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審決分類 審判 査定不服 称呼類似 登録しない W35
審判 査定不服 外観類似 登録しない W35
審判 査定不服 観念類似 登録しない W35
管理番号 1342150 
審判番号 不服2017-8470 
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-12 
確定日 2018-07-09 
事件の表示 商願2016- 79798拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「ありがとう」の文字を標準文字で表してなり、第35類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成28年7月26日に登録出願されたものである。
そして、その指定役務については、原審における同年12月16日付け手続補正書をもって、第35類「会社の一般事務及び会計事務の代理又は代行,輸出入に関する事務の代理又は代行,職業のあっせん,商品の展示会・見本市・展覧会の企画・運営又は開催,販売促進のための商品の展示会・見本市・博覧会の企画又は運営,人材の派遣に関する事業の管理又は運営,出版物の販売に関する情報の提供,教育事業の管理,学校経営の診断及び指導,学校経営の診断又は経営に関する助言,学習塾の経営に関する情報の提供,学習塾の経営の診断及び指導,企業の経営に関する診断・指導・助言及び管理,自動販売機の貸与,求人情報の提供,介護に関する施設運営又は組織運営の管理に関するコンサルティング,介護施設事業の管理,宝玉及びその模造品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に補正されたものである。
2 引用商標
原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願商標の拒絶の理由に引用した登録商標は、以下のとおりである。
(1)登録第5158466号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成19年4月12日に登録出願、第35類「広告,会社の一般事務及び会計事務の代理又は代行,輸出入に関する事務の代理又は代行,職業のあっせん,商品の展示会・見本市・展覧会の企画・運営又は開催,販売促進のための商品の展示会・見本市・博覧会の企画又は運営,人材の派遣に関する事業の管理又は運営,出版物の販売に関する情報の提供,教育事業の管理,学校経営の診断及び指導,学校経営の診断又は経営に関する助言,学習塾の経営に関する情報の提供,学習塾の経営の診断及び指導,企業の経営に関する診断・指導・助言及び管理,自動販売機の貸与,求人情報の提供,介護に関する施設運営又は組織運営の管理に関するコンサルティング,介護施設事業の管理」並びに第39類ないし第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同20年8月8日に設定登録されたものである。
(2)登録第5615010号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成25年2月15日に登録出願、第35類「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,二輪自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,自転車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,家具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,楽器及びレコードの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,宝玉及びその模造品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、同年9月13日に設定登録されたものである。
以下、これらをまとめて「引用商標」という。

3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本願商標について
本願商標は、「ありがとう」の文字を標準文字で表してなるところ、該文字は、「感謝の意をあらわす挨拶語」の意味を有するものであって、これよりは、「アリガトウ」の称呼を生じ、「感謝の意をあらわす挨拶語」程の観念を生じるものである。
イ 引用商標(引用商標1及び引用商標2)について
引用商標は、別掲のとおり、上部が丸みを帯びた赤色の背景に、招き猫の上半身と、赤色で縁取りされた扇形で構成された図形からなり、該扇形の内側に「ありがとう」の文字を横書きしてなるものである。
そして、上記したような図形と文字からなる商標に接する取引者、需要者は、その構成中、称呼しやすい文字部分に着目し、これより生ずる称呼及び観念をもって商取引にあたる場合も決して少なくないものというのが相当である。
そうすると、引用商標にあっては、その構成中「ありがとう」の文字部分が着目され、印象に残るものであって、商取引においては、独立して自他役務の識別標識としての機能を果たす要部として看取されるというべきである。
してみれば、引用商標は、該「ありがとう」の文字部分に相応して、「アリガトウ」の称呼を生じ、「感謝の意をあらわす挨拶語」程の観念を生じるものである。
ウ 本願商標と引用商標との類否について
本願商標と引用商標との類比について検討すると、外観においては、両商標は、その構成を異にするものであるが、上記ア及びイに記載したとおり、本願商標と引用商標の要部である「ありがとう」の文字は、ともに同じ平仮名からなるものであるから、本願商標と引用商標の要部においては、外観上、近似した印象を与えるものである。
そして、称呼においては、本願商標と引用商標の要部である「ありがとう」の文字は、ともに「アリガトウ」の称呼を生じるものであるから、称呼上、両者は同一である。
また、観念においては、本願商標と引用商標の要部である「ありがとう」の文字は、ともに「感謝の意をあらわす挨拶語」の観念を生じるものであるから、観念上、両者は同一である。
以上のとおり、本願商標と引用商標は、その引用商標の要部において、外観上近似した印象を与えるものであって、称呼及び観念を同一にするものであるから、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合的に勘案すれば、両者は互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
エ 本願商標の指定役務と引用商標の指定役務の類否について
(ア)本願商標と引用商標1の抵触について
本願商標の指定役務中、第35類「会社の一般事務及び会計事務の代理又は代行,輸出入に関する事務の代理又は代行,職業のあっせん,商品の展示会・見本市・展覧会の企画・運営又は開催,販売促進のための商品の展示会・見本市・博覧会の企画又は運営,人材の派遣に関する事業の管理又は運営,出版物の販売に関する情報の提供,教育事業の管理,学校経営の診断及び指導,学校経営の診断又は経営に関する助言,学習塾の経営に関する情報の提供,学習塾の経営の診断及び指導,企業の経営に関する診断・指導・助言及び管理,自動販売機の貸与,求人情報の提供,介護に関する施設運営又は組織運営の管理に関するコンサルティング,介護施設事業の管理」は、引用商標1の指定役務中の第35類「広告,会社の一般事務及び会計事務の代理又は代行,輸出入に関する事務の代理又は代行,職業のあっせん,商品の展示会・見本市・展覧会の企画・運営又は開催,販売促進のための商品の展示会・見本市・博覧会の企画又は運営,人材の派遣に関する事業の管理又は運営,出版物の販売に関する情報の提供,教育事業の管理,学校経営の診断及び指導,学校経営の診断又は経営に関する助言,学習塾の経営に関する情報の提供,学習塾の経営の診断及び指導,企業の経営に関する診断・指導・助言及び管理,自動販売機の貸与,求人情報の提供,介護に関する施設運営又は組織運営の管理に関するコンサルティング,介護施設事業の管理」と、同一又は類似の役務である。
(イ)本願商標と引用商標2の抵触について
本願商標の指定役務中、第35類「宝玉及びその模造品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、引用商標2の指定役務中の第35類「宝玉及びその模造品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と、同一の役務である。
オ 小括
本願商標と引用商標は、前記ウのとおり、互いに相紛れるおそれのある類似の商標であり、かつ、前記エのとおり、本願商標の指定役務は、引用商標の指定役務と同一又は類似する役務を含んでいるものである。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、引用商標について、「全体としてデザインとして統一性があり、招き猫が、来客に対して『来て頂いてありがとう』の意を伝えるモチーフを、『ありがとう』の文字を書した物(扇子の扇面形状の表示物)を左手に持った招き猫の図で表現したものであり、わざわざ『ありがとう』の文字と、『ありがとう』の文字を抜いた白色の表示物を左手に持った招き猫の図に分断して観察するのが妥当であるという特段の事情はない。」旨を主張している。
しかしながら、引用商標は、別掲のとおり、上部が丸みを帯びた赤色の背景に、招き猫の上半身と、赤色で縁取りされた扇形で構成された図形(以下、赤色の背景と図形とが組み合わさった部分を「図形部分」という。)からなり、該扇形の内側に「ありがとう」の文字を横書きしてなるものであるところ、このような図形と文字からなる商標に接する取引者、需要者は、その構成中、称呼しやすい「ありがとう」の文字部分に着目し、これより生ずる称呼及び観念をもって商取引にあたる場合も決して少なくないものというのが相当である。
そして、引用商標にあっては、その構成中「ありがとう」の文字部分が、「感謝の意をあらわす挨拶語」として、一種のメッセージを表示し、看者の印象に残るものであって、商取引においては、独立して自他役務の識別標識としての機能を果たす要部として看取されるというべきである。
してみれば、本願商標と引用商標とが、全体としては外観において異なった商標であるとしても、「ありがとう」の文字部分を要部として、本願商標と引用商標とを比較し、類否判断を行うことも許されるというのが相当である。
イ また、請求人は、本願商標と引用商標について、「たとえ、『アリガトウ』の称呼を共通にする場合があるとしても、『ありがとう』の文字部分は識別力が弱い部分であると共に、外観において明確に区別でき、観念において類似するものではないから、両商標の比較において、一の称呼の共通性が他の外観及び観念における差異を凌駕するものとはいい難く、外観、称呼及び観念を総合的に判断すると、両商標は、役務の出所の誤認、混同を生ずるおそれのないものであり、全体として非類似の商標というのが相当である。」旨を主張している。
しかしながら、商標の類否判断においては、全体観察の他に要部観察も許されるものである。
また、引用商標において「ありがとう」の文字部分が、一般に、「感謝の意をあらわす挨拶語。」程の意味合いを有する語として理解されるとしても、その指定役務との関係において、識別力が弱いとする理由が明らかにされておらず、また、その事実を示すことのできる証拠は提出されていない。
加えて、請求人は、該「ありがとう」の文字からなる本願商標を、その指定役務の出所識別標識として登録出願しているのであり、この事は、該文字の識別力が弱いとする請求人の主張と、矛盾するものである。
そして、上記(1)イのとおり、引用商標においては、「ありがとう」の文字部分が要部となり得るものであるところ、本願商標と引用商標とは、その要部である「ありがとう」の文字が共通であることから、両者について、その要部における外観、称呼及び観念を総合的に判断すると、両商標は、役務の出所の混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
ウ 請求人は、引用商標について、「『ありがとう』の文字を書した物(扇子の扇面形状の表示物)を左手に持った招き猫の図に照応して、特定の称呼を生じないが、引用商標からは、「『ありがとう』の文字を書した物(扇子の扇面形状の表示物)を左手に持った招き猫」の観念が生じるとするのが自然である。しかしながら、そもそも『商標はその構成部分全体によって他人の商標と識別すべく考案されているものであるから、みだりに、商標構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判定することは許されない』(最高裁判例)と判示されており、分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標に限って、分離観察すべき対象とすべきである。これを本願商標についてみれば、引用商標の図は、全体としてデザインとして統一性があり、招き猫が、来客に対して『来て頂いてありがとう』の意を伝えるモチーフを、『ありがとう』の文字を書した物(扇子の扇面形状の表示物)を左手に持った招き猫の図で表現したものであるにも拘わらず、わざわざ『ありがとう』の文字と『ありがとう』の文字を抜いた白色の表示物を左手に持った招き猫の図に分断して観察するのが相当であるとする理由は、何ら見出すことができない。むしろ、『ありがとう』の文字を書した物(扇子の扇面形状の表示物)を左手に持った招き猫の図の構成全体の外観上の一体不可分性は、決して弱いものということはできない。」旨を主張している。
確かに、引用商標の全てを見たときには、請求人のいうような「『ありがとう』の文字を書した物(扇子の扇面形状の表示物)を左手に持った招き猫」程の大雑把な意味合いが暗示される場合がまったくないとはいえないものである。
しかしながら、上記の判例においても、商標の類否判断においては、全体観察が原則であるとしても、分離観察が許されないとしているわけではない。
そして、図形と文字からなる引用商標に接する取引者、需要者は、前記アのとおり、その構成中、称呼しやすい文字部分に着目し、これをもって取引にあたる場合も決して少なくないものであるといえるものである。
また、構成中の「ありがとう」の文字と、「図形部分」は、観念上密接な関連性があるものとは解されず、「ありがとう」の文字は、扇形図形内において、白地に黒で記載され、看者に明瞭に視認される文字であり、看者の注意をひく部分といえるものであるから、「ありがとう」の文字部分は、観念上及び外観上も、図形部分より分離して看取、把握される場合もあるものというのが相当であり、該図形部分と、「ありがとう」の文字部分は、常に一体不可分のものとして、看取、把握されなければならない特段の事情を認めることはできず、「ありがとう」の文字部分と、図形部分は、それぞれが独立して自他役務の識別標識として機能する要部といえるものである。
そうすれば、引用商標からは、常に、請求人がいうような上記の意味合い(観念)が生じるのが自然であるということはできない。
してみれば、引用商標の構成中、明瞭に表示された「ありがとう」の文字より生じる称呼、観念をもって、取引にあたる場合も少なくないものというのが相当である。
したがって、引用商標は、該「ありがとう」の文字部分に相応して、「アリガトウ」の称呼を生じ、「感謝の意をあらわす挨拶語」程の観念を生じるものである。
よって、請求人の主張は、いずれも採用することはできない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 引用商標1及び2(色彩については、原本参照。)



審理終結日 2017-10-24 
結審通知日 2017-10-30 
審決日 2017-11-16 
出願番号 商願2016-79798(T2016-79798) 
審決分類 T 1 8・ 263- Z (W35)
T 1 8・ 261- Z (W35)
T 1 8・ 262- Z (W35)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柿本 涼馬馬場 秀敏安達 輝幸 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 中束 としえ
真鍋 恵美
商標の称呼 アリガトウ、アリガトー 
代理人 佐藤 富徳 

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