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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) W28 |
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管理番号 | 1341294 |
異議申立番号 | 異議2017-900164 |
総通号数 | 223 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2018-07-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-05-19 |
確定日 | 2018-06-08 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5924602号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5924602号商標の商標登録を取り消す。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5924602号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成よりなり,平成28年2月2日に登録出願,第28類「おもちゃ,人形,遊園地用機械器具(業務用テレビゲーム機を除く。),愛玩動物用おもちゃ,囲碁用具,将棋用具,歌がるた,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,運動用具」を指定商品として,同29年1月26日に登録査定,同年2月17日に設定登録されたものである。 2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標について,商標法第4条第1項第8号,同項第10号,同項第15号,同項第19号及び同項第7号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号の規定により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証を提出した。 (1)申立人及び引用商標の使用について ア 申立人について 申立人は,香港における会社登記情報に示されているとおり,香港において「TIGERBROTHER INT’L TECHNOLOGY CO., LIMITED」との商号において,2009年5月7日に設立された後,2010年9月21日に現商号である「PHICEN LIMITED」(中国語社名:匯佳成有限公司)に商号変更し,現在に至っている(甲3)。「PHICEN」は,溶液の酸性,塩基性度を示す尺度である「PH」,氷を意味する「ICE」,倍数を意味する「N」を結合させた造語である。 イ 商標の使用状況について 申立人の主要取扱商品は「人形」及びその関連商品である。申立人の企画,制作,販売している人形は,シームレスゴム素材により柔軟,かつ,自然なポージングが可能な点をその主要な特徴とする各種のドール・フィギュアである。 申立人の使用に係る商標は,別掲2のとおりであり(以下「引用商標」という。甲2),商品パッケージや広告,宣伝の場で用いられている(甲5,6)。 申立人の年間広告額は,20万人民元程度(約320万円,1人民元=16円換算)で,主として検索エンジンやソーシャルネットワーキングサービスといった広告媒体を利用している。 日本においては,2011年より,オンライン,販売代理店経由での販売を開始し,着実に商品「人形」に係る取引者,需要者への認知度を向上させてきた(甲7?甲10)。 外国においては,拠点のある香港を含む中国が最も主要な市場であるが,日本,米国,台湾,フランス,ドイツといった地域を主として輸出が拡大している。これは,業界における評判が派生したこと,米国や中国における展示会への出展などを通して世界のバイヤーに認知されたことが寄与している(甲11,甲12)。 また,中国,日本,米国各州,フランス,ドイツ,ロシア,タイでも取引があり(甲13),さらに,スペイン,イギリス,カナダ,メキシコ,スイス,シンガポールにつきオンライン販売又は代理店経由の販売実績がある。 これらの事実を総合すると,引用商標は,本件商標の登録出願時には,申立人の業務に係る商品「人形」及びその関連商品を表示するものとして,我が国の当該商品分野の需要者の間に広く認識されており,かつ,その周知性は,本件商標の登録査定時においても継続していたものである。 ウ 商標の保護状況について 中国においては,現在使用しているロゴの前身となるロゴ及び引用商標について商標登録をしている(甲14,甲15)。 申立人は,引用商標を付した「人形」及びその関連商品(以下「申立人商品」という。)につき,国際的な商標登録出願を検討していたところ,日本における本件商標が発見され,本件登録異議の申立てをするに至った。 なお,米国では商標登録出願中であるほか(甲16),日本においては,本件異議申立書の提出日と同日に引用商標についての登録出願をしている(甲17)。 (2)本件商標と引用商標の類似性について 本件商標と引用商標の外観を比較すると,本件商標が黒字に灰色,引用商標が白地に黒という色彩の相違があり,本件商標の左上の「PHICEN・LIMITED」の文字が引用商標にはない点,及び本件商標の図形部分に印刷不具合等の関係でついてしまったような白い円が二つある点など軽微な相違点があるとしても,両商標は,構成をほぼ同一にし,需要者,取引者の視点からもほぼ同一の商標といえる。 そして,両商標の構成中の「PHICEN」の文字は,上記(1)アのとおり,造語であり観念上の比較はできないが,称呼は同一である。 したがって,本件商標と引用商標は,限りなく同一に近い類似の商標である。 また,上記(1)アのとおり,「PHICEN」は造語で構成上顕著な特徴を有する点,申立人が香港において「PHICEN LIMITED」へと商号変更を登記したのが2010年9月21日であり,その後2010年12月7日に中国において引用商標と細部が異なるだけの前身ロゴを,そして,2015年7月23日に同様に中国において引用商標を出願している点及び本件商標の商標見本として品質の悪いコピーが使用されている点に鑑みれば,本件商標権利者による本件商標の採択は,偶然の一致であるとは到底いえない。 (3)商標法第4条第1項第8号該当性について 上記のとおり,申立人は,「PHICEN LIMITED」との商号において登記されており,同商号の下で営業活動を行っている。 しかして,本件商標は,上記のとおり,その構成中に図形と並んで「他人の名称」である「PHICEN LIMITED」の文字を明確に含んでおり,さらに,本件商標の黒枠の左上方に「他人の名称」の語間に「・」を加えた「PHICEN・LIMITED」の文字も含んでいる。そして,本件商標の登録にあたり,その他人(申立人)の承諾を得ていないものである。 したがって,本件商標は,その構成中に,他人の名称である「PHICEN LIMITED」を含むもので,かつ,その他人の承諾を得ていないから,商標法第4条第1項第8号に該当する。 (4)商標法第4条第1項第10号及び同項第15号該当性について 上記(1)イのとおり,引用商標は,遅くとも本件商標の登録出願時点において,日本における商品「人形」及びその関連商品の取引者,需要者の間で広く認識され周知となっており,その後もその認知度はさらに高まっている。 そして,上記(2)のとおり,本件商標と引用商標は限りなく同一に近い類似の商標であり,申立人商品と,本件商標の指定商品中,第28類「人形,おもちゃ」は類似の商品である。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号該当する。 また,引用商標は周知,著名であるところ,本件商標がその指定商品について使用された場合,取引者,需要者が申立人を連想し,当該商品が申立人商品であるかのように,商品の出所について混同を生ずるおそれがある。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。 (5)商標法第4条第1項第19号該当性について 引用商標は,上記(1)イのとおり,遅くとも本件商標の登録出願時点において,日本における商品「人形」及びその関連商品の取引者,需要者の間で広く認識され周知となっており,その後もその認知度はさらに高まっている状況である。 そして,本件商標と引用商標は限りなく同一に近い類似の商標である。 また,引用商標につき,申立人が採択,中国で登録し,日本でも周知性を獲得した後に本件商標の登録出願がなされたこと,両商標が細部にわたり酷似していることに鑑みると,本件商標権者は,引用商標を剽窃したものと考えられる。 さらに,本件商標権者は,本件商標が登録されて以降,積極的に申立人商品の取り扱い業者等に対して商標権侵害の警告文を送り,ライセンス締結を迫っており(甲22,甲23),引用商標に化体した信用,名声,顧客吸引力等にフリーライドするため,また,あわよくば日本における販売代理権獲得を強制する目的で本件商標を登録したものと思われる。 そうすると,本件商標は,申立人の業務に係る商品を表示する商標として,香港を含む中国及び日本の取引者,需要者間において広く認識されている引用商標と類似するものであり,その名声,周知性に便乗し,不正の利益を得る目的又は申立人及びその取引者に損害を与える目的をもって使用するものである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。 (6)商標法第4条第1項第7号該当性について 引用商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,香港を含む中国及び日本の取引者,需要者の間において広く認識されているところ,本件商標は,引用商標とほとんど同一の商標といえることから,本件商標を採択する際,引用商標と偶然一致したものとはいい難く,その存在を知り得て本件商標を採択したものと推認できることを総合すれば,本件商標権者は,引用商標が我が国において商標登録されていないことを奇貨として,先取り的に商標登録出願し,商標権を取得したものというのが相当である。 そのため,本件商標権者が,本件商標を商標登録出願し,商標権を取得した行為は,公正な商取引の秩序を乱すおそれがあり,ひいては公の秩序を害するおそれがあるものである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。 3 取消理由通知 当審において,平成29年9月25日付けで,本件商標権者に対して通知をした取消理由は,商標法第4条第1項第8号に基づくものであり,要旨以下のとおりである。 (1)申立人が提出した香港登記局のウェブサイトにおける申立人の登記情報(甲3及びその抄訳)によれば,申立人は,2009年(平成21年)5月7日に設立し,存続する香港の株式会社であって,その名称変更履歴によれば,2010年(平成22年)9月21日に,「PHICEN LIMITED」に名称を変更したものである。 (2)本件商標は,別掲1のとおりの構成よりなるところ,その構成中に,本件商標の登録出願時及び登録査定時に存続していた,他人(申立人)の名称である「PHICEN・LIMITED」及び「PHICEN LIMITED」の文字を含むものであって,その他人(申立人)の承諾を得ているとは認められない。 (3)したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する。 4 本件商標権者の意見 本件商標権者は,上記3の取消理由に対して,何ら意見を述べていない。 5 当審の判断 (1)本件商標について 本件商標は,別掲1のとおり,黒塗りの横長長方形内に,「PHICEN」の文字と,やや小さく「LIMITED」の文字とを2段に表し,その右側に図形を配した構成よりなり,当該横長長方形の左上部には「PHICEN・LIMITED」の文字をやや小さく表してなるものである。 そして,本件商標の構成中,黒塗りの横長長方形内の「PHICEN」及び「LIMITED」の文字部分は,その右側の図形部分とは間隔を僅かに空けながら,上下二段にまとまりよく表されているため,一見して「PHICEN LIMITED」の文字を二段構成で表してなるものと理解できる。 (2)申立人の名称について ア 申立人の提出に係る証拠(甲3)によれば,香港登記局のウェブサイトに,2017年(平成29年)5月28日付けの印刷時点において,以下を記載内容とする企業情報がある。 (ア)登記番号を「1336603」,企業名称を「PHICEN LIMITED」,企業形態を「株式会社」,設立年月日を2009年(平成21年)5月7日,状態を「存続」とする企業情報の記載がある。 (イ)上記企業情報の名称変更履歴とその日付の欄には,2009年(平成21年)5月7日付けの企業名称として「TIGERBROTHER INT‘L TECHNOLOGY CO.,LIMITED」,2010年(平成22年)9月21日付けの企業名称として「PHICEN LIMITED」の記載がある。 イ 上記アの企業情報によれば,申立人は,平成21年5月7日に,香港において設立された株式会社であって,同22年9月21日からはその名称を「PHICEN LIMITED」に変更したものである。 そして,その後,当該企業情報の印刷日(同29年5月28日)においても存続し,更なる名称変更をした記録もないことよりすれば,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,「PHICEN LIMITED」という名称の,香港において登記された企業が存在していたことが推認できる。 (3)商標法第4条第1項第8号該当性について 本件商標の構成中,黒塗りの横長長方形内の「PHICEN」及び「LIMITED」の文字部分は,「PHICEN LIMITED」を二段構成で表したものであり,本件商標の登録出願時及び登録査定時に存続していた,香港において登記された他人(申立人)の名称である「PHICEN LIMITED」と同一の文字構成よりなるものである。 また,本件商標の構成中,「PHICEN・LIMITED」の文字部分は,「PHICEN」及び「LIMITED」の文字の間に,「語の間などに用いる記号の一つ」である「・」(黒丸)を配してなるところ,これは申立人の名称である「PHICEN LIMITED」と同一の文字構成を,語間に相当する部分に,代替する記号を配置したにすぎないものと認識,理解されるものである。 そうすると,本件商標は,他人(申立人)の名称に相当する「PHICEN LIMITED」及び「PHICEN・LIMITED」の文字を含むものと認められる。 また,本件商標権者が,本件商標の登録査定時において,その他人(申立人)の承諾を得ていたことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する。 (4)まとめ 以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第8号に違反してされたものであるから,その他の登録異議の申立ての理由について言及するまでもなく,同法第43条の3第2項の規定により,取り消すべきものである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) 別掲2(引用商標) |
異議決定日 | 2018-01-30 |
出願番号 | 商願2016-16494(T2016-16494) |
審決分類 |
T
1
651・
23-
Z
(W28)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 大塚 順子、豊島 幹太 |
特許庁審判長 |
田中 亨子 |
特許庁審判官 |
阿曾 裕樹 早川 文宏 |
登録日 | 2017-02-17 |
登録番号 | 商標登録第5924602号(T5924602) |
権利者 | ウ ペン |
商標の称呼 | ファイセンリミテッド、ファイセン、フィセン、ピイ |
代理人 | 高橋 伸也 |
代理人 | 特許業務法人R&C |