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審決分類 審判 査定不服 称呼類似 登録しない W43
審判 査定不服 観念類似 登録しない W43
審判 査定不服 外観類似 登録しない W43
管理番号 1340306 
審判番号 不服2017-9191 
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-23 
確定日 2018-05-15 
事件の表示 商願2016-44062拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は,別掲のとおりの構成からなり,第43類「飲食物の提供」を指定役務として,平成28年4月18日に登録出願されたものである。

2 引用商標
原査定において,本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして,本願の拒絶の理由に引用した登録第5554666号商標(以下「引用商標」という。)は,「咲蔵」の文字を標準文字で表してなり,平成24年8月8日登録出願,第43類「飲食物の提供」を指定役務として,同25年2月1日に設定登録され,その商標権は現に有効に存続しているものである。

3 当審の判断
(1)本願商標
本願商標は,別掲のとおり,「咲」の文字の下部にやや左にずらして「蔵」の文字を配した「咲蔵」の文字を毛筆体で書し,その「咲」の文字の左側に縦書きされた「鉄板串焼き」の文字を配し,同じく「蔵」の文字の右側に赤字で縦書きされた「さくら」の文字と落款を配してなるものであるところ,その構成中の各文字はいずれも縦書きに表されているものの,文字の大きさ及び書体を異にし,さらに一部色彩を用いて表示してなるものであるから,各文字部分は視覚的に分離して看取されるものである。そして,「咲蔵」の文字部分は,他の文字に比較して極端に大きく,また,特徴のある字体により中央に表されており,本願商標の構成において視覚上,強い印象を与えるものである。
そこで,本願商標における各構成文字の意味等についてみるに,「鉄板串焼き」の文字は,「熱した鉄板の上で,肉・野菜などを焼き,たれを付けてたべる料理」を意味する「鉄板焼(き)」と,「魚貝・肉・野菜などを串に刺して焼くこと。また,焼いたもの」を意味する「串焼(き)」(いずれも株式会社小学館発行「大辞泉第二版」)を組み合わせた文字であることが容易に理解できるところ,本願商標の指定役務「飲食物の提供」との関係においては,提供される料理の種類を表したものといえることから,自他役務の識別標識として機能を有さないものといえる。
次に,「咲蔵」の漢字及び「さくら」の平仮名の部分についてみるに,本願商標の構成は上記のとおりであるところ,その構成中において「さくら」の平仮名は,「咲蔵」の漢字の右下方に近接して明確に読み取れる普通の態様をもって小さく赤色で表示されているものであり,漢字に平仮名が併記されたこのような場合,一般に平仮名が漢字の読みを特定していることが多いといえる。
また,漢字2字からなる熟語は,一般に,2字を共に訓読み又は音読みするのが基本であり,例外的に,重箱読み,湯桶読み,熟字訓の読みがされているものもある。
そして,「咲蔵」の漢字は,辞書等に載録されている熟語とはいえず,造語と認められるところ,「咲」の文字は,訓読みでは「く」の送り仮名を伴って「さ(く)」,音読みでは「ショー」と読まれるものであり,一般に慣れ親しまれているのは訓読みであるといえる。同じく「蔵」の文字は訓読みで「クラ」,音読みで「ゾー」と読まれるのが一般的であり,組み合わされる文字等により,適宜その読みが選択されている。
また,造語を形成した一字目の「咲」の文字を訓読みするに当たり,「荒い波」を「荒波(アラナミ)」,「近い頃」を「近頃(チカゴロ)」のように送り仮名が省かれて読まれる場合と,「書換え(カキカエ)」,「咲分け(サキワケ)」のように送り仮名を含めて読まれる場合とがある。
そうすると,「咲蔵」においては,「咲」の文字は一般に慣れ親しまれた訓読みにより「サ」及び「サキ」と読まれる場合があり,「蔵」の文字は「クラ」又は「ゾー」と読まれる場合が想定されるが,これらを適宜選択して,訓読みと訓読みの組合せで「サクラ」及び「サキグラ」と読まれるとみるのが自然である。
以上のとおり,「咲蔵」の漢字の読みは,単独では「サクラ」のほかの読みも生じ得ると考えられるが,一般に,漢字に平仮名が併記された構成の商標において,その平仮名部分が漢字部分の称呼を特定すべき役割を果たすものと無理なく認識できるときは,平仮名部分から生ずる称呼が,その漢字部分から生ずる自然の称呼とみるのが相当であり,本願商標においては,上記のとおり,赤色で表された「さくら」の平仮名が「咲蔵」の漢字の読みを特定したものと無理なく認識できるから,本願商標中の「咲蔵」の漢字及び「さくら」の平仮名の部分の称呼は,基本的には「サクラ」であると認めることができる。
してみれば,本願商標は,その構成中の「鉄板串焼き」の部分から出所識別標識としての称呼,観念は生じないものであり,また「咲蔵」の文字部分が取引者,需要者に対し,役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであって,該文字は「さくら」の平仮名によりその称呼が特定されるから,本願商標からは,構成全体より生じる称呼のほか,「咲蔵」及び「さくら」の文字部分から「サクラ」の称呼を生じるものである。また,本願商標からは,特定の観念を生じないものの,平易な漢字で「咲蔵」と表されていることから,漢字から想起する「咲く蔵(クラ)」又は「蔵(クラ)が咲く」ほどの意味合いを認識させるものである。
(2)引用商標
引用商標は,前記2のとおり,「咲蔵」の文字を標準文字で書してなるものであるから,上記(1)において「咲蔵」の漢字部分が「サクラ」及び「サキグラ」と読まれるものであると認定したことと同様に,「サクラ」及び「サキグラ」の称呼を生じ,また,観念についても同じく「咲く蔵(クラ)」又は「蔵(クラ)が咲く」ほどの意味合いを認識させるものである。
(3)本願商標と引用商標の類否
本願商標と引用商標とは,その構成全体をもって比較するときは,外観上,相違するものの,本願商標の構成中にあって出所識別標識として強く支配的な印象を与える「咲蔵」の文字部分と引用商標の「咲蔵」の漢字を比較するときは,文字を同じくするものである。次に,本願商標と引用商標とは,「サクラ」の称呼を共通にするものである。そして,観念においては,両商標は,特定の観念を生じないものの,平易な漢字で「咲蔵」と表されていることから,漢字から想起・認識する「咲く蔵(クラ)」又は「蔵(クラ)が咲く」ほどの意味合いを共通にするものである。
そうすると,本願商標と引用商標の外観,称呼及び観念によって,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,全体の外観において相違するとしても,「咲蔵」という同一の文字で構成され,称呼及び観念を同一にする両者は,相紛らわしい類似する商標というべきである。
(4)小括
以上によれば,本願商標と引用商標とは,互いに類似する商標であり,また,本願商標の指定役務は,引用商標の指定役務と同一の役務である。
したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(5)請求人の主張について
ア 請求人は,取引の実情として,需要者は,商標の一部に共通する文字が含まれていても,商標全体の構成を念頭に置きつつ,料理の種別を示す文言の有無・相違や,文字の字体や配置の相違などを判断基準として,厳格な目でそれらの商標を識別しているのが現状であることに加え,両者とも特定の観念が生じず,観念においても比較することができないから,取引の実情も考慮し,取引者・需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して判断すべきである旨主張する。
しかしながら,簡易迅速を尊ぶ商取引の実際においては,商標の構成全体のうち,強く支配的な印象を与える部分や特に印象に残りやすい部分を抽出して取引に資されることは一般にみられるところであり,上記(1)のとおり,本願商標から,支配的又は顕著な印象を与える「咲蔵」の文字部分が,取引者,需要者に対し,役務の出所識別標識として看取されるというべきであり,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるものである。してみれば,該文字部分と引用商標とは,「咲蔵」という文字を共通にし,「サクラ」の称呼及び「咲く蔵」又は「蔵が咲く」との観念を同一にするため,相紛らわしい類似の商標である。したがって,請求人の主張は,採用することができない。
イ また,請求人は,「鉄板串焼き」なる文言は,「鉄板焼き」なる文言と「串焼き」なる文言とを組み合わせた文言であり,料理の種別を示す一般的な文言とはいえないことから,需要者は,料理の種別を示す「鉄板串焼き」なる特殊な文言の有無も相違として認識し,需要者に対し,両商標の外観に関して異なる印象を与えると言わざるを得ない旨主張する。
しかしながら,「鉄板串焼き」の文言が,料理の種別を示す一般的な文言とはいえないとしても,本願商標は(1)で認定したとおり,その構成中の「咲蔵」の文字部分が取引者,需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであり,他方,「鉄板串焼き」の文字部分が,提供される料理の種類として一般的に親しまれている「鉄板焼(き)」と「串焼(き)」を組み合わせたものであることが容易に理解できることからすれば,当該文字部分は提供される料理の種類を端的に表していると認められるものである。してみれば,当該文字部分は,自他役務の識別標識としての機能を有さないものであり,本願商標は,その構成中の「咲蔵」の文字部分をもって取引に資されることも決して少なくないものというべきであって,当該「咲蔵」の文字部分を引用商標と対比して,商標そのものの類否を判断することが本件においては適切なものというべきである。
ウ 請求人は,新明解漢和辞典(甲第10号証参照)の新「人名漢字読み方一覧表」の,「咲」の欄には,読みとして「サク」としか記載されていないことからすれば,引用商標からは,「サククラ」,「サキグラ」,「ショーゾー」,「サクゾー」の称呼しか生じない旨主張する。
しかしながら,「咲(く)」の文字は,一般にも親しまれた文字であることから,これに接する取引者,需要者をして「咲」の文字部分を「サ」と発音することは自然であるというべきであり,また,上記(1)のとおり,「く」の送り仮名も伴っていないことからすれば,引用商標「咲蔵」の文字より,「サクラ」の称呼を生じるというのが相当である。
エ さらに,請求人は,過去の登録例を挙げて,本願商標も登録されるべきである旨主張しているが,請求人の挙げる登録例は,本願商標とは,商標の構成態様等において相違し,事案を異にするものであって,そのような例が存することをもって,本願商標と引用商標の類否についてした上記認定,判断を左右しないものであるから,請求人のかかる主張も採用することはできない。
(6)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第4条第1項第11号に該当し,登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本願商標(色彩は原本参照のこと。)



審理終結日 2017-09-28 
結審通知日 2017-10-03 
審決日 2017-10-17 
出願番号 商願2016-44062(T2016-44062) 
審決分類 T 1 8・ 261- Z (W43)
T 1 8・ 262- Z (W43)
T 1 8・ 263- Z (W43)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 旦 克昌大森 友子 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 網谷 麻里子
酒井 福造
商標の称呼 テッパンクシヤキサクラ、サクラ、サキクラ 
代理人 西村 竜平 

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