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審決分類 |
審判 全部無効 称呼類似 無効としない W31 審判 全部無効 外観類似 無効としない W31 審判 全部無効 観念類似 無効としない W31 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない W31 |
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管理番号 | 1339312 |
審判番号 | 無効2017-890036 |
総通号数 | 221 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2018-05-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2017-06-05 |
確定日 | 2018-03-26 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5627492号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5627492号商標(以下「本件商標」という。)は、「軽井沢貴婦人」の文字を標準文字で表してなり、平成25年6月27日に登録出願、第31類「いちご,その他の果実,いちごのドライフラワー,いちごの花,いちごの種子,いちごの苗,いちごの苗木」を指定商品として、同年10月1日に登録査定、同年11月1日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第2710002号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおり、「貴婦人」の文字を横書きしてなり、昭和62年10月6日に登録出願、第32類「果実」を指定商品として、平成7年9月29日に設定登録され、その後、同17年11月30日に指定商品を第31類「果実」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。 第3 請求人の主張 請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を審判請求書及び弁駁書において要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。 1 審判請求書における主張 本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第16号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきものである。 (1)商標法第4条第1項第11号違反について ア 本件商標と引用商標との類否 両商標を比較すると、「貴婦人」の文字が共通し、「軽井沢」の文字のみが異なるものである。 しかし、「軽井沢」の文字は、長野県北佐久郡軽井沢町の地名を示し、商品の産地・販売地を表示するものであるから、本件商標の要部は「貴婦人」である。 したがって、本件商標の要部は、引用商標と同一であることから、全体として類似である。 イ 指定商品について 本件商標の指定商品中の「いちご,その他の果実」と引用商標の指定商品「果実」は、同一・類似の商品である。 ウ 結論 本件商標は、引用商標と比較して、「軽井沢」の文字の有無のみであり、「軽井沢」の文字は、商品の産地・販売地を表示するものであり、本件商標の要部は「貴婦人」であり、その指定商品も同一又は類似するものであり、明らかに商標法第4条第1項第11号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第16号違反について 上述のように、本件商標は、標章に「軽井沢」との地名があるため、指定商品は、「長野県北佐久郡軽井沢町で生産又は販売されるいちご・その他の果実・いちごのドライフラワー・いちごの花・いちごの種子・いちごの苗・いちごの苗木」以外のものは品質誤認をするものである。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。 2 弁駁書における主張 (1)商標法第4条第1項第11号について ア 被請求人は、本件商標は「カルイザワキフジン」の称呼が全体としてよどみなく一気一連に称呼し得ると主張している。しかし、商標審査基準では、「長い称呼を有するため、又は結合商標の一部が特に顕著であるため、その一部分によって簡略化される可能性がある商標は、原則として、簡略化される可能性がある部分のみからなる商標と類似する。」とされている。「軽井沢」は、日本語として地名を表す1つの意味合いとして持つひとまとまりの言葉であり、残りの「貴婦人」も、これ自身で意味合いを持つ言葉であることから、「軽井沢」と「貴婦人」とを分離することは通常である。 また、「軽井沢」の文字は、地名であるので、格別の自他商品識別力を有しないものであるか、単なる産地であるとの認識にとどまるものである。 よって、本件商標は、「軽井沢」と「貴婦人」のそれぞれで看取されるべきであり、「貴婦人」の部分に着目した場合には、引用商標と類似するのは明らかである。 また、被請求人は、「軽井沢貴婦人」と「貴婦人」とでは、「軽井沢に居住する上流の貴婦人」と「上流の貴婦人」の観念が著しく相違する旨主張しているが、単なる「上流の貴婦人」が軽井沢に居住することはあり得るし、両者は、類似するものである。 なお、被請求人の公式フェイスブックにて、スタッフから投稿された記事(甲4)には、「軽井沢貴婦人」ではなく「貴婦人」とあり、被請求人自らが普段から「貴婦人」と呼んで簡略している事実がある。 以上のことから、必ずしもその構成部分全体の名称「軽井沢貴婦人」によって称呼、観念されず、その一部「貴婦人」だけによって、簡略に称呼、観念されるものである。 イ 被請求人が提示した登録商標の事例は、「貴婦人」に対して地名の文字と「の」を付けたものである。 しかし、本件商標は、「軽井沢の貴婦人」ではなく、「軽井沢貴婦人」であり、これらの事例は該当しないものである。名詞と名詞の間に「の」があると、これらの2つの名詞のつながりが強くなり一体不可分なものとなり、上記の事例では、相互に非類似とされ登録されたものである。 逆に、「の」の文字がなく、「貴婦人」の文字に単に地名を付けたものの、登録事例はない。また、いずれの登録事例も本件の指定商品とは異なるのもので、本件にそのまま当てはまるものではない。 したがって、本件商標と引用商標は、類似するものである。 (2)商標法第4条第1項第16号について 被請求人は、「軽井沢は避暑地・別荘地として有名であり、高級イメージの軽井沢と上流イメージの貴婦人が結合してなる軽井沢貴婦人の文字は、全体として、軽井沢に居住する貴婦人の意味合いを生じるとするのが相当である。 したがって、軽井沢の文字は、商品の産地・販売地を表示するものではない」と主張するが、「軽井沢」が地名であることには変わりなく、産地として著名でないとしても何らかの関係性があると容易に想定でき、軽井沢に居住する貴婦人が販売に関与しているとすれば、やはり、商標法第4条第1項第16号に該当する。 第4 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求めると主張し、その理由を審判事件答弁書において、要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 商標法第4条第1項第11号について 本件商標は、「軽井沢貴婦人」の文字を標準文字で書してなるところ、構成各文字は、同じ書体、同じ大きさ、等間隔で、外観上まとまりよく一体的に表してなるものであり、これより生じる「カルイザワキフジン」の称呼は、全体として、よどみなく一気一連に称呼し得るものである。 そもそも「商標はその構成部分全体によって他人の商標と識別すべく考案されているものであるから、みだりに、商標構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判定することは許されない」(最高裁昭和37年(オ)第953号)と判示されており、分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標に限って、分離観察すべき対象とすべきである。 これを本件商標についてみれば、上記各文字から構成される本件商標が、その構成中前半の「軽井沢」の文字部分で分断して後半の「貴婦人」の文字部分のみを観察するのが相当であるとする理由は、何ら見いだすことができない。 むしろ、標準文字により同一の書体をもって同一の大きさで、かつ、等間隔で表されていることからすれば、その構成全体の外観上の一体不可分性は、決して弱いものということはできない。 本件商標の構成中、「軽井沢」の文字は、「長野県中東部、北佐久郡の地名。浅間山南東麓の標高約1000メートルの高原にある。中山(なかせん)道の宿場町として発展。明治中期以来、避暑地・別荘地。」(国語辞書である「デジタル大辞泉」)の意味合いを有し、「貴婦人」の文字は、「身分の高い女性。上流の婦人。」(国語辞書である「大辞泉」)の意味合いを有し、全体として、「軽井沢に居住する上流の婦人」の意味合いが生じるとするのが相当である。 そして、引用商標の「貴婦人」の文字は、「上流の婦人」の意味合いを表すとするのが相当である。 してみれば、本件商標と引用商標とは、前者が「カルイザワキフジン」の称呼、後者が「キフジン」の称呼を生じ、両者は、構成音数を異にする称呼上明らかに区別できるものであり、また、外観上は上記のとおり著しく相違し、観念においても相違するものである。 そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点よりみても、類似しない商標といわざるを得ない。 したがって、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとした請求人の主張は、失当である。 2 商標法第4条第1項第16号について 「軽井沢」は、「避暑地・別荘地。」として有名であり、「軽井沢」がイチゴの産地であるとしても、「避暑地・別荘地。」としての「軽井沢」よりも、イチゴの産地の「軽井沢」は、有名ではない。 してみれば、「避暑地・別荘地」としての高級イメージの「軽井沢」と上流イメージの「貴婦人」が結合してなる「軽井沢貴婦人」の文字は、全体として、「軽井沢に居住する貴婦人」の意味合いを生じるとするのが相当である。 したがって、「軽井沢」の文字は、商品の産地・販売地を表示するものであるという請求人の主張は当たらない。 3 まとめ 以上により、本件商標は、請求人が主張する無効理由に該当しない。 第5 当審の判断 請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係を有する者であることについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理し、判断する。 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は、上記第1のとおり、「軽井沢貴婦人」の文字を標準文字で表してなるものである。 そして、本件商標の構成態様についてみると、本件商標は、同書、同大、等間隔の文字で表されており、全体としてまとまりよく一体に表されているといえるものである。 そうすると、本件商標からは、その構成文字全体に相応して「カルイザワキフジン」の称呼が生じるところ、該「カルイザワキフジン」の称呼も格別冗長なものではなく、無理なく一連に称呼し得るものといえる。 また、本件商標構成中の「軽井沢」の文字が、「長野県東部、北佐久郡にある避暑地。」(広辞苑第六版)の意味を有する語として親しまれたものであり、「貴婦人」の文字も、「身分の高い女性」(広辞苑第六版)の意味を有する語として親しまれたものであるから、本件商標からは、容易に「軽井沢の貴婦人」の観念を生じるといえる。 そうすると、本件商標構成中の「軽井沢」の文字が、「長野県東部、北佐久郡にある避暑地。」の意味を有する語として親しまれたものであるとしても、上記のとおりの本件商標の構成態様並びに本件商標から生じる称呼及び観念を総合勘案すると、本件商標は、一体不可分の商標というべきものである。 以上からすると、本件商標は、「カルイザワキフジン」の称呼のみを生じ、「軽井沢の貴婦人」の観念を生じる商標というのが相当である。 (2)引用商標について 引用商標の構成態様は、別掲のとおり、「貴婦人」の文字を横書きしてなるところ、その構成文字に相応して、「キフジン」の称呼及び「貴婦人」の観念を生じるものである。 (3)本件商標と引用商標との類否について 本件商標と引用商標の構成態様は、上記第1及び第2のとおりであるから、両者の外観は、明らかに異なり、外観上相紛れるおそれのないものである。 次に、本件商標から生じる「カルイザワキフジン」の称呼と引用商標から生じる「キフジン」の称呼とを比較すると、両者は、構成音数に顕著な差異を有するものであるから、称呼上相紛れるおそれのないものである。 さらに、本件商標は、「軽井沢の貴婦人」の観念を生じるものであり、引用商標は、「貴婦人」の観念を生じるものであるから、両者は、明らかに異なり、観念上相紛れるおそれのないものである。 そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。 (4)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否について 本件商標の指定商品中「いちご,その他の果実」は、引用商標の指定商品「果実」に含まれる商品であるから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは、類似するものである。 (5)小結 上記(1)ないし(4)のとおり、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が類似するものであるとしても、本件商標と引用商標とは、非類似の商標というべきものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第16号該当性について 上記1(1)のとおり、本件商標は、「軽井沢の貴婦人」の観念を生じるものであるところ、これからは商品の品質を表示するものとはいえない。 そうすると、本件商標をその指定商品について使用しても、商品の品質の誤認を生ずるおそれはないというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。 3 請求人の主張について (1)請求人は、被請求人の公式フェイスブック(甲4)には、「軽井沢貴婦人」ではなく「貴婦人」とあり、被請求人自らが普段から「貴婦人」と呼んで簡略している事実があるから、本件商標の一部「貴婦人」だけによって、簡略に称呼、観念される旨主張している。 しかしながら、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するか否かを判断するに際し、比較すべき商標は、本件商標の願書に記載した商標と引用商標の願書に記載した商標であるから、この点に関する請求人の主張は採用できない。 (2)請求人は、本件商標は、「軽井沢の貴婦人」ではなく、「軽井沢貴婦人」であり、名詞と名詞の間に「の」があると、これらの2つの名詞のつながりが強くなり一体不可分なものとなるが、「の」の文字がない本件商標と引用商標とは類似する旨主張している。 しかしながら、名詞「A」と名詞「B」の2語を連結してなる「AB」の文字の意味合いを理解するときは、「AのB」のように理解することがあることは明らかであり、また、上記1(1)のとおり、本件商標は、一体不可分の商標というべきものであって、本件商標からは、容易に「軽井沢の貴婦人」の観念を生じるといえるから、この点に関する請求人の主張も採用できない。 4 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第16号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲(引用商標) |
審理終結日 | 2018-01-30 |
結審通知日 | 2018-02-02 |
審決日 | 2018-02-15 |
出願番号 | 商願2013-49524(T2013-49524) |
審決分類 |
T
1
11・
272-
Y
(W31)
T 1 11・ 263- Y (W31) T 1 11・ 261- Y (W31) T 1 11・ 262- Y (W31) |
最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
金子 尚人 |
特許庁審判官 |
小松 里美 大森 健司 |
登録日 | 2013-11-01 |
登録番号 | 商標登録第5627492号(T5627492) |
商標の称呼 | カルイザワキフジン、キフジン |
代理人 | 佐藤 富徳 |
代理人 | 新保 斉 |