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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W1428353638414245
審判 一部申立て  登録を維持 W1428353638414245
審判 一部申立て  登録を維持 W1428353638414245
管理番号 1341285 
異議申立番号 異議2017-900376 
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-15 
確定日 2018-06-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第5983017号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5983017号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5983017号商標(以下「本件商標」という。)は、「THINK DIFFERENT」の欧文字を横書きしてなり、2015年(平成27年)8月24日にジャマイカにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張し、平成28年2月24日に登録出願、第14類、第28類、第35類、第36類、第38類、第41類、第42類及び第45類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同29年9月8日に登録査定され、同年9月22日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する国際登録第1279757号商標(以下「引用商標」という。)は、「Tick different」の欧文字を横書きしてなり、2015年(平成27年)7月16日にスイスにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張し、同年11月2日に国際商標登録出願、第14類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、平成28年7月15日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標はその指定商品及び指定役務中、第14類「全指定商品」について、商標法第4条第1項第11号及び同第7号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
(1)申立人商標について
ア 申立人について
申立人は、「Swatch(スウォッチ)」の名称で知られる世界的な時計ブランドである(甲5)。申立人は、1983年に最初の「swatch」ブランドの時計を発売して以来、毎年、新作を発表し続けている。申立人商品は、デザインの多様性・斬新性が消費者から高い関心・評価を受けており、そのコレクターが世界中に存在するほどである。申立人は、機械式の高級時計ブランドとは一線を画し、低価格帯の一般消費者向けクォーツ時計ブランドとして、我が国のみならず世界中でその地位を確固たるものとしている。
「swatch」時計の最大の魅力はそのデザインであり、画家、彫刻家、ミュージシャン、映像作家などの世界的に著名なアーティストが、「swatch」時計を小さな「カンバス」に見立てて、自由な発想でユニークな時計をデザイン・発表してきた。一例を挙げると、キキ・ピカソ、キース・ヘリング等世界的に著名なアーティストとのコラボレーションを通じて、多種多様な魅力あふれるクリエイティブな時計を生み出してきた。
イ 申立人による商標「Tick different」の使用
申立人は、2015年にNFC(近距離無線通信規格の一つ)を利用したモバイル決済が可能な新製品「Bellamy」シリーズを発表しており、商標「Tick different」は、該「Bellamy」シリーズの1ペットネームとして使用されている(甲6)。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 本件商標について
本件商標は、欧文字「THINK DIFFERENT」を、ありふれた書体で同書同大同間隔にて横一列に書してなり、その構成文字に相応して、「シンクディフェレント」の称呼が生じ、8音構成であって、一連一体に淀みなく一気に称呼できるものである。「THINK」は「考える、思う」を意味する英単語で、品詞は動詞であり(甲7)、「DIFFERENT」は「違った、異なる」を意味する英単語で、品詞は形容詞である(甲8)。各々の語は、英語を母国語としない我が国においても非常に馴染みのある単語であるが、本件商標全体は、厳密に言えば、英文法上、不正確なものであるから、全体として一つの造語として認識され、特定の観念を生じないと考えられる。
イ 引用商標について
引用商標は、欧文字「Tick different」をありふれた書体で同書同大同間隔にて横一列に書してなり、「ティックディフェレント」の称呼が生じる。該称呼は促音を含めて8音構成であり、一連一体に淀みなく一気に称呼できるものである。「Tick」は「(時計などが)カチカチいう、時を刻む」を意味する英単語で、品詞は動詞であり(甲9)、「different」は「違った、異なる」を意味する英単語で、品詞は形容詞である。引用商標全体は、厳密に言えば、英文法上、不正確であるから、全体として一つの造語として認識され、特定の観念を生じないと考えられる。
ウ 両商標の対比
(ア)外観上の類似性
本件商標及び引用商標は、各々、欧文字14文字、13文字からなる構成であり、構成文字において、大文字・小文字の相違はあるものの、そのうち、合計12文字において共通する。
具体的には、前半の構成単語においては、語頭の文字「T」、中間の「I(i)」、語尾の「K(k)」において共通し、後半の構成単語は、大文字・小文字の相違はあるものの実質同一の単語である。すなわち、両商標は、外観上半分以上の割合を占める後半の英単語「different」において共通しており、前半の構成単語においても、外観識別上、最も大きな影響を及ぼすと思料される語頭の文字が共通する上、語尾の文字も共通し、上記語頭・語尾の文字に挟まれる形で中間の文字が共通する。つまり、両商標における前半の構成単語は、要所々々の文字が共通する。よって、両商標における前半の構成単語「THINK」、「Tick」に接した需要者・取引者は、要所々々に配された語頭、中間、語尾の文字の共通点に注目し、その他の相違点は看過する可能性が高い。これに加えて、後半の英単語「different」は共通しているため、本件商標全体と引用商標全体の双方に接する需要者・取引者は、わずか数文字の相違による外観上の差異は看過し、差異点を大きく凌駕する共通点をもって両商標を判断し、同一の出所からなる商品であると判断するおそれがある。つまり、時と場所を異にする離隔観察では、共通する構成文字の割合の多さ、及び、両商標における共通構成文字の配置の態様により、上記差異は捨象されやすく、本件商標及び引用商標は、それらに接する需要者・取引者に非常に近似した印象を与える。
なお、上述した両商標の文字構成に加えて、以下の事情も考慮すべきと思料する。申立人商品は、一般消費者向けの低価格帯クォーツ時計であり、申立人商標に係るクォーツ時計の取引の分野において、取引者・需要者が格別高度の注意をもって商品に接すると考える特別の事情はない。
さらに、商標が腕時計に使用される場合、通常、商標は文字盤に小さく表示されるものである。つまり、本件商標に係る指定商品・指定役務中、第14類「腕時計」等との関係においては、外観上の相異が、他の商品の場合と比べて一層識別困難となる可能性が高く、商品の出所に誤認混同を生じるおそれはより高くなる。
以上より、本件商標及び引用商標は、外観において、非常に近似した印象を与える。
(イ)称呼上の類似性
本件商標から生じる称呼「シンクディフェレント」と、引用商標から生じる称呼「ティックディフェレント」を対比すると、差異点は、語頭の「シン」と「ティッ」である。相違音が、称呼識別上、比較的影響の大きいといわれる語頭音ではあるものの、両商標は全体としてみると、8音中、6音を共通にする。該差異音に続く「ク」の音は、後舌面と軟口蓋で閉鎖を作って一気に開放することによって生じる破裂音であり、その直前の音が、それぞれ、鼻音の「ン」、促音の「ッ」であることとも相侯って、両商標における「ク」の音は非常に明瞭に聴取される。さらに、両商標の語頭音「シ(si)」、「ティ(ti)」は母音を共通にする。
以上より、両商標を一連一体に一気に称呼した場合、上記相違音は明瞭には聴取されず、称呼全体の語感、語調は非常に近似したものとなる。
加えて、上述のとおり、両商標は外観も非常に近似しているため、需要者・取引者は、両商標を近似の印象をもって称呼することとなり、該事実が、より一層称呼上における近似の印象を高めることに資する。
よって、両商標は、時と処を異にして称呼を対比した場合、称呼上、相紛れるおそれがある。
(ウ)観念上の類似性
本件商標からは特定の観念が想起されず、引用商標からも特定の観念は想起されない。
よって、両商標は、特定の観念が生じないことにより、観念上対比すべくもない。
(エ)商標全体の類似性
本件商標と引用商標は、たとえ、観念において相紛れるおそれがないとしても、外観、称呼において極めて近似しているため、両商標を同一・類似の商品に使用した場合、商品の出所に誤認混同を生じるおそれのある類似の商標である。
エ 小括
上述のとおり、本件商標と引用商標は類似の商標であり、本件商標に係る指定商品・指定役務中、第14類の指定商品全てが、引用商標に係る指定商品と同一又は類似である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性
商標権者は、引用商標に対して異議申立てを行っている(異議2016-685021)。該異議申立において、商標権者は、自らの標章「THINK DIFFERENT」が、引用商標「Tick different」と類似している旨主張している。つまり、商標権者は、本件商標と、引用商標が類似する商標であることを自ら認識しているといえる。
ここで、商標権者は、本件商標に係る指定商品のうち、第14類「腕時計」等の商品の分野においては、申立人が調査した限りでは、事業を行っている事実は発見されず、また、今後、事業を行う予定がある事実も発見されていない。よって、商標権者が第14類において商標登録を得る蓋然性は認められない。もちろん、商標権者が腕時計型のウェアラブル・コンピュータ「Apple Watch」を発表・販売していることは申立人も認識しているが、該商品は、特許庁の「類似商品・役務審査基準」において、明確に第9類「腕時計型携帯情報端末」として明記してあり、第14類には該当しないことは明白である(甲10)。
その一方で、申立人は、世界的に有名な時計ブランドであり、第14類「腕時計」の分野はまさにその中核事業である。
第14類「腕時計等」の商品に関しては、商標権者が事業を行っておらず、今後行う予定もないのであるから、商標権者は、本件商標を出願する際に、引用商標との第14類における抵触を避け(第14類を指定せずに)、本件商標を出願することは十分可能であったはずである。しかしながら、商標権者は、本件商標と引用商標が類似する商標であることを認識し、かつ、引用商標が先行商標であることを認識した上で、あえて本業に関連する第9類の指定商品等の他に、本業と無関係である第14類の指定商品を指定して(先行商標出願と抵触することを承知の上で)本件商標を出願しており、これは、申立人の中核事業である腕時計を意図的に狙い、申立人に損害を与える等の不正の目的をもって出願されたものである。係る行為は、商標を保護することにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護するという商標法の目的(商標法第1条)に反するものであり、公正な取引秩序を乱し、商道徳に反するというべきである。つまり、本件商標は、その登録出願の経緯が著しく社会的妥当性を欠くものであり、その登録を認めることは商標法の予定する秩序に反するものである。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり「THINK DIFFERENT」の文字からなるところ、その構成文字に相応して「シンクディファレント」の称呼を生じるものである。
そして、本件商標は、その構成態様から、容易に英語の既成語「THINK」と「DIFFERENT」の語を結合してなるものと理解、認識させるものであるが、当該結合の「THINK DIFFERENT」の語は、辞書等に記載のないものであり、商標全体として特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
イ 引用商標
引用商標は、上記2のとおり「Tick different」の文字からなり、その構成文字に相応して「ティックディファレント」の称呼を生じるものである。
そして、引用商標は、その構成態様から、容易に英語の既成語「Tick」と「different」の語を結合してなるものと理解、認識させるものであるが、当該結合の「Tick different」の語は、辞書等に記載のないものであり、商標全体として特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標の類否について検討すると、両者は上記ア及びイのとおり、前者が「THINK」と「DIFFERENT」、後者が「Tick」と「different」の各語を結合してなるものと理解、認識させるものであるから、外観においては、前半部における「THINK」と「Tick」の語の差異を有し、その差異が共に2語を結合してなる両商標の視覚的印象に与える影響は大きく、外観上、互いに相紛れるおそれのないものとみるのが相当である。
次に、本件商標から生じる「シンクディファレント」と引用商標から生じる「ティックディファレント」の称呼を比較すると、両者は後半部の「ディファレント」の音を共通にするものの、語頭音を含む前半部において「シンク」と「ティック」の音という明らかな差異を有するから、両者をそれぞれ一連に称呼しても、明瞭に聴別できるものというのが相当である。
さらに、観念においては、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから、比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標は、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において、明らかに異なるものであり、これらを総合して判断すれば、両者は、非類似の商標であって、別異の商標というべきである。
エ 申立人の主張について
申立人は、両商標の構成文字及び称呼における各文字及び各音を対比し、両者は外観において14文字又は13文字中12文字が共通する、及び称呼において8音中6音が共通するなどとして、両商標が類似する旨主張しているが、両商標の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、一般的・恒常的な取引の実情を考慮して判断すれば、外観及び称呼における相異は、上記ウのとおり顕著であり、本件商標と引用商標は、互いに類似しない、別異の商標というべきである。
また、申立人は、「申立人商品は、一般消費者向けの低価格帯クォーツ時計であり、格別高価なものではないから、取引者・需要者が格別高度の注意をもって商品に接すると考える特別の事情はない」旨、「本件商標に係る指定商品『腕時計』等との関係においては、腕時計の商標が文字盤に小さく表示されるものであるから、外観上の相異が、他の商品の場合と比べて一層識別困難となる可能性が高く、商品の出所に誤認混同を生じるおそれはより高くなる」旨主張しているが、その点を考慮したとしても、本件商標と引用商標とは、明らかに異なる別異の商標であるから、申立人の主張は、いずれも採用できない。
オ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であって、別異の商標というべきものであり、他に、両商標が類似するというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性について
ア 申立人は、商標権者が登録異議の申立てに係る指定商品について事業を行っておらず今後行う予定もないことを前提として、商標権者は引用商標が先行商標であることを認識した上で登録異議の申立てに係る指定商品を指定し本件商標を出願したのは、あえて申立人の中核事業である腕時計を意図的に狙い、申立人に損害を与えるなどの不正の目的をもってしたものであり、係る行為は、公正な取引秩序を乱し商道徳に反するというべきであるから、本件商標は、その登録出願の経緯が著しく社会的妥当性を欠くものであり、本号に該当する旨主張している。
イ しかしながら、将来的に使用する予定のある商品についても、商標登録出願は可能であり、また、商標権者が今後登録異議の申立てに係る指定商品に本件商標を使用する予定がないと認めるに足りる証左は見いだせないから、申立人の係る主張は、その前提において採用する限りでない。
また、本件商標は、上記(1)のとおり、引用商標と外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるから、商標権者がこれをその登録異議の申立てに係る指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させるものということはできない。
そうすると、本件商標は、申立人に損害を与えるなどの不正の目的で登録出願されたものと認めることはできない。
さらに、本件商標が、その出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠くなど、公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の指定商品・指定役務中、登録異議の申立て係る指定商品についての登録は、商標法第4条第1項第7号及び同第11号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2018-05-28 
出願番号 商願2016-19765(T2016-19765) 
審決分類 T 1 652・ 262- Y (W1428353638414245)
T 1 652・ 261- Y (W1428353638414245)
T 1 652・ 22- Y (W1428353638414245)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 松江 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 冨澤 美加
鈴木 雅也
登録日 2017-09-22 
登録番号 商標登録第5983017号(T5983017) 
権利者 アップル インコーポレイテッド
商標の称呼 シンクディファレント 
代理人 杉村 光嗣 
代理人 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 
代理人 杉村 憲司 
代理人 西尾 隆弘 
代理人 中山 健一 
代理人 門田 尚也 

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