照らせば,商標法第4条各号における類似性の判断は,単に願書に記載された態様(モノクロ)の本件商標だけではなく,本件商標が写真に示される使用態様(黄色の色彩が付された態様)で使用され得ることまで考慮に入れて,引用商標との類似の程度を考慮しなければならないというべきである。
そして,上記のとおり,一般的な取引実情として,被服や履物類に商標をワンポイントマークとして小さく表示することが多くみられる点からすれば,本件商標の構成からは,申立人の著名な引用商標が容易に連想され,本件商標は,需要者をして,申立人の業務に係る商品との間で誤認,混同を生じさせるには充分の類似性が認められるものというべきである。
(3)混同のおそれ及びフリーライドの意図
本件商標権者のウェブサイトによれば,本件商標権者は,主に靴底の製造・販売,修理を手掛けるソールメーカーであって,本件商標を黄色の八角図形を用いた態様で使用している(甲62,甲63)
上記本件商標の使用は,「bissell」の欧文字と八角形の図形という構成要素は本件商標と同一であるものの,特徴的な陰影とともに全体が二重線で描かれており,影の強弱の付け方,二重線の太さやその影との位置関係,鮮やかな黄色の色彩等,申立人の引用商標の特徴と酷似している。
申立人の引用商標の周知,著名性に鑑みれば,黄色くワンポイントマークのように付された上記表示を見た需要者は,これを申立人の業務に係る商品であると誤認してしまう可能性が極めて高い。
さらに,本件商標権者は,製品の宣伝に際し,申立人の広告デザインを模倣し(甲64),申立人の本拠地である「イタリア」の品質であることをうたって販売する等(甲65),申立人の業務に係る商品との関係で非常に紛らわしい宣伝広告を行っている。
また,本件商標権者が販売する靴底のカタログ(甲66)によれば,対応表(甲67)に記載のとおり,本件商標権者の製品のデザインの多くが,申立人が販売する靴底のデザイン(甲68?甲74)と酷似している。
(4)混同のおそれ
靴底に黄色の八角形図形が付されている点をもって申立人の「ヴィブラムソール」が区別されている事情に鑑みれば,本件商標権者による本件商標の使用を許せば,申立人の業務に係る商品との間で誤認・混同が生じ,また,本件商標権者の業務に係る商品が申立人と組織的又は経済的に関連性を有するかのような誤った認識や出所の混同を取引者・需要者に与えてしまうことは必至である。
(5)フリーライドの意図
上述の本件商標権者による本件商標の使用方法及び引用商標の著名性からすれば,本件商標権者が,申立人が永年にわたって築き上げてきた商標の著名性,顧客吸引力にフリーライドする意図をもって本件商標を出願し,使用しているとみられてもやむを得ない。万が一,本件商標が登録を維持され,現状の使用態様が黙認されることとなれば,引用商標の自他商品識別機能が希釈化され,引用商標に化体した信用力,顧客吸引力が著しく毀損されることは,明らかである(平23年(行ケ)10326号(甲75),平成28年(行ケ)第10262号(甲76))。
本件についてみると,本件指定商品の分野においては,一般的な取引実情として,商標をワンポイントマークとして小さく付することが多く,実際,申立人の製造する靴底に付される商標は,平面上で観察する場合とは異なり細部が視認されにくく,需要者は,商標の輪郭や色彩といった外観上の全体的な印象を手掛かりに商品を識別していると考えられる。
このような商品の取引実情を踏まえれば,本件商標が,「履物」を含む本件指定商品に使用された場合,本件商標と申立人の著名商標との構成態様より受ける印象は酷似したものとなり,本件商標からは申立人の著名商標が連想・想起され,当該商品が申立人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
(6)以上によれば,本件商標は,申立人の著名商標との関係でいわゆる広義の混同を生じさせるおそれがあるから,商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 商標法第4条第1項第19号該当性
本件商標権者は,申立人の著名商標に化体した信用力や高い顧客吸引力にフリーライドし,不正の利益を得る目的をもって本件商標を使用していることは明らかである。
したがって,本件商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって,不正の目的をもって使用するものであるから,商標法第4条第1項第19号に該当する。
5 商標法第4条第1項第10号該当性
前述のとおり,申立人は,永年にわたり靴底に引用商標を使用しており,申立人の表示は日本国内においても高い周知性を有している。
本件商標は,引用商標に類似する商標であって,「靴」を含む指定商品は,申立人の業務に係る商品と同一又は類似する商品である。
したがって,本件商標がその指定商品に使用された場合,引用商標との間で出所の混同が生ずるから,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当する。
6 商標法第4条第1項第11号該当性
本件商標は,引用商標と類似するものであって,それら商標に係る商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。
7 商標法第4条第1項第7号該当性
引用商標の著名性,本件商標権者の事業内容,本件商標の使用態様及びカタログ等における製品の広告方法等からすれば,本件商標権者が,偶然に,独自に本件商標を採択し,出願したとは到底考えられず,本件商標権者は,申立人の著名商標を認識した上で,本件商標に黄色の色彩を付して使用する意図を持ち,本件商標を出願したことは明らかである。
本件商標に黄色の色彩を付したものを「登録商標」であるとし,申立人の著名商標と極めて紛らわしい態様で本件商標を使用することが許されるとすれば,需要者・取引者の間に混乱をきたし,市場の公正な取引秩序が乱されることになりかねない。このような商標登録の維持を認めることは,商標法の法目的に照らしても許されるべきではない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。
第4 当審の判断
1 引用商標の著名性について
(1)申立人は,1937年(昭和12年)に,世界で始めて加硫ゴムを用いて作った靴底の誕生とともに設立された会社であって,1954年(同29年)に,イタリアの登山チームがカラコラム山脈の通称「K2」に初登頂を達成した際に,靴底に「ビブラムソール」が搭載された登山靴が使用されていた。そして,1969年(同44年)に,黄色の八角形の図形の中に「vibram」の文字を表した引用商標3を,申立人のシンボルとして採用した(甲6)。
その後,申立人は,1988年(昭和63年)にフリークライミングのための超粘着性ラバーソール「VIBRAM GRIP」,1989年(平成元年)に軽い発泡ゴム素材である「VIBRAM GUMLITE」,1994年(同6年)に環境に配慮した「VIBRAM ECOSTEP」を開発,導入する等,「VIBRAM」を冠した各種の「靴底」を開発してきた(甲6)。
(2)「TECNICA」(イタリア)の「Report 94」(甲7),「HANWAG」(ヨーロッパ)の「2008 WORKBOOK」(甲8),「LOWA」(ドイツ)の「・・rekking’94」(甲10),「ALPINA」(ドイツ)の「COLLECTION 1996」(甲12),「Patrick」(フランス)のカタログ「PATRICK 92)(甲14),「La Sportiva」(イタリア)のカタログ「COLLECTION 2009」(甲15)において,黄色い八角形を靴底に表した写真とともに,「VIBRAM」(Vibram)の文字又は引用商標3が表示されていることが確認できる。
また,欧米のアウトドアブーツの日本向けの「Danner」(アメリカ)のカタログ(掲載年不明,甲13)において,黄色い八角形を靴底に表した写真とともに,「Vibram」の文字及び引用商標3が表示されているものが確認できる。
(3)申立人の外国語の製品カタログには,靴底に引用商標3を表示した写真が掲載されている(甲17?甲19)。
また,申立人の日本語のカタログにも,引用商標3又は黄色い八角形を靴底に表した写真又は図が掲載されている(甲20?甲23)。
(4)我が国においては,靴の補修と関連して,「ビブラムソール」(vibram sole」等,申立人に係る靴底が使用されており(甲32?甲39),当該靴底は,インターネット記事等においても,世界の靴メーカーの靴底として採用され,広く信頼を獲得しているものとして紹介されている(甲40?甲52)。
(5)以上によれば,申立人が開発した「VIBRAM」を冠した各種の商品「靴底」は,1954年(昭和29年)以降,登山靴の靴底として世界で知られるようになり,多くの靴メーカーの靴底として採用され,広く信頼を獲得し,それら靴底に,引用商標3が表示されることもあることがうかがえる。
しかしながら,申立人は,売上高について,「グローバルベースで1.56億ユーロから2.24億ユーロであり,そのうち日本は,2013年(平成25年)から2015年(同27年)の間で毎年200万ユーロ以上である。」旨述べ,日本の取引先の一つである大裕商事宛の請求書(2010年(同22年)?2015年(同27年),抜粋,甲56?甲61)を提出するが,その売上高は日本円で年間2億7千万円(135円/EURO)程度であり,その他,引用商標3又は「VIBRAM(Vibram)」の欧文字を付した申立人の商品「靴底」について,日本国内及び外国における販売数,営業の規模等を示す具体的資料は何ら提出されておらず,広告,宣伝の方法,期間及び規模等は示されていない。
また,日本国内における申立人の商品の紹介は,靴の補修と関連した紹介記事が多く,一般の需要者の間において広く知られていたことを具体的に示す証拠を見いだせない。
そうすると,申立人が提出した証拠からは,引用商標又は「VIBRAM(Vibram)」の欧文字が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品「靴底」を表示するものとして,外国における需要者の間に認識されていたとしても,日本国内において,需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
2 本件商標と引用商標との類否について
(1)本件商標は,別掲1のとおり,やや横長の八角形の輪郭図形と,その内側に「bissell」の欧文字を表してなるところ,当該欧文字は辞書等に掲載が見受けられず,特定の意味を有しない造語と認識されるものであるから,当該欧文字部分に相応して,「ビッセル」の称呼を生じ,特定の観念を生じない。
(2)引用商標1は,別掲2のとおり,黄色いやや横長の八角形の図形を黒の二重線で縁取りし,その内側に「vibram」の欧文字を籠字で表してなるもので,引用商標2は,別掲3のとおり,やや横長の八角形の輪郭図形と,その内側に「vibram」の欧文字を表してなるもので,引用商標3は,別掲4のとおり,黄色で表されたやや横長の八角形の図形と,その内側に「vibram」の欧文字を籠字風に表してなるものであるところ,いずれもその構成中の「vibram」の語は辞書等に掲載が見受けられず,特定の意味を有しない造語と認識されるものであるから,当該欧文字部分に相応して,「ビブラム」の称呼を生じ,特定の観念を生じない。
(3)本件商標と引用商標との類否について検討するに,両商標は,いずれもその構成中にやや横長の八角形の図形を表しているものの,一般に八角形の図形は商標を構成する輪郭図形等に用いられ,文字部分から独立して出所識別標識としての機能を果たすものではないから,例え引用商標1及び3については黄色の色彩が施されているとしても,本件商標と引用商標の構成中の当該八角形の図形部分は,格別,識別性を有するものとも,強い印象を与える共通点ともいえず,本件商標の構成中の「bissell」の欧文字と,引用商標の構成中の「vibram」の欧文字とは,その構成文字が明らかに相違するものであるから,両商標は,外観において,相紛れるおそれはない。
そして,本件商標から生じる「ビッセル」の称呼と,引用商標から生じる「ビブラム」の称呼とは,構成音が明確に異なるものであるから,称呼において,相紛れるおそれはない。
また,本件商標と引用商標は,いずれも特定の観念を生じないものであるから,観念については,比較することができない。
そうすると,本件商標と引用商標とは,外観及び称呼において相紛れるおそれはなく,観念について比較することができないものであるから,これらを総合すれば,互いに紛れるおそれのない非類似の商標と認められる。
3 商標法第4条第1項第10号及び同項第15号該当性について
引用商標は,上記1のとおり,申立人の業務に係る商品を表すものとして,本件商標の登録出願時及び査定時において,外国における需要者の間に認識されていたとしても,日本国内の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものであって,本件商標と引用商標とは,相紛れるおそれのない非類似の商標と認められる。
したがって,本件商標が引用商標の指定商品と同一又は類似の商品について使用をするものであるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。
また,引用商標は,申立人の業務に係る商品を表すものとして,本件商標の登録出願時及び査定時において,日本国内の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものであって,本件商標と引用商標とは,その構成中に横長の八角形の図形を有している点で共通するとしても,当該図形部分は格別,強い識別性を有するものではなく,両商標の構成中の欧文字部分の相違を考慮すれば,互いに紛れるおそれのない非類似の商標と認められる。
そうすると,本件商標は,これをその指定商品について使用しても,これに接する需要者が,引用商標を連想,想起するようなことはないというべきであり,申立人又は申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのごとく,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標は,上記1のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,日本国内において広く認識されていたとはいえず,外国における需要者の間に認識されていたとしても,本件商標と引用商標とは,上記2のとおり,相紛れるおそれのない非類似の商標である。
そして,申立人が提出した証拠からは,下記6(2)で詳述するとおり,本件商標の採択又は使用の意図や目的を直接的かつ具体的に把握することはできないのであるから,本件全証拠によっても,本件商標権者が,申立人の著名商標に化体した信用力や高い顧客吸引力にフリーライドし,不正の利益を得る目的をもって本件商標を使用するものと認めるに足りない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第11号該当性について
上記2のとおり,本件商標と引用商標とは,相紛れるおそれのない非類似の商標と認められる。
そうすると,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とが,同一又は類似の商品であるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
6 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)商標法第4条第1項第7号でいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には,ア その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,イ 当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,ウ 他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,エ 特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,オ 当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,などが含まれるというべきである(知的財産高等裁判所,平成17年(行ケ)第10349号)。
(2)これを本件についてみると,本件商標は,別掲1のとおりの構成態様からなるものであるから,上記アに該当しないことは明らかであり,イないしオのいずれの場合にも該当するような事情も見いだせない。
申立人が提出した証拠によれば,本件商標と靴底を並べて表示する写真や,本件商標又は黄色い八角形の図形を靴底に表示する写真が,申立人が本件商標権者によるものと主張するウェブサイト又は製品カタログに掲載されていることが確認できるとしても(甲62(2017年3月6日印刷),甲63(2017年9月19日印刷),甲65(2017年3月6日印刷),甲66(発行日不明)),いずれも,本件商標登録出願日より後の事情を示す,又は発行日が不明のものであり,これらからは,本件商標権者の本件登録出願の意図や目的を直接把握することはできない。
また,申立人の商品と本件商標を表示した本件商標権者の商品及びその広告の比較表(甲64)によれば,本件商標は,黄色の色彩を用いて表示され,かつ,両者の広告の体裁に似通った点はあるとしても,本件商標には色彩は施されていない上,そのような間接的な証拠のみをもって,本件商標の登録出願の経緯に不正の目的など社会的相当性を欠くものがあったものというには十分ではない。
その他,申立人が提出した証拠によっても,本件商標をその指定商品について使用することが,社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するものとすべき具体的事情等を見いだすことができない。
(3)したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
7 申立人の主張について
(1)申立人は,商標法第70条を引用し,「引用商標の周知,著名性や写真に示す酷似した使用態様に照らし,本件商標権者が引用商標を熟知していることは詳説するまでもなく,おそらく,本件商標権者は,黄色の色彩を付して商標を出願すれば,周知・著名な引用商標と類似する可能性が高まることを危惧し,あえて色彩を付さずに本件商標を出願したものと優に推認することができる。」旨主張する。
しかしながら,上記主張は,申立人の推測にすぎず,また,商標法第27条において「登録商標の範囲は,願書に記載した商標に基づいて定めなければならない。」とされているとおり,商標の類否は,願書に記載した商標に基づいて判断すべきであって,登録後の商標の使用の状況を登録出願前の事情として参酌することはできない。
(2)申立人は,「本件指定商品の分野においては,一般的な取引実情として,商標をワンポイントマークとして小さく付することが多く,実際,申立人の製造する靴底に付される商標は,平面上で観察する場合とは異なり細部が視認されにくく,需要者は,商標の輪郭や色彩といった外観上の全体的な印象を手掛かりに商品を識別している。このような商品の取引実情を踏まえれば,本件商標が,「履物」を含む本件指定商品に使用された場合,本件商標と申立人の著名商標との構成態様より受ける印象は酷似したものとなり,本件商標からは申立人の著名商標が連想・想起され,当該商品が申立人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあることは明らかであるから,本件商標は,申立人の著名商標との関係でいわゆる広義の混同を生じさせるおそれがある。」旨主張する。
しかしながら,上記2のとおり,本件商標と引用商標とは,相紛れるおそれのない非類似の商標であるから,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品中の第25類の商品において商標をワンポイントマークのように小さく付する場合があるとしても,商取引の場においては,需要者が商標を視認することができ,通常の注意力をもってすれば,両商標を見誤るおそれはないというべきである。
そして,上記1のとおり,申立人が提出した証拠からは,引用商標が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品「靴底」を表示するものとして,日本国内において広く認識されていたとはいえないから,広義の混同を生じさせるおそれもないというべきである。
8 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号,同項第19号,同項第10号,同項第11号及び同項第7号のいずれにも違反してされたものとはいえないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 【別記】




異議決定日 2018-03-07 
審決分類 T 1 651・ 25- Y (W25)
T 1 651・ 263- Y (W25)
T 1 651・ 222- Y (W25)
T 1 651・ 261- Y (W25)
T 1 651・ 271- Y (W25)
T 1 651・ 22- Y (W25)
T 1 651・ 262- Y (W25)
最終処分 維持 
前審関与審査官 駒井 芳子 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 田中 亨子
阿曾 裕樹
登録日 2016-05-30 
権利者 WANG ZHIHUA
商標の称呼 ビッセル 
代理人 ▲吉▼田 和彦 
代理人 田中 伸一郎 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 苫米地 正啓 
代理人 中村 稔 
代理人 藤倉 大作 
代理人 松尾 和子 
代理人 篠森 恵 
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