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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W18 審判 全部申立て 登録を維持 W18 |
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管理番号 | 1343216 |
異議申立番号 | 異議2018-900040 |
総通号数 | 225 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2018-09-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-02-09 |
確定日 | 2018-08-02 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5998114号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5998114号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5998114号商標(以下「本件商標」という。)は,「rosy monster」の欧文字を標準文字で表してなり,平成29年5月8日に登録出願,同年10月11日に登録査定され,第18類「かばん類,袋物」を指定商品として,同年11月24日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は,以下の5件の登録商標(以下1から5までを順次「引用商標1」から「引用商標5」という。)であり,いずれも現に有効に存続しているものである。 1 登録第5939477号商標:別掲1 2 登録第5379390号商標:MONSTER(標準文字) 3 登録第5057229号商標:別掲2 4 登録第5788676号商標:MONSTER ENERGY(標準文字) 5 登録第5393681号商標:MONSTER ENERGY(標準文字) 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第358号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 申立人の使用に係る商標の著名性 (1)申立人による商標「MONSTER」の使用 申立人の使用に係る「MONSTER」は,申立人が2002年に創設したエナジードリンク(エネルギー補給飲料)事業の新ブランド「MONSTER」エナジードリンクの基軸商標として,2002年から現在に至るまでの長年にわたり継続して使用されている。 申立人の「MONSTER」エナジードリンクの製品シリーズは,2002年に米国における最初の製品「MONSTER ENERGY」(オリジナル版)が発売された後,日本では2012年5月から販売を開始し,現在では日本を含む世界100以上の国及び地域で販売されている。申立人は,2002年以降,現在まで継続して,当該ブランドから発売された数多くの異なる種類のドリンクの個別商品名(例えば,「MONSTER ENERGY」,「MONSTER ASSAULT」,「MONSTER KHAOS」,「MONSTER M-80」,「MONSTER RIPPER」,「MONSTER ENERGY ABSOLUTELY ZERO」,「MONSTER ENERGY ZERO ULTRA」,「MONSTER REHAB」,「JAVA MONSTER」,「MUSCLE MONSTER」,「COFFEE MONSTER」及び「MONSTER ENERGY ULTRA」等)のすべてに「MONSTER」の文字を採択しており,当該各種ドリンクの缶の正面に「MONSTER」の文字を特徴的なデザインの太字を用いて大きく目立つ態様で表示して使用している。 このように「MONSTER」を基調とする商標を用いた申立人のエナジードリンク事業の成功は,経済界でも高い評価を受けている(甲2?33,51?57,58)。 国内市場でも,2012年5月から現在までに,2012年5月8日発売の「MONSTER ENERGY」(モンスターエナジー缶355ml)(甲5,7,12),2012年5月8日発売の「MONSTER KHAOS」(モンスターカオス 缶355ml)(甲6,7,14),2013年5月7日発売の「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」(モンスターアブソリュートリーゼロ 缶355ml)(甲10,13,15),2014年8月19日発売の「MONSTER ENERGY M3」(モンスターエナジーM3 ワンウェイびん150ml)(甲59,61,101),2014年10月7日発売の「MONSTER COFFEE」(モンスターコーヒー 缶250ml)(甲60,62),2015年7月21日発売の「MONSTER ENERGY ULTRA」(モンスターウルトラ 缶355ml)(甲101?103,118)の異なる6種の味わいのエナジードリンクを発売し,2016年4月12日に「MONSTER ENERGY M3」(モンスターエナジーM3 ワンウェイびん150ml)をリニューアル発売(甲127,129,131),2016年5月17日に「MONSTER KHAOS」(モンスターカオス 缶355ml)をリニューアル発売(甲128,130,131),2017年4月下旬に「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」(モンスターアブソリュートリーゼロ 缶355ml)をリニューアル発売(甲252?255)している。 さらに2017年6月27日には,「The Doctor」の愛称で,MotoGP界のスーパースターのバレンティーノ・ロッシ氏(甲43の1?2,58,64,68?71,141,155,163,168,241,242,245,256,257,263)とのコラボレーションで開発した夏季限定の新製品「MONSTER ENERGY THE DOCTOR」(モンスターロッシ 缶355ml)を発売(甲256,257,263)した。 続いて2017年12月上旬からは,15歳で出場した冬季五輪2014年ソチ大会スノーボード・男子ハーフパイプで銀メダリストを獲得した平野歩夢氏とのコラボレーションによる冬季限定製品,平野歩夢コラボ缶「MONSTER ENERGY」(モンスターエナジースペシャルデザイン 缶355ml)及び同「MONSTER ENERGY ULTRA」(モンスターウルトラスペシャルデザイン 缶355ml)を新発売した(甲231,291,294,297?310)。 そして,2018年4月24日からは,有名なカクテル「キューバ リブレ」をモチーフに開発された日本限定オリジナルフレーバーの新製品「MONSTER CUBALIBRE」(モンスターキューバリブレ 缶355ml)の販売を開始した(甲323?326)。 (2)広告及び販売促進活動 申立人の「MONSTER」エナジードリンクの広告及び販売促進活動は,世界の有名アスリート,レーシングチーム,スポーツ競技会,アマチュアスポーツ選手,音楽祭及びミュージシャンに対するスポンサー提供,スポーツ,音楽,コンピュータゲーム(eスポーツ)などの娯楽イベントの開催,米国ラスベガスの公共交通機関モノレールの「モンスター列車」の走行,これらのイベント開催などと関連して頻繁に実施される「MONSTER」エナジードリンクの販売キャンペーン,各イベント会場におけるサンプリング(サンプル配布),2013年2月から2018年3月までの約5年の期間に国内で実施された販売プロモーションキャンペーンの応募当選者に対する様々な「モンスター限定グッズ」(爪の図柄や「MONSTER」を付したTシャツ,帽子,キーホルダー,ステッカー,ギター,バッグパック,エナジードリンク,クーラーボックス,冷蔵庫,自動車など総計70万点を超えるアイテム)の提供,「MONSTER」の文字を付したポスター・商品ネームプレート・チラシ・陳列棚・冷蔵庫などの店舗用什器の使用及び展示,遅くとも2013年から現在に至るまで約1?2月の頻度で定期的に発行されている新商品発売・懸賞キャンペーン・イベント開催情報などを掲載したプレスリリース,申立人ウェブサイト並びにソーシャルメディアを通じた情報発信を介して,2002年から現在まで世界規模で継続的に実施されている。これらの広告物及び販売促進物には,「MONSTER」及びその音訳「モンスター」の文字が独立の商品出所識別標識として認識される態様で使用されてきた(甲7?17,34?57,58,59?91,101?133,136,137,138?168,225,226?274,279?296,323?326)。 (3)第三者への使用許諾による商品の販売 申立人は,2002年から,ブレスレット,ラペルピン,キーホルダー,Tシャツ,スウェットシャツ,帽子,レーシングジャケット及び手袋などのアパレル製品並びに運動用ヘルメット,バッグ類,ステッカー,傘及びビデオゲームなどの「MONSTER」ライセンス商品の製造販売を第三者に使用許諾している。当該ライセンス商品のカタログやオンラインショッピングサイトは,ブランド名及び個別商品名として「MONSTER」又は「Monster」の文字を単独で表示し,販売及び宣伝広告している。当該ライセンス商品は,国内の実店舗のほか,オンラインショップや通信販売を介して国内の一般消費者にも販売されている(甲47,48,58,92?100,134,135)。 (4)模倣品の水際取締り及び世界各国での登録商標の取得 需要者における申立人に係るライセンス商品の人気の高さに便乗して,海外で製造された模倣品が日本の税関で輸入差止される事案が,遅くとも平成25年7月から現在に至るまで継続して度々発生している(甲169?224)。 世界規模での「MONSTER」の文字の継続的使用に基づき,申立人は,エナジードリンク等の飲料製品及び上記ライセンス商品等について,引用商標をはじめ,「MONSTER」の文字を基調とする様々な構成の商標について,日本を含む世界115以上の国及び地域で商標登録出願し,登録を取得している(甲58,327?354)。 (5)市場調査 第三者による市場調査報告書やエナジードリンクの市場に関する記述によれば,2013年時点で申立人の「MONSTER」エナジードリンクの国内市場占有率は既に25%を超えており,それ以降も着実に売上を伸ばし,男子若年層中心とした従来の主要需要者層にとどまらず,女性層にも知名度,人気を拡大している。また,実際の市場で申立人「MONSTER」エナジードリンクは,「モンスター」と呼ばれ,「モンスター」の表記で認知されている(甲311?322)。 (6)小括 以上の事柄に照らせば,「MONSTER」及びその表音「モンスター」は,本件商標の登録出願時及び登録査定時には,申立人の業務に係る商品及び役務の出所識別標識として国内外の取引者,需要者の間で広く認識されていたことが明らかである。 2 商標法第4条第1項第15号該当性について 本件商標の指定商品は,申立人の「MONSTER」が使用許諾されているライセンス商品のバックパック(甲92,134)と同一又は類似のものである。本件商標の指定商品はまた,申立人が「MONSTER」エナジードリンクのプロモーションで「モンスター限定グッズ」及び「モンスターオリジナル」として一般消費者に提供しているバックパックのかばん類(甲114,132,133,158,241,273,286)と同一又は類似のものである。 本件商標の構成文字「rosy monster」は,英単語の「rosy」と「monster」の2語を結合したものと容易に看取される。このうち,「monster」は,その音訳が外来語の「モンスター(monster)」として広く親しまれている(甲355,356)。一方,「rosy」は,英語で「ばら色,淡紅色」を意味し(甲357),その表音「ロージー(rosy)」も「バラ色」を表す外来語として認識されている(甲358)。本件商標の指定商品の分野では,一般に,「ばら色,淡紅色」を含む様々な異なる色彩の商品が製造販売されている。したがって,「rosy」の文字を本件商標の指定商品に使用しても,単に商品の色彩が「ばら色,淡紅色」であることの表示として認識,理解されるに止まり,自他商品識別標識として機能しない。仮に何らかの自他商品識別機能を果たす場合があるとしても,「monster」の文字と比較して,その自他商品識別力の程度がはるかに弱いものであることは明白である。 ゆえに,本件商標は,構成中の「monster」の文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を需要者に与えることが明らかである。 よって,本件商標は,「monster」の文字部分が独立の出所識別標識として機能し,これより「モンスター」の称呼及び観念を生じる。 申立人の使用に係る「MONSTER」からは,「モンスター」の称呼及び観念が生じる。 したがって,本件商標と申立人の使用に係る「MONSTER」は,「monster(MONSTER)」の構成文字,並びに「モンスター」の称呼及び観念を共通にするものであり,類似性の程度が極めて高いものであることが明らかである。 本件商標の指定商品の最終的な需要者は一般消費者を多く含むから,通常の需要者の注意力の程度は,高いものとはいえない。 これらの事柄を斟酌すれば,本件商標がその指定商品に使用された場合,これに接した取引者,需要者は,申立人の使用に係る「MONSTER」(引用商標2),「MONSTER」の文字を顕著に表示してなる「爪の図柄とMONSTER ENERGY」のロゴマーク(引用商標1及び3),その他の「MONSTER」ファミリー商標(引用商標4及び5),あるいは,申立人を直観し,当該商品が申立人又は申立人と経済的又は組織的関係を有する者の取り扱いに係るもの(例えば,申立人商標を使用許諾されたライセンス商品,申立人と共同開発された商品等)であると誤信し,その出所について混同を生じるおそれがあることが明らかである。また,本件商標の使用は,申立人の商品及び役務の出所識別標識として,広く認識されている「MONSTER」の出所識別力を希釈化するものであり,また,その名声,顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ない。 よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。 3 商標法第4条第1項第7号該当性について 本件商標は,社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反するものであるから,公の秩序を害するおそれがある。 よって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。 第4 当審の判断 1 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)申立人の使用に係る「MONSTER」及び「モンスター」の商標(以下「申立人商標」という。)の周知性について ア 証拠及び申立人の主張によれば,以下の事実が認められる。 (ア)申立人であるモンスター エナジー カンパニー(Monster Energy Company)は,1930年代に創業した米国の飲料メーカーであり,2002年にエナジードリンクの新ブランド「MONSTER ENERGY」を創設し,米国において発売開始した(甲7)。 (イ)申立人のエナジードリンク(以下「申立人商品」という。)は,日本においては,2012年5月8日から,「Monster Energy」(モンスターエナジー)及び「Monster KHAOS」(モンスターカオス)が発売開始され(甲7,8),その後,2013年5月7日から「モンスター アブソリュートリー ゼロ」(甲10),2014年8月19日から「モンスターエナジー M3」(甲59),同年10月7日から「モンスターコーヒー」(甲60),2015年7月21日から「モンスター ウルトラ」(甲101,102),2017年6月27日から「MONSTER ENERGY THE DOCTOR」(モンスターロッシ)(甲256,257),2018年4月24日から「モンスター キューバリブレ」(甲323)が発売されている。 (ウ)アサヒ飲料株式会社のニュースリリースによれば,申立人商品の発売及び販売と関連して,「アサヒ飲料 国内独占販売権取得!・・・『Monster Energy(モンスターエナジー)缶355ml』『Monster KHAOS(モンスターカオス)缶355ml』・・・アサヒ飲料株式会社(本社 東京,・・・)は・・・エナジードリンク『モンスターエナジー』ブランドの日本国内における独占販売権を取得しました。」(甲7),「・・・5月8日(火)から新発売したエナジードリンク『モンスターエナジー』ブランドの販売が好調・・・」(甲8),「・・・『モンスター アブソリュートリー ゼロ 缶355ml』・・・本商品は・・・『モンスターエナジー』ブランドの中でも,2番目に人気のあるカテゴリー,ダイエット系エナジーです。・・・」(甲10),「2013年度の『モンスターエナジー』ブランドの販売数量は大変好調であり,『モンスターエナジー』,『モンスターカオス』,『モンスターアブソリュートリーゼロ』の3品で前年比150%となる237万箱を販売し・・・」(甲59),「『モンスターエナジー』ブランドの販売は大変好調に推移しています。・・・本年は・・・『モンスターエナジーM3』,『モンスターコーヒー』をラインナップに追加・・・」(甲60),「『モンスターウルトラ』をラインアップに加えることにより,・・・更に『モンスターエナジー』ブランドの強化を図ってまいります。」(甲101)の記載がある。 (エ)申立人商品の容器の側面には,以下のような表示がある。 a 「Monster Energy(モンスターエナジー)缶355ml」の容器下部には,「MONSTER」の文字,その下には「ENERGY」の文字が表されている(甲14,17)。 b 発売当初の「Monster KHAOS(モンスターカオス)缶355ml」の容器下部には,「MONSTER」の文字,その下には「KHAOS」の文字,さらにその下には「ENERGY」及び「+果汁」の文字が表されている(甲14,17)。そして,2016年にリニューアル発売された同商品の容器には,上部に「KHAOS」の文字,その下に爪の図柄の図形を配し,下部に「MONSTER」の文字,その下に「ENERGY」の文字が表されている(甲130)。 c 「モンスター アブソリュートリー ゼロ 缶355ml」の容器下部には,「MONSTER」の文字,その下には「ENERGY」の文字,さらにその下には「ABSOLUTELY ZERO」の文字が表されている(甲13,260)。 d 「モンスターエナジー M3 ワンウェイびん150ml」の容器下部には,「MONSTER」の文字,その下には「ENERGY」の文字,さらにその下には「M-3 SUPER CONCENTRATE」又は「EXTRA STRENGTH」の文字が表されている(甲61,129)。 e 「モンスターコーヒー 缶250g」の容器下部には,「COFFEE」の文字,その下には「MONSTER」の文字,さらにその下には「COFFEE」,「+」及び「ENERGY」の文字が表されている(甲62)。 f 「モンスターウルトラ 缶355ml」の容器下部には,「MONSTER」の文字,その下には「ENERGY」の文字,さらにその下には「ULTRA」の文字が表されている(甲101,262)。 g 「モンスターロッシ 缶355ml」の容器下部には,「MONSTER」の文字,その下には「ENERGY」の文字,さらにその下には「THE DOCTOR」の文字が表されている(甲256,257,263)。 h 「モンスター キューバリブレ 缶355ml」の容器下部には,「MONSTER」の文字,その下には「CUBA?LIBRE」の文字が表されている(甲323?326)。 (オ)申立人商品の販売促進キャンペーン広告中の宣伝文句の中で,申立人商品の写真とともに,「モンスターを飲んで,Tスタンプを貯めてSATANIC CARNIVALに行こう!」(甲63),「モンスターを飲んで,Tスタンプを貯めてMOTOGP日本グランプリでロッシに会おう!」(甲64,69,71),「モンスターの対象商品を2本ご購入につき,くじ付きステッカーをプレゼント!」(甲79),「本場アメリカで大ヒットの『白いモンスター』日本上陸!/『モンスター ウルトラ 缶355ml』7月21日(火)新発売」(甲101),「スッキリなのにヤバイ,白いモンスター登場・・・誰よりも早くモンスターウルトラをゲットしろ!」(甲118),「モンスターを買って・・・ギアを当てろ!」(甲113,132,272),「モンスターを買って/UFC日本大会を観に行こう!」(甲162),「モンスターを買ってSATANIC CARNIVALに行こう!」(甲270),「モンスターを買ってUFC FIGHT NIGHT JAPANに行こう!」(甲283)などの表示をしている。 (カ)申立人商品の広告,マーケティング及び販売促進活動と関連して,WRCのチーム名を「MONSTER WORLD RALLY TEAM」(モンスターワールドラリーチーム)(甲42の1?3),ロックバンドを「モンスターバンド」(甲120,235,240),MOTOGPライダー又は鈴鹿8時間耐久ロードレースのライダーを「モンスターライダー」又は「モンスター契約ライダー」(甲168,238,245,247),プロサーファー,スノーボーダー又はスケートボーダーを「モンスターアスリート」又は「モンスター契約アスリート」(甲229,235,291),申立人商品の販売促進品を「モンスターグッズ」(甲232,242,244)又は「モンスターギア」(甲236)などと指称している。 (キ)申立人商品は,日本において,2012年5月の発売開始以降,2012年末までの約8か月で157万箱販売された(甲9)。 (ク)申立人の最高経営責任者の宣誓供述書(甲58)によれば,申立人商品は,日本において,2012年5月の販売開始から2015年6月30日までの約3年間で,約2億3600万缶の販売,総販売額は1億7500万米ドル以上,日本円で170億円以上であるとされる。 (ケ)当該供述書によれば,申立人は,広告,マーケティング及び販売促進活動のために,全世界では,2002年以来,30億米ドル以上を支出しているが,「モンスター社のマーケティング戦略は,従来の方法とは異なり,MONSTER商標及び爪の図柄を広めるための広告を,直接テレビやラジオで行わない」とされ,広告などの予算の多くは「競技選手への支援及び競技大会やその他イベントへのスポンサー活動」にあてている。特に「主要なターゲットとする若年成人層,主に男性が多くの時間を費やすインターネット上で,ネット配信されるイベント」であり,具体的には,ロードレース世界選手権グランプリ(MotoGP),MotoGPレーシングチーム,F1レーシングチーム,モトクロスチーム,アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ(UFC),音楽祭,音楽イベント,ミュージシャン及びビデオゲームチームへのスポンサー活動及び促進活動などである。 ただし,日本では2012年5月及び6月に販売開始を支援するために,主要テレビ局のテレビ広告枠を購入し,視聴者にウェブサイトで更なる情報を得るように促す広告を行い,それに約190万米ドルを支出したとされる。 (コ)甲第129号証(アサヒ飲料株式会社のニュースリリース,2016年3月31日)によれば,申立人商品である「『モンスターエナジーブランド』は・・・ブランド力とファッション性で世界中の若者からの圧倒的な支持を背景に,急成長しているエナジードリンクです。」と紹介され,「エナジードリンク市場は,『モンスターエナジー』などの海外ブランドの浸透により,最近では10代,20代が『炭酸の刺激を楽しみたい』や『気分転換』を目的に飲用する傾向」との記載がある。 (サ)甲第311号証及び甲第312号証(JMR生活総合研究所,2014年7月及び2016年8月)によれば,「今回測定した7項目中・・・6項目における2位は『モンスターエナジー・・・』で,海外の2ブランドが上位を占めた。」及び「3ヶ月内購入と再購入意向で『モンスターエナジー』が『レッドブル』を抜いて,首位を獲得した。・・・上陸時からユーザーを離すことなく,それに続く年代のユーザーにも受け入れられていることがわかる。」との記載がある。 (サ)甲第314号証(株式会社富士経済社 マーケット情報,2014年6月30日)によれば,「2012年に参入した『モンスターエナジー』(アサヒ飲料)も存在感を高めている。」との記載がある。 イ 上記アの認定事実によれば,申立人商標の使用と関連して,以下のような実情がうかがえる。 (ア)申立人商品は,2012年(平成24年)5月の日本における販売開始以降,その販売額は,約3年間(2012年(平成24年)5月?2015年(平成27年)6月)で約170億円以上とされ,その販売期間は発売から本件商標の登録出願時までは約5年間程度と長期にわたるものではないが,ある程度継続した販売実績があることがうかがえる。 しかし,申立人はテレビなどの一般的なメディアを通じた広告宣伝はそもそも行わない方針であることもあり,テレビCMは,2012年(平成24年)の発売当初の1か月程度の短期間で,その費用も約1億5千万円(190万ドル;80円/ドルで計算)程度のものであり,継続的に行われているスポンサー活動や販売促進キャンペーンも,日本における広告宣伝費は明らかではない。その主な広告宣伝も,主に比較的若い世代が集まるようなモータースポーツ,格闘技,音楽イベントやミュージシャン,ビデオゲームなどと関連したスポンサー活動やプロモーション活動である。また,申立人商品の紹介にあたっても,10代や20代の需要者層における支持が言及されていることからすると,申立人商品の主要な需要者層や,広告などを通じて申立人商品を目にする需要者層の範囲も,自ずと若年層を中心としたものと理解することができる。 (イ)日本で販売されている申立人商品の容器の側面には,文字配置のレイアウトにバリエーションはあるものの,概ね,「MONSTER」の文字の下に「ENERGY」の文字を,比較的近接して配置している。そして,これら申立人商品の個別名称は,「Monster Energy」(モンスターエナジー),「Monster KHAOS」(モンスターカオス),「モンスター アブソリュートリー ゼロ」,「モンスターエナジー M3」,「モンスターコーヒー」,「モンスター ウルトラ」,「モンスターロッシ」及「モンスター キューバリブレ」であるが,これら一連の商品を指称する際は,「モンスターエナジー」ブランドと総称されている。 (ウ)申立人商品の販売促進キャンペーン広告などの宣伝文句の中で,申立人商品を「モンスター」と略称したり,「MONSTER WORLD RALLY TEAM」(モンスターワールドラリーチーム),「Monsterライダー」,「モンスターバンド」,「モンスターアスリート」,「モンスターグッズ」,「モンスターギア」,「モンスターロック」など,申立人又は申立人商品の略称として「MONSTER」又は「モンスター」の語を用いる場合はある。 ウ 上記実情を踏まえると,申立人商品の販売期間は比較的短く,幅広い需要者層が目にする機会の多い一般的なメディアを通じた広告宣伝の実績は乏しいもので,広告宣伝などを通じた商品名の露出も,比較的若年層に向けた活動を通じて行われていることから,申立人商品は,本件商標の登録出願日前までには,その取引者や若い世代を中心とした需要者の間では,ある程度認知されていたということができても,幅広い需要者層を有する清涼飲料の分野一般においては,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されるに至っていたとまでは認めることができない。 そして,申立人商品は,その容器には「MONSTER」及び「ENERGY」の文字が比較的近接して表示されており,申立人商品は「モンスターエナジー」ブランドと総称されている実情があることも踏まえると,上記の申立人商品の獲得した認知度は,「Monster Energy」(モンスターエナジー)を中心とした「モンスターエナジー」ブランドのエナジードリンクとして,集合的に生じているというべきである。 なお,申立人商標である「MONSTER」及び「モンスター」の語が,宣伝文句などにおいて申立人又は申立人商品の略称として用いられる場合があるとしても,その略称が,エナジードリンクの需要者及び取引者の間で広く認知され,周知,著名となっていたとの事実は,提出された証拠からは見いだせない。 そのため,申立人商標は,我が国において,申立人又は申立人商品を表示する商標として,広く認識されているものということはできない。 (2)本件商標と申立人商標との類似性 ア 本件商標について 本件商標は,「rosy monster」の欧文字を標準文字で表してなるところ,「rosy」の語は「ばら色の,淡紅色の」等の意味を有し(甲357,358),「monster」の語は「怪物,化け物」の意味を有するものである(甲355,356)。 そして,当該両語が比較的親しまれた英語であることからすると,本件商標は,全体から「ばら色の怪物・化け物」程の意味合いを容易に想起させるものである。 さらに,本件商標は,「rosy」と「monster」との間に1文字程度の間隔が存在するものの,各文字の大きさ及び書体は同一であって,「monster」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくような態様で表されているものではないから,外観上,一体のものとして認識されるものである。また,本件商標は,その構成文字に相応して生じる「ロージーモンスター」の称呼も,格別冗長ではなく,一気一連に称呼できるものである。 そうすると,本件商標は,その構成全体をもって出所識別標識としての機能を発揮するものというべきであるから,「ロージーモンスター」の称呼を生じ,「ばら色の怪物・化け物」程の観念を生じるものである。 イ 申立人商標について 申立人商標である「MONSTER」及び「モンスター」の商標は,いずれも「怪物,化け物」の意味を有するものであり,その構成文字に相応して「モンスター」の称呼及び「怪物,化け物」の観念を生じる。 ウ 本件商標と申立人商標との類否について 本件商標と申立人商標の称呼は,「モンスター」の音を共通にするが,本件商標の語頭の「ロージー」の音の有無に差異があり,それぞれを一連に称呼するときは,構成音及び音数の相違により,両商標は容易に聴別できる。また,両商標の文字のつづりは,「monster(MONSTER)」の文字を共通にするが,本件商標の語頭の「rosy」の文字の有無に差異があり,一見して明瞭に見分けることができる。そして,観念については,本件商標から生じる「ばら色の怪物・化け物」と申立人商標から生じる「怪物,化け物」は異なるものであるから,類似しない。 そうすると,本件商標と申立人商標は,外観,称呼及び観念のいずれにおいても類似しない,別異の商標というべきである。 エ なお,申立人は,一般に本件商標の指定商品の「かばん類,袋物」は多種多様な異なる色彩のものが製造販売されているのが実情であり,「ばら色,淡紅色」の商品も数多く流通しているため,本件商標を本件商標の指定商品に使用した場合,「rosy」の文字部分は単に当該商品の色彩が「ばら色,淡紅色」であることの表示として認識理解されるにとどまり,自他商品識別力の程度が弱いものであるから,本件商標は「monster」の文字部分が商品の出所識別標識として強く支配的な印象を需要者に与え,「モンスター」の称呼及び観念を生じる旨主張する。 しかしながら,「rosy」の文字が「ばら色,淡紅色」の意味を有し,色彩を表す語であったとしても,本件商標は,上記アのとおり,外観上,一体のものとして認識されるものである。また,本件商標中「rosy」の文字部分は,商品の色彩を表示する語であるというよりも,後に続く「monster」の文字を修飾する語と認識させるものであるから,本件商標は,全体として「ばら色の怪物・化け物」の一連の観念を生じさせるとみるのが相当であり,本件商標の構成中,「monster」の文字のみが,取引者,需要者に対して商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとして見るべき事情は見いだせない。 したがって,申立人の主張は採用できない。 (3)本件商標の指定商品と申立人商品との関連性 申立人商品である清涼飲料の一種である「エナジードリンク」と,本件商標の指定商品「かばん類,袋物」とは,一般的には,その商品の性質,用途又は目的において直接的な関連性もなく,その商品の製造者や販売者,需要者層も,重複又は密接に関連しているものとはいえず,それらの密接な関連性を示す具体的な証拠は,申立人から提出されていない。 なお,申立人商品のプロモーションキャンペーンにおいて,引用商標を付した様々な商品が「モンスター限定グッズ」「モンスターオリジナル」と称してキャンペーン応募当選者等に賞品として提供され,これらの賞品には,かばん類が含まれているとしても(甲114,132,133,158,241,273,286),当該かばん類は,申立人商品の宣伝広告を目的として,キャンペーン応募者等に無償配布されるものであることからすると,当該かばん類は,申立人商品に係る広告物と解され,商取引の目的たりうべき物であるとはいえず,当該かばん類の存在をもって,申立人商品と本件商標の指定商品とが密接な関連性を有するものとはいえないから,上記のような一般的な商品間の類似の判断には影響を与えるものではない。 (4)出所の混同について 申立人商標「MONSTER」及び「モンスター」は,上記(1)のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人又は申立人商品を表示する語として周知,著名とはいえず,上記(2)のとおり,「怪物,化け物」の意味を有する語であって,その独創性が高いものとはいえず,本件商標とは別異の商標であり,上記(3)のとおり,申立人商品と本件商標の指定商品は密接な関連性を有しているとはいえないものであるから,本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば,本件商標に接する取引者,需要者が,申立人の業務に係る商標である「MONSTER」,「モンスター」又は引用商標を連想又は想起するようなことは考え難い。 そのため,本件商標は,これをその指定商品について使用しても,その取引者及び需要者をして,当該商品が申立人に係る商品であると誤信させるおそれがある商標でもなく,当該商品が申立人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信させるおそれがあるものとはいえず,申立人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある商標ではない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第7号該当性について 本件商標は,上記1(2)アのとおり,その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではないところ,その商標登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合等,その出願経緯などに公序良俗に反するおそれがあることを具体的に示す証拠の提出もない。 申立人は,本件商標の使用は,申立人の使用に係る「MONSTER」又は「モンスター」に関連して獲得した信用力,顧客吸引力にフリーライドするもので,これを登録することは商標法の精神及び国際信義に反するため,公の秩序を害するおそれがある旨を主張するが,これは専ら申立人の利益を害するか否かという私的領域に関する主張であるため,商標法第4条第1項第7号の適用がそぐわないものであるばかりでなく,上記1(4)のとおり,本件商標は申立人の業務に係る商品と混同を生じさせるおそれのある商標とはいえず,その登録が公序良俗を害する理由を見いだすことができない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。 3 むすび 以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号及び同項第15号のいずれの規定にも違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,維持すべきものである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 (引用商標1。色彩は原本を参照。) 別掲2 (引用商標3) |
異議決定日 | 2018-07-25 |
出願番号 | 商願2017-68687(T2017-68687) |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W18)
T 1 651・ 271- Y (W18) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 山川 達央、大塚 順子 |
特許庁審判長 |
小出 浩子 |
特許庁審判官 |
早川 文宏 平澤 芳行 |
登録日 | 2017-11-24 |
登録番号 | 商標登録第5998114号(T5998114) |
権利者 | 村上 紀子 |
商標の称呼 | ロージーモンスター、ロージー、モンスター |
代理人 | 柳田 征史 |