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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W35
管理番号 1343222 
異議申立番号 異議2017-900289 
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-09-25 
確定日 2018-07-18 
異議申立件数
事件の表示 登録第5960691号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5960691号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5960691号商標(以下「本件商標」という。)は、「アタックNo1」の文字を標準文字で表してなり、平成28年11月1日に登録出願され、第35類「インターネットによる企業情報の提供」を指定役務として、同29年3月14日に登録査定、同年7月7日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第7号に該当するものであるから、同法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第40号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、漫画家の浦野千賀子氏が創作し、同氏が著作権者である漫画「アタックNo.1」(以下「本件作品」という。)及び申立人が著作権者である当該漫画を翻案したアニメ作品(以下「本件アニメ作品」という。)に基づく商品化事業に係る商標として著名な「アタックNo.1」と実質的に同一の商標である。漫画、アニメ作品等の題号が本件商標の指定役務の出所表示として使用されることはあり得ることであり、また、本件商標の指定役務と浦野千賀子氏及び申立人の上記著名商標が使用される役務とは、その需要者、取引者において関連性を有すること等から、本件商標権者が本件商標をその指定役務に使用すれば、これに接する取引者及び需要者は、その役務が、本件商標を使用することにつき、浦野千賀子氏及び申立人から許諾を受けている等、申立人と関係のある営業主の業務に係る役務であるかのように、出所について誤認、混同を生じるおそれがある。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、本件作品及び本件アニメ作品の高い名声、信用、評判にフリーライドせんとして、本件商標権者が、本件作品及び本件アニメ作品の題号である「アタックNo.1」と実質的に同一の商標「アタックNo1」を、浦野千賀子氏及び申立人に無断で登録したものであって、剽窃的といわざるを得ず、本件商標の登録を容認し、これを放置することは、「アタックNo.1」の高い名声、信用、評判の稀釈化を引き起こすものであり、浦野千賀子氏及び申立人の利益を害することとなる。さらに、商標制度を利用してこのような剽窃的行為が横行することを許すならば、社会的にも、公正な取引を重んずる商秩序及び商道徳を乱すこととなって、社会一般の道徳観念に反するものであり、公の秩序又は善良の風俗を害することとなる。

第3 取消理由の通知
審判長は、本件商標権者に対し、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する旨の取消理由を平成30年2月7日付けで通知した。

第4 本件商標権者の意見
本件商標権者は、上記第3の取消理由に対し、何ら意見を述べるところがない。

第5 当審の判断
1 「アタックNo.1」の文字について
(1)申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査によれば、以下のとおりである。
ア 「アタックNo.1」は、バレーボールを題材とする漫画、アニメの題号であり、本件作品の著作権は、漫画家の浦野千賀子氏に帰属しており、本件アニメ作品の著作権は、申立人に帰属している(甲6)。
イ 本件作品は、1968年1月から1970年12月まで「週刊マーガレット」(集英社)で連載され、また、1975年には、本件作品の続編「新アタックNo.1」が同誌に連載された(甲3の1、甲6、職権調査:フリー百科事典「Wikipedia」ほか)。単行本は、本件作品が全12巻、「新アタックNo.1」が全2巻刊行された(甲4?甲6、職権調査:フリー百科事典「Wikipedia」ほか)。
本件作品及び「新アタックNo.1」の単行本の累計発行部数は、1,759,500部である(甲6)。
ウ 本件アニメ作品は、1969年12月から1971年11月まで全104話が、フジテレビ系列で放送された(甲6、職権調査:申立人ホームページほか)。その後、2001年にテレビ神奈川、2003年にテレビ埼玉、2005年に千葉テレビ、テレビ大阪及び群馬テレビ、2007年にCSフジ、2009年にとちぎテレビ、2015年にBS放送「D-Life」で再放送された(甲6)。
エ 本件作品はテレビドラマ化され、2005年4月期にテレビ朝日系列で全11話放映され、平均視聴率13.2%、最高視聴率15.7%を記録した(甲15?甲17)。
オ 「アタックNo.1」に関するマルチメディア展開
(ア)映画
1970年から1971年にかけて、映画興行「東宝チャンピオンまつり」において、本件アニメ作品の総集編の映画が4作上映された(甲9)。
(イ)DVD・Blu-rayディスク
2003年に本件アニメ作品のDVD「アタックNo.1 プレミアムDVD コンプリート・コレクション」がアミューズ・ビデオから発売され(甲10)、2009年に「アタックNo.1 DVD-BOX」が日本コロムビアから発売され(甲11)、同年、劇場版4作品が収録されたDVD「アタックNo.1 THE MOVIE COLLECTION」がタキ・コーポレーションから発売され(甲12)、2012年には、TV放映40周年記念として「アタックNo.1 Blu-ray Special BOX」がキングレコードから発売された(甲13)。
(ウ)商品化グッズ
申立人が運営するインターネット通信販売サイト「TMS SHOP」において、「アタックNo.1」に関する扇子、てぬぐい、ポストカードセット、名刺入れ、クリアファイル等が販売されている(甲19)。
(エ)パチンコ機器
「京楽」のパチンコ機器「CRぱちんこアタックNo.1」が、2007年2月に導入された(甲20)。また、「SanThree」のパチンコ機器「CRアタックNo.1 feat.はるな愛&照英」が、2013年10月に導入され、2014年3月13日には、全国3,685店舗のパチンコ店に設置された(甲21)。さらに、「SanThree」のパチンコ機器「CRアタックNo.1 ASA 99バージョン」が、2014年5月に導入され、同年8月5日には、全国873店舗のパチンコ店に設置された(甲22)。
(オ)展示会
2015年8月から2016年1月にかけて、東京、大阪、高知において、「あしたのジョー+エースをねらえ!+アタックNo.1+巨人の星=スポコン展!」と題して、「アタックNo.1」を含む4作品をセル原画や絵コンテ、アニメーション制作資料、名場面映像などを中心に、原作漫画オリジナル原稿などを公開する展示会が開催された(甲26)。
カ 「アタックNo.1」の文字は、辞書等に載録されておらず、全体として特定の意味を有しない造語というべきものである(甲28?甲32)。
キ 本件商標権者による使用
本件商標権者は、2016年(平成28年)4月18日時点の自身のホームページにおいて、「アタックNo.1」の文字とともに手でバレーボールを打つイラスト(後掲)を表示し、また、本文中に「アタックNo.1」の文字を使用していた(甲37)。
(2)上記(1)からすれば、「アタックNo.1」の文字は、全体として造語であり、(a)「アタックNo.1」の題号の下、1968年に漫画が連載されて以降、単行本が多数発行されたこと、(b)原作漫画をもとにした本件アニメ作品、その総集編の映画及びテレビドラマが制作、放映されていること、(c)本件アニメ作品のDVDやBlu-ray Diskが何度も発売されていること、(d)本件アニメ作品の再放送が近年もされていること、(e)「アタックNo.1」に関する各種商品が現在も販売されていること、(f)「アタックNo.1」に関するパチンコ機器が多数設置されたこと、(g)「アタックNo.1」の原作漫画、オリジナル原稿などを公開する展示会が近年開催されたことから、「アタックNo.1」の文字は、本件商標の登録出願の日前はもとより、本件商標の登録査定の日及び現在においても、本件作品及び本件アニメ作品の題号として、需要者の間に広く認識されていたものと判断するのが相当である。
2 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)本件商標は、上記第1のとおり、「アタックNo1」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字と本件作品及び本件アニメ作品の題号である「アタックNo.1」とは、「No」の後に「.」(ピリオド)を有するか否かの差異を有するものの、その差異は、微差にすぎず、それ以外は綴りを同じくするものである。
そうすると、本件商標は、本件作品及び本件アニメ作品の題号と近似する構成文字からなるものといわなければならない。
(2)そして、上記1のとおり、本件作品及び本件アニメ作品の題号である「アタックNo.1」が需要者の間に広く認識されていること、「アタックNo.1」の文字が造語であること、さらに、本件商標権者が自身のホームページで「アタックNo.1」の文字とともに手でバレーボールを打つイラスト(後掲)を表示していたことを併せみれば、本件商標権者は、本件商標の登録出願の時に、本件作品及び本件アニメ作品並びにその題号である「アタックNo.1」を知っていたとみるのが自然である。
以上によれば、本件商標権者は、本件商標の登録出願の日前から、本件作品及び本件アニメ作品並びにその題号として、需要者の間に広く認識されていた「アタックNo.1」を知っていながら、これが商標登録されていないことを奇貨として、本件作品及び本件アニメ作品の題号である「アタックNo.1」と近似する構成文字からなる本件商標を申立人の承諾を得ずに登録出願をし、登録を得たものといわざるを得ない。
そうすると、本件商標の出願の経緯には社会的妥当性を欠くものがあり、その登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないから、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 後掲





異議決定日 2018-06-08 
出願番号 商願2016-128128(T2016-128128) 
審決分類 T 1 651・ 22- Z (W35)
最終処分 取消  
前審関与審査官 堀内 真一加藤 桜子 
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 小松 里美
松浦 裕紀子
登録日 2017-07-07 
登録番号 商標登録第5960691号(T5960691) 
権利者 株式会社ナビット
商標の称呼 アタックナンバーワン、アタックナンバーイチ、アタック 
代理人 遠山 友寛 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 村瀬 純一 
代理人 廣中 健 
代理人 田中 克郎 

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