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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W35
審判 全部申立て  登録を維持 W35
審判 全部申立て  登録を維持 W35
審判 全部申立て  登録を維持 W35
管理番号 1340382 
異議申立番号 異議2018-900012 
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-12 
確定日 2018-05-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第5989326号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5989326号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5989326号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成28年10月18日に登録出願、第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,清涼飲料及び果実飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,茶・コーヒー及びココアの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薬剤及び医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、同29年9月15日に登録査定され、同年10月20日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第5231801号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成19年6月28日に登録出願、第35類「衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薬剤及び医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」のほか商標登録原簿記載の役務を指定役務として、同21年5月22日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標の態様
本件商標の態様は、「二つの三角形をその頂点が重なり合うように上下に反転して配置した図形」と「その周囲を囲むように配置された円図形」からなるものである(甲1)。
当該商標はいわゆる幾何図形のみから構成されるものである。通常であれば特定の称呼及び観念は生じないものと考えられるが、後述のとおり、小売等役務の分野における引用商標の周知・著名性を考慮すれば、「マルチキリ(マルニチキリ)」の称呼を生じ、「申立人の運営に係る周知・著名な百貨店の目印として広く知られた図形」程度の観念を想起する場合もあるものと認められる。
イ 引用商標の態様及びその成り立ちについて
引用商標の態様は、「二つの三角形をその頂点が重なり合うように上下に反転して配置した図形」と「その周囲を囲むように配置された円図形」からなるものである(甲2)。
当該図形は、一般に「まるちきり(まるにちきり)の図形」と呼ばれており、「申立人の運営に係る周知・著名な百貨店の目印として広く知られた図形」程の観念を生ずるものと認められる。
すなわち、申立人は百貨店「そごう(SOGO)」及び「西武(SEIBU)」等を運営しており、このうちの「そごう(SOGO)」は、天保元年に創業し、現在までの間長きにわたって営業を継続している有名な百貨店である。当該百貨店は、古くから引用商標をその運営店舗及びその業務の目印として現在に至るまで長きにわたって継続的に使用している(甲3?甲5)。
引用商標に表された図形は、前述のとおり「二つの三角形をその頂点が重なり合うように上下に反転して配置した図形」と「その周囲を囲むように配置された円図形」からなるものであるが、このうちの前者は、「ちきり(織機の部分品。経糸をまく中央がくびれた棒状のもの)」(甲6)を表したものである。さらにこれに後者の「その周囲を囲むように配置された円図形」を合わせ、その全体をして、一般に「まるちきりの図形」や「まるにちきりの図形」と呼ばれている。
このように、引用商標に係る図形は非常に古くから、申立人の業務、すなわち百貨店における小売等役務等において継続して使用され、その目印として現在に至るまでの間、自他商品役務の識別力を現実に発揮してきているものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標はいずれも、幾何図形から構成された図形要素のみからなるものであるため、まずは外観における類否の判断が最も重要になる。ここで、商標の類否を判断するに際しては、離隔的観察によるのが原則とされており、この点は、商標法第4条第1項第11号の審査基準とともに掲載された、過去の審判決例(甲7)を見ても明らかであるので、これに従って、以下両者の外観を比較する。
(ア)本件商標と引用商標は、いずれも前述のとおり「二つの三角形をその頂点が重なり合うように上下に反転して配置した図形」と「その周囲を囲むように配置された円図形」からなり、共通する図形要素のみから構成されるものであって、両者の差異は図形を構成する線の太さの微差にすぎない。この点、同様の要素からなる図形又は構成が似通った図形がその業界において多数採用されている等の特段の事情があれば、対比する図形同士の差異が微差であっても、両者を異なるものとして認識することが可能であると考える余地はあるが、申立人が調査してみた限りにおいて、構成の一部において共通点が見られる登録例は存在するものの(甲8?甲10)、本件で問題となる「小売等役務」の業界において、本件商標と引用商標と同様の構成からなる図形及びこれと似通った要素からなる図形が登録されている例は発見されなかった。そのため、引用商標については、幾何図形ではあっても、小売等役務の業界において、全体として他とは異なった特徴を備えた識別力の高い図形であると認められる。
このような業界における商標登録(商標の採択)の実情をもふまえて判断するのであれば、商標の構成を細部にわたるまで正確に把握したうえで比較するとは限られない離隔的観察に際して、前記のとおりの「二つの三角形をその頂点が重なり合うように上下に反転して配置した図形」と「その周囲を囲むように配置された円図形」から構成される図形という、明確な特徴に着目して両者を看取するものと考えられるところであるから、構成する線の太さの微差により、両者を非類似の商標として識別するとは到底考えられず、両者の印象は極めて近似するものであり、出所の混同のおそれのある相互に類似する商標であると考えるのが普通である。
また、本件商標及び引用商標共に、その指定役務は小売等役務に係るものであり、特に引用商標の指定役務は、食料品やいわゆる日用品の類に属する商品に係るものである。これら役務に関して、その需要者・取引者が特別な注意を払って、商品を選択したり、役務の提供を受けるといった事情も見受けられないことからすれば、なおのこと、時と場合を異にして観察した場合に、これらを明らかに別の商標と認識するとは到底考えられない。
(イ)本件商標と引用商標とは図形要素のみからなる商標であり、外観において明らかに類似する商標であるため、称呼及び観念については比較するまでもないが念のため触れておく。
この点、称呼・観念については、本件商標と引用商標はいずれも、いわゆる幾何図形であり、通常であれば特段の称呼及び観念を生ずるとは考えられない。しかし、前述のとおり、引用商標は、百貨店「そごう」の目印として広く知られているものであることから、その指定役務との関係をもふまえて考えれば、「マルチキリ(マルニチキリ)」の称呼を生ずる場合があり、「申立人の運営に係る周知・著名な百貨店『そごう』の目印として広く知られた図形」程度の観念を生じるものである。一方で、本件商標は、引用商標と商標の構成要素を同じくし、線の太さが異なるにすぎないものであることからすると、同様の称呼や観念を想起させ、混同が生ずる場合もあると考えられる。
なお、参考までに、「Yahoo!画像検索」において、「まるちきり」と検索してみると、申立人に関連する画像が多数ヒットする(甲9)。この点からみても、当該図形から、「マルチキリ」という称呼や「申立人の運営する百貨店『そごう』」の観念が生ずる、又は、本件商標に接する取引者・需要者が引用商標を想起することの一定の裏付けになると考えられる。
エ その他
前述のとおり、引用商標は縦糸を巻く織機の付属具「ちきり」の形をもとに創作されたものであり、これを申立人の前身が自己の目印として使用することを採択した商標であって、以来長きにわたり、継続して百貨店の目印として使用され、識別力を発揮してきた。以来、申立人(前身を含む。)を除き、小売等役務の業界においてこれに類似する商標を登録して使用するものは他には存在していなかったにも関わらず、今になって線の太さの微差にすぎない本件商標を非類似商標とするような判断は、申立人が長年にわたる営業及び宣伝広告活動を通じて築き上げた信用及び商標の財産的価値をいとも簡単に毀損するものであり、いかなる理由から、本件商標と引用商標を非類似商標として併存登録したのか、その理由は全く想像が及ばないところである。
仮にこのような判断がまかり通るのであれば、商標権を有する権利者は、自社の権利範囲が知らぬ間に狭められていくことに常におびえながら営業を継続せねばならず、また、そのリスクを回避する為には、本件のような類の幾何図形からなる商標であれば、使いもしない線の太さ違いの図形を一定間隔で数多く所有し、ハウスマークを防衛するために膨大な費用をかけなければならないということになり、非常に不合理である。商標権の効力はその類似範囲にまで及ぶと規定されており(商標法第37条)、その理由は、工業所有権逐条解説によれば、「・・・工業所有権は侵害がおこなわれやすく、その中でも特に商標権は侵害されやすいために、登録商標に化体された信用の喪失を招きやすいうえその回復が容易でない事・・・」等とされている点や、そもそも商標法の目的に、「商標を使用する者の業務上の信用の維持」「需要者の利益を保護すること」等が挙げられている事に鑑みれば、商標権者の権利を軽んじ、取引者・需要者の混同をわざわざ引き起こすような類の登録は到底認められるべきではない。
なお、インターネットにおいて類似画像を検索することができるサイト「Google画像検索」を用いて本件商標を検索してみると、その検索結果のトップページに、申立人に関する記載がみられるところである(甲10)。この点からみても、本件商標に接する需要者が混同を生ずる可能性があることは、十分に予想がつくところである。
オ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは構成する線の太さの差異にすぎない、外観において類似する商標であり、その指定役務も同一・類似である。さらに引用商標は本件商標に対し先願先登録となっている。そのため、引用商標の周知著名性に基づく称呼及び観念を考慮するまでもなく、両者は出所の混同のおそれのある類似商標である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
申立人は、株式会社セブン&アイ・ホールディングスを持株会社とする、日本有数の大手流通グループの一員であり、百貨店「そごう(SOGO)」「西武」等の運営を行っている(甲11)。
また、その歴史をたどると、株式会社そごう・西武は、株式会社そごう、株式会社西武百貨店、及びその関係会社である株式会社ミレニアムリテイリングが合併し、形成された企業であり、その合併前、百貨店の「そごう(SOGO)」は、店舗毎の地名を冠した、店舗毎の株式会社(例えば、株式会社横浜そごう)等のもとで運営が行われてきた(甲3)。
さらに、この「そごう」という名称は、天保元年に初代十合伊兵衛が、創業の礎となる大和屋を開業し、その後明治時代に「十合呉服店」の名称が使用されてから、脈々とうけつがれてきたものであり、「株式会社十合呉服店」「株式会社十合」「株式会社そごう」等幾度かの変更を経てきてはいるが、「そごう(古くは十合)」という名称は、日本有数の百貨店の名称として、また、その運営会社の名称として使用されてきている。
この間、その目印として使用されてきた商標が、引用商標に表されたいわゆる「まるちきり(まるにちきり)の図形」であって、例えば、ウェブサイト(甲12)、店舗壁面サイン(甲5)、チラシ(甲13)等において長年にわたり使用されてきている。なお、その使用開始時期については、「株式会社そごう社史」(甲4)等からもわかるとおり、「大和屋」(天保元年創業)には引用商標の使用が認められ、その後「十合呉服店」(明治10年)から盛んに使用されるようになり現在に至っている。
なお、その権利の登録については、過去をさかのぼってみると、既に昭和27年にはその出願の形跡がみられ(甲14)、現在も複数の商標を所有していることからみても、申立人が長年にわたり所有し、使用してきたものであることがわかる。
前記のように、申立人は合併等の組織変更を経てきてはいるか、長年にわたり百貨店の運営を行ってきている。この申立人運営店舗を含む「百貨店」という業態が、これまでの我が国の小売業界において果たしてきた役割は非常に大きく、特に、大手百貨店と呼ばれる店舗群については、前述のとおり詳細を立証するまでもなく、広く我が国において知られているものと考えられる。これら大手百貨店としては、例えば「そごう」、「西武」のほか、「大丸」、「松坂屋」、「伊勢丹」、「三越」、「高島屋」、「阪急」等が挙げられるところであるが、これらについては、常に景気動向に係るニュース等において、「大手百貨店5社」又は「大手百貨店4社」等としてとりあげられており(甲15、甲16)、この事実だけをみても、大手百貨店に属する店舗の名称が我が国において広く知られた存在であることが明らかである。なお、申立人並びにその運営店舗である「そごう」及び「西武」が、売上高において上位5社に含まれていることを示すため、百貨店業界の売上高ランキング掲載したウェブサイトの記事を提出する(甲17)が、その表記上、「セブン&アイ・ホールディングス」となっている理由は既に述べたとおりである。
また、一般社団法人日本国際知的財産保護協会が、2004年に発行した、日本著名商標集において、小売等役務の登録が認められる前であったことから、商品の区分にはなっているものの、著名商標として引用商標と同一の図形商標が掲載されている(甲18)。
以上のような事情からみれば、子細な証明を行わずとも、いわゆる大手百貨店といわれる店舗群が周知・著名でないとする事情は見当たらず、その百貨店の目印として長年にわたり使用されているいわゆる「まるちきりの図形」も、申立人の経営する百貨店の店舗名称を表すものとして著名なものであると容易に認識できるものと確信する。
以上からすれば、周知・著名な百貨店の目印として長年にわたり使用されてきた「まるちきりの図形」と構成を同じくし、線の太さの微差にすぎない本件商標をその指定役務である「小売等役務」に使用すると、申立人の業務に係る役務又は申立人と何らかの関係があるものの業務に係る役務であるかの如くその役務の提供主体に混同を生じるおそれがあるといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、申立人(前身を含む。)は引用商標を明治以前から使用し、かつ百貨店について大正時代から現在まで継続して使用していること(甲3、甲4)、申立人は「西武」及び「そごう」の2つの百貨店を運営し、平成29年12月末現在の店舗数は前者が10店舗、後者が7店舗であること(甲11)、両百貨店は「そごう・西武」として平成28年7月及び8月に「大手百貨店4社」及び「大手百貨店5社」に含められ紹介されていること(甲15、甲16)、引用商標は百貨店「そごう」の商標として「SOGO」の文字と共に、その店舗の外壁面、ウェブページ、チラシなどに使用されていること(甲3、甲5、甲12、甲13)が認められる。
イ 上記アの事実からすれば、引用商標は、本件商標の登録出願の日(平成28年10月18日)前から登録査定日はもとより現在まで継続して、申立人が百貨店「そごう」について使用する商標として、すなわち、申立人の業務に係る役務(いわゆる「総合小売り」)を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と判断するのが相当である。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標は、別掲1のとおり、頂点が重なり合うように上下に反転した二つの三角形を円に内接するように表した構成からなり、全体として線図(幾何図形)の一種を表したものと認識させるものであって、特定の称呼及び観念を生じないものである。
イ 引用商標は、別掲2のとおり、太線で描いた丸の中に縦長長方形の左右の辺を逆「く」の字と「く」の字状にくぼませた鼓のような図形(輪鼓(りゅうご))を黒塗りで表し、その上下に小さな略三角形を白抜きして表した構成からなり、全体として家紋の一種を表したものと認識させるものであって、特定の称呼を生じないものである。
そして、引用商標は、上記(1)のとおり百貨店「そごう」の商標として需要者の間に広く認識されているものであることから、「(百貨店)そごうのマーク」の観念を生じるものといえる。
ウ そこで、本件商標と引用商標の類否を検討すると、両商標の外観は上記ア及びイのとおり、前者は線図(幾何図形)の一種を表したものと認識させるのに対し、後者は家紋の一種を表したものと認識させるものであるから、両者は、外観全体から受ける視覚的印象が明らかに異なり、両者を離隔的に観察しても、相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
そして、上記ア及びイのとおり、本件商標は特定の称呼及び観念を生じず、また、引用商標は特定の称呼を生じず、「(百貨店)そごうのマーク」の観念を生じるものであるから、両商標は、称呼及び観念においても相紛れるおそれのないものである。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標といわなければならない。
その他、両商標が類似するというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であるが、本件商標は、上記(2)のとおり、引用商標と外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
そうすると、引用商標が、申立人の業務に係る役務を表示するものとして本件商標の登録出願の日前から、需要者の間に広く認識されているとしても、本件商標は、これに接する取引者、需要者が引用商標を連想又は想起するものということはできない。
してみれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)申立人の主張について
申立人は、本件商標と引用商標は「二つの三角形をその頂点が重なり合うように上下に反転して配置した図形」と「その周囲を囲むように配置された円図形」の共通する図形要素のみから構成され、両者の差異は図形を構成する線の太さの微差にすぎないから、両者は、外観上類似し、また、いずれも「マルチキリ」の称呼、「申立人の運営する百貨店『そごう』」の観念が生じるから、称呼及び観念においても類似するものであり、かつ、本件商標は出所の混同を生じる旨主張している。
しかしながら、本件商標は、申立人が主張する図形要素からなるものということはできるものの、引用商標には「頂点が重なり合うように上下に反転した二つの三角形」を見いだすことはできないから、図形要素が共通するということはできない。また、本件商標と引用商標は、両者の線の太さに違いにより、前者が線図(幾何図形)の一種を表したものと、後者が家紋の一種を表したものと認識させ、両者の外観全体から受ける視覚的印象が明らかに異なるものとなり、両者を離隔的に観察しても、相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
さらに、本件商標と引用商標から「マルチキリ」の称呼が生じる、及び本件商標から「申立人の運営する百貨店『そごう』」の観念が生じると認め得る証左は、いずれも見いだせない。
したがって、申立人のかかる主張は採用できない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)

別掲2(引用商標)

異議決定日 2018-05-01 
出願番号 商願2016-114558(T2016-114558) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W35)
T 1 651・ 261- Y (W35)
T 1 651・ 262- Y (W35)
T 1 651・ 263- Y (W35)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 松江 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 小俣 克巳
冨澤 美加
登録日 2017-10-20 
登録番号 商標登録第5989326号(T5989326) 
権利者 五洲薬品株式会社
代理人 鈴木 一永 
代理人 三井 直人 
代理人 涌井 謙一 
代理人 山本 典弘 
代理人 工藤 貴宏 

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