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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0916
審判 全部申立て  登録を維持 W0916
審判 全部申立て  登録を維持 W0916
審判 全部申立て  登録を維持 W0916
審判 全部申立て  登録を維持 W0916
管理番号 1339338 
異議申立番号 異議2017-900365 
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-04 
確定日 2018-03-26 
異議申立件数
事件の表示 登録第5978523号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5978523号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5978523号商標(以下「本件商標」という。)は,「現代の理論」の文字を標準文字で表してなり,平成28年4月9日に登録出願,第9類「電子印刷物」及び第16類「印刷物」を指定商品として,同29年8月29日に登録査定され,同年9月8日に設定登録された。
そして,本件商標の商標権の登録は,平成29年10月3日に商標公報に掲載され,本件商標の商標登録に対する登録異議の申立ては,申立日を,同年12月4日とするものである。

2 引用商標(標章)
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標(標章)は次のとおりである。
(1)申立人が引用する商標(以下「引用商標」という。)は,「現代の理論」の文字からなり,同人等が,商品「雑誌」(季刊誌)について使用しているとするものである。
(2)申立人が引用する標章(以下「引用標章」という。)は,「現代の理論」の文字からなり,同人がその略称とするものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第10号,同項第8号,同項第15号,同項第19号及び同法第3条第1項柱書に違反して登録されたものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第58号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号について
ア 申立理由の要約
申立人は,過去において季刊誌「現代の理論」を発行し,かつ,現在においても同誌を発行しており,その発行経緯等に鑑みれば,「現代の理論」は申立人が使用しているものと周知されている。
仮に「現代の理論」が申立人の周知商標でなかったとしても,少なくとも商標権者以外の者が発行しているものとして周知されている。
したがって,本件商標は,他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であり,その商品について使用するものである。よって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第10号に違反してなされたものである。以下,詳述する。
イ 雑誌「現代の理論」について
(ア)雑誌「現代の理論」は,昭和34年5月に発刊が開始された月刊雑誌である。雑誌「現代の理論」は発行を一時中断したが,昭和39年1月に発行が再開され,平成1年12月の発行を最後に休刊するまで,約26年間発行されていた。
(イ)平成14年2月9日,文京区民センターで行われたフロント(社会主義同盟)40周年新春の集いにおいて,雑誌「現代の理論」発行の中心的人物のうちご存命だったAが,同誌の再発行を呼びかけ,約2年間の準備期間を経て,平成16年6月,季刊誌「現代の理論」準備号が発行された。
季刊誌「現代の理論」を発行することを主目的の1つとして設立されたのが申立人であり(甲1),申立人は法人化する前から,「NPO現代の理論」との名称で,季刊誌「現代の理論」の発行準備を行い,その準備号を発行した。季刊誌「現代の理論」創刊準備号の発行人は,フロント代表であり申立人設立時の代表理事である山田勝であり,発行所は「言論NPO・現代の理論」,すなわち,法人化する前の申立人である(甲52)。
季刊誌「現代の理論」は,平成16年10月に「創刊号」が発行され,平成17年からは年4回発行された。平成17年夏号までの発行人は,準備号と同様に山田勝であり,発行所は言論NPO・現代の理論,すなわち,法人化する前の申立人である(甲2?甲5)。
平成17年7月15日に申立人が法人となった後も,申立人は,平成19年4月まで季刊誌「現代の理論」を発行した(甲6?甲11)。
(ウ)平成19年6月,「現代の理論」発行事業が赤字だったこと等から,季刊誌「現代の理論」の発売を担当していた株式会社明石書店(以下「明石書店」という。)が,申立人から同誌の出版権の無償譲渡を受け,同誌において「現代の理論」を独占的に使用することを許諾されて「現代の理論」を発行することとなった。
その後,明石書店が季刊誌「現代の理論」を発行していたが,「現代の理論」発行事業の赤字に耐えられなくなり,明石書店として同誌の発行事業を継続できないとの結論に至り,平成24年4月をもって再度休刊することとなった。
(エ)明石書店が季刊誌「現代の理論」発行事業から撤退することとなったことを受け,明石書店代表取締役と申立人理事山田勝とが協議を行い,明石書店は,もともと同誌を発行してきた申立人が引き続き発行することが妥当であるということとなり,季刊誌「現代の理論」の出版は,明石書店から申立人へと譲渡(返還)され,また同社の「現代の理論」の独占的使用権も消滅した。
その後,申立人は,季刊誌「現代の理論」を再度発行するための準備を進めた。
申立人は,平成20年2月から平成28年4月までの間,雑誌「FORUM OPINION NPO現代の理論・社会フォーラム」を年4回発行していたところ(甲12?甲43),同誌32号にて平成28年6月から季刊誌「現代の理論」の発行を再開することを周知した(甲43)。
また,平成28年2月,季刊誌「現代の理論」デモ版を発行し(甲44),平成28年6月より同誌の発行再開を周知した。
平成28年6月,申立人は,雑誌「FORUM OPINION」を改題し,季刊誌「現代の理論」の発行を再開した(甲45)。その後,申立人は,同誌を4回発行し(甲46?甲49),平成29年10月には,株式会社同時代社が発売を担当して,季刊誌「現代の理論」2017秋号を発行し,現在でも発行を継続している(甲50)。
ウ 本件商標が他人の周知商標であること
上記のとおり,雑誌「現代の理論」は,昭和34年に発刊され,Aの呼びかけにより,平成16年に申立人が発行を再開させたものである。
申立人は,Aの呼びかけにより,雑誌「現代の理論」発行の再開を主目的の1つとして設立されたNPO法人であり,設立前から,季刊誌「現代の理論」の発行準備の中心であり,季刊誌「現代の理論」を発行してきたし,現在でも季刊誌「現代の理論」を発行している。かかる事実経緯に鑑みれば,「現代の理論」は,申立人が使用しているものと周知されている。
本件商標は,申立人が過去において出版し,かつ,現在においても出版している季刊誌「現代の理論」に係る「現代の理論」という周知商標と同一あるいは類似関係にある。
既に述べたとおり,季刊誌「現代の理論」の発行は,申立人若しくは明石書店のいずれかであり,商標権者若しくは編集委員会なるものが,季刊誌「現代の理論」を発行したことは,これまでに一度もない。
したがって,少なくとも商標権者にとっては,「他人」の周知商標であるから,本件商標は登録を受けることはできない。
よって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第10号に違反してなされたものである。
エ 登録査定の誤りについて
(ア)登録査定
平成29年8月30日付け「利用状況のお知らせ」には,a)申立人発行に係る雑誌「現代の理論」の題号の使用は,本件商標登録出願より後の平成28年6月からであること,b)申立人発行に係る雑誌「現代の理論」は,「FORUM OPINION」という雑誌を改題して発行したもので,1959年に創刊された雑誌「現代の理論」の題号が継続的に使用されたことについて疑義があることを理由として,商標法第4条第1項第10号を維持することは困難であると判断した旨が記載されている。
しかし,本件登録査定は,a)b)ともに事実認定が誤っており,不当である。
以下,詳述する。
(イ)申立人による題号使用の時期(上記a)について)
登録査定が認定した平成28年6月は,申立人が「FORUM OPINION」を改題し,季刊誌「現代の理論」の発行を再開した時点である。
しかし,既に述べたとおり,申立人は,昭和34年に創刊された雑誌「現代の理論」を受け継いで,平成16年6月から季刊誌「現代の理論」を発行し,その題字を使用していた。
平成19年6月から平成24年4月までの間は,季刊誌「現代の理論」を出版する権利を明石書店に譲渡し,同誌に「現代の理論」の題字を使用する権利は,同社に独占的に使用許諾されていたから,申立人は,「FORUM OPINION」を発行していた。
しかし,平成24年4月,明石書店が季刊誌「現代の理論」発行事業から撤退したため,申立人は,明石書店から同誌を出版する権利を返還してもらい,同時に同社の上記の独占的使用許諾権は消滅した。
そこで,申立人は,季刊誌「現代の理論」の発行を再開したものである。
したがって,申立人は,平成16年6月から「現代の理論」の題字を使用してきたものである。
また,申立人が季刊誌「現代の理論」の発行を再開したのは平成28年6月ではあるが,申立人は,平成28年2月に同誌デモ版を発行しており,平成28年2月の時点で,「現代の理論」の題字の使用を再開している(甲44)。
以上より,申立人が「現代の理論」の題号使用を開始したのは平成28年6月とすることは事実誤認である。
(ウ)題号の継続性(上記b)について)
確かに,申立人は,季刊誌「現代の理論」の発行再開にあたっては,「FORUM OPINION」を改題して発行する形式をとっている。
しかし,これは,「FORUM OPINION」を定期購読している読者との契約の関係等からそのような形式をとったにすぎず,その実体は季刊誌「現代の理論」の発行再開である。
季刊誌「現代の理論」は,平成16年以降発行していた季刊誌「現代の理論」と同様の形式で発行しており,「FORUM OPINION」とは形式も文章量も異なる(甲51)ため,単なる「改題」とみるのは,実体を無視した形式的判断であるといわざるを得ない。
季刊誌「現代の理論」の読者は,昭和34年から発行されてきた雑誌「現代の理論」と無関係にこれを捉えるものはほとんどおらず,その継続性を前提としている。
よって,申立人が発行する季刊誌「現代の理論」は,昭和34年に創刊された雑誌「現代の理論」の題号が継続的に使用されているものである。
なお,平成29年3月24日付け意見書(甲53。以下「意見書」という。)添付資料6には,明石書店と現代の理論編集委員会が連名で,平成24年4月をもって「現代の理論」は終刊となる旨の記載があるが,これは明石書店が発行する季刊誌「現代の理論」は発行を終了するという趣旨のお知らせにすぎず,これをもって季刊誌「現代の理論」の歴史が終わったとみることはできない。これは,商標権者が,従来の季刊誌「現代の理論」と季刊「現代の理論」デジタルの連続性を主張していることからも明らかである。
(エ)小括
以上より,本件商標の登録査定は,判断の前提となる事実に事実誤認があり,失当である。
オ 商標権者の主張について
(ア)本件商標は,平成28年11月28日付けで商標法第4条第1項第10号の拒絶理由が通知されていたが,意見書が提出された後,登録査定となった。
しかし,意見書に記載された事実には虚偽の事実が含まれており,主張も不合理である,また,提出された添付資料については証拠価値がないものも含まれている。したがって,意見書を前提とした判断は誤りである。以下詳述する。
(イ)商標権者は,意見書において,「2004年,以前の雑誌『現代の理論』に関与した有志を中心に発刊準備委員会・編集委員会をつくり6月に季刊で創刊(いわば第3次『現代の理論』の出発で,現在の雑誌『現代の理論』WEB版,デジタル版につながる)。」と主張するが,事実と異なる。
既に述べたとおり,2004年に雑誌「現代の理論」の発行再開に向けて設立されたのは申立人であり,商標権者が主張する編集委員会ではない。そもそも,編集委員会というのは,編集を担当するものであり,発行機関ではないから,主張自体失当である。
商標権者は,意見書において,2007年7月,財政難のため,現代の理論編集委員会が,明石書店に出版権を無償譲渡することを決断した旨主張するが,編集委員会は出版権を持たないため,出版権の無償譲渡を決める権限もなく,それを決断することなど不可能であり,主張自体失当である。
また,意見書には,「第3次『現代の理論』の発行を目的として編集委員会を編成(形式として非営利活動法人を設立)した。」として,申立人が形式的な存在であるとの主張が記載されている。
しかし,既に述べたような客観的事実経緯を前提とすれば,申立人が実体を伴った存在であることは明らかであり,商標権者の主張が事実と異なることは明白である。
商標権者はかつて申立人の理事を務めており,申立人が実質的な存在であったことを十分認識している。認識しているにもかかわらず,このような虚偽主張を行うことは,極めて悪質であるといわざるを得ない。
商標権者は,自らを現代の理論編集委員会であると主張し,雑誌「現代の理論」の正当な継承者であると主張したいがために,殊更,申立人を形式的存在であるとの虚偽事実を主張しているが,これは,裏を返せば,申立人が実体を伴った法人であれば,自らが「現代の理論」の継承者であることについて疑義が生じることを,大野隆自身が理解していることの証左である。
(ウ)意見書には,2007年3月3日に申立人理事会が申立人の解散を議決し,山田勝が理事長を辞任したため,商標権者が理事長代行となって総会を開催し,山田勝がNPOの組織だけは残してほしいと懇願したため,雑誌「現代の理論」とは無関係であることを決定し,別の目的を持った組織としてスタートした旨の主張が記載されているが,全く事実と異なる。
そもそも,商標権者が主張するとおり,申立人が形式的な存在なのであれば,このような議論にすらならないのであるから,商標権者の主張はこの点でも矛盾しており,論理的に破綻しているといわざるを得ない。
2007年の理事会及び総会の混乱は,商標権者らが申立人の解散を企てたために生じたものであり,最終的には申立人総会にて申立人の解散は否決され,その混乱は収束した。申立人総会にて申立人解散が否決されたのであるから,山田が申立人の存続を商標権者に懇願するはずはないし,そもそも,申立人における商標権者の権限はさほど大きくないから,商標権者にそのような依頼をすることはあり得ない。
申立人は,明石書店に季刊誌「現代の理論」の出版権を譲渡したことから,いったんは同誌発行事業から離れることとなったが,明石書店が同誌発行事業から撤退する際,その権利を返還してもらい,現在,同誌の発行を再開している。
よって,申立人が季刊誌「現代の理論」との関係を断ち切って別の道を歩んだなどという商標権者の主張は,事実と明らかに異なり,失当である。
なお,意見書の添付2の文書は,タイトルに(案)と記されているとおり,何かの案にすぎず,また,誰が何の目的でいつ作成されたものなのかも不明であり,客観的資料としての証拠価値はない。
(エ)意見書には,季刊誌「現代の理論」の編集・発行に関する一切の権利は,明石書店から,編集委員会に戻ることになったとの主張が記載されている。
しかし,明石書店と商標権者らのグループは,金銭的問題により,いわゆる喧嘩別れとなっており,明石書店は,商標権者らに季刊誌「現代の理論」の発行に関する権利を譲渡していない。
既に述べたとおり,明石書店が季刊誌「現代の理論」の発行事業から撤退した際,明石書店は,申立人に対し同誌の出版権を譲渡(返還)したのである。
そもそも,商標権者は季刊誌「現代の理論」の発行を行うほどの経済的負担ができないことを明言しており,同誌を発行することができないのであるから,発行に関する権利の譲渡を受ける合理的理由もない。
なお,かかる商標権者の主張を裏付ける資料として,Bの陳述書が添付されているが,Bは,陳述書作成時点で,明石書店の役員でも従業員でもない。同陳述書の記載内容は,明石書店の見解ではなく,B個人の見解にすぎず,また,陳述書内容の信用性についても極めて低いといわざるを得ない。
また,意見書添付資料4「明石との確認について」と題する書面は,商標権者らが一方的に作成している文書であり,明石書店との確認書とはいえず,客観的資料としての証拠価値はない。
(オ)商標権者は,意見書において,季刊誌「現代の理論」は,現代の理論編集委員会が発行してきたかのような主張を行い,さらに,自らが現代の理論編集委員会の代表者であるかのような主張を行っている。
季刊誌「現代の理論」を商標権者及び編集委員会が発行したことはないことは既に述べたとおりであるが,そもそも,商標権者は,現代の理論編集委員会の代表ですらない。
すなわち,意見書には,明石書店との協議を行ったのは,商標権者が主張する編集委員会の代表者Cらである旨記載されていることから,季刊誌「現代の理論」が明石書店から発刊されていた時期の中心メンバーだったのはCであることがうかがわれる。しかし,商標権者が現代の理論編集委員会の代表である旨を記載した陳述書は,D及びFのみの作成名義であり,Cら中心メンバーはかかる陳述書の作成者となっていない。これは,商標権者が編集委員会の代表ですらないことを示している。この点でも,商標権者の主張は失当であるといわざるを得ない。
(カ)以上より,意見書記載の主張は失当であり,これを前提とする本件商標の登録査定は誤りといわざるを得ない。
(2)商標法第4条第1項第8号について
ア 申立人の略称
申立人は,平成17年7月15日,季刊誌「現代の理論」の発行事業を主目的の1つとして設立されたNPO法人である。
申立人は,設立時は「特定非営利活動法人言論NPO・現代の理論」との名称であり,平成20年5月9日に「特定非営利活動法人NPO現代の理論・社会フォーラム」と改称して現在に至っている(甲1)。また,申立人は,設立前から,「言論NPO・現代の理論」との名称で雑誌「現代の理論」を発行している(甲2?甲5)。すなわち,申立人の名称には,一貫して「現代の理論」が含まれている。
よって,申立人の名称のうち最も重要な部分は,設立時から一貫して使用し,かつ,発行季刊誌「現代の理論」の名称でもある「現代の理論」であり,「現代の理論」は申立人の略称として定着している。
イ 申立人が雑誌「現代の理論」発行者として著名であること
既に述べたとおり,雑誌「現代の理論」は,その歴史も長く,社会運動(市民運動や労働運動)関係者,政治関係者,法律関係者や出版業界関係者等の間で著名な雑誌である。
申立人は,それを継承して発行事業を再開したNPO法人として著名な団体である。
申立人が「現代の理論」の歴史を継承していることは,季刊誌「現代の理論」準備号(甲52)の冒頭「『現代の理論』の目指すもの」という座談会内で「現代の理論を再発行しようということになりました」「『現代の理論』の遺産や伝統をどう活かしていくか」と述べられていること(甲2)や,多くの知識人及び著名人が,現代の理論創刊に寄せてコメントを掲載していること(甲52)等からも明らかである。
なお,意見書においても,これを「第3次『現代の理論』」と述べてその継続性を認めている。
申立人は,平成19年6月から平成24年4月までの間,明石書店に季刊誌「現代の理論」の発行を任せ,自らは,平成20年2月から「FORUM OPINION」を年4回発行することとなった(甲12?甲43)。この際にも,申立人は,NPO現代の理論という略称を継続して使用している。
そして,上記述べたとおり,申立人は,季刊誌「現代の理論」を発行する権利を明石書店から譲渡(返還)してもらい,平成28年から同誌の発行を再開した。
ウ 申立人の略称「現代の理論」がその他の活動によっても著名であること
申立人は,フォーラムやシンポジウムの開催,研究会の開催等を定期的に行っている(甲54)。
申立人は,定期的に複数の研究会を定期的に開催しており,例えば,「憲法・平和研究会」などがある(甲55)。
また,申立人は,フォーラムやシンポジウムも開催しており,例えば,平成28年1月には,「NPO現代の理論・社会フォーラム新春の集い」等を開催している(甲56)。
このように,申立人は,雑誌「現代の理論」の発行以外の活動も幅広く行っており,申立人の略称は著名である。
エ 小括
本件商標は,申立人の著名な略称である「現代の理論」を含んでいる。
したがって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第8号に違反してなされたものである。
(3)商標法第4条第1項第15号について
仮に,申立人が使用している「現代の理論」が周知商標とまでいえないとしても,上記述べたような季刊誌「現代の理論」の発行経緯や発行状況に鑑みれば,本件商標は,申立人の業務に係る商品である季刊誌「現代の理論」と混同を生じるおそれがあることは明らかである。
したがって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものである。
(4)商標法第4条第1項第19号について
既に述べたとおり,申立人の業務に係る商品である季刊誌「現代の理論」は,需要者の間に広く認識されているところ,商標権者は,申立人に季刊誌「現代の理論」を出版させないことを目的として本件商標を登録した。
すなわち,申立人が雑誌「現代の理論」を再度発刊することは,平成27年8月発行の「月間先駆」や,平成27年11月発行の「沖浦和光先生を偲ぶ」と題する冊子等に記載されたり(甲57),平成28年3月21日に行われた「沖浦和光さんを偲ぶ会」でも同冊子が配布されたりすること(甲58)等により,周知されていた。そして,申立人が,平成28年2月に季刊誌「現代の理論」デモ版(甲44)を発行したことにより,近日中に現実化することが明らかとなった。商標権者は,平成28年初めころ,申立人が季刊誌「現代の理論」を発行することを知り,それを妨害するために,本件商標の登録申請をしたものである。
商標権者も,意見書(甲53)において,申立人に「FORUM OPINION」を「現代の理論」に改題することを断念するように申し入れたが拒否されたので,本件商標の登録申請を行ったことを明らかにしている。
そもそも,商標権者は一時期は申立人の理事も務めていた者であるが,申立人の方針に賛同しなかったために,申立人から離脱することを余儀なくされた者である。商標権者が,雑誌「現代の理論」を出版したことは一度もなく,また,今後も雑誌として「現代の理論」を出版する予定もない。さらに,雑誌発行の経済的負担等を勘案すれば,今後,商標権者が雑誌「現代の理論」を発刊することは事実上不可能である。
既に述べたとおり,申立人は,平成16年6月から季刊誌「現代の理論」を発行し,その題字を使用していた。平成19年6月から平成24年4月までの間は,一時的に当該使用権を明石書店に独占的に付与していたために,自らは使用しなかったものの,平成16年から一貫して季刊誌「現代の理論」にて,「現代の理論」を使用し,またその権限を有していたのは,申立人である。申立人によって季刊誌「現代の理論」の表題として使用されてきた「現代の理論」は,その歴史的経緯からして,少なくとも同誌の購読者間では,多大な信用力を有しているといわざるを得ない。商標権者が,自分では雑誌「現代の理論」を出版しないにもかかわらず,いわば抜け駆け的に本件商標を出願したのは,申立人に季刊誌「現代の理論」を発刊させないようにし,自らが当該商標の信用力を独占的に利用するために,本件商標に係る指定商品として電子印刷物のみでなく,印刷物を含め出願したものであり,本件商標は不正の目的をもって登録を得たものといえる。また,憲法で認められた言論の自由を抑制するための商標登録制度利用であるから,不正目的の商標登録である。
なお,商標権者は,意見書において「『現代の理論』の周知性を築き上げてきたのは,『現代の理論編集委員会』であり,『NPOフォーラム』でないことは明らかである。」としているが,事実と異なる。雑誌「現代の理論」の周知性を築き上げてきたのは,多くの社会運動家たちであり,決して商標権者や編集委員会ではない。商標権者の主張は明らかに事実と異なり,決して容認することはできない。
商標権者が行っている「現代の理論」デジタル版と申立人が発行している雑誌「現代の理論」は,一方はWEB上で,他方は紙面でという活動領域のすみ分けが可能であり,申立人は従来よりそれを提案してきた。雑誌「現代の理論」を再開してほしいというAの願いを受け,申立人が設立され,雑誌「現代の理論」を発行したのは,議論の場を設置し,社会をより良くしようとする活動の一環である。そのようなそもそもの目的を無視し,「現代の理論」を排他的に独占使用しようとする商標権者の目的は,不当であるといわざるを得ない。したがって,本件商標登録は,商標法第4条第1項第19号に違反してなされたものである。
なお,申立人としては,本件商標の指定商品全てについてその登録を取り消すことを主張するが,仮に百歩譲って,申立人の前述の申入れに鑑み,少なくとも,本件商標の指定商品のうち,第16類「印刷物」を指定商品としての登録は,取り消されるべきであるといわざるを得ない。
(5)商標法第3条柱書について
商標権者は,「現代の理論」について,「印刷物」での使用をする予定がないことを明言しており,かつ,「印刷物」での使用はできない客観的状況にある。
すなわち,商標権者には「電子印刷物」における本件商標使用意思はあるが,「印刷物」における本件商標使用意思がない。
よって,本件商標登録は,商標法第3条第1項柱書に違反してなされたものであるから,少なくとも第16類「印刷物」を指定商品としての登録は,取り消されるべきである。

4 当審の判断
(1)引用商標等の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,次の事実を認めることができる。
(ア)申立人は,平成16年6月に季刊誌「現代の理論」の創刊準備号を,同年10月に同誌創刊号を発行し,その後平成19年4月発行のvol.11まで継続して発行した(甲2?甲11,甲52)。
(イ)申立人は,平成20年2月頃に季刊誌「FORUM OPINION」Vol.1を発行し,その後平成28年3月頃発行のVol.32まで継続して発行した(甲12?甲43,甲51)。
そして,Vol.32には「『現代の理論』に改題」のタイトルで,「『FORUM OPINION』は次号=33号から改題し,『現代の理論』となる」旨が記載されている(甲43)。
(ウ)申立人は,平成28年2月頃に季刊誌「現代の理論」31号[デモ版]を,同年7月に季刊誌「現代の理論」通巻33号を発行し,その後平成29年10月発行の通巻38号まで継続して発行した(甲44?甲50)。
そして,上記[デモ版]の表紙の題号の下に,「NPO現代の理論・社会フォーラム[FORUM OPINION]改題」との記載,通巻33号の表紙の題号の下に,「改題1号(季刊・FORUM OPINION・通巻33号)」との記載がある(甲44,甲45)。
(エ)東京都千代田区外神田在の株式会社明石書店(明石書店)は,平成19年頃から平成24年4月頃まで季刊誌「現代の理論」を発行していたことが推認できる(甲53)。
(オ)しかしながら,申立人及び明石書店発行の季刊誌「現代の理論」の発行部数や販売部数に係る主張はなく,また,それらを示す証左は見いだせない。
また,申立人が「現代の理論」と略称されていることを示す証左も見いだせない。
イ 上記アの事実からすれば,申立人は「現代の理論」という題号の季刊誌を,その創刊準備号及びデモ版を含めて,平成16年6月から平成19年4月までの間,並びに,平成28年2月頃から少なくとも平成29年10月までの間に発行していたことが認められ,また,明石書店は「現代の理論」という題号の季刊誌を平成19年頃から平成24年4月頃まで発行していたことが推認できることから,申立人及び明石書店は,それぞれの期間において引用商標を使用していたことが認められる。
しかしながら,それら季刊誌の発行部数や販売部数を示す証左はなく,それらを確認できないから,引用商標は,本件商標の登録出願の日前ないし登録査定時において,他人(申立人及び明石書店)の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
さらに,「現代の理論」という題号の季刊誌は,本件商標の登録出願の日(平成28年4月9日)前においては,それに先立つ平成24年5月から平成28年2月(デモ版の発行)までの3年半以上もの間,発行はなく,平成28年2月にデモ版が発行されたのみであることからも,引用商標が本件商標の登録出願の日前において,他人(申立人及び明石書店)の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また,申立人が「現代の理論」と略称されている事実を確認できないから,引用標章は申立人の著名な略称と認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第10号及び同項第19号について
本件商標と引用商標は,それぞれ上記1及び上記2(1)のとおり,いずれも「現代の理論」の文字からなるものであるから,同一又は類似の商標である。
しかしながら,上記(1)のとおり,引用商標は,他人(申立人及び明石書店)の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
そうすると,本件商標は,引用商標と同一又は類似の商標であるものの,引用商標が他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであるから,商標法第4条第1項第10号に該当するものとはいえず,また,同項第19号の要件を欠くものであるから,同項第19号に該当するものとはいえない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と引用商標は,上記(2)のとおり,いずれも「現代の理論」の文字からなる同一又は類似の商標であり,その類似の程度は高いものといえる。
しかしながら,上記(1)のとおり,引用商標は,他人(申立人及び明石書店)の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
そうすると,本件商標は,引用商標と同一又は類似の商標であるものの,引用商標が他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであるから,本件商標に接する取引者,需要者が引用商標を連想又は想起するものということはできない。
してみれば,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品について使用しても,取引者,需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく,その商品が他人(申立人及び明石書店)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものとはいえない。
イ なお,申立人は引用商標が周知商標とまでいえないとしても,季刊誌「現代の理論」の発行経緯,発行状況に鑑みれば,本件商標は申立人の業務に係る季刊誌「現代の理論」と混同を生じるおそれがある旨主張している。
しかしながら,商標法第4条第1項第15号は,周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し,商標の自他識別機能を保護することによって,商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,取引者,需要者の利益を保護することを目的とするものであるから,保護されるべき商標が周知著名であることを要すると解すべきである(参考:平成18年(行ケ)第10106号)。
したがって,申立人の主張は,その前提において採用できない。
(4)商標法第4条第1項第8号について
上記(1)のとおり,引用標章は,申立人の著名な略称と認めることはできないものである。
そうすると,本件商標は,引用標章と同一の構成文字からなるものであるが,引用標章が申立人の著名な略称と認めることはできないものであるから,他人(申立人)の著名な略称を含む商標ということはできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当するものとはいえない。
(5)商標法第3条第1項柱書について
申立人は,商標権者が本件商標について「印刷物」での使用をする予定がないことを明言しており,かつ,印刷物での使用はできない客観的状況にあるから,「印刷物」における本件商標の使用意思がないので,本件商標はその指定商品中第16類「印刷物」について商標法第3条第1項柱書に違反する旨主張している。
しかしながら,商標権者が第16類「印刷物」について本件商標を使用しているか又は使用する予定があるかについて,格別に合理的疑義があったものとは認められないし,他に,商標権者が本件商標を「印刷物」について使用をする予定がない旨明言している事実を示す証左など,かかる合理的疑義があったものと認めるに足りる証左も見いだせない。
そして,一般に書籍や雑誌の内容を印刷物(紙媒体)と電子印刷物(電子媒体)の双方で発行するケースは少なくなく,かつ商標権者が電子印刷物について本件商標を使用していることからしても,商標権者が「印刷物」について本件商標を将来使用する意思があることを否定することはできない。
したがって,本件商標は,商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものとはいえない。
(6)むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第8号,同項第10号,同項第15号,同項第19号及び同法第3条第1項柱書のいずれにも違反してされたものとはいえないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
異議決定日 2018-03-15 
出願番号 商願2016-41144(T2016-41144) 
審決分類 T 1 651・ 255- Y (W0916)
T 1 651・ 222- Y (W0916)
T 1 651・ 23- Y (W0916)
T 1 651・ 18- Y (W0916)
T 1 651・ 271- Y (W0916)
最終処分 維持 
前審関与審査官 池田 光治 
特許庁審判長 薩摩 純一
特許庁審判官 冨澤 武志
大森 友子
登録日 2017-09-08 
登録番号 商標登録第5978523号(T5978523) 
権利者 大野 ▲隆▼
商標の称呼 ゲンダイノリロン 
代理人 佐原 隆一 
代理人 山田 さくら 
代理人 三尾 美枝子 
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