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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W3536
管理番号 1343194 
審判番号 無効2017-890081 
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-12-18 
確定日 2018-08-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第5906278号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5906278号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5906278号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成28年6月17日に登録出願され、第35類「広告業,広告の代理,雑誌による広告,ダイレクトメールによる広告,インターネットによる広告,広告スペースの貸与又は提供,インターネット上での広告スペースの提供及び貸与,広告用具の貸与,マーケティング,経営に関するコンサルティング,フランチャイズの事業の管理,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,商品の販売促進のためのクーポン券の発行及び管理,ポイントカードの発行・清算及び管理,クーポン券及び割引などの特典付カードの発行,トレーディングスタンプの発行,新聞記事情報の提供,職業のあっせん,求人情報の提供」及び第36類「建物又は土地の情報の提供,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,保険情報の提供,保険に関する助言,保険契約の締結の仲介,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出」を指定役務として、同年11月2日に登録査定、同年12月16日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録商標は、以下の2件であり、いずれも現に有効に存続しているものである(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)。
1 登録第5385057商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成22年8月3日に登録出願、「広告,インターネットによる広告の代理,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,商品の売買契約の仲介,ホテルの事業の管理,広告用具の貸与,職業のあっせん,電子計算機・タイプライター又はこれらに準ずる事務用機器の操作,輸出入に関する事務の代理又は代行,求人情報の提供」を含む第35類及び「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」を含む第36類の指定役務並びに第16類、第37類、第38類、第39類、第40類、第42類、第43類、第44類及び第45類の商標原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同23年1月21日に設定登録されたものである。
2 登録第5637046号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成25年7月8日に登録出願、第35類「トレーディングスタンプの発行,コンピュータデータベースへの情報編集,飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、同年12月13日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第26号証を提出した。
1 無効の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
(1)商標法第4条第1項第11号に該当する理由
ア 本件商標
本件商標は、独特の書体で平仮名「べるなび」と書してなるところ、その構成文字に相応して「ベルナビ」の称呼を生じ、また、造語であるから、観念を生じない(甲1)。
イ 引用商標
引用商標は、独特の書体で平仮名「ぐるなび」と書してなるところ、その構成文字に相応して「グルナビ」の称呼を生じ、また、造語であるから、観念を生じない(甲2、甲3)。
ウ 本件商標と引用商標との類否
(ア)商標の類否
外観上の類否について検討するに、本件商標は、独特の書体で平仮名「べるなび」と書してなるが、その書体は一見して引用商標「ぐるなび」の書体と極めて酷似したものである。構成文字について仔細に検討すれば、語頭音を除いた「るなび」部分は外観上殆ど同一である。
一方、本件商標「べるなび」と引用商標「ぐるなび」の相違点である語頭音の「ベ」と「ぐ」は、濁音を除いた平仮名「く」を「へ」のように時計回りに90度傾けたものにすぎず、その構成の軌を一にする。
以上から、本件商標と引用商標は、若干の相違はあるものの、両者のロゴタイプが同一の着想よりなることから、該相違が全体から受ける印象中に埋没することは明らかで、時と処を異にして離隔的に観察した場合、外観上、極めて相紛らわしいものといわざるを得ない。
よって、本件商標と引用商標は、外観上、類似する商標である。
さらに、称呼上の類否について検討するに、本件商標と引用商標は4音中3音を共通にし、相違する語頭の1音についてもともに濁音を有する点で共通する。語頭音を仔細に比較してみても、本件商標の語頭音の「べ」は、両唇で発音される破裂音であり、引用商標の語頭音の「ぐ」は、奥舌面を軟口蓋が接して発する破裂音であることから、その子音がともに有声破裂音である点で共通する。
以上から、時と処を異にして離隔的に観察した場合、称呼上、相紛らわしい商標である。
よって、本件商標と引用各商標は、称呼上も類似する商標である。
(イ)指定役務の類否
本件商標の指定役務は、前記第1のとおりである。
他方、引用商標1の指定役務は、前記第2の1のとおりであり、引用商標2の指定役務は、「トレーディングスタンプの発行」等である。
以上から、本件商標の第35類指定役務全て(審決注:「新聞記事情報の提供」は非該当。以下同じ。)、及び、第36類指定役務中の「建物又は土地の情報の提供,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介」は、引用商標の指定役務と類似群を共通にし、類似する役務である。
(ウ)小括
したがって、本件商標は、引用商標と類似の商標であって同一又は類似の役務を指定するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(2)商標法第4条第1項第15号に該当する理由
ア 引用商標の周知著名性及び独創性の程度
(ア)引用商標の周知著名性
引用商標は、「ぐるなび」の文字からなるところ、「株式会社ぐるなび」(東京都千代田区有楽町所在)及びそのグループ会社(以下「ぐるなびグループ」という。)の商品又は役務を示すものとして取引者及び需要者の間で周知著名になっていると認められるものであり、このような引用商標の周知著名性からすれば、本件商標に接する取引者及び需要者は、これより「ぐるなびグループ」と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であると連想、想起することは明らかである。
a 防護標章登録例
引用商標と同一の「ぐるなび」の文字商標は、「広告用具の貸与及びこれに関する情報の提供」を含む、広範囲に及ぶ指定商品及び指定役務について防護標章登録されている(甲4)。
b 審決例
無効2011-890034では、「飲食店に関するポータルサイトとして著名な『ぐるなび』」と判断されている(甲5)。
c 裁判例
平成24年(行ケ)第10019号では、上記審決例と同じく、「飲食店に関するポータルサイトとして著名な『ぐるなび』」と判断されている(甲6)。
d ぐるなびの有料加盟店数
請求人のウェブサイトによれば、本件商標の出願日前である平成28年(2016年)3月期末時点では、総掲載店舗数は約50万店、うち有料の加盟店舗数は56,967店となっている(甲7)。
また、請求人の「2018年3月期第2四半期決算説明会資料」によれば、平成26年(2014年)時点の日本全国の飲食店舗数が約51万店であることから、殆どの飲食店が「ぐるなび」の加盟店であるといっても過言ではない(甲8)。
e ぐるなびの利用者数
請求人の「2017年3月期第2四半期決算説明会資料」によれば、飲食店情報検索サイト「ぐるなび」の月間利用者数は、平成27年(2015年)12月現在で5,700万人を数え、これに登録しているユーザー数は、平成27年(2015年)10月現在で1,346万人を数える(甲9)。我が国の生産年齢人口(15歳?64歳)は、平成26年(2014年)10月1日現在で7,785万人であることから(甲10)、生産活動の中心となる者の延べ約7割以上が「ぐるなび」を利用しているといっても過言ではない。
また、その利用者属性は、30代、40代を中心として10代から60代以上まで幅広く、老若男女問わず、広く利用されている(甲9)。
f 多数の商標登録を有し又は登録出願をしている事実
請求人は、引用商標及び前記防護標章登録の他にも「ぐるなび」の文字からなる又はこれを含む商標について、多数登録を保有し、又は登録出願をしている(甲11?甲20)。
g 小括
以上のとおり、本件商標の登録出願時において、引用商標は、「ぐるなびグループ」が永年にわたり自己の業務に係る商品又は役務に使用し、全国の広告用看板や雑誌・新聞・テレビなどのメディアを利用して盛大な広告宣伝等を継続した結果、「ぐるなびグループ」に属する各社の商品・役務を表示する代表的出所標識として需要者の間で広く認識されているものであり、その使用期間及び使用規模からすると、引用商標の周知・著名性の程度が極めて高いことは明らかである。
(イ)引用商標の独創性の程度
請求人の平成28年(2016年)4月1日から平成29年(2017年)3月31日までの有価証券報告書(抜粋:以下「有価証券報告書」という。)及びデザイナーのウェブサイトによれば、飲食店検索サイト「ぐるなび」をインターネット上に開設したのは平成8年(1996年)であって、引用商標である「ぐるなび」は、コーポレート・アイデンティティの開発の一環で考案したロゴ文字であり、この独創的な書体は、他に類を見ない(甲21、甲22)。
(ウ)本件商標と引用商標との類似性の程度
前述のとおり、本件商標と引用商標は、酷似した書体を用いた点で共通するから、外観において極めて相紛らわしいものであり、また称呼においても相紛らわしいといえるから、両者の類似性の程度が高いことは明らかである。
(エ)取引の実情等
有価証券報告書によれば、請求人は、株式会社ぐるなびプロモーションコミュニティ、ぐるなび上海社、株式会社ぐるなび総研、及び、株式会社ぐるなびサポートアソシエの親会社として、パソコン・携帯電話・スマートフォン等による飲食店のインターネット検索サービスその他関連する事業を提供する株式会社である(甲21)。
また、有価証券報告書によれば、「ぐるなびグループ」は、株式会社ぐるなび及び連結子会社1社、関連会社3社によって構成される多角経営企業であり、その事業は、飲食店情報検索サイトを通じた飲食店情報の提供をはじめ、ウェディング情報の提供、デリバリー情報の提供、通信販売、飲食店の業務支援、各種セミナーの提供、コールセンター運営、食品等のプロモーション支援、全国各地のご当地情報の提供、旅行・観光情報の提供、「食」に関する調査研究、福利厚生サービスの提供、飲食店経営に関する各種情報の提供など、多岐にわたり、さらにはスキー情報の提供に関連して、損害保険情報の提供も行っているものである(甲23)。これら事業の連結売上高は約369億円となっている(甲21)。
そして、「ぐるなびグループ」が多角経営企業であるという事実は広く知られる事実であり、「ぐるなびグループ」の事業がインターネット検索サービスを提供するのみでないことも、広く知られた事実である。
他方、本件商標の指定役務は、「広告業,マーケティング,建物の管理,保険情報の提供」等であり、飲食店情報提供の分野に属する役務ないし飲食店経営に密接に関わる役務であることは明白であるし、現に請求人が提供する役務と多分に重なっていることは上述のとおりである。
そうすると、本件商標の指定役務と「ぐるなびグループ」に属する各社の商品又は役務の関連性の程度は高いものであり、取引者及び需要者の範囲が共通する場合も少なくないものである。
さらに、現代社会では、経済の発展に伴い産業の多様化や多角化が進んでいること及び高度にインターネットが発達していることから、企業が自ら派生商標を採択することもしばしば行われるところである。
(オ)商標法第4条第1項第15号該当性
以上の次第で、引用商標の周知著名性の程度が極めて高いこと、引用商標の独創性の程度が高いこと、本件商標と引用商標との類似性の程度が高いことなどを踏まえると、本件商標は、これを出願人がその指定役務に使用するときは、その役務が恰も「ぐるなびグループ」と何らかの関係がある者が提供する役務であるかの如く、役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない場合においても、少なくとも、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
2 結語
以上の次第で、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してなされたものであるから、同法第46条第1項第1号に該当し、その登録は無効とすべきものである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、答弁の理由を要旨次のように述べた。
1 「べるなび」を登録商標の届けをしたときに、それ以前にも登録商標の届けが同じようなものだとできないことを知り、「べるなび」の登録商標の届けの時、大槻国際特許事務所(大阪市中央区)に相談の上、申請し登録商標許可を受けた。
法人設立は、有限会社ベルアールの方が早い。「べるなび」の本件商標は大槻国際特許事務所を通して特許庁の許可のもとに現在まで使用している。営業目的は相互に損害を発生するにたりうる根拠を探すのが難しいと思う。
2 商行為を行う営業エリアの相互の浸食性について
有限会社ベルアールの営業エリアは、埼葛エリア(埼玉北東部)であり、株式会社ぐるなびの営業エリアは全国である。
3 被請求人は、上記のような内容の中において、請求人が現在までの損害金が発生したならば、その金額を詳細な証拠をもって提示されたい。また、将来に予見可能な損害金が発生するならば、その金額を第三者が認め得る詳細な証拠を提示して説明されたい。被請求人は今後も自信をもって「べるなび」は使うことを返答する。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の著名性について
請求人提出の証拠及び同人の主張によれば、次の事実が認められる。
ア 引用商標と同一の「ぐるなび」の文字商標は、第35類「広告用具の貸与及びこれに関する情報の提供」を含む、広範囲の指定商品及び指定役務について防護標章登録(商標登録第5861070号の防護標章登録第1号)がされている(甲4:別掲2)。
イ 請求人のウェブサイトによれば、インターネット上で飲食店情報検索サイト「ぐるなび」を運営し、利用者(ユーザー)にさまざまな飲食店情報を、パソコンを始め携帯電話、スマートフォン等により無料で提供し、飲食店向けにはインターネットを活用したPR及び販売促進等のサービスを販売している。
そして、平成28年3月期末現在の総掲載店舗数は約50万店であり、そのうち有料の加盟店舗数は56,967店となっている(甲7)。
ウ 請求人の2017年(平成29年)3月期第2四半期決算説明会資料及び2018年(平成30年)3月期第2四半期決算説明会資料によれば、この1年間に、有料加盟店数は、59,612店(2016年9月末)から、60,606店(2017年9月末)と約1,000店増加しており、また、ぐるなび会員数は、1,346万人(2016年10月1日)から、1,442万人(2017年10月1日)と約100万人増加している。(甲8、甲9)。
そして、利用者は、30代、40代を中心として10代から60代以上まで幅広く利用している(甲9)。
エ 請求人の有価証券報告書によれば、請求人が飲食店検索サイトとして「ぐるなび」を開設したのは、平成8年(1996年)であるから、20年以上もの長きに渡り、引用商標の「ぐるなび」を使用している(甲21)。
オ 請求人の有価証券報告書によれば、請求人は、株式会社ぐるなびプロモーションコミュニティ、ぐるなび上海社、株式会社ぐるなび総研及び株式会社ぐるなびサポートアソシエの親会社として、パソコン・携帯電話・スマートフォン等による飲食店のインターネット検索サービスその他関連する事業を提供する株式会社である(甲21)。
カ 請求人の有価証券報告書によれば、「ぐるなびグループ」は、株式会社ぐるなび及び連結子会社、関連会社によって構成される多角経営企業であり、その事業は、飲食店情報検索サイトを通じた飲食店情報の提供をはじめ、ウェディング情報の提供、デリバリー情報の提供、通信販売、飲食店の業務支援、各種セミナーの提供、コールセンター運営、食品等のプロモーション支援、飲食店経営に関する各種情報の提供など、多岐にわたり、さらにはスキー情報の提供に関連して、損害保険情報の提供も行っていることが確認される(甲23)。そして、これら事業の連結売上高は約369億円となっている(甲21)。
キ 川合デザイン有限会社のウェブサイトによれば、「1996年のデビューよりCI開発に参加。日本国内、最も有名な飲食店検索サイトの1つに成長している。」との記載があり、「ぐるなび」は、コーポレート・アイデンティティの開発の一環で考案されたロゴ文字である(甲22)。
ク 小括
上記アないしキによれば、請求人は、別掲2のとおり、独特の文字で表されている「ぐるなび」の商標を自己の業務に係る役務「飲食店に関する情報の提供」等について20年以上使用して、当該分野において名声と信用を築き上げてきたものであって、「ぐるなびグループ」の多角経営の程度、営業活動の期間、売上高等を考慮すると、「ぐるなび」の文字からなる商標は、本件商標の登録出願前より、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、取引者、需要者間に広く認識され、全国的に著名となっていたものと判断するのが相当である。
(2)本件商標と引用商標との類否について
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、特殊な書体による「べるなび」の平仮名からなるところ、その構成文字に相応して、「ベルナビ」の称呼を生じ、また、該文字は、辞書に載録されていない語であり、特定の意味を有する語として一般に知られているものではないから、一種の造語として理解されるものであって、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標
引用商標は、別掲2のとおり、特殊な書体による「ぐるなび」の平仮名からなるところ、その構成文字に相応して、「グルナビ」の称呼を生じ、また、該文字は、辞書に載録されていない語であり、特定の意味を有する語として一般に知られているものではないから、一種の造語として理解されるものであって、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標の類似性の程度
本件商標と引用商標は、上記ア及びイのとおりの構成態様よりなるものであり、本件商標と引用商標を比較するに、外観においては、本件商標と引用商標とは、その構成中の「るなび」の文字部分について、文字の端部の形状に微差があるものの、文字全体の形状としては、ほぼ同一である。
また、本件商標の語頭の「べ」の文字と引用商標の語頭の「ぐ」の文字の関係においては、中央部で90°近く折れ曲がった極太の線に、黒丸で表した濁点を付加している点において共通しているから、両商標は、似通った印象を与えるものであって、外観上の形状が極めて近似しているものである。
次に、称呼においては、本件商標は、「ベルナビ」の称呼を生じ、引用商標は、「グルナビ」の称呼を生ずるものであって、語頭音の「ベ」と「グ」の違いのみで残りの3音は、「ルナビ」と共通の称呼を生じ、このように4音という短い音構成からなるものは、語頭の称呼が異なるとしても、称呼上、全体として近似した音調、音感を与えるものである。
さらに、観念においては、共に特定の観念を有しないから、観念上、比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、その外観上、極めて近似した印象を与える特徴的な形状の文字からなるものであって、着想、構図等その構成の軌を一にするものとみるのが相当である。
したがって、本件商標と引用商標とは、観念において、比較できないとしても、外観において極めて近似しており、特徴的な文字のデザインも記憶に残るものといい得ることから、称呼において、語頭音の相違があるとしても、その相違が外観における類似性を凌駕するものとはいえないものであるから、両商標の類似性の程度は相当高いものといえる。
(3)引用商標の独創性について
引用商標である「ぐるなび」は、川合デザインが、1996年のデビューよりコーポレート・アイデンティティの開発の一環で考案したロゴ文字であり、この独創的な書体は、他に類を見ないものである(甲22)。
(4)取引の実情等について
請求人は、株式会社ぐるなびプロモーションコミュニティ、ぐるなび上海社、株式会社ぐるなび総研、及び、株式会社ぐるなびサポートアソシエの親会社として、パソコン・携帯電話・スマートフォン等による飲食店のインターネット検索サービスその他関連する事業を提供する会社であり、また、「ぐるなびグループ」は、株式会社ぐるなび及び連結子会社1社、関連会社3社によって構成される多角経営企業であり、その事業は、飲食店情報検索サイトを通じた飲食店情報の提供をはじめ、ウェディング情報の提供、デリバリー情報の提供、通信販売、飲食店の業務支援、各種セミナーの提供、コールセンター運営、食品等のプロモーション支援、全国各地のご当地情報の提供、旅行・観光情報の提供、「食」に関する調査研究、福利厚生サービスの提供、飲食店経営に関する各種情報の提供など、多岐にわたり、さらにはスキー情報の提供に関連して、損害保険情報の提供も行っているものである(甲23)。これら事業の連結売上高は約369億円であって、その事業規模も決して小さいものではない(甲21)。
(5)需要者の共通性について
本件商標の指定役務は、第35類「広告業,広告の代理,雑誌による広告,ダイレクトメールによる広告,インターネットによる広告,広告用具の貸与,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,職業のあっせん,求人情報の提供,トレーディングスタンプの発行」等を指定役務とするものであり、その取引者、需要者は、広告及び市場調査を依頼する事業者や求人情報の提供を受ける一般需要者であり、一方、引用商標の指定役務は、第35類「広告,インターネットによる広告の代理,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,広告用具の貸与,職業のあっせん,求人情報の提供、トレーディングスタンプの発行」等を指定役務とするものであって、その取引者、需要者は、広告及び市場調査を依頼する事業者や求人情報の提供を受ける一般需要者であるから、両商標の取引者、需要者は同じである。
(6)本件商標と引用商標の混同を生ずるおそれについて
上記(1)ないし(5)を総合勘案すれば、引用商標は、上記(1)のとおり請求人又は同人の業務を表示するものとして、本件商標の登録出願時ないし登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認められるものである。
また、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、その外観上、極めて近似した特徴的な形状の文字からなるものであるから、両者の類似性は相当高いものと認められる。
さらに、上記(3)のように、デザイン会社に依頼し、コーポレート・アイデンティティの開発の一環として考案したロゴ文字をサービス開始当初から使用しており、この独創的な書体は、他に類を見ないものである。
加えて、上記の(4)及(5)のとおり、請求人は多角経営企業であること、及び取引者、需要者も共通していることを考慮すれば、被請求人が引用商標の存在を承知の上で、それと近似した商標を登録出願したものであり、引用商標の周知性へのただ乗り(いわゆるフリーライド)や稀釈化(いわゆるダイリューション)を意図していたものといわざるを得ないものである。
そうすると、本件商標をその指定役務について使用した場合には、これに接する取引者、需要者をして、引用商標あるいは請求人を連想、想起させ、その役務が他人(請求人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであって、同法第4条第1項に違反してされたものというべきであるから、その余の無効理由について判断するまでもなく、同法第46条第1項第1号の規定に基づき、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)



別掲2(引用商標1、引用商標2及び登録防護標章)



審理終結日 2018-06-01 
結審通知日 2018-06-05 
審決日 2018-06-26 
出願番号 商願2016-66096(T2016-66096) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (W3536)
最終処分 成立  
前審関与審査官 根岸 克弘 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 榎本 政実
山田 正樹
登録日 2016-12-16 
登録番号 商標登録第5906278号(T5906278) 
商標の称呼 ベルナビ 
代理人 藤森 裕司 
代理人 伊藤 大地 
代理人 飯島 紳行 

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