• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効としない W35
審判 全部無効 外観類似 無効としない W35
審判 全部無効 称呼類似 無効としない W35
管理番号 1338344 
審判番号 無効2016-890060 
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-10-14 
確定日 2018-03-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第5817753号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5817753号商標(以下「本件商標」という。)は、「軽スタ」の文字を標準文字で表してなり、平成27年7月15日に登録出願、第35類「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,自動車の部品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、同28年1月8日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第5445390号商標(以下「引用商標」という。)は、「軽スタジオ」の文字を横書きしてなり、平成23年4月13日に登録出願、第35類「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,自動車の部品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,自動車リース事業の運営及び管理,自動車の売買契約の媒介」を指定役務として、同23年10月21日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第20号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第46条第1項第1号により無効とすべきである。
(1)観念類似
ア 本件商標は造語であるが、その構成は、漢字「軽」と片仮名「スタ」に分離されると考えるのが自然である。そして、「軽」は、一般的に「軽い」の意を有する漢字であり、本件商標の指定役務との関係において、一般に軽自動車を想起させるものである(甲3の1?4)。また、「スタ」は、片仮名表記であることも相まって日本語であるとは観念されず、「スタ」単独では英語としても特定の語義を有しないが、「スタ」と省略されて認識され得る語として、例えば、「スタジオ」や「スタジアム」などがある。
「スタジオ」は、広辞苑によれば、仕事場、撮影室、映画撮影所、放送局などの意味が例示されており(甲4)、場所や施設を想起させる言葉といえる。例えば、「おはようスタジオ」というテレビ番組を「おはスタ」と省略する例(甲5の1及び2)、音楽スタジオを検索するサイトとして「さがスタ」(甲6)、音楽スタジオをネット予約できるサイトとして「スタねっと」(甲7)、大須コスプレスタジオとして「オースタ」(甲8)と称する例など、「スタジオ」の省略形として「スタ」が用いられることは一般的によく見られる。本件商標の指定役務との関係においても、「スタ」の文字部分を場所や施設を想起させる言葉と捉えれば無理がないといえる。
また、「スタジアム」は、広辞苑によれば、運動競技場や野球場などの意味が例示されており(甲4)、運動やスポーツを楽しむ場所や施設を想起させる言葉といえる。例えば、「楽天Koboスタジアム宮城」を「Koboスタ宮城」と省略するように(甲9)、「スタジアム」の省略形として「スタ」が用いられることもある。
以上のことから、本件商標は、「軽」の漢字と外来語の「スタジオ」、「スタジアム」等の省略形である「スタ」を組み合わせたものとして、需要者に認識されることは明らかである。そして、「軽スタ」の省略形を持つ言葉として「軽スタジオ」、「軽スタジアム」が想起し得るとしても、「軽スタ」の省略形を持つ言葉として「軽スタジオ」が含まれることは確実である。つまり、「軽スタ」から生じ得る主要な観念の一つに「軽」の「スタジオ」、つまり、本件商標の指定役務との関係では「軽自動車」を取り扱う「スタジオ」(場所や施設)が含まれることには疑いの余地はない。
イ 引用商標は、上記のとおり、指定役務との関係から、「軽」は「軽自動車」の観念が生じ、「スタジオ」は「スタジオ」(場所や施設)の観念が生じる。
したがって、本件商標と引用商標とは、いずれも「軽自動車」を取り扱う「スタジオ」(場所や施設)という観念を有する点において類似している。
そうすれば、本件商標「軽スタ」から生じる観念「軽自動車のスタジオ」と、引用商標「軽スタジオ」から生じる観念「軽自動車のスタジオ」とが共通していることは明らかである。
(2)観念類似の特別事情
ア 商号との関係で認識が誘引される「軽スタ」の観念
被請求人の商号は、「軽スタジオ茅ヶ崎株式会社」であるため、被請求人が、自己のサービスの提供において本件商標を商標的に使用した場合、需要者は、「軽スタ」が被請求人の商号中の「軽スタジオ」部分の省略形であると強く認識する。
イ 被請求人の商標的使用の事情
被請求人は、本件審判請求時点においては、自社ウェブサイト等において本件商標「軽スタ」を使用しているが、平成28年6月頃までにおいては、引用商標「軽スタジオ」を商標的に使用していた(甲10ないし甲13の2)。そして、平成28年6月頃から、被請求人は、「軽スタジオ」との標章を「軽スタ」との標章に切り替えている(甲13の1及び2)。つまり、被請求人は、「軽スタ」を「軽スタジオ」に代替するものとして商標的に使用しているため、上記の観念類似にあたることも相まって、本件商標「軽スタ」を目にした需要者は、「軽スタ」と「軽スタジオ」とを区別せず同じ意味合いのもの、すなわち、両者が同一の観念を有することを強く認識する状況にある。
平成27年3月13日時点の、被請求人店舗(神奈川県茅ケ崎市南湖1-6-34)の状況を撮影した写真撮影報告書(甲10)において、店舗の入口にある看板及び店舗建物上に掲げる看板には、「軽スタジオ」と大書されている。特に、遠くからでも認識が可能な店舗建物上の看板においては、「CHIGASAKI」の文字よりも、「軽スタジオ」が意図的に大書されている。このように被請求人は、自己の店舗において、「軽スタジオ」を商標的に使用していた。
平成28年6月16日時点の被請求人のウェブサイトのトップページ(甲11)の最上段左肩には、ロゴ化されているが、「軽スタジオ」と大書されている。また、2頁目以降も各頁の最上段(当該ウェブページのタイトル部分)に「軽スタジオ茅ヶ崎」と大書されており、被請求人のウェブサイトにおいては「軽スタジオ」が商標的に使用されていた。
平成28年6月6日時点の被請求人のウェブサイトの「軽スタジオ茅ヶ崎のご案内」と銘打たれたページ(甲12)の最上段左肩には、ロゴ化されているが、「軽スタジオ」と大書されている。また、2頁目以降も各頁の最上段(当該ウェブページのタイトル部分)に「軽スタジオ茅ヶ崎」と大書されており、被請求人のウェブサイトにおいては「軽スタジオ」が商標的に使用されていた。
平成28年6月16日時点(審決注:「平成28年8月8日時点」の誤記と認める。)の被請求人のウェブサイトのキャンペーン情報を紹介するページ(甲13の1及び2)の最上段左肩には、ロゴ化されているが、「軽スタジオ」と大書されている。また、2頁目以降も各頁の最上段(当該ウェブページのタイトル部分)に「軽スタジオ茅ヶ崎」と大書されている。加えて、1頁目に掲載された販促物(チラシ)の1枚目上段に「軽スタ茅ヶ崎店」、「軽スタジオから軽スタに」、さらには、2枚目左中段においては、「軽スタジオは100%届出済未使用車」との記載があり、被請求人のウェブサイト及び販促物(チラシ)においては「軽スタジオ」と「軽スタ」が混在して商標的に使用されていた。
甲第14号証は、請求人と被請求人の間で、引用商標に関して、やりとりした書面であり、被請求人から請求人に対して送付されたものである。該号証からも明らかなとおり、被請求人は、自社ウェブサイトにおいて「軽スタジオ」の標章を使用している事実を認めるとともに、それら「軽スタジオ」の標章を使用しているウェブサイトの該当部分、チラシの該当部分、名刺の該当部分、店舗看板の該当部分、自動車の化粧プレートの該当部分を削除する旨を述べている。甲第14号証における被請求人の回答後、被請求人は、全面的に、「軽スタジオ」との標章に替えて、「軽スタ」との標章の使用を開始している。
例えば、甲第15号証は、平成28年10月5日時点の請求人のウェブサイトであるが、従来、「軽スタジオ」とのロゴが表示されていた最上段左肩の箇所には、「軽スタ」との新たなロゴが表示されるようになっている。つまり、被請求人は、自社のサービスを表示する標章として「軽スタジオ」に替えて「軽スタ」を用いているが、これは、需要者が「軽スタジオ」と「軽スタ」とを区別せずに同じ意味合いのもの、すなわち、両者が同一の観念を有することを強く認識するためである。
さらに、甲第16号証は、平成28年10月5日時点の被請求人のウェブサイトのHTMLソースであるが、9行目に「軽スタジオ」という5文字の検索キーワードが意図的に付与されている。つまり、需要者が「軽スタジオ」という商標でウェブ検索を試みると、この被請求人の「軽スタ茅ヶ崎」と銘打った被請求人のウェブサイトに誘導されるように設定されている。このように、被請求人は、「軽スタジオ」とのキーワードによって、需要者を「軽スタ」に誘導しようとしているが、これも、需要者が「軽スタジオ」と「軽スタ」とを区別せずに同じ意味合いのもの、すなわち、両者が同一の観念を有することを強く認識するためである。
このように、被請求人が、従前は「軽スタジオ」との標章を商標的に使用していたのに替えて、現時点では、「軽スタ」との標章を商標的に使用している実情や被請求人のウェブサイトや販促物(チラシ)において「軽スタジオ」と「軽スタ」とが混在して商標的に使用されていた事実に鑑みれば、形式的にも上記のように観念類似にあたることも相俟って、さらに需要者は「軽スタ」が「軽スタジオ」の省略形にすぎず、「軽スタジオ」と同一の意味合いのものだと強く認識する状況が生じているといえる。
(3)外観類似
本件商標の外観は、「軽」の漢字と「スタ」の片仮名からなる3文字であり、一方、引用商標の外観は、「軽」の漢字と「スタジオ」の片仮名からなる5文字であるから、本件商標の外観は、引用商標の外観の一部をそっくり抜き出したにすぎないものである。そのため、外観においても明瞭に異なると判ずることができるものではなく、需要者は、外観においても相紛らわしいと感じることがあり得る。
(4)称呼類似
本件商標の称呼は、「ケイスタ」であり、一方、引用商標の称呼は、「ケイスタジオ」であるから、本件商標の称呼は、引用商標の称呼の最初の4文字をそっくり抜き出したにすぎないものである。そのため、称呼においても明瞭に異なると判ずることができるものではなく、需要者は、称呼においても相紛らわしいと感じることがあり得る。
2 答弁に対する弁駁
(1)「軽スタジオ」と「軽スタ」の観念が類似していること
ア 引用商標「軽スタジオ」から生じる観念
被請求人は、引用商標「軽スタジオ」のうち、「軽」が引用商標の指定役務との関係において「軽自動車」を想起させることを認める一方、「スタジオ」は、美術家等の仕事場、写真家の撮影室、放送局の放送室など、録音、録画のできる施設を意味する(甲4)のであって、「軽自動車」や「自動車の販売等の役務」とは何の関係もないから、「軽スタジオ」全体から特定の出所識別標識としての特定の観念は生じないと主張する。
しかしながら、「スタジオ」の辞書上の意味(甲4)が、引用商標の指定役務との関係がないことは、引用商標全体から特定の観念が生じることを否定する理由にはならない。既成の語と既成の語が組み合わさって作られる造語においては、それぞれの既成語の意味内容が結び付いた語として認識されるのが通常である。
引用商標における「スタジオ」は、美術家等にとっては仕事をする場所を意味し、写真家にとっては写真を撮影する場所を意味する一方、映画の撮影所など映画を撮影するための場所や施設をも意味する外来語として、あえて日本語訳されることなく文字どおり「スタジオ」として、日本国内において広く浸透している言葉であることは明らかであり、「スタジオ」が、かような場所や施設を示す語であることは、指定役務の取引者や需要者のみならず、一般的な外来語や英語の理解能力を持つ一般人においても容易に認識し得る語である。他方、引用商標における「軽」は、「軽自動車」を意味する一般的な語である。そうすると、引用商標からは、引用商標の指定役務との関係では、「軽自動車のスタジオ」、ひいては「軽自動車を取り扱うスタジオ(場所や施設)」という観念が生じるというべきである。
以上より、「軽スタジオ」全体から特定の出所識別標識としての特定の観念は生じないとの被請求人の主張は失当である。
イ 本件商標「軽スタ」から生じる観念
被請求人は、「軽」が軽自動車を連想させるとしても、「スタ」は日本語ではなく、特定の意味や内容を表す語ではないので、本件商標からは何の観念も生じない旨主張するが、本件商標は、引用商標と同一の観念を有し、同一の印象を与える語である。
(ア)「軽スタ」は「軽スタジオ」の略語として認識されること
「スタ」と他の語とが組み合わされてなる語において、「スタ」部分が「スタジオ」の「ジオ」部分を省略した語として用いられる例は多数存在する。これらの例からすれば、「スタ」と他の語とが組み合わされてなる語において、「スタ」部分が「○○スタジオ」(又は、「スタジオ○○」)の「ジオ」部分を省略した語として用いられることは一般的であり、少なくとも自動車の小売、卸売等の役務の需要者にとっては、軽自動車を意味する「軽」と「スタ」を組み合わせてなる本件商標における「スタ」は、「スタジオ」の「ジオ」部分を省略した語であると認識され得るというべきである。
このように、需要者には、「軽スタ」は、「軽スタジオ」と同じ意味を有する語として認識されることからすれば、本件商標は、引用商標と同一の観念を有することは明らかである。この点、被請求人は、上記の例は「スタ」との語が単独で「スタジオ」の略語として用いられている例ではない旨主張するが、請求人の主張を正しく理解していない。請求人は「スタ」との語が単独で用いられる場合においても「スタジオ」を省略した語だと認識されると主張しているわけではなく、「スタ」と他の語とが組み合わされてなる語において、「スタ」部分が「○○スタジオ」(又は、「スタジオ○○」)の「ジオ」部分を省略した語として一般的である旨を主張しているのである。
また、被請求人は、「スタジオ」が「スタ」の省略形と一般的に用いられているとして請求人が例示する「おはスタ」(甲5の1及び2)、「さがスタ」(甲6)、「スタねっと」(甲7)、「オースタ」(甲8)は、いずれも「スタ」に他の用語を組み合わせて特定の意味、内容を表す元の用語(以下「被省略語」という。)の一部を省略した略語を用いる場合について縷々主張しているが、結局のところ、被請求人の主張は、「軽スタジオ」が何らの意味、内容を表すものではないということを前提に、「軽スタジオ」の略称として「軽スタ」を用いることはないという点に集約される。しかし、自動車の小売、卸売等の役務に係る需要者にとって「軽スタジオ」との語が、「軽自動車のスタジオ」、ひいては「軽自動車を取り扱うスタジオ(場所や施設)」という観念を有することは上記において述べたとおりであり、被請求人の主張の前提自体が誤りであることは明らかである。
さらに、被請求人は、仮に「軽スタ」から何らかの用語を想起するとしても、「軽スタイル」、「軽スタート」、「軽スター」、「軽スタッフ」等の語を想起し、直ちに一定の意義を想起させることはない旨主張する。しかし、自動車の小売、卸売等の役務の需要者が、「軽スタ」の語から、被請求人が主張する「軽スタイル」等の語を想起する根拠がない。また、1つの商標から2以上の観念が生じることは否定されないから、たとえ「軽スタ」から「軽スタジオ」以外の語を想起することが可能であるとしても、「軽スタジオ」を想起しうる以上は、「軽スタ」から何らの観念も生じないことの根拠とはならない。
(イ)「軽スタ」が「軽スタジオ」と同一の観念を有する語として認識されていること
a 被請求人による使用
本件商標と引用商標が同一の観念を有していることは、被請求人自身の「軽スタ」及び「軽スタジオ」の使用実態からも明らかである。まず、被請求人の商号は「軽スタジオ茅ヶ崎株式会社」であるところ、被請求人自身が「軽スタ」という本件商標を有していることからすれば、「軽スタ」を「軽スタジオ」と同一の意味を持つ略語として認識していることは明らかである。
また、被請求人は、平成28年8月頃まで、自社のサービスを表示する標章として、「軽スタジオ」を用いていたが(甲10ないし甲12、甲14)、同年6月頃に被請求人が自社のウェブサイトに掲載した広告において、自ら「軽スタ茅ヶ崎店」、「軽スタジオから軽スタに」という表記をしている(甲13の1及び2)。また、被請求人は、「軽スタジオ」との商標が請求人の有する引用商標にかかる商標権侵害に該当するとの請求人の警告を受けて、「軽スタジオ」という標章を「軽スタ」に変更している(甲15)。さらに、被請求人は、「軽スタジオ」に替えて「軽スタ」を使用し始めた後も、「軽スタ」と表記した自己のウェブサイトに誘導するために「軽スタジオ」というキーワードメタタグを用いている(甲16)。
以上の事実は、被請求人自身が、「軽スタ」が「軽スタジオ」を略した語として、「軽スタジオ」と同一の観念を有し、需要者に対して同一の印象与える語であることを認識していたことの証左である。
b 請求人による使用
需要者にとって、「軽スタ」が「軽スタジオ」と同一の観念を有し、同一の印象を与えるものであることは、請求人の「軽スタ」及び「軽スタジオ」の使用状況からも裏付けられる。請求人は、平成20年5月、西神戸営業所を「軽スタジオ大蔵谷」としてリニューアルオープンし(甲17)、それ以降、「軽スタジオ」という標章を使用している。そして、請求人は、被請求人が本件商標の商標登録出願をした平成27年7月15日よりも以前から、「軽スタ最大の初売り」と記載された広告(甲18)、「ようこそKeiスタcafeへ!!」と記載されたチラシ(甲19)、「軽スタ サマーバーゲンSALE」と記載されたチラシ(甲20)を掲載、配布しており、「軽スタジオ」の略称として「軽スタ」、「Keiスタ」を使用していた。これらの広告宣伝物に「軽スタ」と表記しているのは、「軽スタ」が「軽スタジオ」を省略した語として、「軽スタジオ」と同一の観念を有し、需要者に同一の印象を与えるからである。
これらの事情も、本件商標の登録出願日(平成27年7月15日)以前から、自動車の小売、卸売等の役務にかかる需要者にとって、「軽スタ」が「軽スタジオ」と同一の観念を有し、同一の印象を与えるものであることを裏付けるものである。
(ウ)小活
以上より、「軽スタ」との語が何らかの観念も生じないとの被請求人の主張は失当である。自動車の小売、卸売等の役務にかかる需要者にとって、本件商標は、引用商標を略した語として認識され、引用商標と同一の観念を有し、同一の印象を与える語である。上記で述べたとおり、引用商標の略称として、「軽スタ」との語が本件商標の商標登録出願以前より現に使用されている実情があること、請求人と被請求人は、いずれも軽自動車の販売等を主たる業としていることからすれば、本件商標及び引用商標が自動車の小売、卸売の役務に用いられた場合には、一般の需要者からすれば、出所の誤認混同が生じる危険性は非常に高いことは明らかである。
ウ むすび
以上のとおり、本件商標は、引用商標と観念において類似するものであり、指定役務においても同一または類似関係にある。

第4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。
1 観念類似について
(1)本件商標について
本件商標は、引用商標の登録出願日(平成23年4月13日)前の平成21年12月1日に商号を変更した被請求人の商号「軽スタジオ茅ヶ崎株式会社」(乙1)の語頭から3文字の「軽スタ」を選択した造語である。
本件商標の指定役務である「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」等(以下「自動車の小売等役務」という。)との関係から漢字の「軽」が軽自動車を連想させるとしても、片仮名2字からなる「スタ」は、日本語ではなく、特定の意味や内容を表す語ではないので、両者を結合させた「軽スタ」から何の観念も生じない。
請求人は、「軽」と「スタ」が分離して解釈されるものであり、「スタ」が「スタジオ」の省略形として認識されるので、「軽スタ」は「軽スタジオ」の省略形として想起し得ると独自の主張をするが、一般の需要者、取引者が「軽スタ」の文字を普通の注意力で観察すれば、特定の意味、内容を表したり、何らかの用語の省略形の用語であると理解することがないのは明らかである。
「スタジオ」が「スタ」の省略形と一般的に用いられているとして請求人が例示する「おはスタ」(甲5の1及び2)、「さがスタ」(甲6)、「スタねっと」(甲7)、「オースタ」(甲8)は、被省略語の略語として用いているものであり、「スタ」の文字が単独で「スタジオ」の略語として用いられている例を示すものではないので、これらの例示をもって「スタ」が「スタジオ」の省略形として、ひいては「軽スタ」が「軽スタジオ」の省略形として認識されているということはできない。
一般に被省略語の一部を省略して略語を用いるのは、特定の意味や内容を表す被省略語が冗長であるために、その一部を省略した略語で被省略語が表す意味、内容を伝達する場合であり、被省略語の略語を用いるのは、被省略語が固有名詞や普通名詞などの特定の意味、内容を表す用語であり、その被省略語が特定の意味、内容を表すことが、少なくとも特定の需要者、取引者の間で知られている場合であり、加えて、略語に接する需要者、取引者がその略語から被省略語を想起するのは、略語に接する需要者、取引者がその略語を被省略語の省略形であると認識している場合である。
被省略語が固有名詞や普通名詞など特定の意味、内容を表す用語でなければ、それを省略した略語にしてまで伝達する必要はなく、例えば、「おはスタ」の被省略語である「おやようスタジオ」は、テレビ東京系で放映された特定の番組名を表す固有名詞であり、「オースタ」の被省略語である「大須のコスプレスタジオ」は、大須に所在する特定のコスプレスタジオを表している。また、「さがスタ」と「スタねっと」は、それ自体が、音楽スタジオの検索サイトのサイト名(甲6)や音楽スタジオをネット予約するサイト名(甲7)であり、直接、特定の意味、内容を表す被省略語の一部を省略した略語ということはできないが、サイト上の他の記載から推定する「さがスタ」や「スタねっと」の被省略語は、それぞれ「検索してさがすスタジオ」や「スタジオをネット予約できるサイト」という特定の内容を表している。
これに対して、請求人が「軽スタ」の被省略語であるとする「軽スタジオ」は、特定の意味、内容を表すことのない用語であるので、これを省略した「軽スタ」として伝達する必要はなく、「軽スタジオ」の省略形として「軽スタ」は用いられない。
また、特定の需要者、取引者間で、被省略語が特定の意味、内容を表すことが知られていなければ、その被省略語を他人に伝達することがないので、被省略語はもとよりその略語も用いられない。例えば、被省略語である「おやようスタジオ」は、「おはようスタジオ」の番組を見た視聴者や「おはようスタジオ」が特定の番組名を表すことを知り得た者の間でのみ、「おはスタ」を「おはようスタジオ」の略語として用いてもその番組であることを伝達し得るものであり、「おはようスタジオ」が特定の番組名を表すことを知らない一般人の間では、「おはようスタジオ」の略語である「おはスタ」が用いられることはない。
同様に、「軽スタジオ」の略語として「軽スタ」が用いられるのは、「軽スタジオ」が表す意味、内容が、本件商標と引用商標で共通する自動車の小売等役務にかかる需要者、取引者に知られている場合であるが、これらの需要者、取引者の間で、「軽スタジオ」が特定の事物や意味、内容を表す用語として知られているわけではないので、これを省略形にしてまで伝える必要はなく、「軽スタジオ」の略語として「軽スタ」を用いることがない。
さらに、略語は、被省略語の一部を省略した用語であるから、略語自体は、特定の事物や意味、内容を表すものではなく、略語と被省略語との関係を認識している者のみが略語から被省略語が表す特定の意味、内容を理解できる。すなわち、略語が特定の被省略語の省略形であると認識している場合にのみ、略語から特定の被省略語を想起し得るのであって、例えば、「おはようスタジオ」と「おはスタ」の関係や、「大須のコスプレスタジオ」と「オースタ」の関係を知らない一般人は、「おはスタ」や「オースタ」から決して「おはようスタジオ」や「大須のコスプレスタジオ」を想起することはない。同様に、「スタ」の2文字を単独で「スタジオ」の省略語として用いることはないので、「スタ」から「スタジオ」を想起することはなく、また、上述のとおり、自動車の小売等役務にかかる需要者、取引者は「軽スタジオ」の略語として「軽スタ」を用いることもないので、「軽スタ」が「軽スタジオ」の略語であると理解する者はなく、「軽スタ」から「軽スタジオ」は想起し得ない。
東京高裁の平成5年3月30日判決(平成2年(行ケ)第213号)において、観念とは、類否判断要素としてのものであるから、多くの取引者、需要者がその商標自体から直ちに一定の意義を想起させるものであることを要すると判示するように、自動車の小売等役務に係る多くの需要者、取引者は、「軽スタ」が何らかの略語であると理解することはなく、仮に「軽スタ」から何らかの用語を想起するとしても、軽自動車のスタイルを意味する「軽スタイル」、軽自動車でスタートすることを意味する「軽スタート」、軽自動車の星を意味する「軽スター」、軽自動車の購入をサポートするスタッフを意味する「軽スタッフ」等の自動車の小売等の役務に関連する種々の語を想起し、直ちに一定の意義を想起させることはないので、本件商標からは何の観念も生じない。
(2)引用商標との比較について
請求人は、引用商標の「軽」は、その指定役務との関係から「軽自動車」の観念が生じ、「スタジオ」は、文字どおり「スタジオ」(場所や施設)の観念が生じるので、引用商標から、「軽自動車」を取り扱う「スタジオ」(場所や施設)の観念が生じると主張し、「スタジオ」があたかも「場所や施設」を表すかのように誘導しているが、「スタジオ」は、美術家等の仕事場、写真家の撮影室、放送局の放送室など、録音、録画のできる施設を意味する(甲4)のであって、「軽自動車」や自動車の小売等役務とは何の関係もない。
したがって、「軽」から「軽自動車」の観念が生じるとしても、指定役務の自動車の小売等役務の分野で「軽自動車」と「スタジオ」との意味の結びつきはなく、「軽」と「スタジオ」を組み合わせた引用商標全体から役務の出所識別標識としての特定の観念は生じない。
以上のとおり、本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念が生じることのない造語であり、本件商標と引用商標の観念を対比することができず、少なくとも両商標から共通する観念が生じることはない。
(3)観念類似の特別事情について
ア 被請求人の商号との関係について
請求人は、被請求人の商号が「軽スタジオ茅ヶ崎株式会社」であることから、その「軽スタジオ」の部分の省略形として「軽スタ」を捉えていると主張するが、被請求人の商号を知る需要者、取引者が、商号の「軽スタジオ茅ヶ崎株式会社」の省略形として「軽スタ」を認識することはあっても、特定の意味を表すことがない「軽スタジオ」の省略形として「軽スタ」を認識することはない。
イ 被請求人の商標的使用の事情について
本件商標と引用商標の類否に、被請求人による商標の使用等の取引の実情を考慮するとしても、それは、知財高裁の平成28年1月13日判決(平成27年(行ケ)第10096号)において「商標法第4条第1項第11号に関しては、登録査定時をもって判断基準と解すべきものである」と判示するように、本件商標の登録査定日(平成27年11月16日)における取引の実情である。
被請求人は、本件商標が指定役務について引用商標を含む全ての先行する他人の登録商標に類似せず、登録査定を受けたことを確認した上で、本件商標を使用したので、本件商標の登録査定日の時点で、本件商標は使用していない。つまり、本件商標の登録査定日の時点で、「軽スタ」を「軽スタジオ」と関連して需要者に印象づけるように使用した事実はなく、被請求人の商号である「軽スタジオ茅ヶ崎株式会社」を知る需要者、取引者が、「軽スタジオ」を見聞きして被請求人の商号の主要部と認識する程度である。また、請求人が「被請求人は『軽スタジオ』から『軽スタ』に使用する商標を切り替えている」と主張して提出した甲第11号証ないし甲第16号証は、いずれも本件商標の登録査定日(平成27年11月16日)から少なくとも半年以上経過したものであるから、取引の実情を考慮して本件商標と引用商標が類似すると主張する根拠にはなり得ない。したがって、需要者に「軽スタジオ」と「軽スタ」が同一の観念を有することを強く意識するために、被請求人が「軽スタジオ」に替えて「軽スタ」を用いているとの請求人の主張や「軽スタジオ」のキーワードによって需要者を「軽スタ」に誘導している等の請求人の主張は失当である。
ウ 小括
観念の類似については、取引の実情を考慮するとしても、本件商標の登録査定日(平成27年11月16日)の時点での取引の実情を考慮すべきであり、その時点で「軽スタ」と「軽スタジオ」が混在して使用されていた事実はないので、需要者、取引者に「軽スタ」が「軽スタジオ」の省略形であり、両者が同一の意味合いのものだと認識させることはない。「軽スタジオ」は、特定の意味を示す用語として広く知られている訳ではないので、「軽スタ」等の何らかの用語の被省略語と認識されることはなく、被請求人の商号を知る者は、その商号の略語と認識する。
2 外観類似について
本件商標と引用商標は、「軽スタ」の文字で共通するが、引用商標が「軽」と「スタジオ」に分離して観察されることはあっても、「軽スタ」の文字の部分が特に需要者、取引者に印象づけるわけではないので、引用商標は、横書き一連の5文字からなる「軽スタジオ」の全体が一体の外観として観察される。
一方、本件商標の「軽スタ」は、標準文字の3文字から構成されるので、両商標を同一縮尺で表せば本件商標と引用商標が占める面積比は、3対5であり、両商標から受ける視覚的印象は全く異なる。
したがって、両商標は外観上明らかに相違し、類似しない。
3 称呼類似について
本件商標からは「ケイスタ」の一連の称呼が生じるのに対して、引用商標からは、「ケイスタジオ」の一連の称呼が生じ、両者は、構成音数が少ない上に構成音数が4音と6音で異なることから、相紛れるものではない。加えて、本件商標からは発音しない引用商標の語尾音「ジオ」は、濁音を含み強く発音されるので、両者の称呼は明確に異なり識別される。
したがって、両商標から生じる称呼も明らかに相違し、類似しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、客観的な構成上の比較からはもとより、取引の実情を考慮しても外観、称呼及び観念のいずれの点においても非類似であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「軽スタ」の文字からなるところ、その構成は、漢字1字と片仮名2字を結合した極めて簡潔な構成からなり、また、該文字は、同一の書体、同一の大きさ、同一の間隔で表されており、外観上、まとまりよく一体的に看取、把握されるというのが相当である。
そして、本件商標からは、その構成文字に相応して、「ケイスタ」の称呼を生じるものであり、該称呼も4音と短く、一気に称呼し得るものである。
また、本件商標は、辞書等に載録のない語であって、一般に親しまれた意味を有する成語ということもできないから、その構成全体をもって一体不可分の造語を表したものと認識されるとみるのが相当である。
したがって、本件商標は、「ケイスタ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標は、前記第2のとおり、「軽スタジオ」の文字からなるところ、該文字は、同一の書体、同一の大きさ、同一の間隔で表されており、外観上、まとまりよく一体的に看取、把握されるというのが相当である。
そして、引用商標からは、その構成文字に相応して、「ケイスタジオ」の称呼が生じるものであり、該称呼も6音と冗長とはいえず、一気に称呼し得るものである。
また、引用商標は、辞書等に載録のない語であって、一般に親しまれた意味を有する成語ということもできないから、その構成全体をもって一体不可分の造語を表したものと認識されるとみるのが相当である。
したがって、引用商標は、「ケイスタジオ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
ア 外観について
本件商標は、「軽スタ」の文字からなるのに対し、引用商標は、「軽スタジオ」の文字からなるところ、本件商標と引用商標は、「軽スタ」の文字を同じくするとしても、これに続く「ジオ」の2文字の有無という顕著な差異を有するものであるから、外観上、相紛れるおそれはない。
イ 称呼について
本件商標より生じる「ケイスタ」の称呼と引用商標より生じる「ケイスタジオ」の称呼とは、「ケイスタ」の音を同じくするとしても、これに続く「ジオ」の音の有無という差異を有するものであるから、両称呼は、前者が4音、後者が6音という比較的短い音構成よりなる上、差異音の「ジオ」の音は、いずれの音も比較的強く発音され、明瞭に響く音といえるから、該差異音が称呼全体に及ぼす影響は小さくなく、それぞれの称呼を全体で称呼した場合において、その語調、語感が相違し、称呼上、十分聴別できるものである。 ウ 観念について
本件商標と引用商標とは、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することはできない。
なお、請求人は、引用商標の「軽スタジオ」の語は、指定役務との関係において、「軽自動車のスタジオ」、ひいては「軽自動車を取り扱うスタジオ(場所や施設)」という観念が生じ、また、本件商標の「軽スタ」の語は、軽自動車を意味する「軽」と、「スタジオ」の略称である「スタ」を結合した「軽スタ」であるから、「軽スタジオ」と同じ意味を有する語として、需要者に認識され、同一の観念を有することは明らかである旨を主張する。
しかしながら、請求人が主張する「軽自動車のスタジオ」という観念が、いかなる意味合いを表す観念であるか判然とせず、「軽スタジオ」及び「軽スタ」の文字が、特定の意味合いを想起させるものとして、取引者、需要者の間で広く知られ、又は使用されている等の事情も提出された証拠からは見いだせないことからすれば、上記のとおり、両商標からは、特定の観念は生じないものとみるのが相当である。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は、共に特定の観念を生じないから、観念において比較することができず、外観及び称呼において相紛れるおそれのないものであるから、これらを総合して判断すれば、両商標は、非類似の商標とみるべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 請求人の主張について
請求人は、被請求人が平成28年6月頃までは、「軽スタジオ/茅ヶ崎」及び「軽スタジオ/CHIGASAKI」等の標章をその業務に係る役務について使用していたが、平成28年10月頃には、「軽スタ」及び「軽スタ茅ヶ崎のご案内」等の標章を使用するようになった。この間、被請求人が「軽スタジオ」と「軽スタ」とを混在して使用していたことから、需要者は、「軽スタ」と「軽スタジオ」とが、同一の観念を有するものと認識するものである旨を主張する。
しかしながら、上記期間で被請求人が「軽スタジオ」の文字と「軽スタ」の文字の両者を使用していたとしても、上記1(3)のとおり、本件商標「軽スタ」と引用商標「軽スタジオ」とは、いずれも特定の観念を生じない非類似の商標であるから、請求人の上記主張は採用することができない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2017-03-15 
結審通知日 2017-03-21 
審決日 2017-05-11 
出願番号 商願2015-67064(T2015-67064) 
審決分類 T 1 11・ 263- Y (W35)
T 1 11・ 262- Y (W35)
T 1 11・ 261- Y (W35)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 齋藤 貴博 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 榎本 政実
木住野 勝也
登録日 2016-01-08 
登録番号 商標登録第5817753号(T5817753) 
商標の称呼 ケースタ、カルスタ 
代理人 高田 奈月 
代理人 永井 道彰 
代理人 古庄 俊哉 
代理人 佐藤 俊 
代理人 早崎 修 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ