• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申立て  登録を取消(申立全部取消) W42
管理番号 1340398 
異議申立番号 異議2017-900174 
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-05-26 
確定日 2018-05-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第5927001号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5927001号商標の指定商品及び指定役務中,第42類「全指定役務」については,その商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5927001号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成28年8月5日に登録出願,第42類「通信ネットワークを利用した物流システムに関するコンピュータソフトウェアの提供,コンピュータソフトウェアの提供又は貸与」並びに第6類,第11類,第12類及び第39類の商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同29年1月24日に登録査定,同年2月24日に設定登録されたものである。
なお,本件商標の商標権は,平成30年2月27日に放棄による本商標権の登録の抹消の申請がされ,その登録の抹消がされているところ,本件商標の商標登録に対する登録異議の申立ては,申立日を,同29年5月26日とするものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件登録異議の申立ての理由として引用する登録第5499070号商標(以下「引用商標」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,平成22年5月24日に登録出願,第42類「登録されたユーザーがグループ及びイベントを組織するため・討論に参加するため・社交及びビジネス及び地域ネットワークといったバーチャルコミュニティに参加することを可能にするためのコンピューターソフトウエアの提供,アプリケーションサービスプロバイダ(ASP)によるコンピュータソフトウェアの提供,通信ネットワークを介して電子媒体又は電子情報をアップロード・ダウンロード・ストリーミング配信・投稿・提示・ブログ作成・リンク付け・共有利用・その他の提供することを可能化・促進するためのコンピュータソフトウェアのアプリケーションサービスプロバイダ(ASP)による提供,ユーザーが個人の身元情報を転送したり多数のウェブサイトとの間で個人の身元情報を共有化することを可能にするためのオンラインネットワークによるアプリケーション・プログラミング・インターフェイス(API)を含むコンピュータプログラムの提供,ソーシャルネットワーキング・バーチャルコミュニティの作成及び音声・映像・画像・文字・グラフィックス・データの送信のためのダウンロードできないソフトウェアアプリケーションの一時的な使用の提供,電子計算機用プログラムの提供」及び第45類「通信ネットワークを利用したコンピュータデータベースによるソーシャルネットワーキング・社交のための紹介・異性の紹介,自己啓発・自己改善・自己実現・慈善・博愛・ボランティア・公共サービス・地域奉仕サービス・人道活動の分野におけるソーシャルネットワーキングサイトを介した友人・異性の紹介及びこれに関する情報の提供」を含む第9類,第35類,第36類,第38類,第41類,第42類及び第45類の商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同24年6月8日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標の指定商品及び指定役務中,第42類「全指定役務」については,商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号に基づき取り消されるべきであると申し立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。
1 引用商標の著名性について
申立人は,「Facebook」の名称のもとに,インターネット上におけるソーシャルネットワーキングサービス,及び該サービスを利用するためのコンピュータソフトウェアを提供している。申立人の業務に係るソーシャルネットワーキングサービス(以下「申立人SNS」という。)及びコンピュータソフトウェア(以下「申立人ソフトウェア」という。これらをまとめて,以下「申立人役務」という場合がある。)の提供には,「Facebook」の頭文字である「f」をデザイン化した引用商標をアイコンとして使用している。
申立人SNSは,2004年にアメリカ合衆国の学生向けに提供が開始され,2006年以降は一般にも開放され,13歳以上であれば誰でも利用できるようになった。2008年には日本語版のサービスが提供され,本格的に日本でも利用されるようになった。2011年9月には,世界中に8億人の利用者を有する世界最大のソーシャルネットワーキングサービスとなり,2012年10月には,その利用者は10億人を突破し,また,日本国内における利用者も2011年9月には1000万人を超え,2017年時点では2700万人を超えた(甲3)。そして,世界中において,2017年6月のデイリーアクティブ利用者数は13億2000万人,2017年6月30日時点での月間アクティブ利用者数は20億1000万人である(甲4)。
引用商標の指定役務中には,申立人SNSを利用するために不可欠な「コンータソフトウェアの提供」があるため,申立人SNSの利用者数は,該ソフトウェアの利用者数である。
現在,申立人SNSは,一般の個人にとどまらず,政治家や芸能人等の有名人に加え,政府等の公的機関や企業においても,情報発信メディアとして積極的に活用されている。例えば,経済産業省においても広報活動の一環として,申立人SNSを利用している(甲5)。
このように,申立人SNSは,ソーシャルネットワーキングサービスの草分け,かつ代表格であり,今や我々の社会生活において,情報共有やコミュニティー形成のためのツールとして不可欠なものとなっている。そして,ソーシャルネットワーキングサービスの利用にあたり,コンピュータソフトウェアが使用されている。
さらに,申立人SNSの創設の経緯に関しては,2010年に「ソーシャル・ネットワーク」(原題:The Social Network)というタイトルのもとに映画化されており,「Facebook」の名称は広く世間の関心の対象となっている。
そして,引用商標は,申立人SNSのアイコンとして使用され,インターネットにおける申立人SNSのページに示されている。これにより,需要者は引用商標から容易に申立人SNSを想起する。
以上のとおり,引用商標は,「Facebook」の名称とともに,申立人役務の提供について,本件商標の出願日(平成28年8月5日)及び査定日(平成29年1月24日)の時点において,既に日本国内及び外国において需要者の間に広く認識されており,著名な商標となっていたものである。
2 本件商標と引用商標の比較について
本件商標は,小文字の「fresh bank」で構成され,語頭の「f」のみがデザイン化されたロゴである。該ロゴは,青色の四角形に白抜きの小文字「f」がやや右寄りに配置された構成をとる。本件商標の指定役務は,前記第1のとおりである。
引用商標は,青色の四角形に白抜きの小文字「f」がやや右寄りに配置された構成をとり,四角形の下方には,帯状に周囲よりやや薄い青色が配色されている。そして,引用商標は,前記第2のとおり「コンピュータソフトウェアの提供」に関する役務を複数指定役務としている。
本件商標は,語頭のみがロゴ化されていることから,明らかにロゴのみが分離観察され得る。該ロゴが,青色の四角形に白抜きの小文字「f」がやや右寄りに配置された構成をとる以上,引用商標と著しく類似する。
また,本件商標の指定役務は,引用商標が著名性を獲得するに至った役務と同一又は類似である。
3 本件商標と引用商標との誤認・混同について
上述のとおり,引用商標は,申立人役務の提供に係る商標として著名であり,本件商標のロゴ部分と引用商標は類似する。
本件商標のロゴ部分は,需要者の注意を最も強くひく語頭に位置することに鑑みれば,これに接する需要者は,著名な「Facebook」の名称を容易に連想・想起するというのが相当である。
それゆえ,本件商標は,引用商標と何らかの関連性を有するとの誤認混同を需要者にもたらすおそれがある。
4 小括
以上のとおり,引用商標は,申立人役務の提供において著名であること,及び,本件商標のロゴ部分と引用商標は,類似することから,本件商標は,その指定役務について使用するときは,引用商標に係る業務の営業主である申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務に関するものであると,役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがある。
そして,仮に,本件商標の登録を認めた場合には,著名に至っている引用商標が有する顧客吸引力や信用へのただ乗り,さらには,その希釈化を招くという結果を生じかねない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 当審における取消理由の要旨
当審において,本件商標権者に対し,「本件商標の指定商品及び指定役務中,第42類『全指定役務』については,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである。」旨の取消理由を平成29年12月15日付けで通知し,相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。

第5 商標権者の意見
商標権者は,上記第4の取消理由の通知に対して,指定した期間内に何ら意見を述べていない。

第6 当審の判断
1 引用商標の周知・著名性について
(1)申立人の提出した証拠及び申立ての理由によれば,以下の事実を認めることができる。
ア 申立人は,「Facebook」の名称のもとに,申立人役務を提供しており,申立人役務の提供にあたっては,「Facebook」の頭文字である「f」を図案化した引用商標をアイコンとして使用している(甲3)。
イ 申立人SNSは,2004年(平成16年)にアメリカ合衆国の学生向けに開始された後,2006年(平成18年)以降は一般にも開放され,13歳以上であれば誰でも利用できるようになった。2008年(平成20年)には日本語版のサービスが提供され,我が国でも利用されるようになった。2011年(平成23年)9月には,世界中に8億人の利用者を有する世界最大のSNSとなり,2012年(平成24年)10月には,その利用者は10億人を突破した(甲3)。
申立人SNSの我が国における利用者数も2011年(平成23年)9月には1000万人を超え,2015年(平成27年)12月には2500万人となった(甲3)。
ウ 申立人SNSは,個人にとどまらず,経済産業省等の公的機関によっても,情報発信メディアとして利用されている(甲5)。
(2)前記(1)によれば,引用商標は,本件商標の登録出願日(平成28年8月5日)はもとより,その登録査定日(平成29年1月24日)においても,申立人役務の提供を表示するものとして,我が国において需要者の間に広く認識されていたものと認めることができる。
2 本件商標と引用商標の比較
本件商標は,別掲1のとおり,青色の角を丸めた正方形内に,ロゴ化した「f」と思しき図形を右寄りに正方形の右辺に接して白抜きで表してなる図形(以下「本件図形部分」という。)と,それに続く「resh bank」の欧文字(以下「本件文字部分」という。)により,全体として「fresh bank」を認識させる構成よりなるものであるが,その構成において,本件図形部分は,青色に彩色されていることに対し,本件文字部分は,黒色で普通に用いられる態様の文字という差異があることから,本件商標に接した取引者,需要者が最も注意をひかれる部分は,本件図形部分であることは明らかであり,この部分が看者の記憶に残る部分といえる。
他方,引用商標は,別掲2のとおりの構成よりなるところ,青色の角を丸めた正方形内に,ロゴ化した「f」と思しき図形を右寄りに白抜きで表し,正方形の下方には,周囲より薄い青色で帯状の図形が配された構成によりなるものである。
そうすると,本件商標と引用商標とでは,その構成全体としては,区別し得るものの,本件商標の構成中,看者の注意を引きやすい本件図形部分と引用商標とでは,青色の角を丸めた正方形内に,ロゴ化した「f」と思しき図形を右寄りに白抜きで配する点において構成の軌を一にするものであることから,両者の類似性は高いものといえる。
また,本件図形部分ではロゴ化した「f」と思しき図形は正方形の右辺に接している点,引用商標の構成中の下方に周囲より薄い青色で帯状の図形が配されている点の差異を有するものの,両者を時と所を異にして離隔的に観察した場合には,上記構成の軌を一にする点を凌駕するほどの差異とは認められず,引用商標の周知性も相まって,両者は極めて類似した印象を看者に与えるものと認められる。
3 本件商標と引用商標の役務の関連性について
申立人SNSは,インターネットを通じて提供される役務であり,その役務を利用するためには,コンピュータ等の機器及びコンピュータソフトウェアが必要であるところ,申立人は,前記1のとおり,申立人SNSを利用するためのコンピュータソフトウェア(申立人ソフトウェア)の提供も行っており,申立人SNSの需要者は,申立人ソフトウェアの需要者でもある。
そうすると,本件商標の指定商品及び指定役務中,第42類「通信ネットワークを利用した物流システムに関するコンピュータソフトウェアの提供,コンピュータソフトウェアの提供又は貸与」は,申立人役務と密接な関連を有するものである。
4 出所の混同を生ずるおそれについて
以上のとおり,本件商標の構成中の本件図形部分は,申立人役務の提供に使用して周知となった引用商標に類似するものであり,両商標が使用される役務の関連性等を勘案すると,本件商標がその指定商品及び指定役務中,第42類「通信ネットワークを利用した物流システムに関するコンピュータソフトウェアの提供,コンピュータソフトウェアの提供又は貸与」に使用されたときは,これに接する取引者,需要者は,本件商標の構成中の本件図形部分に着目し,該図形部分から申立人を連想,想起することが少なくないものとみるのが相当であり,上記役務が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関連を有する者の業務に係る役務であるかのように,その役務の出所について混同を生じるおそれがあるものというべきである。
5 まとめ
したがって,本件商標はその指定商品及び指定役務中,第42類「全指定役務」について,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものと認めることができる。
6 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,「結論掲記の指定役務」について,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1
本件商標(色彩は原本参照)


別掲2
引用商標(色彩は原本参照)


異議決定日 2018-03-29 
出願番号 商願2016-84271(T2016-84271) 
審決分類 T 1 652・ 271- Z (W42)
最終処分 取消  
前審関与審査官 石塚 利恵 
特許庁審判長 田中 幸一
特許庁審判官 冨澤 武志
大森 友子
登録日 2017-02-24 
登録番号 商標登録第5927001号(T5927001) 
権利者 日通商事株式会社
商標の称呼 フレッシュバンク、フレッシュ、バンク 
代理人 特許業務法人深見特許事務所 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ