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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W42
審判 全部申立て  登録を維持 W42
管理番号 1338387 
異議申立番号 異議2017-900253 
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-08-10 
確定日 2018-03-19 
異議申立件数
事件の表示 登録第5948103号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5948103号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5948103号商標(以下「本件商標」という。)は、「HP MAKER」の文字を標準文字で表してなり、平成27年11月16日に登録出願、第42類「ウェブサイトの制作,電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,ウェブサイト用のコンピュータプログラムの提供,その他の電子計算機用プログラムの提供,他人のウェブサイトの設計・作成・ホスティング又は保守」を指定役務として、同29年4月24日に登録査定、同年5月19日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、コンピュータ関連の分野において、後述するHP社の略称及び商品役務を表すものとして著名性を有しているとして引用する商標は、「HP」の文字からなる標章である(以下「引用商標」という。)。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標について、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第45号証を提出した。
1 申立人及び関連法人の沿革
申立人は、かつて存在した米国法人「Hewlett-Packard Company」(以下「旧HP社」という。)が2015年11月1日(米国時間)をもって、エンタープライズ事業を中心とする「Hewlett Packard Enterprise Co.」(以下「米HPE社」という。)と、主にパーソナルコンピュータ(以下「PC」という。)・プリンティング事業を展開する申立人に分社化されたことにより、誕生した(甲2)。
かかる分社化に伴い、日本においては、旧HP社の日本法人であった「日本ヒューレット・パッカード株式会社」(以下「旧HP社日本法人」という。)が、米HPE社の日本法人としてエンタープライズ事業を承継し、新設会社である「株式会社日本HP」(以下「日本HP社」という。)が、申立人の日本法人としてPC・プリンティング事業を承継した(甲2)。
2 HP社及び引用商標のコンピュータ関連分野における著名性
旧HP社及び旧HP社日本法人、また申立人及び日本HP社(以下、これら4社を合わせて単に「HP社」という。)は、その世界的なシェア(甲3?甲8)の高さが物語る商品役務の品質力、全国に有する販路の活用(甲18?甲20)、多数の宣伝広告(甲21?甲28)により、我が国においてコンピュータ関連の商品役務を提供する会社として著名となっている。
また、HP社は、1939年の創業以来、「HP」の文字を、社名の「Hewlett-Packard」の略称及び同社の商品役務を表すものとして継続的に広告宣伝及びその商品役務に使用してきた(甲29?甲42)。
その結果、引用商標は、コンピュータ関連業界の需要者、取引者のみならず、我が国の一般的な需要者、取引者にも広く浸透し、HP社の略称及び商品役務を表すものとして広く知られる著名な商標となるに至っている。
3 商標法第4条第1項第10号について
上述のとおり、引用商標は、コンピュータ関連の分野において、HP社の略称及び商品役務を表すものとして著名性を有している。HP社は、世界市場ではプリンターやPCの分野においてトップシェア、国内市場でもPCの分野において大きなシェアを有しており、またコンピュータソフトウェアの開発・提供及び保守を行う会社としても、需要者の間に広く認識されている。また、HP社の商品役務に付される商標の多くは、ハウスマークである「HP」の文字の後に、何らかの英文字が続く形となっている。
このようにコンピュータ関連の分野においてHP社を表すものとして高い識別力を有する「HP」の2文字と、英単語「MAKER」との組合せからなる本件商標がその指定役務に使用された場合、これに接する取引者、需要者は、語頭の「HP」の文字に着目し、これがHP社の略称及び役務を表すものと認識する可能性が極めて高いものである。すなわち、本件商標において「HP」の文字は、「MAKER」の文字とは別個独立に、単独でHP社及びその商品役務を表す強い識別標識として機能する。
よって、本件商標は、その指定役務との関係においては、その構成文字全体に相応する「エイチピーメーカー」との称呼を生ずるほか、その構成中の「HP」の文字部分に相応する「エイチピー」との称呼及びHP社の観念を生ずるものであり、本件商標は、HP社の著名商標である「HP」と称呼及び観念において類似の商標である。
HP社は、コンピュータソフトウェアの開発・提供及び保守に関する事業を行う会社としても需要者の間に広く知られているが、その中でもPC用ソフトウェアは、当該ソフトウェアの機能を実現するために必要なスタートアップ・ログイン・管理画面等をPC画面に表示させるものが多く(甲36、甲45)、PC用ソフトウェアの開発・提供・保守は、PC用ウェブサイトの開発・提供・保守とも密接に関連している。また、HP社はダウンロード出来ないコンピュータソフトウェアのみならず、ダウンロード可能なコンピュータソフトウェアも提供しているが、「電子計算機用プログラム」は「電子計算機用プログラムの提供」に類似すると推定される。
よって、本件商標の指定役務は、HP社が行うコンピュータソフトウェアの開発・提供及び保守事業に係る役務と同一又は類似するものである。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
4 商標法第4条第1項第15号について
上述のとおり、「HP」の文字は、コンピュータ関連の分野において、HP社の略称及び商品役務を表すものとして著名性を有している。
また、上記3のとおり、本件商標の指定役務は、HP社が行うコンピュータソフトウェアの開発・提供及び保守事業に係る役務と同一又は類似である。しかも本件商標は、HP社の伝統的な商品役務の名称形式である、「HP」の文字の後に「MAKER」との英文字が続く形となっている。
このような役務分野の類似性と当該分野における引用商標の著名性、HP社の伝統的な商品役務の名称形式といった取引の実情に鑑みれば、本件商標の指定役務に本件商標が使用された場合、これに接した取引者、需要者は、HP社及びその商品役務を表す強い識別標識として機能する語頭の「HP」の文字から、HP社を容易に連想・想起し、本件商標を付した当該役務がHP社の役務であるか、あるいはHP社との間にいわゆる親子会社・系列会社等の緊密な営業上の関係がある者の役務であると誤信するおそれが極めて高いものである。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の著名性について
(1)申立人の提出に係る証拠及び主張によれば、以下の事実を認めることができる。
ア コンピュータ関連商品について
(ア)ウェブサイトにおける2014年3月11日付けの「マイナビニュース」に「世界プリンタ市場、HPがシェアを更に伸ばして首位堅守」の見出しの下、「HPがシェアを更に伸ばす」として「HPは第4四半期の出荷台数が1260万台を突破し、四半期別の総出荷台数では2011年第4四半期以来の最高値を記録するなど、市場において優位なポジションを維持している。前年同期比では5.4%増となり、世界市場全体に占めるシェアは約2ポイント増加して40%近くになった。」の記載がある(甲4)。
(イ)ウェブサイトにおける2017年4月12日付け「PC Watch」に「2017年第1四半期のPC出荷台数は0.6%微増。Lenovoが2位陥落でHPがシェア1位に」の記載がある(甲3)。
(ウ)ウェブサイトにおける2017年2月23日付け「日本経済新聞電子版」に「IDC Japan、2016年の国内トラディショナルPC市場実績値を発表」の見出しの下、「2016年通念のベンダー動向を見ると、・・・デルとHP Inc.が3位タイで東芝を抜く結果となりました。」の記載がある(甲6)。
(エ)ウェブサイトにおける2016年9月26日付け「IDC Japanの発表記事」に「2016年第2四半期 国内インクジェットプリンター/MFP市場動向を発表」の見出しの下、「ベンダー別出荷台数シェアでは、エプソンとキヤノンが大きなシェアを占めています。さらに、この2社にブラザー工業、日本HPを加えた4社で国内インクジェット製品市場全体の約99%に達します。」の記載がある(甲8)。
(オ)各種雑誌、新聞への広告
PC、プリンター等のハードウェアに関する広告において、各種商品とともに、HP社の略称として「HP」の文字が表示され、各商品の名称の語頭には「HP」の文字が表示されている(甲27、甲28)。
イ クラウドコンピューティングについて
(ア)ウェブサイトにおける2009年2月10日付け「ZDNet Japan」に「日本HP、クラウドコンピューティング実現を目指した新製品群を発表--『全社一丸でクラウドを推進する』」の見出しの下、「『HPは全社一丸となってクラウドコンピューティングを推進する』・・・日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は2月9日に記者発表会を開催。」の記載がある(甲9)。
(イ)「顧客企業と対話徹底/日本HP、合意形成後押し」(日経産業新聞 2010.2.24)の見出しの下、「日本ヒューレット・パッカード(HP)は、ネットワーク経由でソフトウエアや情報サービスを提供する『クラウドコンピューティング』の導入を支援するサービスを24日から始める。」の記載がある(甲11)。
(ウ)「クラウド事業/米HP本格化」(日本経済新聞 2011.3.16)の見出しの下、IT(情報技術)大手の米ヒューレット・パッカード(HP)は14日、ネットワークを通じてソフトウエアの機能を提供するクラウドコンピューティング事業に本格参入すると発表した。2012年までに企業向けと個人向けのサービスを始める。」の記載がある(甲11)。
(エ)「クラウド導入セットで提供/日本HP」(日刊工業新聞 2011.5.20)の見出しの下、「日本ヒューレット・パッカード(HP)は19日、ネットワーク経由でIT基盤などを提供するクラウドコンピューティング環境を早期に導入できるサービス『クラウドスタート』を始めたと発表した。」の記載がある(甲11)。
(オ)「海外データ拠点クラウドで管理/日本HPが企業向け」(日本経済新聞 2012.4.14)の見出しの下、「日本ヒューレット・パッカード(HP)は・・・今回はHP自らがクラウドサービスを顧客に提供することで、事業の拡大を図る。」の記載がある(甲11)。
ウ その他の役務について
(ア)「HP サポート・サービス契約/サービス仕様」との記載の書面に、「ソフトウェアサポート」の見出しの下、「サービス内容」として「最新バージョンの使用許諾、ソフトウェア・メディアとマニュアルの提供、オンライン情報提供、ソフトウェアの機能および運用に関するサポート、問題の特定および解決のサポート、ソフトウェア・インストレーションのサポート」の記載がある(甲10)。
(イ)「米HPがソフト拡充/アプリ運用などで新製品」(日刊工業新聞2010.6.17)の見出しの下、「米ヒューレット・パッカード(HP)は15日、ソフトウエア・ソリューション事業の新製品とサービスを発表した。アプリケーションの運用管理製品群『ビジネスサービスマネジメント(BSM)』の最新版9.0、アプリケーション開発テスト製品『テストデータマネジメントTDM)』、販売後のサポートとコンサルティングサービス『ソリューションマネジメントサービス(SMS)』をそれぞれ展開する。」の記載がある(甲11)。
(ウ)「セキュリティーソフト会社を買収/HP、サービス事業拡充」(日経産業新聞2010.9.15)の見出しの下、「米ヒューレット・パッカード(HP)は13日、米インターネットセキュリティーソフト会社のアークサイトを買収することで両社が合意したと発表した。」との記載がある(甲11)。
(エ)「HP、情報端末の融合加速/PCに独自OS」(日経産業新聞2011.2.11)の見出しの下、「米ヒューレット・パッカード(HP)が独自の基本ソフト(OS)の展開を加速する。9日、『ウェブOS』をスマートフォンからパソコンまで搭載する方針を表明した。」の記載がある(甲11)。
(オ)「日本HP/セキュリティ製品拡充」(電波新聞2012.9.14)の見出しの下、「同社では『HP Enterprise Security Products』を強化、全世界7千社以上に導入実績があるネットワーク防御仮想パッチの・・・をラインアップしている。今回、さらなる高速化を実現した不正侵入防御製品の新モデル、セキュリティ統合管理ソフトウエアの新バージョンを発表、エンタープライズ・セキュリティソリューションのラインアップを強化した。」の記載がある(甲11)。
(カ)その他
上記の他、日本HP社は、ソフトウェアソリューション、ワンストップソリューション、ソフトウェアテクニカルサポートとして、ソフトウェアの機能や保守・サポート体制(甲12?甲15)や顧客の要望するソフトウェアアプリケーションをHP社の工場において予めインストールし、顧客の作業時間や負担を削減するサービスも行っている(甲16、甲17)。
しかしながら、これらのサービスに係る証拠は、本件商標の登録出願日及び登録査定後に出力されたものであって、かつ、本件商標の登録出願時及び登録査定時における該サービスのシェア、具体的な顧客数、提供範囲及び広告状況等がどの程度であるかは明らかでない。
エ 「HP」の文字を冠した商品役務の名称について
旧HP社は、1980年に初のPCとして「HP-85」を発売した後、1993年にモバイルノートPC「HP Omnibook」を発売している(甲29)。また、日本HP社は、本件商標の登録査定前において、PCに「HP Pavilion」(甲30)、構築支援サービスに「HP Device Manager」(甲37)、セキュリティーソリューションに「HP Sure Click」、「HP WorkWise」(甲39)、サーバ導入時の作業のサービスに「HP Factory Express」(甲41)、クライアントPC・プリンター製品の製品導入から運用・保守に関するサービスに「HP Total Care」(甲42)等を使用している。
(2)判断
以上からすれば、HP社は、PC及びプリンター関連の分野において、本件商標の登録出願前より、常にマーケットシェアの上位に位置し(甲3、甲4、甲6、甲8)、各種雑誌や新聞等の広告における「HP」の文字の使用実績(甲27、甲28)と併せてみれば、「HP」の文字からなる引用商標は、PC及びプリンターについて、HP社の略称又は商品を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、我が国のコンピュータ関連商品を取り扱う分野の取引者、需要者の間に相当程度知られていることが認められる。
また、HP社は、本件商標の登録出願前より、クラウドコンピューティング事業への取り組みを推進し、独自のOSの搭載や、ソフトウェアの拡充をしていることがわかる。
しかしながら、申立人の提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時における本件商標の指定役務である「ウェブサイトの制作,電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,ウェブサイト用のコンピュータプログラムの提供」等に関連する役務の分野については、具体的な役務の提供に係る実績や広告等の実情を把握することはできず、また、同分野におけるマーケットシェア、第三者によるHP社の評価等も窺い知ることもできない上、役務の提供について、引用商標の使用をしているか否かも不明である。
してみれば、引用商標は、PCやプリンター等のコンピュータ関連商品の分野において、HP社又は同人に係る商品を表すものとして、取引者、需要者の間に広く知られているとしても、上記した本件指定役務の分野においては、広く知られていると認めることはできず、コンピュータ関連商品の分野における引用商標の著名性が、本件指定役務の分野にまで及ぶとみるべき理由も見当たらない。
したがって、本件指定役務の分野において、引用商標の著名性は認められない。
2 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、前記1のとおり、「HP MAKER」の文字からなるものであり、各文字は、同じ大きさ、同じ書体で、まとまりよく一体的に表されており、該文字に相応して生じる「エイチピーメーカー」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、その構成中、「HP」の文字は、「ホームページ(homepage)」の略語としても理解され(「略語大辞典第2版」丸善株式会社、「現代用語の基礎知識(2017)」自由国民社)、また、「MAKER」の文字は、「製造者、作る人、作る機械」等を意味するものとして一般に広く知られている英単語である。
また、インターネットの普及に伴って、企業に限らず、個人や行政機関においても、自身のホームページを作成することは、広告手段や情報発信手段として一般的なものとなっている実情にある。
そうすると、上記した「ホームページの作成」と、ほぼ同義である「ウェブサイトの制作,他人のウェブサイトの設計・作成」を含む本件指定役務との関係からすれば、「HP MAKER」の文字からなる本件商標は、これに接する取引者、需要者をして、容易に「ホームページを作成するもの」ほどの意味合いを理解するということができる。
したがって、本件商標は、「エイチピーメーカー」の称呼及び「ホームページを作成するもの」の観念を生ずると判断するのが相当である。
一方、引用商標は、HP社がPC及びプリンターに使用して著名である「HP」の文字からなるから、これより「エイチピー」の称呼が生じ、「HP社の略称」又は「HP社がPC及びプリンターに使用するブランド」の観念が生じるものである。
そこで、本件商標と引用商標とを比較してみるに、外観においては、構成文字の相違により、明確に区別し得るものであり、称呼においては、「メーカー」の音の有無という顕著な差異を有するものであるから、明瞭に聴別でき、観念においては、上記のとおり、全く異なる観念を生ずるものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、紛れるおそれはないものであるから、非類似の商標といわなければならない。
(2)申立人の主張について
申立人は、「コンピュータ関連の分野においてHP社を表すものとして高い識別力を有する『HP』の2文字と、英単語『MAKER』との組合せからなる本件商標がその指定役務に使用された場合、これに接する取引者・需要者は、語頭の『HP』の文字に着目し、これがHP社の略称及び役務を表すものと認識する可能性が極めて高いものである。すなわち、本件商標において『HP』の文字は、『MAKER』の文字とは別個独立に、単独でHP社及びその商品役務を表す強い識別標識として機能する。よって、本件商標は、その指定役務との関係においては、その構成文字全体に相応する『エイチピーメーカー』との称呼を生ずるほか、その構成中の『HP』の文字部分に相応する『エイチピー』との称呼及びHP社の観念を生ずるものであり、本件商標は、HP社の著名商標である『HP』と称呼及び観念において類似の商標である。」旨を主張している。
しかしながら、上記1のとおり、本件指定役務の分野における引用商標の著名性は認められないものであり、本件商標について、引用商標の著名性ゆえ「HP」の文字部分に着目するということはできず、また、本件商標にあっては、その構成文字が、同書、同大で、まとまりよく一体的に表されており、その構成上、「HP」の文字が、他の文字に比べて、強く支配的な印象を与えるとはいえない。
また、本件商標は、その指定役務との関係からして、全体として「ホームページを作成するもの」という単一の観念が生じるとみるのが相当であるから、これより、構成中の「HP」の文字をHP社の略称とみるべき合理的な理由はないというべきである。
よって、申立人の主張は、採用できない。
(3)小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標と非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)出所の混同を生じるおそれについて
HP社がPC及びプリンターについて使用する引用商標は、相当程度の著名性が認められるものであって、該商品は、本件商標の指定役務との関連性がある程度あるものと認められる。
しかしながら、上記2のとおり、本件商標は、一連一体のものと認識され、その構成中に「HP」の文字を有するとしても、「HP」の文字は、その指定役務との関係において、「ホームページ」の意味合いを認識させるものであって、本件指定役務の分野において著名性が認められないHP社を想起するとはいえないと判断するのが相当である。
また、HP社に係る商品の名称として、「HP」の文字の後ろに何らかの英文字が続く構成の名称を使用しているとしても、HP社が、本件指定役務の分野において、提供する役務の名称に同様の構成からなる名称を使用している証左はなく、本件商標は、前記のとおり、全体として「ホームページを作成するもの」という単一の意味合いを看取させるものであるから、この観点においても、HP社を想起するとはいえない。
してみれば、本件商標をその指定役務に使用した場合、これに接する需要者が、引用商標を想起、連想して、当該役務をHP社の業務に係る役務、あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じさせるおそれがある商標ということはできない。
(2)小活
本件商標は、引用商標とは非類似であって、かつ、その構成中に「HP」の文字を有するとしても、上記(1)のとおり、HP社との関係において、役務の出所について混同を生じさせるおそれのないものであるから、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 むすび
本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に違反してされたものではないから、商標法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2018-03-09 
出願番号 商願2015-112455(T2015-112455) 
審決分類 T 1 651・ 25- Y (W42)
T 1 651・ 271- Y (W42)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤平 良二小林 正和 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 山田 正樹
中束 としえ
登録日 2017-05-19 
登録番号 商標登録第5948103号(T5948103) 
権利者 株式会社ベルティス
商標の称呼 エイチピイメーカー、エッチピイメーカー、エイチピイ、エッチピイ、メーカー 
代理人 小林 浩 
代理人 瀧澤 文 
代理人 森 寿夫 
代理人 鈴木 康仁 

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