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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W070911
審判 全部申立て  登録を維持 W070911
管理番号 1340375 
異議申立番号 異議2018-900016 
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-15 
確定日 2018-05-08 
異議申立件数
事件の表示 登録第5989297号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5989297号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5989297号商標(以下「本件商標」という。)は、「MOHNO PUMP」の欧文字を横書きしてなり、平成27年12月16日に登録出願、第7類「一軸偏心ねじポンプ」を含む第7類、第9類及び第11類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同29年9月28日に登録査定され、同年10月20日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第107号証を提出した。
1 本件商標「MOHNO PUMP」及びその日本語の表記である「モーノポンプ」について
本件商標の日本語の表記である「モーノポンプ」が「一軸偏心ねじポンプ」を意味する日本語の表記の一般的な技術用語として広く使われていること、及び、本件商標自体も英文の技術文献において「一軸偏心ねじポンプ」を意味する一般的な技術用語として広く使われれていることから、本件商標は、「一軸偏心ねじポンプ」を意味する一般的な技術用語であると理解される。
当該事実を、以下、主に審査では見落とされ、査定に当たり全く考慮がされていないと思われる多数の証拠により裏付ける。
なお、モーノポンプの英語の表記として、「Mohno pump」又は「mohno pump」というように、本件商標「MOHNO PUMP」の全部又は一部を小文字として表記する例も多く見られるが、いずれも品質表示という観点から見た場合、社会通念上、実質的に同一の商標といえる。したがって、以下、その外観の僅かな相違については、特に指摘しない。
(1)本件商標の日本語の表記である「モーノポンプ」の我が国の特許公報における用例
ア 検索結果
工業所有権情報研修・情報館のサイトにおいて本件商標の登録査定日までに公開された公開特許公報のうち、「モーノポンプ」との用語が記載されているものを調べたところ、「1754件」に上る(甲2)。
これだけの数の公報に「モーノポンプ」との用語が記載されていること自体、「モーノポンプ」が一般的な技術用語であることを物語る。このような一般的な技術用語について商標登録を認めることは、技術分野における信義及び公正に反するといわざるを得ない。
イ 平成29年から本件商標の登録査定日までの検索結果
「1754件」と余りに多数であるので、平成29年1月1日から本件商標の登録査定日までに公開された公開特許公報のみを検索してみたところ、10か月足らずの間だけでも「46件」に上ることが判明した(甲3、甲4)。
ウ 近時の公報における「モーノポンプ」の具体的な使用例
平成29年から本件商標の登録査定日までの検索結果の一覧(甲4)のうち、サンプル的に10社ほどの公報(甲5?甲14)における「モーノポンプ」の用語の使われ方を調べてみた。これらの公開特許公報においては、「一軸偏心ねじポンプ」の意味における一般的な技術用語として使用されていることが判明した。
・特開2017-172659(伏虎金属工業)(甲5)
・特開2017-170367(日本プライスマネジメント)(甲6)
・特開2017-132868(東海カーボン)(甲7)
・特開2017-148767(住友重機械エンバイロメント)(甲8)
・特開2017-147190(大成建設ほか)(甲9)
・特開2017-131836(住友金属鉱山)(甲10)
・特開2017-147035(SCREENホールディングス)(甲11)
・特開2017-141139(ヨータイ)(甲12)
・特開2017-138174(東レ)(甲13)
・特開2017-136747(清水建設)(甲14)
エ 小括
「モーノポンプ」との用語を記載している特許公報は1754件に上る。それのみならず、その具体的な用例を見ても、ほかのポンプの種類を示す一般的な技術用語と並列的に用いられている。「一軸偏心ねじポンプ」と記載しながら、あえて「(モーノポンプ)」と括弧書きにおいて注意的に記載しているものまである。兵神装備株式会社(以下「兵神装備」という。)のものであることをあえて示すときは、「ヘイシンモーノポンプ」との記載が用いられている。そして、公報に係る特許出願人の大半は、ポンプのメーカーではなく、ポンプを使用するメーカーであり、まさに「需要者」である。
これらの事実を踏まえると、「一軸偏心ねじポンプ」の需要者において、「モーノポンプ」は「一軸偏心ねじポンプ」を意味する一般的な技術用語として使われており、かつ、そのように認識されていることは明らかである。
したがって、「モーノポンプ」の英語の表記である本件商標「MOHNO PUMP」も「一軸偏心ねじポンプ」を意味する一般的な技術用語として我が国の需要者において理解される。
(2)「モーノポンプ」の邦文の技術文献における用例
邦文の技術文献においても、「モーノポンプ」との用語は、「一軸偏心ねじポンプ」を意味する一般的な技術用語として使用され、かつ、認識されている。
ア 「モーノポンプ」が「一軸偏心ねじポンプ」を意味していること
まず、「モーノポンプ」が「一軸偏心ねじポンプ」を意味していることは、次の技術文献からも明らかである。
・「新版 油空圧便覧」(甲15)
・「ねじポンプ概論」(甲16)
・「マグローヒル 科学技術用語大辞典第3版」(甲17)
・「新版・食品工業総合事典」(甲18)
・「デジタル大辞泉」(甲19)、
イ 「モーノポンプ」の邦文の技術文献における用例
「モーノポンプ」との技術用語の記載のある邦文の技術文献は、上記アにおいて示したもののほかにも多数見られる(甲20?甲64)。
いずれの技術文献においても、「モーノポンプ」は、ポンプの一類型(一軸偏心ねじポンプ)を示す一般的な技術用語として使われている。
(ア)「モーノポンプ」が装置の構成要素として使用されている例
装置の構成要素として、ほかの構成と同様に液体供給機構としての一般的な技術用語として「モーノポンプ」が用いられている例は多数ある。
・「新しい食品加工技術である連続式亜臨界水抽出法はどのような食品に応用できるか」(甲20)
・「連続式マイクロ波照射装置によるOD汚泥の高効率メタン発酵技術の開発」(甲21)
・「次世代型下水汚泥焼却炉『過給式流動燃料システム』の実用化」(甲23)
・「亜臨界水抽出法を用いた食品加工への応用の最近の進歩」(甲24)
・「養殖海域における海底クリーンシステム」(甲49)
・「横U字管と上下水平管からなる管路における気液二相流の流動様式」(甲50)
・「モーノポンプによる粉体の高濃度水平輸送に関する研究」(甲53)
・「製紙スラッジを添加材に用いた土圧系シールド工法の開発」(甲56)
・「水プラズマ溶射法」(甲62)
(イ)「モーノポンプ」が実験装置又は方法の説明において「ポンプ」の種類を示すものとして記載されている例
上記(ア)の装置の構成として記載されている例と重複する面もあるが、実験装置又は方法についての説明において「ポンプ」の種類を示す一般的な技術用語として記載されている例もまた多数見られる。
・「水熱反応によるサツマイモ焼酎粕の機能性の向上」(甲29)
・「マイクロバブルを用いた超音波流速分布計による鉛直管内乱流の速度分布と速度変動の測定」(甲30)
・「過給式流動炉における下水汚泥の基礎燃焼特性」(甲33)
・「下水汚泥/廃プラスチックの共ガス化:実験およびシミュレーションによる評価」(甲34)
・「局所相対速度モデルに基づく二相流モデルの粗大粒子-水系固液二相流に対する適用」(甲39)
・「製造法の違いが犬用ジャーキーの脂質に及ぼす影響」(甲40)
・「下水汚泥の低圧湿式酸化による可溶化効果」(甲41)
・「下水汚泥の加圧流動層燃焼特性」(甲42)
・「下降-上昇傾斜管のV字部において発生する液体スラグの特性」(甲43)
・「脱水下水汚泥の加圧流動層燃焼」(甲45)
・「モーノポンプによる粉体の傾斜管内高濃度空気輸送」(甲46)
・「連続計量式落下型コンリート製造システム」(甲47)
・「豪州ワンボ炭鉱における選炭廃水処理試験について」(甲51)
・「石炭・水スラリー燃料の二流体・沸騰複合微粒化」(甲58)
(ウ)「モーノポンプ」を多数あるポンプの一種として記載している例
・「上下水道ポンプの基礎知識」(甲25)
・「技術開発報告書 ジュール加熱によるモズク連続ラインの開発」(甲27)
・「ポイント解説 粉粒体装置」(甲28)
・「真空吸引式流出油回収装置の開発」(甲35)
・「台湾の紙パルプ工業」(甲61)
・「中小形舶用機関におけるACブレンド油の使用について」(甲63)
(エ)「一軸偏心ねじポンプ」を「モーノポンプ」と言い換えているもの
・「伝熱工学から紛体工学へ」(甲48)
(オ)あえて「兵神装備」製であることが記載されている例
・「氷海流出油回収装置の開発」(甲31)
(カ)日本語の表記が「モーノポンプ」で、英語の表記も「Mohno pump」である例
・「マイクロバブルによる鉛直管内流の摩擦抵抗低減効果」(甲26)
・「超音波流速分布計を用いた静止水中上昇大気泡周囲の平均速度場測定」(甲37)
・「静止液中における単一大気泡周囲液相部のPIV測定」(甲38)
・「混入微細粒子が鉛直管内気液二相スラグ流動に及ぼす影響」(甲44)
・「垂直円管内分散性混相流における相速度分布と相対速度における一考察」(甲52)
・「モーノポンプの粉体供給特性」(甲55)
・「水平密度液-液二相流に関する研究」(甲57)
・「垂直管内固気液三相気泡流の体積率に関する研究」(甲59)
・「垂直管内固液二相流の各相体積率の推算」(甲60)
(キ)日本語の表記が「モーノポンプ」で、英語の表記が「Mohno pump」以外のものである例
・「旋回式クロスフローによるO/Wエマルジョンの機械的分離」(甲22)
・「高粘度液体の管内空気輸送における圧力損失特性」(甲32)。
・「最新の抗井掘削技術(その2)」(甲36)。
・「指数法則非ニュートン流体中の平板からの熱伝達に関する研究」(甲64)
ウ 小括
「モーノポンプ」は、多数の実験報告書における実験装置及び方法を説明する文中において、ほかの一般的な技術用語と同様、ごく自然に一般的な技術用語として用いられている。これらの実験を実施する者は「一軸偏心ねじポンプ」の「需要者」にほかならない。これらの多数の「需要者」において、まさに「一軸偏心ねじポンプ」を指称する一般的な技術用語として「モーノポンプ」を用いている。「一軸偏心ねじポンプ」と記載しながら、読者に分かりやすいようにあえて括弧書きで「(モーノポンプ)」と追記する文献まで見られる。
また、兵神装備のものであることを指称するために、あえて「兵神社製モーノポンプ」と記載している例も見られる。「モーノポンプ」が兵神装備の出所表示として広く知られているのであれば、あえて「兵神社製」と記載することは不要なはずである。それにもかかわらず、「兵神社製」と記載していることは、「モーノポンプ」は特定の企業の出所表示としての性格が認められないことを意味している。
さらに、英語の表記が「MONO PUMP」「MOINEAU PUMP」又は「MOYNO PUMP」であるにもかかわらず、日本語の表記は「モーノポンプ」とされるものが少なからず見られる。これは、「モーノポンプ」が「一軸偏心ねじポンプ」を意味する一般的な技術用語の日本語の表記として定着していることを意味している。
これらの事実から、邦文の技術文献においても、本件商標「MOHNO PUMP」の日本語の表記である「モーノポンプ」が「一軸偏心ねじポンプ」を意味する一般的な技術用語として、その需要者において認識されていることは疑うべくもない。
したがって、「モーノポンプ」の英語の表記である本件商標「MOHNO PUMP」が「一軸偏心ねじポンプ」を意味する一般的な技術用語として、その需要者において認識されることもまた疑うべくもない。
(3)「MOHNO PUMP」の英文の技術文献における用例
「MOHNO PUMP」が、特に我が国においてモーノポンプを指称する一般的な技術用語として用いられ、定着している。国際的にも「MOHNO PUMP」は広く用いられている。
なお、実際の用例としては、「Mohno pump」というように「M」のみを大文字で記載する用例が多い。これは、「Mohno」が固有名詞であること、すなわち、モーノ博士(フランス語はMoineau)の英語読みの表記であり、モーノ博士がモーノポンプの発明者であることに敬意を表しているものといえる。
ア 日本人を著者として含む英文の技術文献において
日本人を著者として含む英文の技術文献において、「MOHNO PUMP」を、モーノポンプを意味する一般的な技術用語として使用しているものは多数ある(甲65?甲79)。
(ア)「MOHNO PUMP」が装置の構成要素として使われている例
・「Journal of Solid Mechanics and Materials Engineering」(甲68)
・「Measurement of Averaged Liquid Velocity Field around Large Bubbles Rising in Stagnant Water in Round Pipe Using UVP」(甲70)
・「Velocity Measurement around a Large Bubble Rising in Stagnant Water in a Round Pipe Using the UVP(2nd Report:The Effect of Bubble Length and Pipe Diameter)(甲71)
・「VELOCITY MEASUREMENT AROUND A LARGE BUBBLE RISING IN STAGNANT WATER IN A ROUND PIPE USING THE UVP」(甲72)
・「Nondimensional Expression of Volumetric Fractions of Gas-Liquid-Solid Three-Phase Bubbly Flow in Vertical Pipes(Application of the Multiplier Method)」(甲74)
・「Experimental Thermal and Fluid Science」(甲75、甲76)
・「Constant Feeding of Dry Powder by Mohno Pump」(甲78)
・「ENERGY SAVING IN SEWAGE SLUDGE INCINERATION WITH INDIRECT HEAT DRYER」(甲79)
(イ)「MOHNO PUMP」が、実験装置又は方法の説明に「ポンプ」の種類を示す程度の意味で記載されている例
・「Chemical Engineering Science 64」(甲67)
・「Contact measurement of turbulent intensity of the pipe flow using UVP」(甲69)
・「TURBULENCE MODIFICATION IN GAS-LIQUID AND SOLID-LIQUID DISPERSED TWO-PHASE PIPE FLOWS」(甲73)
・「A Fundamental Study on Dense Phase Conveying Using Mohno Pump」(甲77)
(ウ)「MOHNO PUMP」を、多数あるポンプの一種として記載している例
・「Extraction Chromatography Experiments on Repeated Operation using Engineering Scale Column System」(甲66)
・「Solar Energy Materials & Solar Cells 125」(甲65)
イ 外国人のみを著者とする技術文献において
日本人を著者とするものに限られず、外国(特に欧州)においても、「MOHNO PUMP」を、モーノポンプを意味する一般的な技術用語として使用している英文の技術文献は多数見られる(甲80?甲96)。
(ア)「MOHNO PUMP」を装置の構成要素として使用している例
・「TAILORING PULP FIBRE PROPERTIES IN LOW CONSISTENCY REFINING」(甲81)
・「Chemical Engineering Science(甲90)
・「Rheologica Acta」(甲91、甲95、甲96)
(イ)「MOHNO PUMP」を実験装置又は方法の説明において「ポンプ」の種類を示すものとして記載されている例
・「EDGE EFFECTS ON THE FLOW CHARACTERISTICS IN A 90° TEE JUNCTION」(甲82)
・「Utilization of mango peels as a source of pectin and polyphenolics」(甲83)
・「Fuel」(甲85)
・「Carbohydrate Polymers」(甲86)
・「Chemical Engineering Science」(甲87)
・「Rheol Acta」(甲88)
・「Chemical Engineering and Processing」(甲89)
・「Optimization of yeast cell disruption with a newly designed bead mill」(甲92)
・「Ultrafine Grinding in an Annular Ball Mill」(甲93)
・「Colloid & Polymer Science」(甲94)
(ウ)「MOHNO PUMP」を、多数あるポンプの一種として記載している例
・「OPERATIVE AND TECHNOLOGICAL EVALUATION OF AN ELASTIC MEMBRANE PRESS」(甲84)
(エ)「MOHNO PUMP」の製造者名が付記されているもの
・「Bioresource Technology 247」(甲80)
ウ 小括
「MOHNO PUMP」は、日本人又は外国人により執筆された英文の多数の実験報告書における実験装置及び方法を説明する文中において、ほかの一般的な技術用語と同様、ごく自然に一般的な技術用語として用いられている。これらの実験を実施する者は「一軸偏心ねじポンプ」の「需要者」にほかならない。これらの多数の「需要者」において、まさに「一軸偏心ねじポンプ」を指称する英文の一般的な技術用語として「MOHNO PUMP」を用いている。
これらの事実から、本件商標「MOHNO PUMP」が「一軸偏心ねじポンプ」を意味する一般的な技術用語として、その需要者において認識されていることは疑うべくもない。
(4)兵神装備における使用
ア モーノポンプの発明及び各国におけるライセンス
「モーノポンプ」は、1930年、フランス人の航空力学の研究者であるルネ・モーノ(Rene Moineau)(異議決定注:2文字目の「e」にはアクサンテギュが付されている。以下同じ。)の博士により発明された「一軸偏心ねじポンプ」である(甲97)。
モーノ博士は、その後、PCM(Pompes Capsulisme Moineau)社を設立し、PCM社は、1935年に英国のモノ(Mono)社、1937年に米国のロビンス&マイヤース(Robbins&Meyers)社、1950年代にドイツのネッチュ(Netzsch)社などにモーノポンプの製造、販売のライセンスをした(甲98)。
その際、フランス語の「Moineau」の発音に近似した各国語の欧文字表記として、ドイツのネッチュ社は「MOHNO PUMP」、英国のモノ社は「MONO PUMP」、米国のロビンス&マイヤース社は「MOYNO PUMP」をそれぞれ用いた(甲98)。
このように、「モーノポンプ」は、PCM社が世界的にライセンスした結果、複数の異なるライセンシーにより世界各国で販売されており、「モーノポンプ」というのみでは、各ライセンシーのいずれの販売に係る「一軸偏心ねじポンプ」かを識別することが困難である。
イ ネッチュ社から兵神装備へのライセンス
本件商標の商標権者でもある兵神装備は、ドイツのネッチュ社からモーノポンプの製造、販売のライセンスを受けて、我が国においてモーノポンプを製造、販売した。
その際、兵神装備は、世界各国で各社が販売しているモーノポンプとの出所の誤認混同を避けるために、ネッチュ社から、「ヘイシン」を「モーノポンプ」に付して製造し、販売することが求められている(甲99)
ウ 兵神装備における「ヘイシンモーノポンプ」及び「モーノポンプ」の使用の実態
兵神装備が製造、販売しているモーノポンプの商標は、飽くまで「ヘイシンモーノポンプ」である。
他方、その構成要素である「モーノポンプ」の部分は、前述したとおり「一軸偏心ねじポンプ」を意味する一般的な技術用語として需要者に広く認識されている。そのことは、前述した多数の邦文及び英文の技術文献の記載にも明瞭に示されている。
このような商標としての「ヘイシンモーノポンプ」と「一軸偏心ねじポンプ」を意味する一般的な技術用語としての「モーノポンプ」との使い分けは、我が国の国内において高いモーノポンプの市場占有率を有する兵神装備自体が留意している。そのことは、兵神装備の平成23年頃のカタログ(甲100)における「ヘイシンモーノポンプ」及び「モーノポンプ」の使用実態から容易に理解される。
まず、当該カタログを見ると、「[R]」(異議決定注:[R]は○の中に「R」の記号)の印が「ヘイシンモーノポンプ」に付されている。「ヘイシンモーノポンプ」は兵神装備の登録商標である。
それのみならず、当該カタログを見ると、ほとんど「ヘイシンモーノポンプ」との表示であり、大きなフォントの活字で記載されている。具体的には、例えば、次のような多数のキャッチフレーズが見られる。
・「困難を解決する、オンリーワンの高性能。ヘイシンモーノポンプ」(表紙)
・「不可能だった移送・コントロールを可能にする、ただひとつの高性能。ヘイシンモーノポンプ(1頁)
・「ヘイシンモーノポンプなら、移送困難な液体や粉体を変質させずに送れます。」(3頁?4頁)
・「ヘイシンモーノポンプなら、エネルギー効率がよく、作業現場の環境を改善できます。」(7頁)
・「なぜヘイシンモーノポンプは、さまざまな困難を解決できるのか?」(9頁)
・「ヘイシンモーノポンプ6つの基本性能」(12頁)
・「ヘイシンモーノポンプ/製品ラインナップ」(15頁)
これらのキャッチフレーズにおける「ヘイシンモーノポンプ」は、兵神装備の社名のカタカナ表示でもあり、強い識別力を有する「ヘイシン」が密接不可分に付されており、「モーノポンプ」自体はポンプの種類を示すものとして記載されている。
他方、当該カタログにおいて、「モーノポンプ」との表示は、ほとんどが小さなフォントの活字で記載されている。いずれも「一軸偏心ねじポンプ」を指称する一般的な技術用語としての使用としての記載である。比較的、目立つ記載のものを見ると、次のような記載がされている。
a)「この原理は、フランスのモーノ(Rene Moineau)博士が航空機のスーパーチャージャーを開発中に発明したものです。…このモーノポンプ独自の特殊構造こそ、さまざまな困難を解決できる最大のポイントなのです。」(10頁)
b)「モーノポンプのリーディングカンパニーとして。」(22頁)
これらの記載のうち、記載a)は、フランスのモーノ博士が原理を発明したポンプの種類を示す一般的な技術用語としてしか理解されない。
また、記載b)は、モーノポンプという種類のポンプを販売する企業が多数ある中、兵神装備がリーディングカンパニーであることを意味している。
これらの記載においても、モーノポンプという名称のポンプの種類を示す一般的な技術用語と理解される。
兵神装備が「需要者」に商品を売り込む際の主軸になる広告宣伝媒体である当該カタログにおいても、「ヘイシンモーノポンプ」及び「モーノポンプ」の使い分けがされており、「モーノポンプ」はポンプの一種を意味する一般的な技術用語として扱われている。
このようなことから、兵神装備と取引関係にある我が国の需要者においても、「モーノポンプ」の英語の表記である「MOHNO PUMP」についても、「一軸偏心ねじポンプ」であるモーノポンプを意味する一般的な技術用語として理解するものといえる。
なお、「A Fundamental Study on Dense Phase Conveying Using Mohno Pump」(甲77)は、兵神装備の社員も著作者とする英文の文献である。この「論文名」において既に「Mohno Pump」とのモーノポンプの英語の表記が使われている。
エ 市場占有率の高さにより一般的な技術用語としての性格が変わるものではないこと
モーノポンプの我が国における兵神装備の市場占有率は高いが、一般的な技術用語は商品の品質を表示する公的な性格を有するものであり、市場占有率の高さによりその性格が変わるものではない。
そのことは、例えば、商標法第3条第1項第1号(普通名称)違反に関する裁判例(平成13年(行ケ)第258号。甲101)にも示されている。同事件は普通名称に係る事例であるが、同事件判決の判示と同様、市場占有率が高いことは、品質表示であることと矛盾するものではない。例えば、ある商品を市場に提供する企業がいろいろな事情により一社のみとなることも少なくない。しかし、それにより、その商品の品質表示が特定の会社の商標となることは、需要者における認識が明瞭に変わらない限り、あり得ないというべきである。
我が国におけるモーノポンプの市場占有率の高い兵神装備自身が「モーノポンプ」を品質表示として使用している事実は、ネッチュ社からのライセンスの事情、その後の兵神装備のカタログなどにおける使用実態からも裏付けられることは前述した。実際、兵神装備は、注意深く「ヘイシンモーノポンプ」と「モーノポンプ」とを使い分けており、「モーノポンプ」を「一軸偏心ねじポンプ」を意味する一般的な技術用語としての品質表示として使用し続けている。
そのことは、例えば、兵神装備の社員も共同著作者として関与している「モーノポンプによる粉体の高濃度水平輸送に関する研究」(甲53)と題する学術論文にも明瞭に示されている。すなわち、当該論文は、「モーノポンプ」を使用した粉体の輸送に関する論文であるが、技術分野の学術論文のタイトルに「モーノポンプ」を使用していること自体、モーノポンプがポンプの種類を示す一般的な技術用語であることを裏付けている。ここでは「モーノポンプ」が欧州において開発されたポンプの種類であることを前提とした記載がされている。そして、この学術論文には、兵神装備の社員も2名が関与しているのであり、「モーノポンプ」がポンプの種類を示す一般的な技術用語であることは、兵神装備においても当然の前提としていたことが分かる。
なお、兵神装備の社員を著者とする技術文献において、同様の「モーノポンプ」と「ヘイシンモーノポンプ」との使い分けをしている例が見られる。
・「日本機械学会誌」(甲102)
・「紙パ技協誌」(甲103)
・「コンバーテック」(甲104)
・「ポリマーダイジェスト」(甲105)
このように学術論文においても、「モーノポンプ」は「一軸偏心ねじポンプ」を示す一般的な技術用語として従来から使用されており、かつ、兵神装備においても「ヘイシンモーノポンプ」と使い分けをしている。
したがって、たまたま兵神装備の「モーノポンプ」の市場における占有率が高いとしても、その一般的な技術用語としての性格が失われるものではないことは、前述した裁判例に従えば、明らかであるといえる。
兵神装備自身が「モーノポンプ」を「一軸偏心ねじポンプ」の一般的な技術用語として普及させたのであり、我が国における市場占有率が高い事実は、そのような技術用語としての性格を変ずるものではない。我が国において「モーノポンプ」が一般的な技術用語として普及した後に、唐突に「モーノポンプ」を商標登録出願をすることは、信義及び公正にも反することである。
同様に、「モーノポンプ」の英語の表記であるにすぎない「MOHNO PUMP」について商標登録出願をすることもまた、信義及び公正に反することである。
(5)他社における「MOHNO PUMP」の使用
兵神装備のモーノポンプの市場における占有率が高いのは、我が国の国内のみである。海外において「Mohno pump」の名称において販売されているものは、兵神装備以外の海外メーカーの製造に係るものである。
ここで、我が国において、兵神装備に「モーノポンプ」との品質表示の登録商標としての独占的な使用を認めることは、海外において販売されている「モーノポンプ」の輸入を不当に排除することにもなりかねない。そのようなことがあれば、国際的な商品の円滑な流通を損ない、国際的な信義にも反するおそれがある。
実際、例えば、株式会社キューレは、イタリアのベリン社の製造に係る「モーノポンプ」を輸入している(甲106)。また、東洋バイテック株式会社のウェブサイトを見ると、アメリカのロビンス・マイヤース社製の中古の「モーノポンプ」をシンガポールから輸入販売をしたことがあることが分かる(甲107)。
ここで、兵神装備に「モーノポンプ」の品質表示を登録商標として独占を認めることになると、海外で多数販売されている「モーノポンプ」について、「モーノポンプ」との表示を付して我が国に向けて輸出したり、インターネット上で販売の申出さえもすることができなくなりかねない。
特に本件商標「MOHNO PUMP」は、モーノポンプの英語の表記であり、国際的にモーノポンプの品質表示と理解されているものであり、その独占を兵神装備に認めることは、海外からの我が国への販売の申出及び輸出を困難にするものであり、一層、国際的な信義及び公正に反するものである。
(6)小括
以上、本件商標は「一軸偏心ねじポンプ」を意味する英語の表記による一般的な技術用語であり、「一軸偏心ねじポンプ」の品質表示である。
2 本件商標が「一軸偏心ねじポンプ」の品質表示(商標法第3条第1項第3号)にすぎないこと
本件商標は「一軸偏心ねじポンプ」の品質表示にすぎない。したがって、本件商標は、その第7類の指定商品である「一軸偏心ねじポンプ」又はそれ以外の本件商標の指定商品としての「一軸偏心ねじポンプ」に用いられるときは、その商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当することから、商標法第3条第1項第3号に違反して商標登録がされたものである。
3 本件商標が「商品の品質…の誤認を生じさせるおそれ」(商標法第4条第1項第16号)のある商標であること
本件商標は「一軸偏心ねじポンプ」の品質表示にすぎない。したがって、本件商標は、「一軸偏心ねじポンプ」以外の第7類の指定商品又は第9類若しくは第11類の指定商品に用いられるときは、品質の誤認を生じさせるおそれのある表示であり、商標法第4条第1項第16号に違反して商標登録がされたものである。
例えば、「吐出装置」に用いられるものは「ディスペンサー」であり、「ポンプ」とは異なる。「ディスペンサー」に本件商標「MOHNO PUMP」が用いられるときは、品質の誤認を生じさせるおそれがある。
4 結語
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。

第3 当審の判断
1 「モーノポンプ」及び「MOHNO PUNP」の語(文字)について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次のとおり本件商標の登録査定の日以前の事実を認めることができる。
ア 平成29年8月3日ないし同年9月28日(本件商標の登録査定の日)に公開された我が国の特許公開公報において、「モーノポンプ」の語が、ポンプの一種を表す語のごとく用いられているものが相当数あり(甲5、甲6、甲9?甲14)、「一軸偏心ねじポンプ」を表す語のごとく用いられているものが1件ある(甲8)。
イ 我が国の技術文献において、「モーノポンプ」の語が、ポンプの一種を表す語のごとく用いられているものが相当数あり(甲16、甲20?甲23、甲25?甲30、甲32?甲47、甲49?甲64)、「一軸偏心ねじポンプ」を表す語のごとく用いられているものが1件ある(甲48)。
また、それら文献の中には、英語で表された図中にポンプを表す語として、小さな文字ではあるが「Mohno Pump」の語(大文字と小文字が異なるものを含む。以下同じ。)が用いられているもの(甲26、甲37、甲38、甲44、甲52、甲53、甲55、甲57、甲59、甲60、甲64)、及び冒頭の英文中に「Mohno Pump」の語が用いられているもの(甲53、甲55)がある。
ウ 辞書類には、「もーのぽんぷ[モーノポンプ]Moyno pump」の項や「モーノ・ポンプ【Moineau pump】」の項を設け、その説明を記載しているものがある(甲18、甲19)。なお、「モノポンプ Mono pump」の項を設けその説明を記載しているものもある(甲17)。
エ 英文の技術文献において、「Mohno Pump」の語が、ポンプの一種を表す語などとして用いられているものが相当数ある(甲65?甲96)。
オ 我が国における商取引において、商標権者以外の者が「モーノポンプ」の語を用いたと言い得るものは、2件のみであり(甲106、甲107)、「Mohno Pump」の語が用いられたと認め得る証左は見いだせない。
(2)上記(1)からすれば、「モーノポンプ」の語は、本件商標の登録査定の日以前において、我が国のポンプ及びポンプを用いた技術分野における研究者、技術者の間で少なくともポンプの一種を表すものとして相当程度知られているものといえ、また、「Mohno Pump」の語も同様のものとしてある程度知られているものといって差し支えない。
しかしながら、特許公開公報や技術文献は専門的な内容のものであって、一般の需要者が接する機会は極めて限られているものである(英文であればなおさらである。)ことから、それらに掲載されていることをもって、その内容が一般に知られているものということは困難である。
そして、「一軸偏心ねじポンプ」などポンプ類を含む本件商標の指定商品に係る一般的な取引者・需要者について、それと異なる特別な事情があると認めるに足りる証左は見いだせない。
加えて、我が国における商取引において、商標権者以外の者が「モーノポンプ」「Mohno Pump」の語を用いたのは、前者が2件あるのみで、後者はその事実が確認できないことをあわせみれば、「モーノポンプ」「Mohno Pump」の語は、いずれも本件商標の登録査定時において、一般の取引者・需要者をして、「一軸偏心ねじポンプ」あるいはポンプの一種を表したものとして認識されることなく、むしろ特定の語義を有しない造語を表したものと認識、把握されるものと判断するのが相当である。
2 商標法第3条第1項第3号について
本件商標は、上記第1のとおり「MOHNO PUMP」の文字からなり、該文字に相応し「モーノポンプ」の称呼を生じるものである。
そして、上記1のとおり「モーノポンプ」、「Mohno Pump」(大文字と小文字が異なるものを含む。)の語は、いずれも本件商標の登録査定時において、一般の取引者・需要者をして特定の語義を有しない造語を表したものと認識、把握されるものである。
そうすると、「Mohno Pump」の文字と大文字と小文字が異なるものである「MOHNO PUMP」の文字からなる本件商標も、その登録査定時において、一般の取引者・需要者をして特定の語義を有しない造語を表したものとして認識、把握されるものといわなければならない。
さらに、職権をもって調査するも、「MOHNO PUMP」の文字が、本件商標の登録査定時において、本件商標の指定商品の品質等を表示するものとして一般的に使用されているというべき事情、及び商品の品質等を表示するものとして認識されるというべき事情は発見できなかった。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品に使用しても、商品の品質等を表示するものでなく、自他商品識別標識としての機能を果たし得るものといわなければならない。
したがって、本件商標は商標法第3条第1項第3号に該当するものといえない。
3 商標法第4条第1項第16号について
上記2のとおり本件商標は、その指定商品の品質を表示するものといえないものであるから、これをその指定商品に使用しても商品の品質の誤認を生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第16号に該当するものといえない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2018-04-24 
出願番号 商願2015-123759(T2015-123759) 
審決分類 T 1 651・ 272- Y (W070911)
T 1 651・ 13- Y (W070911)
最終処分 維持 
前審関与審査官 箕輪 秀人 
特許庁審判長 薩摩 純一
特許庁審判官 田中 幸一
大森 友子
登録日 2017-10-20 
登録番号 商標登録第5989297号(T5989297) 
権利者 兵神装備株式会社
商標の称呼 モーノポンプ、モーノパンプ、モーノ 
代理人 鮫島 睦 
代理人 佐々木 美紀 
代理人 川田 篤 
代理人 勝見 元博 
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