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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W35
審判 全部申立て  登録を維持 W35
審判 全部申立て  登録を維持 W35
審判 全部申立て  登録を維持 W35
管理番号 1338374 
異議申立番号 異議2017-900184 
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-07 
確定日 2018-02-22 
異議申立件数
事件の表示 登録第5932606号商標の商標登録に対する登録異議の申立て(申立番号01及び02)について、次のとおり決定する。 
結論 登録第5932606号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5932606号商標(以下「本件商標」という。)は、「経営士」の文字を標準文字で表してなり、平成28年10月11日に登録出願、第35類「経営の診断又は経営に関する助言」を指定役務として、同29年2月14日に登録査定、同年3月17日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人である「一般社団法人大阪経営士会」(以下「申立人1」という場合がある。)が引用する商標は、「経営士」(以下「引用商標」という場合がある。)の文字からなり、同人及び特定非営利活動法人日本経営士協会が「経営の診断又は経営に関する助言」について使用し、需要者の間に広く認識されているとするものである。

第3 登録異議の申立ての理由
1 「一般社団法人大阪経営士会」の理由
(1)「一般社団法人大阪経営士会」は、本件商標は、商標法第3条第1項第2号、同法第4条第1項第7号及び同第10号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を商標登録異議申立書及び回答書において要旨次のように述べ、証拠方法として商標登録異議申立書において第1号証ないし甲第5号証を、回答書において甲第1号証ないし甲第9号証(枝番号を含む。)を提出した(決定注:回答書の甲第1号証ないし甲第9号証については、甲第6号証ないし甲第14号証として扱う。なお、申立人1の証拠については、以下「甲第A○号証」と記載する。)。
ア 本件商標について
経営コンサルタント業を行う会員の団体である、一般社団法人大阪経営士会(申立人1)、特定非営利活動法人日本経営士協会(以下「NPO日本経営士協会」という場合がある。)、及び一般社団法人日本経営士会において「経営士」の語は、「経営の診断又は経営に関する助言」を行う者の資格として普通に使用されている事実がある(甲A2?甲A5)。
イ 商標法第3条第1項第2号について
本件商標は、「経営士」の漢字を横書きしてなるものであるから、これより「ケイエイシ」の称呼を生ずることは明らかである。他方、申立人1が引用するリーフレット・ホームページ・会報の中には「経営士」の漢字が表記されているが、この文字から「経営士」の漢字に相応する「ケイエイシ」の称呼を生ずるものである。
してみれば、共に「ケイエイシ」の称呼を生ずること明らかであるから、その称呼において類似の商標である。
そして、本件商標とリーフレット・ホームページ・法人設立50周年記念誌の中の「経営士」の指定役務は、同一又は類似のものである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第2号に違反して登録されたものである。
ウ 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、その構成中に「経営士」の文字を有してなるところ、一般に「○○士」は国等が行う試験に合格した者が取得できる資格を表すものとして、例えば「弁理士、税理士」等の如く使用されているものである。そうだとすれば、このような恰も国家試験に合格した者に与えられたかのような名称をその構成中に有してなる本件商標を、一団体である本件商標の権利者が自己の商標として採択、使用することは穏当でない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
エ 商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、「経営士」の漢字を横書きしてなり、「経営の診断又は経営に関する助言」を指定役務としている。しかしながら、当該役務に「経営士」の漢字を使用しているのは、本件商標権者だけでなく、申立人1及びNPO日本経営士協会も使用しているものであり、両団体の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)回答書における主張
本件商標である「経営士」は、会社・商業など経済的活動をする意味をなす「経営」と、接尾に付きその分野において知識のあるもの、資格者を表す「士」からなる語句である。したがって「経営士」は「経営の診断又は経営に関する助言」を行う者を意味する。
「経営士」が「経営の診断又は経営に関する助言」を行う者として普通に使用されていると主張する根拠に次の三点が挙げられる。
ア 「経営士」のみ、又は「経営士」の語句を含む名称となる資格は、参考資料1-1及び1-2に記載されているように数多く存在する事実がある。なお、記載する全ての資格が甲第A6号証ないし甲第A14号証に示すとおり「経営の診断又は経営に関する助言」を行う者を意味し、それ以外の役務を提供する資格は存在しない。
イ 「医療経営士」は「医療」の分野に限定した経営コンサルタント資格であり(甲A8)、当該役務において使用されている。また「ロジスティクス経営士」は、「物流に関する資格試験の実施及び資格の認定,物流に関する知識又は技能の教授,物流に関するセミナーの企画・運営又は開催,物流に関する電子出版物の提供,物流に関する図書及び記録の供覧,物流に関する書籍の制作」の分野において商標登録を受けているが(甲A10の3)、商標登録は登録した分野のみの使用に拘束されうるものではなく、現実の使用には登録外の役務での使用も許容される。しかるに、ロジスティクス(物流)における経営の診断、助言を提供する役務に使用されている事実は明白である(甲A10の1、2)。他の「経営士」を含む資格も、ある特定の分野の経営における診断又は助言を目的とするものである。
すなわち、「経営の診断又は経営に関する助言」を提供する役務以外での使用されている事実がないという事実は、「経営士」が「経営の診断又は経営に関する助言」を行う者として一般に使用、周知され、それ以外の意味、役務での使用が不自然であることを指し示す以外に他ならない。
ウ 「経営士」の3文字からなる語句の資格のみならず、「経営士」における接尾語である「士」と同じように「経営士」そのものを接尾語とする様々な種類の資格が数多く存在する点が重要であることを挙げる。この事実が意味するところは、「経営士」は「経営の診断又は経営に関する助言」を行う者を指し示す一般的な日本語であって、それ単独では需要者に対して出所識別力を発揮することなく、その前後に付された表記をもって出所を識別することが必要であることを示しており、提供者、需要者がその旨を広く認識していることを意味する。
エ 上記の三点のとおり、「経営士」の語は、「経営の診断又は経営に関する助言」を行う者として普通に使用されている事実がある。
2 「一般社団法人経営コンサルティング協会」の理由
(1)登録異議申立人である「一般社団法人経営コンサルティング協会」(以下「申立人2」という。)は、本件商標は、商標法第3条第1項第1号に該当するものであるから、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を商標登録異議申立書及び回答書において要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証(枝番号を含む。)を提出した。なお、申立人2の証拠については、以下「甲第B○号証」と標記する。
ア 申立人2は、平成28年9月に設立され、当初より経営士資格を会員に付与し、使用してきた。「経営士」は既に60年以上前から一般的に広く使用されており、商標登録されておらず、使用に問題ないと考えていた。
本件商標権者は、「環境経営士」の商標登録を2010年11月2日に出願し、2011年11月25日に登録されている。これは正に、「経営士」が商標登録できないために敢て「環境」を付記して登録されたものであり、「経営士」だけでは商標登録ができないとされていた何よりの証拠である。
「経営士」は多くの団体で使用され、長年にわたり利用実績が多く多岐にわたっていることから、今まで商標登録はされていなかった。
「経営士」の利用状況、普及状況に鑑み、「経営士」の商標登録は、商標法第3条の「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。一 その商品又は役務の普通名称普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に抵触しており、合理性を欠いている。
イ 「経営士」は「特定非営利法人日本経営士協会(NPO日本経営士協会)」、「経営士学学会」、「上級経営士アカデミーの会」、「合同会社経営士東京」、「一般社団法人企業経営士会」及び「SC経営士会」等の経営コンサルタント団体で、頻繁に使用されている普通名称である。
(2)回答書における主張
ア 我が国における「経営士」の資格保有者数
(ア)申立人2はその会員30名に対し「経営士」の資格を付与している。
(イ)特定非営利活動法人日本経営士協会は過去60年にわたり、延べ1,301名に「経営士」の資格を付与しており、現在の経営士資格会員数は71名である(甲B1)。
(ウ)知事に任命される農業経営士は1,571人おり、農業の改善を指導している(甲B8)。
イ 申立人2及びその他「経営士」を構成員とする団体の構成員数
(ア)申立人2の構成員数30名。
(イ)特定非営利活動法人日本経営士協会の構成員71名。
(ウ)農業経営士1,571名。
ウ 上記役務の分野における業界においての「経営士」の使用状況(経営コンサルタント等のHP宣伝、広告での「経営士」の文字の使用)
(ア)申立人2の場合、構成員の経営士は経営コンサルティング業務に従事しており、その過程でクライアント等に対し「経営士」を使用している。
(イ)特定非営利活動法人日本経営士協会に属する経営士も経営コンサルティング業務に従事しており、その過程で「経営士」を使用している(甲B2)。
(ウ)SC経営士会について
SC経営士として経営コンサルティング等、種々の活動を行っている(甲B3)。
(エ)一般社団法人企業経営士会の活動について
経営コンサルタント団体として種々活動している(甲B4)。
(オ)経営士学会の活動について
経営士に関する学会が存在し経営士学を研究する活動を続けている。
「経営士」の商標登録の是非については、甲第B5号証の1の2頁目の第4段落で「経営士という名称は普通名称です。『時計』や『ホッチキス』『うどんすき』などの商標が普通名称として使用されているように、経営士という名称も普通名詞として使用されています。普通名詞化した名称には、商標権の効力は及びません」と明確に否定している(甲B5)。
(カ)合同会社経営士東京について
経営士の名を冠した合同会社が経営コンサルティングを行っている(甲B6)。
(キ)上級経営士アカデミーの会
上級と称するにふさわしい、円熟した経営コンサルタントとして経営士活動を行っている(甲B7)。
(ク)農業経営士について
優れた農業者に知事が付与し、農業経営の振興を図っている(甲B8)。

第4 当審の判断
1 「経営士」の文字の使用状況について
(1)申立人1及び申立人2の提出に係る証拠及び主張によれば、「経営士」の文字の使用状況は、以下のとおりである。
ア 申立人1による使用状況について
(ア)申立人1のリーフレット(甲A2)には、「沿革」の項に、「昭和29年4月1日/大阪経営士会 創立」、「昭和42年/経営士の養成と資格認定を主たる事業目的として附随する様々な事業を実施」の記載がある。また、「入会募集要項/経営士/経営士補」の項の「2.入会審査」には、「1.書類選考/経歴書・論文又は入会動機書」、「2.面接選考」の記載がある。
(イ)申立人1のウェブサイト(甲A4、甲A6)には、「経営士への誘い」の見出しの下、「一般社団法人大阪経営士会は昭和29年創立の歴史を誇る法人で、実戦派経営コンサルタントの集団です。・・・経済社会に貢献できる経営士の育成を理想としています。」の記載(甲A4)、及び「経営士について」の見出しの下「経営士の行う業務は経営診断、経営指導に集約されます。」の記載がある(甲A6)。
(ウ)申立人1の「法人設立50周年記念誌」(甲A5)には、その表紙に「経営士」の記載があり、「大阪経営士会小史」の見出しの下、昭和20年から平成19年までの期間について、各年ごとに実施した事業等が記載されているところ、昭和42年から昭和48年の期間に、「経営士認定講座」、「経営士養成講座」、「経営士特別認定講座」、「経営士・士補特別認定講座」、「経営士・士補特別認定試験」及び「経営士・士補認定試験」の記載があり、また、昭和57年には「経営士・士補認定特別論文審査」の記載がある。さらに、会員数については、「昭和29年4月1日:大阪経営士会創立(会員数:88名)」、「昭和34年11月11日:創立5周年記念パーティ(・・・会員数166名)」、「昭和56年11月28日:25周年記念式典・・・(会員数235名)」、「平成8年5月31日:理事会・第40回通常総会(会員数:105名)」等の記載があるが、これ以降、会員数に関する記載はない。
イ 特定非営利活動法人日本経営士協会による使用状況について
(ア)特定非営利活動法人日本経営士協会のウェブサイト(甲A3、甲A7、甲B2)には、(a)同協会が日本最古の経営コンサルタント団体であること、(b)昭和28年に第1号の経営士が誕生したこと、(c)同協会には主として資格会員、一般会員、研究会員の3種類があり、資格会員はさらに「経営士」及び「経営士補」に分類されること、(d)「経営士」及び「経営士補」の資格を取得するためには、同協会の会員になることが前提であること、(e)「経営士」は、一定の条件を満たす人を対象にして同協会が認定する経営コンサルタントのための資格であることが記載されている。
(イ)特定非営利活動法人日本経営士協会の理事長名で作成された、平成29年11月28日付けの「日本経営士協会・資格『経営士』の付与状況について」の表題の書面(甲B1)には、同協会が、経営コンサルタントとしてふさわしい人をコンサルタントとして認定し、コンサルタントとしての資格「経営士」の称号を授与していること、同協会の現在の経営士資格会員数は71名、昭和28年から今日までの経営士資格付与会員の延べ数は1,301名であることが記載されている。
ウ 申立人2による使用状況について
申立人2が提出した商標登録異議申立書及び平成29年12月1日付けの回答書によれば、申立人2は、平成28年9月に設立され、その会員30名に対して「経営士」の資格を付与している。
エ その他の使用状況について
(ア)一般社団法人日本医療経営実践協会のウェブサイト(甲A8)、一般社団法人日本ショッピングセンター協会のウェブサイト(甲A9)、公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会のウェブサイト(甲A10の1、2)、農林水産省のウェブサイト(甲A11)、一般社団法人日本介護福祉経営人材教育協会のウェブサイト(甲A12)、一般社団法人日本栄養経営実践協会のウェブサイト(甲A13の1)及び技術経営士の会のウェブサイト(甲A14)には、それぞれ「医療経営士」、「SC経営士」、「ロジスティクス経営士」、「指導農業士(農業経営士)」、「介護福祉経営士」、「栄養経営士」及び「技術経営士」についての説明が記載されている。
(イ)甲第B3号証は「SC経営士会の活動について」の表題の書面であり、「SC経営士」の文字が記載されている。
甲第B4号証は「一般社団法人企業経営士会の活動について」の表題の書面であり、「『企業経営士会』で商標登録されております。『経営士』での登録はされておりません。(経営士は普通名詞と考えており商標登録は出来ないと考えていました。)」の記載がある。
甲第B5号証の1は「経営士学会の活動について」、甲第B5号証の2は「経営士学学会設立趣意書」の表題の書面である。
甲第B6号証は「合同会社経営士東京について」の表題の書面であり、「商号又は名称」には、「合同会社経営士東京」の記載がある。
甲第B7号証は「上級経営士アカデミーの会」の表題の書面であり、「上級経営士」の記載がある。
甲第B8号証は「農業経営士について」の表題の書面であり、「指導農業士(農業経営士などの名称を使っている県もあります。)」の記載がある。
そして、これら甲各B号証には、出典としてウェブサイトのアドレスが記載されている。
(2)上記(1)によれば、その業務において、「経営士」の文字のみを資格などの名称として使用している事例は、わずか3団体にすぎないものである。
そして、上記(1)ア及びイによれば、申立人1及び特定非営利活動法人日本経営士協会は、いずれも経営コンサルタントの団体であり、それぞれ昭和42年及び同28年から「経営士」の文字を自身が認定する資格の名称として使用していることが認められる。
しかしながら、上記2団体による「経営士」の文字の使用は、いずれもそれぞれが、自身の基準によって認定する特定の資格の名称として使用していることから、同じ資格を表すとまではいえないものであり、いずれも経営コンサルタントに関する資格ではあるものの、これら2団体がそれぞれ、「経営士」の文字を自身が認定する資格の名称を表す商標として使用しているとみられるものである。
また、上記(1)ウによれば、申立人2は、認定方法等は明らかにしてはいないものの、平成28年9月以降、「経営士」の文字を、自身の付与する資格の名称として使用していることがうかがわれることから、上記2団体と同様に、その使用は、商標として使用しているとみるべきものである。
さらに、上記(1)エで使用されている「医療経営士」、「SC経営士」、「ロジスティクス経営士」、「指導農業士(農業経営士)」、「介護福祉経営士」及び「技術経営士」等に係る証拠は、「経営士」の文字それ自体の使用を裏付けるとはいえないものである。
してみれば、「経営士」の文字は、本件商標の登録査定時に、その指定役務の分野において、特定の役務の名称や内容等を表示するものとして一般に広く使用されていたとはいえないものであり、特定の役務の名称や質を直接的に表示したものとして認識されることはないといわざるを得ない。
2 商標法第3条第1項第1号及び同第2号該当性について
(1)商標法第3条第1項第1号は、「その役務の普通名称普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」については商標登録を受けることができない旨定めているところ、その「普通名称」とは、取引界においてその名称が特定の業務を営む者から提供された役務を指称するのではなく、その役務の一般的な名称であると意識されるに至っているものをいうと解される。
また、商標法第3条第1項第2号は、「その役務について慣用されている商標」については商標登録を受けることができない旨定めているところ、同号にいう、その「慣用されている商標」とは、同種類の役務に関して同業者間に普通に使われるに至った結果、自己の役務と他人の役務とを識別することができなくなった商標をいうと解される。
そこで、「経営士」の文字についてみるに、該文字は、上記1(2)のとおり、特定の役務の名称を表すものとして一般に広く使用されているといった事実及びその役務について慣用されている商標といった事実は認められないものであるから、本件商標の指定役務の分野において、役務の一般的な名称又は慣用されている商標であると認識されているとはいえないものである。
したがって、本件商標を構成する「経営士」の文字は、自己の役務と他人の役務とを識別することができる、自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものである。
(2)なお、申立人1は、「『経営士』の語は、『経営の診断又は経営に関する助言』を行う者の資格として普通に使用されている事実がある。」旨を主張している。
また、申立人2は、商標法第3条第1項第1号該当性について、「『経営士』は、一般的に広く使用され、多くの団体で使用され、長年にわたり利用実績が多く多岐にわたっていることから、普通名称に抵触しており、合理性を欠いている。」旨を主張している。
しかしながら、提出された証拠からは、「経営士」の文字が、特定の役務の名称を表すものとして一般に広く使用されているといった事実は認められないものであり、本件商標の指定役務の分野において、役務の一般的な名称であると認識されるとはいえないものであることは、上記(1)に記載のとおりである。
さらに、申立人2は、「『経営士』の商標登録の是非については、『経営士という名称は普通名称です。「時計」や「ホッチキス」「うどんすき」などの商標が普通名称として使用されているように、経営士という名称も普通名詞として使用されています。普通名詞化した名称には、商標権の効力は及びません』(甲B5)と明確に否定している。」旨を主張している。
しかしながら、上記の記載は何を根拠に「経営士」の文字が普通名称であるといえるのか、その根拠が明らかではなく、「経営士」の文字は、広辞苑第六版、大辞泉第二版及び大辞林第三版等の辞書においても、その掲載が無いものであり、上記(1)に記載のとおり、本件商標は、本件商標の指定役務の分野において、役務の一般的な名称であると認識されるとはいえないものである。
よって、申立人1及び申立人2の上記主張は認めることができない。
(3)したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第1号及び同第2号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)本件商標及び引用商標は、前記第1及び第2のとおり、いずれも「経営士」の文字からなるものであり、その構成文字を同じくするものであるから、同一の商標といえるものである。
また、本件商標の指定役務と引用商標の使用に係る役務は、いずれも「経営の診断又は経営に関する助言」である。
そうすると、本件商標と引用商標とは、同一の商標であって、かつ、本件登録異議の申立てに係る指定役務と引用商標の使用に係る役務とは同一の役務である。
(2)申立人1は、「経営士」の文字は、申立人1及び特定非営利活動法人日本経営士協会が、「経営の診断又は経営に関する助言」に使用しており、両団体の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標である旨を主張している。
しかしながら、申立人1の提出に係る証拠(甲A2?甲A7)からは、申立人1及び特定非営利活動法人日本経営士協会が経営コンサルタントの団体であり、前者が昭和42年から、後者が昭和28年から、「経営士」の文字を使用し、該「経営士」の文字を自身で付与する資格の名称を表示する商標として使用していることは認められるものの、申立人1の近時の会員数は明らかではなく、かつ、上記1(1)イ(イ)によれば、特定非営利活動法人日本経営士協会の現在の経営士資格会員数は71名、及び経営士資格付与会員の延人数は約65年間で約1,300人であるが、こられの会員数は、けっして多いとはいい難いものである。
さらに、使用地域、広告宣伝の詳細等は明らかではなく、「経営士」の文字が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、上記2団体の業務に係る役務を表すものとして、本件商標の指定役務に係る需要者の間で広く認識されていたと認めるに足る証拠は見いだせない。
そうすると、提出に係る証拠によっては、「経営士」の文字が、申立人1及び特定非営利活動法人日本経営士協会の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に、広く知られていると認めることはできないものである。
(3)してみれば、上記(1)のとおり、本件商標と引用商標が同一の商標であり、かつ、本件商標の指定役務と引用商標の使用に係る役務が同一の役務であるとしても、本件商標は、上記(2)のとおり、申立人の業務に係る役務であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されているとは認められないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、「経営士」の文字からなるところ、全体がわずか3文字のみから構成され、一連に表示されており、その語義上も一体のものと理解されることからすれば、その全体が取引者、需要者の注意を惹く要部であると認められる。
そして、一般国民が、末尾に「士」の付された名称に接した場合、一定の国家資格を付与された者を表していると理解することが多いと一般的にはいうことができても、本件においては、本件商標を構成する「経営士」と同一又は類似する名称の国家資格は存在しないばかりでなく、「経営士」と同一又は類似する名称が、他の法律によって、その使用を制限されているといった事実も見いだし得ないところである。
してみれば、本件商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者が、国家資格を表す名称の一つであるかのごとく誤認、誤信を生ずるおそれがあるものとは認められず、また、国家資格等の制度に対する社会的信頼を失わせるものということはできない。
なお、本件商標権者のウェブサイトによれば、本件商標権者は、昭和26年9月25日に「日本経営士会」として発足し、昭和30年1月1日に「社団法人」として認可され、平成25年4月1日に「一般社団法人」に移行し、現在に至り、創立60余年を迎えており、その会員数は正会員1,140名である。
また、経営士称号認定に関する規程を定めて、毎年5月と11月に試験を実施し、平成29年11月の試験で、100回を迎え、経営士称号認定のほか、経営支援等に関する人材育成、経営支援等に関する普及啓発、表彰、調査・研究、情報の収集・提供、内外関係機関等との交流・連携、行政・産業界への提言等の活動を行ってきたことを窺い知ることができる。
そうすると、本件商標は、本件商標権者の資格称号の出願に係るものであること、本件商標権者は、昭和26年に設立されてから現在まで約60余年にわたり、経営支援活動の充実等を目的とする多様な活動を続けてきた団体であること、本件商標権者は、上記活動の一環として、現在まで100回にわたり、経営士の称号の認定を与えてきたものであることなどの事情に照らせば、本件商標権者が、自己のために「経営士」の文字からなる本件商標につき、「経営の診断又は経営に関する助言」を指定役務として商標登録出願したことは、その行為の目的、態様に照らして社会的に相当なものということができる。
してみると、本件商標は、国家資格等との誤認・誤信を生ずるおそれの有無の観点から検討しても、その出願に至る経緯に照らせば、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に当たるということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第1号及び同第2号、並びに同法第4条第1項第7号及び同第10号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2018-02-13 
出願番号 商願2016-110382(T2016-110382) 
審決分類 T 1 651・ 25- Y (W35)
T 1 651・ 22- Y (W35)
T 1 651・ 11- Y (W35)
T 1 651・ 12- Y (W35)
最終処分 維持 
前審関与審査官 佐藤 松江 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 中束 としえ
榎本 政実
登録日 2017-03-17 
登録番号 商標登録第5932606号(T5932606) 
権利者 一般社団法人日本経営士会
商標の称呼 ケーエーシ、ケーエー 
代理人 朝比 一夫 
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