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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W29303233
審判 一部申立て  登録を維持 W29303233
審判 一部申立て  登録を維持 W29303233
審判 一部申立て  登録を維持 W29303233
管理番号 1340378 
異議申立番号 異議2017-900290 
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-09-27 
確定日 2018-05-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第5961676号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5961676号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5961676号商標(以下「本件商標」という。)は,「MONST+」の文字を標準文字で表してなり,平成28年11月28日に登録出願,同29年5月26日に登録査定され,第29類「マーガリン,その他の食用油脂,コーヒー入り乳飲料,牛乳,ヨーグルト,その他の乳製品,加工野菜,加工果実,豆乳,豆腐,納豆,即席シチュー,即席カレー,その他のカレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,保存加工をした豆類,その他の豆」,第30類「茶,コーヒー,ココア,洋菓子,かりんとう,氷砂糖(菓子),せんべい,だんご,パン,サンドイッチ,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,まんじゅう(菓子),いもを使用したスナック菓子,えびを主原料とするスナック菓子,さつまいもを使用したスナック菓子,とうもろこしを主原料とするスナック菓子,チョコレートを使用したスナック菓子,その他のスナック菓子,その他の菓子,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,穀物の加工品・穀物(未加工のものを除く。)・食用粉類,ぎょうざ,しゅうまい,すし,弁当,ラビオリ,ドーナツのもと,プリンのもと,ホットケーキのもと,その他の即席菓子のもと」,第32類「ビール,アイソトニック飲料,ガラナ飲料,シロップ,コーラ飲料,サイダー,シャーベット水,ジンジャーエール,清涼飲料のもと,炭酸水,ミネラルウォーター,その他の清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」及び第33類「泡盛,合成清酒,焼酎,白酒,清酒,直し,みりん,ウイスキー,ウォッカ,ジン,ブランデー,ラム,リキュール,その他の洋酒,果実酒,果実のエキス(アルコール分を含むもの),中国酒,はちみつ酒,その他の薬味酒」,並びに第9類,第14類,第16類,第18類,第20類,第21類,第24類ないし第26類,第28類及び第34類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同年7月7日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は,以下の6件の登録商標であり,いずれも現に有効に存続しているものである(以下,これらの商標をまとめていうときは「引用商標」という。)。
1 登録第5379390号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:「MONSTER」(標準文字)
登録出願日:平成22年7月8日
設定登録日:平成22年12月24日
指定商品:第32類「アルコール分を含まない飲料,清涼飲料,果実飲料」
2 登録第5057229号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲1のとおり
登録出願日:平成18年6月9日
設定登録日:平成19年6月22日
指定商品:第32類「エネルギー補給用清涼飲料,スポーツ用清涼飲料,その他の清涼飲料,果実飲料,エネルギー補給用のアルコール分を含有しない飲料,スポーツ用のアルコール分を含有しない飲料,ビール風味の麦芽を主体とするアルコール分を含有しない飲料,その他のアルコール分を含有しない飲料」
3 登録第5393681号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:「MONSTER ENERGY」(標準文字)
登録出願日:平成22年7月8日
設定登録日:平成23年2月25日
指定商品:第32類「アルコール分を含まない飲料,清涼飲料,果実飲料」
4 登録第5769176号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:「MONSTER ENERGY ABSOLUTELY ZERO」(標準文字)
登録出願日:平成27年1月14日
設定登録日:平成27年6月5日
指定商品:第5類「液状の栄養補給剤,その他の栄養補給剤,その他の薬剤,液状のサプリメント,その他のサプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,乳幼児用飲料,乳幼児用食品」
第32類「アルコール分を含有しない飲料」
5 登録第5715016号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:「MONSTER ENERGY ULTRA」(標準文字)
登録出願日:平成26年8月11日
設定登録日:平成26年10月31日
指定商品:第5類「液状の栄養補給剤,その他の栄養補給剤,その他の薬剤,液状のサプリメント,その他のサプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,乳幼児用飲料,乳幼児用食品」
第32類「アルコール分を含有しない飲料」
6 登録第5844163号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成27年8月11日
設定登録日:平成28年4月22日
指定商品:第32類「アルコール分を含有しない、果汁を含む飲料」

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,その指定商品中,第29類,第30類,第32類及び第33類の「全指定商品」について(以下「本件申立商品」という。),商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第313号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 申立人の使用に係る商標「MONSTER」(以下「申立人商標」という。)の著名性
(1)申立人による商標の使用
申立人は,1930年代に創業した米国の飲料メーカーであり,2002年にエナジードリンクの新ブランド「MONSTER ENERGY」(引用商標3)を創設し,米国で同年3月から広告宣伝を開始し,同年4月から製造販売を開始した(甲4,7,18,58)。
申立人の「MONSTER ENERGY」ブランドの各種エナジードリンク製品には,従来の清涼飲料製品の容器とは異なる黒色ベースのボトル缶にモンスター(MONSTER)の爪を形取ったロゴマーク(引用商標2の図形部分。以下「爪の図柄」という。)と独特のロゴデザインの太字で大きく顕著に「MONSTER」(引用商標1)の文字を表示してなり,野性味あふれる独特な雰囲気が経済・ビジネス界でも注目を浴び(甲56?58),男性若者層を中心にたちまち人気商品となった。
申立人の「MONSTER ENERGY」ブランドの各種エナジードリンクには,「MONSTER」の文字を基調とする様々な商標(例えば引用商標4ないし6)が製品名として使用されており,特徴的なロゴデザインの太字で,缶の正面中央に「MONSTER」の文字が顕著に表示されている(以下,申立人のエナジードリンクを「『MONSTER』エナジードリンク」といい,「MONSTER」の文字を基調とする商標を総称して「『MONSTER』ファミリー商標」という。)。
(2)広告・マーケティング及び販売促進活動
申立人は,2002年から現在まで,全世界における「MONSTER」エナジードリンクに関する広告,マーケティング及び販売促進活動費として総額30億米ドルを超える費用を支出した(甲58)。その販売促進活動の内容は,世界の有名アスリート・レーシングチーム及び競技会,アマチュア選手,音楽祭及びミュージシャン,米国ラスベガスの公共機関モノレールに対する支援活動(スポンサー提供),並びに販売店用什器及び備品の供給である(甲58)。そこでは,看板やユニフォーム,備品,ビデオクリップなどに,特徴的なデザインの文字で表示した「MONSTER」の文字を組み合わせたロゴマークが表示されている。
このようなMONSTERブランドマークを用いた世界の著名アスリート及びチームに対するスポンサー活動は,申立人自らが発信する情報のみならず,スポンサー提供を受けるアスリートたちが運営するホームページやブログ,有名経済ビジネス誌,一般の報道ニュース,スポーツファンのホームページなどを通じて,日本国内の一般消費者にも発信,紹介されている(甲34?45,52,53,56,57)。
(3)日本国内の販売実績,広告・マーケティング及び販売促進活動
日本国内では「MONSTER ENERGY」ブランドのエナジードリンクの販売は,アサヒ飲料株式会社を通じてなされており,2012年5月8日から,2種類のエナジードリンク「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」の販売が開始された(甲5?7,12,14,58)。
当該商品は,その発売直後から日本国内でもたちまち人気商品となり,2012年9月時点で既に年間売上目標の100万箱を突破し(甲8,65?67),その後も好調に売上を伸ばして157万箱の売上を記録した(甲9,65?67)。
さらに,次々に新製品が発売され,「MONSTER ENERGY」,「MONSTER KHAOS」,「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」,「MONSTER ENERGY M3」,「MONSTER COFFEE」及び「MONSTER ENERGY ULTRA」などのエナジードリンクが国内で流通している(甲5?7,10,12?15,59?62,101?103,118)。
これらの商品は,日本全国のコンビニエンスストア,自動販売機,キオスク,スーパーマーケット,列車の売店,会員制スーパー,店舗,ゲームセンター,ドラッグストア及びホームセンター等のほか,通販サイトからも直接購入可能である(甲11?17,58,61,62,72,131,264)。
2012年5月の販売開始から2015年6月30日までに,申立人は国内で約2億3,600万缶の「MONSTER」エナジードリンクを販売した。上記期間の総販売額は1億7,500万米ドル以上,日本円で170億円以上である(甲58)。
また,国内発売直後から継続的にテレビコマーシャル放映,日本開催の多数のスポーツイベント等へのスポンサー提供,サンプル配布などを含む大々的な宣伝広告活動が実施されている(甲58)。
(4)全世界の販売国・地域及び販売額
申立人は,現在までに全世界100以上の国及び地域で「MONSTER」ファミリー商標を使用した「MONSTER」エナジードリンクを販売し,又は販売中である。
「MONSTER」エナジードリンクは,2002年(平成14年)に米国で販売開始以来,130億缶以上販売し,世界中で毎年30億缶以上を売上げ,全世界で総額240億米ドルを超える収益を上げており,全世界での小売販売額は毎年60億米ドルを超え,申立人の全売上額の92%以上を占める(甲58)。申立人の年間総販売額は,23.7億米ドル(2012年度),25.9億米ドル(2013年度),28.3億米ドル(2014年度)で,エナジードリンクの売上げは,年間総純売上に対して,それぞれ95.4%,95.6%,96.1%を占める。
申立人の「MONSTER ENERGY」ブランドは,販売量において,米国で最も売れ,また世界第2位のエナジードリンクである。申立人のエナジードリンクは,現在米国におけるエナジードリンク市場の36.8%のシェアを占め,その販売量において全世界で最も高成長を遂げた主要ブランドの地位を維持している。
(5)アパレル製品,ビデオゲーム製品等の販売
2002年から現在まで,申立人の許諾の下,MONSTERブランドマークを付したアパレル製品等が,多数のライセンシーにより製造,販売されており,一般消費者の高い人気を獲得している。当該ライセンス商品は,現在,日本及びアジア全域,オーストラリア,米国,カナダ,中央アメリカ,南米,ヨーロッパ,アイスランド,スカンジナビア及びメキシコを含む世界各地で販売中である(甲58)。MONSTERブランドマークが付された被服,運動用特殊衣服,運動用ヘルメット,ステッカー,リュックサック等は,日本国内でも人気の高い商品であり,インターネットの通信販売業者により日本国内でも輸入販売されている(甲47,48)。
また,申立人は,ビデオゲーム制作販売会社と提携関係を結んだ販売促進活動も展開しており,MONSTERブランドマークは,ビデオゲーム製品の中で使用されている(甲58)。
(6)その他,申立人は,経済界等からの数々の表彰を受けるとともに,ウェブサイト及びソーシャルメディアによる情報発信,商標登録によるブランド保護,国内における申立人商標のライセンス商品の販売や模倣品の水際取締り,スポーツイベント等やプロモーションキャンペーン等も行っている。
(7)営業及び広告における「MONSTER」の文字の使用
「MONSTER」ライセンス商品には,「MONSTER」又は「Monster」の文字を表示して販売及び宣伝広告がなされている。
加えて,申立人による営業及び販売促進活動全般において,申立人又は「MONSTER」エナジードリンク等の商品表示のため,「MONSTER」及びその表音である「モンスター」の文字が単独で繰り返し用いられている。
(8)以上の事実に照らせば,申立人商標は,申立人の業務に係る商品及び役務を表示する出所識別標識として,本件商標の登録出願日前より,本国米国を始めとする外国で広く認識されていたものであり,また,本件商標の登録出願時及び登録査定時には,日本国内の取引者及び需要者においても,申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして広く認識されていたことが明らかである。
2 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)商標の比較
ア 本件商標は,「MONST+」の文字を横書きしてなるところ,「MONST」の英文字の後に「+」の記号を付加してなるもので,その構成文字は,英文字及び記号という異なる種類の文字を用いてなるため,視覚的な連続性を欠く。また,全体として成語ではなく,既存の意味及び観念を有しないから,観念上も不可分一体のものとはいえない。そのため,本件商標は,構成全体が必ずしも常に一体の出所識別標識として認識,理解されるものとはいえず,冒頭の「MONST」の文字部分が独立の出所識別標識として機能し得るものである。
イ 引用商標1は,「MONSTER」の文字を横書きしてなるもので,本件商標と「MONST」の5文字を共通にする。
引用商標2は,「MONSTER」の頭文字の「M」の欧文字を基調としてデザインされた爪の図柄を最上段に表示し,その下に,特徴的なデザイン文字の太字で大きく表記した「MONSTER」の文字を上段に,通常の活字体の細字で小さく表記した「ENERGY」の文字を下段に表示してなるものであるところ,本件商標と「MONST」の5文字を共通にする。なお,上記構成中の「MONSTER」の文字は,爪の図柄及び「ENERGY」の文字部分から物理的に分離,独立した位置に配置され,かつ,「ENERGY」の文字部分とは視覚的に一見して明らかに異なるデザインの書体及び圧倒的に大きなサイズの文字を用いて顕著に書され,独立して見る者の注意をひくように表示されていることから,取引者及び需要者に対して,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与え,独立の自他商品識別標識として機能を果たすことが明らかである。
引用商標3ないし6は,いずれも構成中に「MONSTER」の文字を含むところ,本件商標と「MONST」の5文字を共通にする。
申立人商標及び「爪の図柄とMONSTER ENERGY」のロゴマーク(引用商標2)は,「MONSTER」エナジードリンクを始め,申立人の支援するモータースポーツに関連するステッカー,運動用ヘルメット,ユニフォームなどに顕著に表示されており,引用商標3ないし6も,構成中に「MONSTER」の文字を含む「MONSTER」ファミリー商標であり,「MONSTER」エナジードリンクの個別製品名として現在まで継続的に使用されている。
ウ 本件商標の「MONST」の文字部分と申立人商標「MONSTER」を比較すると,冒頭の「MONST」の5文字の配列が一致し,外観が類似する。さらに,「MONST」から生じる「モンスト」の称呼と,「MONSTER」から生じる「モンスター」の称呼は,冒頭の3音の配列が一致し,第4音が「ト」と「タ」という近似音であり,第4音は明瞭に発音されず聞き取り難いから,全体を一連に発音した場合は,語韻,語調が近似し,聞き誤るおそれが高いもので,称呼も類似する。したがって,本願商標は,申立人商標と類似のものである。
前述のとおり,引用商標1は「MONSTER」の文字から構成され,引用商標2は構成中の「MONSTER」の文字が独立の商品出所識別標識として認識,理解されるから,本件商標はこれら引用商標と類似する。
(2)商品の比較
本件商標の指定商品中,第32類「アイソトニック飲料,ガラナ飲料,シロップ,コーラ飲料,サイダー,シャーベット水,ジンジャーエール,清涼飲料のもと,炭酸水,ミネラルウォーター,その他の清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」は,引用商標1の指定商品中,第32類「アルコール分を含まない飲料,清涼飲料,果実飲料」,及び引用商標2の指定商品中,第32類「エネルギー補給用清涼飲料,スポーツ用清涼飲料,その他の清涼飲料,果実飲料,エネルギー補給用のアルコール分を含有しない飲料,スポーツ用のアルコール分を含有しない飲料,ビール風味の麦芽を主体とするアルコール分を含有しない飲料,その他のアルコール分を含有しない飲料」は同一又は類似のものである。
(3)小括
本件商標は,引用商標より後に登録出願されたものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標の指定商品中,第32類の商品は,清涼飲料,果実飲料等のアルコール分を含有しない飲料及びアルコール度数の低い飲料(ビール)を主な内容とするものであり,アイソトニック飲料といういわゆるスポーツドリンクも指定されている。これらの飲料製品は,申立人商品であるエナジードリンクと同一又は類似のものである。さらに,これらの飲料製品は,一般に,気分転換,リフレッシュ,水分補給として,食事中の「飲み物」として,あるいは,運動中や運動後の水分及び栄養補給として摂取されることが多い点,店舗の食料品売り場,自動販売機,駅売店などで販売される点,最終的な需要者が一般消費者である点で,エナジードリンクと極めて関連性の強い商品である。
本件商標の指定商品中,第29類及び第30類の商品は,一般消費者がスーパー,食料品店,コンビニなどで日常的に購入する飲料製品及び加工食品である。こうした商品は,一般に,軽食,スナック,おやつ,デザートなどの用途で購入,消費されるものが大半であり,「MONSTER」エナジードリンクと同一店舗内の近接する売場で販売され,消費者が同時に購入又は消費することが多い。
本件商標の指定商品中,第33類の商品は,飲料製品である点,果汁又はそのエキスあるいはその香料を原材料として使用する点,精神的又は肉体的な疲労回復,ストレス解消,リラックス効果を得る目的で摂取されることが多い点,店舗の食料品売り場,自動販売機,駅売店などで販売される点,最終的な需要者が一般消費者である点で,「MONSTER」エナジードリンクと数多くの共通点を有し,原材料,用途,効能,販売場所,需要者の範囲が一致ないし重複し,互いに密接な関連性を有する。
したがって,本件申立商品は,申立人が引用商標を,2002年(国内では2012年)から継続的に使用しているエナジードリンクと同一又は類似の商品を含むものであり,また,その使用目的,効能,原材料が共通することが多く,主な販売場所も同じであり,需要者の範囲も一致ないし重複するなど,極めて関連性が強い商品である。
(2)本件商標権者の開設しているウェブサイトには,「モンスターストライク(モンスト)公式サイト」,「モンスターストライク〈モンスト〉とは」,「モンストニュース」などの表記があることに照らせば(甲313),本件商標の構成中の「MONST」の文字部分は,「モンスターストライク」(MOMNSTER STRIKE)の構成語の「モンスター」(MONSTER)と「ストライク」(STRIKE)の語頭の文字を結合した略称「モンスト」の英文字表記であると容易に看取される。
「モンスター」は,外来語「モンスター(monster)」として,「ストライク」は外来語「ストライク(strike)」として,それぞれ国民一般に広く親しまれている語であるが(甲308?311),「モンスターストライク」(MOSNTER STRIKE)は成語ではなく,既成の熟語的な意味,観念を有するものではない。また,これより生じる称呼「モンスターストライク」は,全体が10音からなり,一気一連に容易に発音できる程度に短いものではないため,「モンスターストライク」(MONSTER STRIKE)においては,一般に看者の注意,関心を最も強く引きつける語頭の「モンスター」(MONSTER)が出所識別標識として取引者,需要者を強く印象付け,記憶にとどまりやすい。
このように,本件商標の構成中,独立した出所識別標識として機能し得る「MONST」の文字部分は,申立人の使用に係る「MONSTER」と外観及び称呼が類似するものであることに加えて,「モンスター」(MONSTER)と「ストライク」(STRIKE)の語を結語させた語の略称「モンスト」の英文字表記と看取されることを斟酌すれば,本件商標に接する取引者及び需要者は,冒頭の「MONST」の文字部分に基づいて,外来語として広く親しまれている「モンスター」(MONSTER)の語及び「モンスター」の観念を直感する。
したがって,本件商標は,申立人の使用に係る「MOSNTER」と類似性の程度が極めて高い。
(3)本件商標の指定商品の最終的な需要者は一般消費者であるから,通常の需要者の注意力の程度は高いものとはいえない。
(4)上記1のとおり,「MONSTER」及びその音訳「モンスター」は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時には,取引者,需要者の間で広く認識されていた。
(5)以上の事柄を総合すれば,本件商標がその指定商品に使用された場合,これに接する取引者,需要者は,引用商標,あるいは,申立人を直感し,当該商品が申立人又は申立人と経済的又は組織的関係を有する者の取り扱いに係るものと誤信し,その出所について混同を生じるおそれがある。
また,申立人商標と類似性が高い本件商標が,申立人と何ら経済的又は組織的な関係を有さない本件商標権者によって,エナジードリンクとの類似性,関連性が強い本件商標の指定商品に使用された場合,申立人による継続的使用と営業努力によって広く認識されるに至った申立人商標の強力な出所表示力が希釈化するおそれがあり,申立人が獲得した信用力,顧客吸引力にフリーライドする行為である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 当審の判断
1 申立人商標の周知性について
(1)証拠及び申立人の主張によれば,以下の事実が認められる。
ア 申立人であるモンスター エナジー カンパニー(Monster Energy Company)は,元々は1930年代に創業した米国の飲料メーカーであり,2002年にエナジードリンクの新ブランド「MONSTER ENERGY」を創設し,米国において発売開始した(甲7)。
イ 申立人のエナジードリンク(以下「申立人商品」という。)は,日本においては,2012年5月8日から,「Monster Energy」(モンスターエナジー)及び「Monster KHAOS」(モンスターカオス)が発売開始され(甲7,8),その後,2013年5月7日から「モンスター アブソリュートリー ゼロ」(甲10),2014年8月19日から「モンスターエナジー M3」(甲59),同年10月7日から「モンスターコーヒー」(甲60),2015年7月21日から「モンスター ウルトラ」(甲101)が発売されている。
ウ アサヒ飲料株式会社のニュースリリースによれば,申立人商品の発売及び販売と関連して,「アサヒ飲料 国内独占販売権取得!・・・『Monster Energy(モンスターエナジー)缶355ml』『Monster KHAOS(モンスターカオス)缶355ml』・・・アサヒ飲料株式会社(本社 東京,・・・)は・・・エナジードリンク『モンスターエナジー』ブランドの日本国内における独占販売権を取得しました。」(甲7),「・・・5月8日(火)から新発売したエナジードリンク『モンスターエナジー』ブランドの販売が好調・・・」(甲8),「・・・『モンスター アブソリュートリー ゼロ 缶355ml』・・・本商品は・・・『モンスターエナジー』ブランドの中でも,2番目に人気のあるカテゴリー,ダイエット系エナジーです。・・・」(甲10),「2013年度の『モンスターエナジー』ブランドの販売数量は大変好調であり,『モンスターエナジー』,『モンスターカオス』,『モンスターアブソリュートリーゼロ』の3品で前年比150%となる237万箱を販売し・・・」(甲59),「『モンスターエナジー』ブランドの販売は大変好調に推移しています。・・・本年は・・・『モンスターエナジーM3』,『モンスターコーヒー』をラインナップに追加・・・」(甲60),「『モンスターウルトラ』をラインアップに加えることにより,・・・更に『モンスターエナジー』ブランドの強化を図ってまいります。」(甲101)の記載がある。
エ 申立人商品の容器の側面には,以下のような表示がある。
(ア)「Monster Energy(モンスターエナジー)缶355ml」の容器下部には,「MONSTER」の文字(「O」の文字を貫く縦線が描かれている。以下同じ。),その下には「ENERGY」の文字が表されている(甲14,17)。
(イ)発売当初の「Monster KHAOS(モンスターカオス)缶355ml」の容器下部には,「MONSTER」の文字,その下には「KHAOS」の文字,さらにその下には「ENERGY」及び「+果汁」の文字が表されている(甲14,17)。そして,2016年にリニューアル発売された同商品の容器には,上部に「KHAOS」の文字,その下に爪の図柄の図形を配し,下部に「MONSTER」の文字,その下に「ENERGY」の文字が表されている(甲130)。
(ウ)「モンスター アブソリュートリー ゼロ 缶355ml」の容器下部には,「MONSTER」の文字,その下には「ENERGY」の文字,さらにその下には「ABSOLUTELY ZERO」の文字が表されている(甲13)。
(エ)「モンスターエナジー M3 ワンウェイびん150ml」の容器下部には,「MONSTER」の文字,その下には「ENERGY」の文字,さらにその下には「M-3 SUPER CONCENTRATE」又は「EXTRA STRENGTH」の文字が表されている(甲61,129)。
(オ)「モンスターコーヒー 缶250g」の容器下部には,「COFFEE」の文字,その下には「MONSTER」の文字,さらにその下には「COFFEE」,「+」及び「ENERGY」の文字が表されている(甲62)。
(カ)「モンスターウルトラ 缶355ml」の容器下部には,「MONSTER」の文字,その下には「ENERGY」の文字,さらにその下には「ULTRA」の文字が表されている(甲101)。
オ 申立人商品の販売促進キャンペーン広告中の宣伝文句の中で,申立人商品の写真とともに,「モンスターを飲んで,Tスタンプを貯めてSATANIC CARNIVALに行こう!」(甲63),「モンスターを飲んで,Tスタンプを貯めてMOTOGP日本グランプリでロッシに会おう!」(甲64,69,71),「モンスターの対象商品を2本ご購入につき,くじ付きステッカーをプレゼント!」(甲79),「本場アメリカで大ヒットの『白いモンスター』日本上陸!/『モンスター ウルトラ 缶355ml』7月21日(火)新発売」(甲101),「すっきりなのにヤバイ,白いモンスター登場・・・誰よりも早くモンスターウルトラをゲットしろ!」(甲118),「モンスターを買って・・・ギアを当てろ!」(甲113,132),「モンスターを買って/UFC日本大会を観に行こう!」(甲162)などの表示をしている。
カ 申立人商品の広告,マーケティング及び販売促進活動と関連して,WRCのチーム名を「MONSTER WORLD RALLY TEAM」(モンスターワールドラリーチーム)(甲42の1?3),ロックバンドを「モンスターバンド」(甲120,235,240),MOTOGPライダー又は鈴鹿8時間耐久ロードレースのライダーを「モンスターライダー」又は「モンスター契約ライダー」(甲168,238,245,247),プロサーファー,スノーボーダー又はスケートボーダーを「モンスターアスリート」又は「モンスター契約アスリート」(甲229,235),申立人商品の販売促進品を「モンスターグッズ」(甲232,242,244)又は「モンスターギア」(甲236)などと指称している。
キ 申立人商品は,日本において,2012年5月の発売開始以降,2012年末までの約8か月で157万箱販売された(甲9)。
ク 申立人の最高経営責任者の宣誓供述書(甲58)によれば,申立人商品は,日本において,2012年5月の販売開始から2015年6月30日までの約3年間で,約2億3600万缶の販売,総販売額は1億7500万米ドル以上,日本円で170億円以上であるとされる。
ケ 当該供述書(甲58)によれば,申立人は,広告,マーケティング及び販売促進活動のために,全世界では,2002年以来,30億米ドル以上を支出しているが,「モンスター社のマーケティング戦略は,従来の方法とは異なり,MONSTER商標及び爪の図柄を広めるための広告を,直接テレビやラジオで行わない」とされ,広告などの予算の多くは「競技選手への支援及び競技大会やその他イベントへのスポンサー活動」にあてている。特に「主要なターゲットとする若年成人層,主に男性が多くの時間を費やすインターネット上で,ネット配信されるイベント」であり,具体的には,ロードレース世界選手権グランプリ(MotoGP),MotoGPレーシングチーム,F1レーシングチーム,モトクロスチーム,アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ(UFC),音楽祭,音楽イベント,ミュージシャン及びビデオゲームチームへのスポンサー活動及び促進活動などである。
ただし,日本では2012年5月及び6月に販売開始を支援するために,主要テレビ局のテレビ広告枠を購入し,視聴者にウェブサイトで更なる情報を得るように促す広告を行い,それに約190万米ドルを支出したとされる。
コ 2016年3月31日付けのアサヒ飲料株式会社のニュースリリース(甲129)によれば,申立人商品につき「『モンスターエナジーブランド』は・・・ブランド力とファッション性で世界中の若者からの圧倒的な支持を背景に,急成長しているエナジードリンクです。」と紹介し,「エナジードリンク市場は,『モンスターエナジー』などの海外ブランドの浸透により,最近では10代,20代が『炭酸の刺激を楽しみたい』や『気分転換』を目的に飲用する傾向」との記載がある。
(2)上記(1)の認定事実によれば,申立人商標の使用と関連して,以下のような実情がうかがえる。
ア 申立人商品は,2012年(平成24年)5月の日本における販売開始以降,その販売額は,約3年間(2012年(平成24年)5月?2015年(平成27年)6月)で約170億円以上とされ,その販売期間は発売から本件商標の登録出願時までは約4年間程度と長期にわたるものではないが,ある程度継続した販売実績があることがうかがえる。
しかし,申立人はテレビなどの一般的なメディアを通じた広告宣伝はそもそも行わない方針であることもあり,テレビCMは,2012年(平成24年)の発売当初の1か月程度の短期間で,その費用も約1億5千万円(190万ドル;80円/ドルで計算)程度のものであり,継続的に行われているスポンサー活動や販売促進キャンペーンも,日本における広告宣伝費は明らかではない。その主な広告宣伝も,主に比較的若い世代が集まるようなモータースポーツ,格闘技,音楽イベントやミュージシャン,ビデオゲームなどと関連したスポンサー活動やプロモーション活動である。また,申立人商品の紹介にあたっても,10代や20代の需要者層における支持が言及されていることからすると,申立人商品の主要な需要者層や,広告などを通じて申立人商品を目にする需要者層の範囲も,自ずと若年層を中心としたものと理解することができる。
イ 日本で販売されている申立人商品の容器の側面には,文字配置のレイアウトにバリエーションはあるものの,概ね,「MONSTER」の文字の下に「ENERGY」の文字を,比較的近接して配置している。そして,これら申立人商品の個別名称は,「Monster Energy」(モンスターエナジー),「Monster KHAOS」(モンスターカオス),「モンスター アブソリュートリー ゼロ」,「モンスターエナジー M3」,「モンスターコーヒー」及び「モンスター ウルトラ」であるが,これら一連の商品を指称する際は,「モンスターエナジー」ブランドと総称されている。
ウ 申立人商品の販売促進キャンペーン広告などの宣伝文句の中で,申立人商品を「モンスター」と略称したり,「MONSTER WORLD RALLY TEAM」(モンスターワールドラリーチーム),「Monsterライダー」,「モンスターバンド」,「モンスターアスリート」,「モンスターグッズ」,「モンスターギア」,「モンスターロック」など,申立人又は申立人商品の略称として「MONSTER」又は「モンスター」の語を用いる場合はある。
(3)上記実情を踏まえると,申立人商品の販売期間は比較的短く,幅広い需要者層が目にする機会の多い一般的なメディアを通じた広告宣伝の実績は乏しいもので,広告宣伝などを通じた商品名の露出も,比較的若年層に向けた活動を通じて行われていることから,申立人商品は,本件商標の登録出願日前までには,その取引者や若い世代を中心とした需要者の間では,ある程度認知されていたということができても,幅広い需要者層を有する清涼飲料の分野一般においては,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されるに至っていたとまでは認めることができない。
そして,申立人商品は,その容器には「MONSTER」及び「ENERGY」の文字が比較的近接して表示されており,申立人商品は「モンスターエナジー」ブランドと総称されている実情があることも踏まえると,上記の申立人商品の獲得した認知度は,「Monster Energy」(モンスターエナジー)を中心とした「モンスターエナジー」ブランドのエナジードリンクとして,集合的に生じているというべきである。
なお,申立人商標である「MONSTER」の語が,宣伝文句などにおいて申立人又は申立人商品の略称として用いられる場合があるとしても,その略称が,エナジードリンクの需要者及び取引者の間で広く認知され,周知,著名となっていたとの事実は,提出された証拠からは見いだせない。
そのため,申立人商標は,我が国において,申立人商品を表示する商標として,広く認識されているものということはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標と引用商標1及び2の比較
ア 本件商標について
本件商標は,「MONST+」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中「MONST」の欧文字は,その構成文字に相応して「モンスト」の称呼が生じ得るものとしても,辞書等に掲載の見受けられないため,特定の意味を有しない造語と認識され,特定の観念は生じないもので,「+」の符号は「加号または正の数の符号」である「プラス」(plus)を表記したものである(参照:「広辞苑 第6版」岩波書店,「リーダーズ英和辞典」研究社発行)。そして,両文字は同じ大きさで間隔なく横一連に表されているものの,文字種が相違するため,視覚上分離して認識されるものである上,「+」の符号は,シリーズものの商品名であることを示すために語尾に類型的に配置されており,自他商品の識別標識としての機能が比較的弱い語であるため,本件商標に接する需要者,取引者は,その構成中,造語であり比較的印象に残りやすい「MONST」の文字部分を自他商品の識別標識としての機能を有するものと認識,理解し,取引に当たる場合もあるというのが相当である。
そうすると,本件商標は,その構成全体から生じる「モンストプラス」の称呼に加えて,「MONST」の文字部分に相応して「モンスト」の称呼が生じるものであるが,特定の観念は生じない。
イ 引用商標1及び2について
(ア)引用商標1は,「MONSTER」の文字を標準文字で表してなるところ,「MONSTER」の語は「怪物。化け物。」(参照:「広辞苑 第6版」岩波書店,「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店)の意味を有する平易な英語であるから,その構成文字に相応して「モンスター」の称呼及び「怪物。化け物。」の観念を生じる。
(イ)引用商標2は,上部に爪の図柄を配し,下部の上段に「MONSTER」(「O」の文字を貫く縦線が描かれている)の文字を特徴のある書体の太字で,その下段に「ENERGY」の文字を角張った書体で比較的小さく表してなるところ,爪の図柄部分と文字部分とは,重なりなく間隔を大きく空けて配置されているため,視覚上,一見して分離して看取されるばかりでなく,爪の図柄部分からは特定の称呼及び観念は生じないため,文字部分との間に称呼及び観念上のつながりはなく,それぞれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではない。
そのため,引用商標2に接する需要者,取引者は,爪の図柄部分と文字部分のそれぞれを出所識別標識としての機能を有する要部として認識,理解するというのが相当であり,これら要部をもって他人の商標と比較して商標としての類否を判断することも許されるというべきである。
そして,引用商標2の「MONSTER」と「ENERGY」の文字部分は,それぞれの文字の書体や大きさは相違するものの,上下二段に比較的近接して配置されており,上部の図形部分との対比もあり,構成上はまとまりのよい印象を与えるもので,全体より生じる「モンスターエナジー」の称呼も9音構成と冗長なものではなく,全体を一連に称呼することも比較的容易である。また,「MONSTER」の文字は「怪物。化け物。」の意味を有し,「ENERGY」の文字は,「活動の源として体内に保持する力。活気。精力。」の意味を有する「エネルギー」の語に通じるところ,両語を結合して熟語や既成語となるものでもなく(参照:「広辞苑 第6版」岩波書店発行),いずれの語がその指定商品との関係において出所識別標識としての称呼,観念を生じないというものでもない。そして,上記1のとおり,申立人商品は「Monster Energy」(モンスターエナジー)として若い世代の間で一定の認知度がある。
以上を踏まえると,引用商標2の「MONSTER」及び「ENERGY」の文字部分は,いずれかの文字部分から強く支配的な印象を受けるものではなく,その構成全体をもって出所識別標識としての機能を発揮するものというべきで,これより「モンスターエナジー」の称呼を生じ,特定の観念は生じない。
ウ 本件商標と引用商標1及び2との比較
(ア)本件商標と引用商標1は,語頭から始まる「モンス」の3音を共通にするが,その後に続く,本件商標の「ト」ないし「トプラス」の音と引用商標1の「ター」の音とは,構成音及び音数に明らかな差異があり,これらを一連に称呼するときは,それぞれ容易に聴別できる。また,両商標の外観は,「MONST」部分のつづりを共通にするが,その他の構成文字の相違から,両者は容易に見分けることができる。そして,本件商標からは特定の観念は生じないことから,観念において比較できない。
そうすると,本件商標と引用商標1は,観念において比較できず,外観及び称呼が明らかに異なるから,同一又は類似の商品について使用するときでも,互いに誤認混同するおそれのない非類似の商標というべきである。
(イ)本件商標と引用商標2は,称呼において,語頭から始まる「モンス」の3音を共通にするが,それ以外の音は,構成音及び音数に明らかな差異があり,それぞれ容易に聴別できる。また,両商標の外観は,「MONST」部分のつづりを共通にするとしても,その他の構成文字及び図形部分において明らかに異なることから,両商標は一見して明瞭に見分けることができる。そして,両商標は,いずれも特定の観念は生じないことから,観念において比較できない。
そうすると,本件商標と引用商標2は,観念において比較できず,外観及び称呼が明らかに相違するから,同一又は類似の商品について使用するときでも,誤認混同するおそれのない非類似の商標というべきである。
(2)小括
本件商標は,上記(1)のとおり,引用商標1及び2とは類似しない商標であるから,本件申立商品に引用商標の指定商品と同一又は類似の商品が含まれるとしても,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)申立人商標の独創性及び周知性
申立人商標「MONSTER」は,上記1のとおり,我が国において,申立人商品「エナジードリンク」を表示する商標として,広く認識されているものではない。
(2)本件商標と申立人商標との類似性
ア 本件商標について
本件商標は,上記2(1)アのとおり,「モンストプラス」及び「モンスト」の称呼が生じるが,特定の観念は生じない。
イ 申立人商標について
申立人商標「MONSTER」は,「怪物。化け物。」の意味を有する語よりなるため,「モンスター」の称呼及び「怪物。化け物。」の観念を生じる。
ウ 本件商標と申立人商標との類似性
本件商標と申立人商標を比較すると,上記2(1)ウ(ア)における引用商標1(MONSTER)における比較のとおり,観念において比較できず,外観及び称呼が明らかに異なるから,互いに印象が大きく異なる別異の商標といえる。
(3)本件異議申立てに係る指定商品と申立人商品との関連性
申立人商品であるエナジードリンクは,清涼飲料の一種であり,本件申立商品のうち,第32類「アイソトニック飲料,ガラナ飲料,シロップ,コーラ飲料,サイダー,シャーベット水,ジンジャーエール,清涼飲料のもと,炭酸水,ミネラルウォーター,その他の清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース」のような清涼飲料と関連する商品とは,生産部門や販売部門が一致し,商品の品質,用途が共通し,需要者の範囲も重複するため,これら商品に同一又は類似の商標を使用するときは,同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれのある互いに類似する商品であるといえる。
また,上記以外の本件申立商品は,飲料や食品,調味料などの一種であるから,申立人商品とは,最終的に飲食料品店を通じて一般消費者に向けて流通する商品であることから,販売部門や流通経路に関連性があるもので,需要者層も一部重複するものといえる。
(4)出所の混同のおそれについて
申立人商標「MONSTER」は,上記(1)のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人又は申立人商品を表示する語として周知,著名とはいえず,上記(2)のとおり,「怪物。化け物」の意味を有する語であって,造語ではなく,本件商標とは互いの印象が明らかに異なる別異の商標であるから,上記(3)のとおり,本件申立商品の一部が,申立人商品と類似又は販売部門や流通経路,また需要者層において一定程度関連があるとしても,本件申立商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば,本件商標に接する取引者,需要者が,申立人又は申立人商標を連想又は想起するようなことは考え難い。
そのため,本件商標は,これを本件申立商品について使用しても,その取引者及び需要者をして,当該商品が申立人の商品に係るものであると誤信させるおそれがある商標でもなく,当該商品が申立人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信させるおそれがあるものとはいえず,申立人又はそのグループの業務に係る商品と混同を生じるおそれがある商標ではない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
4 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,本件申立商品について,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれの規定にも違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1 (引用商標2)


別掲2 (引用商標6。色彩は原本参照。)




異議決定日 2018-05-02 
出願番号 商願2016-134357(T2016-134357) 
審決分類 T 1 652・ 262- Y (W29303233)
T 1 652・ 263- Y (W29303233)
T 1 652・ 271- Y (W29303233)
T 1 652・ 261- Y (W29303233)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山田 啓之 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 阿曾 裕樹
田村 正明
登録日 2017-07-07 
登録番号 商標登録第5961676号(T5961676) 
権利者 株式会社ミクシィ
商標の称呼 モンストプラス、モンスト 
代理人 柳田 征史 
代理人 塚田 美佳子 
代理人 大貫 絵里加 
代理人 橋本 千賀子 

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