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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z09353842
管理番号 1338306 
審判番号 取消2016-300405 
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-06-10 
確定日 2018-03-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第4622187号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4622187号商標(以下「本件商標」という。)は,赤色で「資格の学校」の文字を横書きしてなり,平成13年4月18日に登録出願,第9類「電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む),その他の電子応用機械器具,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」,第35類「広告,トレ-ディングスタンプの発行,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約購読の取次ぎ,書類の複製,速記,筆耕,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,文書又は磁気テープのファイリング,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワ-ドプロセツサの貸与」,第38類「移動体電話による通信,テレックスによる通信,電子計算機端末による通信,電報による通信,電話による通信,ファクシミリによる通信,無線呼出し,テレビジョン放送,有線テレビジョン放送,ラジオ放送,報道をする者に対するニュ-スの供給,電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」及び第42類「求人情報の提供」を指定役務として,同14年11月22日に設定登録されたものである。
そして,本件審判の請求の登録日は,平成28年6月27日である。
なお,本件審判の請求の登録前3年以内の期間である同25年6月27日から同28年6月26日までの期間を,以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は,本件商標の登録を取り消す, 審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め,その理由を審判請求書,審判事件弁駁書及び口頭審理陳述要領書等において,要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定役務について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実がないから,その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁(平成28年10月20日付け弁駁書)
(1)乙第1号証に関する主張について
ア 第9類「録画済みDVD」についての使用ではない
乙第1号証の「日商簿記独学道場」というのは,いわゆる日商簿記の知識の教授に関するものであり,被請求人が録画済みDVDの広告であると主張している4枚目及び5枚目上段の部分も,日商簿記の知識の教授に当たって学習開始前や試験後に学習の流れ等を把握してもらうための教材を表している部分であり,それは,知識の教授において受講者に教材として配布されているものであって,知識の教授にあたっての「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」に当たるものであるから,乙第1号証を商品としての「録画済みDVD」の広告ということはできない。
特に,商標の使用については,最高裁の判例において,「商標の使用があるとするためには,当該商標が,必ずしも指定商品そのものに付せられて使用されていることは必要でないが,その商品との具体的関係において使用されていることを必要とするものと解するのが相当である。」(最高裁昭和42年(行ツ)第32号 昭和43年2月9日 最高裁判所第2小法廷)とされているのであって,最初の頁の最下段に,知識の教授に関する文字とともに表示されている商標が,数頁後に教材の一つとして小さな文字で表示されている「DVD」の商標として,需要者が具体的関係性を把握,認識できるものではない。
また,知識の教授における講義用の教材が商標法上の商品に当たらないことは,過去の審判決例をみても明らかといえる。例えば,平成12年(行ケ)第117号(平成13年2月28日 東京高等裁判所第13民事部)においては,「印刷物」についての不使用取消審判の審決取消訴訟において,「商標法50条の適用上,『商品』というためには,市場において独立して商取引の対象として流通に供される物でなければならず,また,『商品についての登録商標の使用』があったというためには,当該商品の識別表示として同法2条3項,同4項所定の行為がされることを要するものというべきである」としたうえで,「本件講座の教材としてのみ用いられることを予定したものであり,本件講座を離れ独立して取引の対象とされているものではないというほかなく,したがって,これらを商標法上の商品ということはできない。」などと判示している。そして,乙第1号証に表示されているDVDは,講義前の「学習準備」としての「学習スタートアップDVD」などであり,知識の教授に係る講座を離れ独立して取引の対象とされているものではないから,商標法上の商品ということはできない。
したがって,乙第1号証は,1枚目の最下段に「資格の学校」の文字があるとしても,それが第9類「録画済みDVD」についての商標の使用ということはできない。
イ 乙第1号証の商標の使用をした時期が証明されていない
被請求人は,乙第1号証を「広告」であり,商標法第2条第3項第8号の「使用」であるとし,その使用期間は2016年6月ないし2017年2月である旨を主張している。
ところで,広告に関連して商標法第2条第3項第8号の「使用」をしたというためには,広告に標章を付して展示又は頒布しなければならない。そこで,乙第1号証をみるに,1枚目の最下段には「2016.06→2017.02」の記載がなされており,被請求人は,この記載をもって使用期間と主張しているが,該記載が何を表したものであるのかは一切証明しておらず,乙第1号証の広告を展示又は頒布した事実については何ら明らかにしていない。
また,被請求人は,要証期間内に本件商標の使用をしたことを証明しなければならない。そうすると,要証期間と1枚目の最下段の「2016.06→2017.02」の期間とは,重なっている期間があるか否かさえ明らかでないのであるから,具体的に展示又は頒布した時期が何月の何日であるかが証明されない限り,要証期間内に展示又は頒布されたということができない。
したがって,乙第1号証をもってしては,本件商標を要証期間内に使用したということはできない。
ウ 本件商標と社会通念上同一の商標の使用が証明されていない
乙第1号証の1枚目には,その最下段に「資格の学校TAC」の文字が一連に記載されている。しかし,乙第1号証の1枚目には,「日商簿記」の文字が「独学道場」の文字とともに大きく表示されているほか,「簿記検定講座による独学者向けコース」の文字も表示されており,その後の頁にも日商簿記検定に関する講座による知識の教授であることを示す内容が種々記載されている。そして,日商簿記は,日本商工会議所及び各地商工会議所が実施する技能の検定試験があり,簿記の資格を表すものとして知られたものである。
そうすると,乙第1号証の1枚目の最下段に表示されている「資格の学校TAC」の文字のうち,「資格の学校」の文字部分は,「資格に関する知識を授けるための学校」である旨を表すものとして把握,認識されるものであり,乙第1号証のように,資格の一つといえる日商簿記の講座による知識の教授に関する広告の中においては,自他役務の識別力がないか,あっても,識別力が極めて弱いものといえる。 しかも,乙第1号証の1枚目には,「TACは手抜きしません」や「TAC出版+TAC」など,「TAC」の部分を強調する文字が掲載されている。
したがって,乙第1号証の1枚目の最下段に表示されている「資格の学校TAC」の文字については,その中から,ことさらに,需要者が識別力が極めて弱い「資格の学校」の文字部分を分離して把握,認識し,独立した商標として認識するとは考え難いから,該文字をもって,本件商標と社会通念上同一の商標が使用されていたということはできない。
(2)乙第2号証に関する主張について
ア 第35類「職業のあっせん」についての使用ではない
被請求人自身が乙第2号証を人材派遣業務の広告であると主張しているとおり,乙第2号証は,人材派遣業務の広告であって,第35類「職業のあっせん」の広告ではない。
上記(1)アでも述べたとおり,商標の使用があるとするためには,当該商標が,その商品又は役務との具体的関係において使用されていることを必要とするところ,乙第2号証は,「TACの経理・会計派遣」の見出しのもとに,「お問合せ・派遣登録は03-○○○○-○○○○」(実際は具体的電話番号が記載されている。),「登録会参加のメリット」,「派遣登録会開催日程はこちら」,「派遣の働き方」,「派遣から正社員へ」,「ご登録方法」など,人材派遣業務に関する事項が記載されているものであることからも,人材派遣業務の広告であって,第35類「職業のあっせん」の広告でないことは明らかである。
そして,「職業のあっせん」は,あくまで顧客企業と労働者とを引きあわせる事業にすぎず,あっせんを行う事業者が労働者との間に雇用契約を結ぶことはないが,人材派遣は,派遣を行う事業者は自社と雇用関係を有する労働者を顧客企業に派遣するのであり,「職業のあっせん」とは内容が異なる別異の役務である。
したがって,乙第2号証は,「資格の学校」の文字があるとしても,それが第35類「職業のあっせん」についての商標の使用ということはできない。
イ 「資格の学校」の文字と役務との具体的関係が明らかでない
被請求人は,乙第2号証について,株式会社TACプロフェッションバンク(以下「TACプロフェッションバンク」という。)のホームページ「TACの経理・会計派遣サイト」の人材派遣業務の広告であると主張しており,その右上部には「TACプロフェッションバンク」の文字が記載されている。
ところで,近時のインターネットのホームページにおいては,例えば,「バナー広告」のように,ホームページ内のいずれかの箇所に広告枠を設け,別の画像を入れ込む方法による広告が活発に行われていることを踏まえると,たとえ,同じホームページの同じ頁内に商標が表示されていたとしても,それだけで,そのホームページの他の場所に表示されている商品や役務に係る商標であるとはいえない場合がある。
そして,乙第2号証において「資格の学校」の文字が表示されているのは,その上部の「TACプロフェッションバンク」の文字が記載されている部分や,その下部の人材派遣業務に関する事項が記載されている部分とは異なる枠内であり,「資格の学校」の文字と同じ枠内には,女性の写真と「『キャリア』と『自分の時間』どちらも大事。」の文字があるのみで,人材派遣業務や職業のあっせん業務との具体的関係性を窺わせる表示はされていない。
また,その「資格の学校」の文字のうち,「学校」の文字は,「一定の教育目的のもとで教師が児童・生徒・学生に組織的・計画的に教育を行う所,またその施設。」(広辞苑)を意味する語として知られていることを考えると,看者をして「学校」ではないTACプロフェッションバンクや,教育とは異なる人材派遣事業や職業のあっせん事業と関連付けて,「資格の学校」の文字を認識するとは考えがたい。
そうすると,乙第2号証をもってしては,「資格の学校」の文字が,「職業のあっせん」はもとより,「人材派遣事業」とも具体的に関連付けて使用されているということはできない。
したがって,乙第2号証をもって,「資格の学校」の商標が第35類「職業のあっせん」について使用されていたということはできない。
ウ 乙第2号証の商標の使用した時期が証明されていない
被請求人は,乙第2号証をインターネット上のホームページの「広告」であり,商標法第2条第3項第8号の「使用」であるとし,同号証には「2016年2月3日のタイムスタンプがあります」として,その使用時期を2016年2月3日である旨を主張している。
しかし,乙第2号証には,左上部に「2016/2/3」の記載があるところ,仮に,この記載がホームページをプリントアウトした日との主張であったとしても,このような記載はプリントアウトの操作をする者によって操作し得るものであり,しかも,偶然に,本件審判請求前の要証期間内に当たる時期にこのホームページが印刷され,保管されていたとは考えがたく,むしろ,不自然ともいえる。
したがって,乙第2号証をもってしては,本件商標を要証期間内に使用したということはできない。
(3)乙第3号証に関する主張について
乙第3号証は,「雑誌」の抜粋であり,その27頁ないし31頁に掲載されているものは雑誌の掲載記事か掲載広告というべきものであって,「人材募集情報の提供」に係る役務の提供の用に供する物でもないし,また,役務の提供に当たり提供を受ける者の利用に供する物でもない。
すなわち,乙第3号証は,その1枚目(表表紙に当たる部分)及び7枚目 (裏表紙に当たる部分)には,「仕事と資格マガジン TACNEWS」又は「平成28年4月1日発行(毎月1回1日発行)通巻第445号」,「発行・TAC株式会社」などの記載があり,また,1枚目には「特集1 『海外で働く』という選択」などの特集記事の紹介がされている。これらの記載を踏まえるならば,乙第3号証は,月刊の雑誌であること明らかであり,被請求人も,答弁書において,「(2)の〈3〉のアの雑誌(乙3)には・・・発行部数は3万部以上です。」として,雑誌であることを認めている。
そうすると,その表表紙(1枚目)及び裏表紙(7枚目)に,「TAC」の文字とともに,「資格の学校」の文字が表示されているとしても,それは,雑誌の出所を表す識別標識として認識されるというべきであって,「人材募集情報の提供」の出所を表す識別標識として認識されるものではない。
したがって,乙第3号証をもって,商標権者が本件商標と社会通念上同一の商標を要証期間内に第42類「求人情報の提供」について使用していたということはできない。
(4)乙第4号証に関する主張について
乙第4号証をみるに,「新着求人」や「求人情報の検索」の欄の枠が設けられてはいるが,これらの欄には具体的な求人情報が掲載されておらず,これをもって,実際に第42類「求人情報の提供」を提供していることが証明されたとはいうことができない。
また,乙第4号証の左下のアドレスを頼りに請求人がインターネットを確認したところ,需要者が該ホームページを視認するコンピュ-タ上の画面には,乙第4号証の上部の「TACプロフェッションバンク」の文字が表示されず,看者は使用者が誰であるのか認識できないから,乙第4号証をもって,その商標の使用者が誰であるのかも証明されたということはできない。
さらに,被請求人は,乙第4号証のホームページを役務の提供に当たり提供を受ける者の利用に供する物ないし役務の提供の用に供する物(商標法第2条第3項第4号及び同第5号)に該当すると主張しているが,乙第4号証のホームページが役務の提供に当たり提供を受ける者の利用に供する物ないし役務の提供の用に供する物に該当するといえる理由を明らかにしていない。特に,これらに該当するためには,「物」,すなわち,「有体物」でなければならないところ,インターネット上のホームページが有体物でないことは明らかである。
加えて,商標法第2条第3項第4号に定める「使用」というためには「・・・物に標章を付したものを用いて役務を提供」しなければならず,同項第5号に定める「使用」というためには「・・・物・・・に標章を付したものを役務の提供のために展示」しなければならないところ,被請求人は,標章を付した物を用いて役務を提供した事実も,また,標章を付した物を役務の提供のために展示した事実も,何ら具体的に証明していない。そして,役務の提供や,役務の提供のための展示が証明されていないのであるから,要証期間内に商標法第2条第3項第4号及び同第5号に定める商標の「使用」があったとはいうことはできない。
したがって,乙第4号証をもって,本件商標の使用権者が本件商標を要証期間内に第42類「求人情報の提供」について使用していたということはできない。
(5)乙第5号証に関する主張について
乙第5号証は,商標権者を甲,TACプロフェッションバンクを乙とした商標使用許諾覚書であるところ,第1条によれば,「甲は,乙に対し,甲の所有にかかる下記商標権について専用使用権を許諾する。」とあり,本件商標の商標登録番号が記載されているところ,専用使用権の設定については,商標法第30条第4項において準用する特許法第98条第1項第2号の規定により,登録しなければ,その効力を生じないとされているが,本件商標の商標登録原簿(甲2)によれば,専用使用権の設定の登録はなされていない。このため,乙第5号証による専用使用権の許諾の効力は未だ発生していないのであるから,本件商標について,TACプロフェッションバンクが使用権者ということはできない。
また,乙第5号証の第2条には,「使用権の範囲設定は,次の通りとする。」とあり,「使用態様」について,「甲・乙が合意した書体,図形,立体及び態様」とあるところ,その合意された「使用態様」については,何ら証明されていない。このため,TACプロフェッションバンクが使用者とされた乙号証に表示された商標が使用権の範囲内のものであるか否かも証明されていない。
したがって,乙第5号証をもって,本件商標の使用権者がTACプロフェッションバンクということはできない。
(6)被請求人の他の主張について
被請求人は,請求人がかつて審判請求を取り下げた旨を指摘し,「今回の審判請求も認められるべきではありません」と主張している。
しかし,かつて,本件商標の取消審判の請求を取り下げたことがあるとしても,その後の状況や事情に応じ,あらためて取消審判を請求することができないとしなければならない規定はない。
したがって,かかる主張をもって,本件商標の登録を維持することはできない。
3 口頭審理陳述要領書(平成29年1月18日付)
(1)乙第1号証に関する被請求人の主張について
ア 独立の商品性に関する主張について
乙第1号証も,乙第8号証も,講師によるコース全体を告知したものであり,DVDを告知したものではない。そして,乙第9号証には,乙第1号証及び乙第8号証にあるコース名とは異なる「スッキリわかる講義DVD日商簿記3級 第3版」との表題のDVDやその補充注文カードの写真が掲載されているが,そこには本件商標と同一といえる商標は表示されていない。
また,被請求人は,請求人があげた判例や裁判例と本件事案とは事案を異にする旨を主張するが,請求人がそれをもって主張するのは,商標の使用があるとするためには商品との具体的関係において使用されていることを必要である旨,さらに,商標法50条の適用上,「商品」というためには,市場において独立して商取引の対象として流通に供される物でなければならず,また,「商品についての登録商標の使用」があったというためには,当該商品の識別表示として同法第2条第3項及び同第4項所定の行為がされることを要するものというべきである旨であり,これらの解釈は,本件事案を解するに当たっても求められるものである。
イ 要証期間内の頒布に関する主張について
被請求人は,乙第8号証,乙第9号証及び乙第11号証(枝番号を含む。)を提出しているが,依然として,展示又は頒布した事実及び時期は証明していない。乙第8号証は「録画済みDVD」の広告ではないし,乙第9号証には本件商標が表示されていないのであるから,本件商標の使用時期を明らかにするものではない。
ウ 商標の同一性に関する主張について
乙第1号証も,乙第8号証も,日商簿記検定に関する講座による知識の教授であることを示す内容が記載されているのであり,商標法上の商標の使用とは,識別標識としての使用をいうのであるから,乙第1号証及び乙第8号証をもって,本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたということはできない。
(2)乙第2号証に関する被請求人の主張について
ア 被請求人の主張は,請求人の主張に応じて,その内容を大きく異なるものに変遷させるものであり,許されるべき主張ではない。
そして,被請求人の主張の内容をみると,「人材派遣のための人材募集」の広告が人材派遣を希望する者(すなわち,派遣人材となることを希望する者)に向けたものであるのに対し,「書類の複製,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,文書又は磁気テープのファイリング」の需要者は,一般的に,社内の事務作業を外注化したい企業などであるから,乙第2号証は,「書類の複製,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,文書又は磁気テープのファイリング」の役務の需要者に向けた同役務の広告ということはできない。
加えて,被請求人は,人材派遣による派遣先の業務を明らかにすると主張して,乙第2号証の2を提出しているが,乙第2号証の2は2016年12月26日現在のものであり,要証期間内の業務を証明するものでもない。
したがって,乙第2号証(枝番号を含む。)をもって,本件商標が「書類の複製,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,文書又は磁気テープのファイリング」について使用されていたということはできない。
イ 乙第12号証は,「医療事務講座&就職サポート」の見出しの下,「仕事内容から就職情報,資格取得まで,ぜ?んぶ聞けちゃう!」として,無料講座説明会・就業説明会のスケジュールなどが掲載されているところ,それは医療事務の講座の広告であり,その一環として医療事務の仕事に触れているにとどまるものであって,「職業のあっせん」に関する広告に相当するものとは考え難い。
しかも,商標法上の役務は「他人のために行う労務又は便益であって,独立して商取引の目的たりうべきものをいう。」(「工業所有権法逐条解説」)ところ,乙第12号証の説明会は「無料」と謳われていることを踏まえると,医療事務講座の受講者を募るために付随して就業に触れているにとどまるものといえ,「職業のあっせん」が医療事務講座とは独立した商取引の目的たり得るものとは考えがたい。
したがって,乙第12号証をもって,本件商標が「職業のあっせん」について使用されたということはできない。
ウ 乙第13号証(枝番号を含む。)は,「株式会社医療事務 スタッフ関西」のウェブサイトとされているところ,その記載内容をみても,医療事務講座の宣伝のために,同講座において職場の紹介等のバックアップをすると謳っているものと解されるものであり,医療事務講座から独立した商取引の目的としての「職業のあっせん」ということはできない。
しかも,被請求人は,同ウェブサイトは「株式会社医療事務 スタッフ関西」のウェブサイトとしているところ,「東証1部『資格の学校TAC』の100%子会社」の記載があるとしても,それが商標権者の100%子会社と記載されているものであるわけではなく,商標権者の100%子会社とまでは直ちにいえない上,商標権者が「株式会社医療事務 スタッフ関西」に対し,本件商標について使用権を与えている証拠も何ら提出されていない。
したがって,乙第13号証をもって,商標権者又は使用権者によって本件商標が「職業のあっせん」について使用されたということはできない。
エ 乙第14号証は,商標権者の子会社である「TAC医療事務スタッフ」作成のチラシとされているところ,同号証には,本件商標は表示されていないし,展示又は頒布された事実も,その時期も証明されていない。また,「TAC医療事務スタッフ」が商標権者の子会社であることも,また,「TAC医療事務スタッフ」に対し本件商標の使用権を認めていることも証明されていない。
加えて,乙第14号証には,「資格の学校TACの医療事務講座には,資格取得後の就・転職サポートがあります。」,「資格を取得後の就職相談,お仕事の紹介などを無料でサポートしています。」などの記載があることを踏まえると,これも,医療事務講座の受講者を募るために付随して,同講座において職場の紹介等のバックアップをすると謳っているものと解されるものであるから,医療事務講座から独立した商取引の目的としての「職業のあっせん」ということはできない。
したがって,乙第14号証をもって,商標権者又は使用権者によって本件商標が「職業のあっせん」について使用されたということはできない。
(3)乙第3号証に関する被請求人の主張について
ア 被請求人は,乙第15号証を提出しているところ,同号証の2枚目には「?発行 発行/株式会社TACプロフェッションバンク」と記載され,乙第3号証と同様に乙第15号証も雑誌を思わせるものであり,仮に,そうであるならば,雑誌の掲載記事か掲載広告ということにほかならないということになる。
加えて,被請求人は,乙第15号証を「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」と主張しているが,同号証が「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」であることを証明するところがない。
また,上記(2)での請求人の指摘,さらに,被請求人が会計分野を含め種々の講座を踏まえれば,乙第15号証についても,何らかの講座の受講者を募るために付随したものとも考えられるものであるが,被請求人は,独立した商取引の目的たり得る役務に係るものであることを証明していない。
しかも,乙第15号証には,「就職情報の提供」と主張するにもかかわらず,説明会のスケジュールや就職活動における留意点のようなものは記述されているが,肝心の個々の就職情報はインデックスにとどまり掲載されていない。
したがって,乙第15号証をもって,本件商標が「就職情報の提供」について使用されたということはできない。
イ 乙第16号証も,表紙部分に,乙第15号証と同じ「就職ガイドCareer」の文字が大きく表示され,乙第15号証に対するものと同様のことがいえる。被請求人は,乙第16号証を「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」と主張しているが,同号証が「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」であることを証明するところもない。
上記(2)での請求人の指摘,さらに,被請求人が会計分野を含め種々の講座を踏まえれば,乙第15号証についても,何らかの講座の受講者を募るために付随したものとも考えられるものであるが,被請求人は,独立した商取引の目的たり得る役務に係るものであることを証明していない。
しかも,乙第16号証には,「就職情報の提供」と主張するにもかかわらず,説明会のスケジュールや会場などは記述されているが,肝心の個々の就職情報は掲載されていない。
したがって,乙第16号証をもって,本件商標が「就職情報の提供」について使用されたということはできない。
(4)乙第4号証に関する被請求人の主張について
請求人は,乙第4号証について,〈1〉「新着求人」や「求人情報の検索」の欄の枠が設けられてはいるが,これらの欄には具体的な求人情報が掲載されていない,〈2〉乙第4号証のホームページを視認するコンピュ-タ上の画面には,乙第4号証の上部の「TACプロフェッションバンク」の文字が表示されない,〈3〉乙第4号証のホームページが役務の提供に当たり提供を受ける者の利用に供する物ないし役務の提供の用に供する物に該当するといえる理由を明らかにしていないなどを指摘した。
これに対し,被請求人は,乙第17号証ないし乙第19号証を提出しているが,請求人の上述の指摘に対しては何ら回答していない。
したがって,乙第17号証ないし乙第19号証をもって,本件商標が「就職情報の提供」について使用されたということはできない。
4 上申書(平成29年3月22日付け)
(1)弁駁書及び口頭審理陳述要領書における請求人の主張の補充
本件商標の分割出願であり,第41類の「知識の教授」を指定役務とする商願2002-52888が,商標法第3条第1項に係る理由,すなわち,自他役務の識別力がないものとして,拒絶が確定している。
そして,既に,弁駁書及び口頭審理陳述要領書において,請求人が述べたとおり,乙第1号証に掲載されている内容は知識の教示(審決注:「知識の教授」の誤り。)に関連するものであり,それらとの関係では,「資格の学校」の文字は識別標識としては機能し得ないものであるから,その記載をもって,本件商標が使用されたということはできない。
加えて,被請求人は,乙第9号証及び乙第10号証として,DVDのパッケ-ジとその内容の写しを提出しているが,「日商簿記3級」の文字とともに,パッケ-ジ上には「講義DVD」,「?授業が待望のDVD化」等の記載,その内容にも「?講義DVD」の表示がなされており,被請求人も,「講師の講義を録画したDVDと説明しているとおり,その内容は講義内容という知識の教授に関連した内容を収録したものであり,その内容は,看者が一見して分かるように表示されているから,「資格の学校」の文字は,このような内容を収録したDVDとの関係においても,識別標識としては機能し得ないものであるから,その記載をもって,本件商標が使用されたということはできない。
(2)上申書(平成29年2月3日付け)に対する意見
ア 乙第9号証の2について
被請求人は,乙第9号証の2として,DVDのパッケ-ジの写しを提出しているが,そこには,「資格の学校」の文字は表示されていない。
また,このDVDは,口頭審理陳述要領書において提出された乙第9号証の版違いとのことであるから,その内容は,乙第9号証及び乙第10号証と同様と考えられる。
そうすると,このDVDも講義内容という知識の教授に関連した内容を収録したものといえるから,講義内容を収録したDVDとの関係でも,「資格の学校」の文字は,識別標識としては機能し得ないものである。
してみれば,「資格の学校」の文字からなる本件商標は,このDVDの識別標識として,すなわち,商標として機能するとは考え難い。
イ 乙第20号証について
乙第20号証の1は,被請求人の法務部担当者の陳述書であるが,その陳述者は乙第20号証の2及び3にある「出版事業部」ではなく「法務部」の者とされているから,書籍の発注等の業務を法務部が担当しているとは考え難く,むしろ,本件審判事件を担当している被請求人の会社の担当部署の者が本件審判請求に抗弁するために作成したものと考えるのが自然である。そうすると,本件陳述書は,陳述内容の事業を担当している者でも,責任を有している者でもないと考えられるものであり,「陳述書」の体裁をとっているとしても,結局,被請求人が単に裏付けなく頒布していると主張しているだけに等しいものである。
そして,乙第20号証の1においては,乙第8号証のリーフレットの挟み込みについての陳述が掲載されているが,乙第8号証のリーフレットに掲載されている「資格の学校」の文字が識別標識として機能しない,すなわち,商標としての使用にはならないことは,上記アのとおりである。
なお,その他の証拠方法を見ても,乙第20号証の2及び3には,「承認印」の欄も設けられているが,押印されたものとはなっていない。加えて,乙第20号証の4は,誰が作成した資料であるかさえ明らかにされていない。このため,これらの証明力も極めて低いといわざるを得ないものであるから,これら乙各号証をもって,本件商標が使用されたことが証明されたということはできない。
(3)上申書(平成29年3月1日付け)に対する意見
ア 被請求人は,乙第15号証とともに,乙第16号証を提出しているところ,その2枚目には,乙第15号証の表紙及び名称と,そこから「1/2頁以上の広告」と記載された矢印が掲載され,ここにも「11月27日(金)発行予定」と雑誌を思わせる記載があるとともに,同時に,「1/2頁以上の求人広告の掲載で,無料特典として合同就職説明会にご出席いただけます。無料特典はTACキャリアナビ求人広告掲載とのいずれを選択いただけます。」との記述がある。すなわち,被請求人自身が乙第15号証の2の各企業の情報を求人広告の掲載であると認めているのである。
したがって,乙第15証の右下の「資格の学校」の表示をもって,「求人情報の提供」について本件商標の使用をしたということはできない。
イ 被請求人が上申書において提出した乙第21号証は,被請求人の会社の法務部から特許庁長官に宛てた報告書となっているが,そもそも,その内容をみると,乙第5号証の第2条第3項に定められている「甲・乙が合意した書体,図形,立体及び態様」に関する合意の内容は定められていない。そうすると,専用使用権の登録がなく,しかも,使用許諾の範囲を定めるとする合意もなされていないのであるから,本件商標の使用許諾がなされていたということはできない。
さらに,乙第5号証においては,専用使用権を許諾した指定役務を「求人情報の提供(第42類)」及び「職業のあっせん(第35類)」としているにもかかわらず,乙第21号証においては,使用権の許諾の範囲を本件商標の指定商品及び指定役務の全てとなっており,合致していない。被請求人は,使用許諾は口頭約束でもよいとされていると主張しているが,同じ登録商標の使用許諾について,指定商品及び指定役務の一部を文書で,一部を口頭約束で許諾するとするとは考え難い。むしろ,乙第21号証は,乙第20号証と同様に,本件審判事件を担当している被請求人の会社の担当部署の者が本件審判請求に抗弁するために作成したものではないかと疑念を持たざるを得ない。
ウ 被請求人は,乙第5号証を提出し,同号証によれば,本件商標の「求人情報の提供」(第42類)及び「職業のあっせん」(第35類)についてTACプロフェッションバンクに専用使用権を許諾したとなっている。仮に,同号証が真実ならば,専用使用権を設定した「職業のあっせん」については,商標権者は使用権の許諾をすることはできないはずであり,それにもかかわらず,乙第21号証では,TAC株式会社がTAC医療事務スタッフ及び医療事務スタッフ関西に使用許諾したとしているのであり,乙第5号証及び乙第21号証について信頼に足るということができない。
なお,被請求人は,乙第2号証をもって,人材派遣や人材紹介を行っている旨を主張しているが,乙第2号証に対しては,請求人は既に弁駁書及び口頭審理陳述要領書において述べたとおりであり,乙第2号証に人材紹介に相当する役務の広告は掲載されていないし,仮に,TACプロフェッションバンクが有料職業紹介事業の登録をしていたとしても,それをもって本件商標の使用が証明されたわけではない。
エ 被請求人は,乙第12号証を補足するものとして乙第24号証(請求書)を提出しているが,TAC医療事務スタッフ及び医療事務スタッフ関西が有料職業紹介事業や一般労働者派遣事業の登録を持っていたとしても,そもそも,乙第12号証は,「職業のあっせん」に関する広告とはいえないこと,医療事務講座の受講者を募るために付随して「就職サポート」があることを表しているにとどまり,独立した商取引の目的としての紹介事業や労働者派遣事業を行っていることを表すものとなっていない。
(4)上申書(平成29年3月3日付け)に対する意見
被請求人は,乙第20号証の6を提出し,被請求人の関係会社であるTACプロフェッションバンク,TAC医療事務スタッフ及びTAC医療事務スタッフ関西が人材紹介事業を行っている旨を主張するとともに,乙第27号証を提出し,これら3社が本件商標を使用していると主張している。
しかし,これら3社が仮に人材紹介事業を行っているとしても,それをもって,本件商標を使用したことにはならない。むしろ,乙第20号証の6のように人材紹介事業を紹介している記事があるのに,そこに本件商標が表示されていないのは,本来,本件商標が人材紹介事業を表す識別標識ではないことを物語っているといえる。被請求人は,乙第27号証を提出し,本件商標を「職業のあっせん」に使用している旨を主張しているが,例えば,乙第27号証の4においては「TACキャリアエージェントは『資格の学校TAC』の戦略子会社『TACプロフェッションバンク』が総力を挙げて行う転職・就職支援サービスです」と,乙第27号証の4においては「TACキャリアエージェントは・・・資格取得支援,各種実務研修に携わって30余年間を有するTACを母体とします。」というように,知識の教授やセミナーなどを実施している被請求人に関する記述があり,知識の教授やセミナーなどを実施している被請求人を指称するものとして表示されているというべきであって,株式会社TACプロフェッションバンク等の3社の人材紹介事業を表しているわけではない。そもそも,本件商標中の「学校」の文字は「一定の教育目的に従い,教師が児童・生徒・学生に計画的・組織的に教育を施す所。また,その施設。特に,学校教育法では幼稚園・小学校・中学校・高等学校・中等教育学校・高等専門学校・特別支援学校・大学のこと。」であり,同法でもそれら名称の保護規定(第135条)を設けるなどの状況にあることを考えると,教育施設でもない人材紹介事業に「?学校」の商標を表示しているものと需要者が理解,認識するとは考えがたい。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を,答弁書,口頭審理陳述要領書等において,要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第27号証(枝番を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
被請求人は,本件商標を下記のように使用しているので,その証拠を提出する。
(1)使用商標「資格の学校」
(2)使用商品・役務
ア 第9類「録画済みビデオディスク」
被請求人発行の「日商簿記」のパンフレット中の5?7頁に載っている各録画済みDVDの広告(乙1:商標法第2条第3項第8号)。
イ 第35類「職業のあっせん」
TACプロフェッションバンクのホームページにおける「TACの経理・会計派遣サイト」の人材派遣業務の広告(乙2:商標法第2条第3項第8号)
ウ 第42類「求人情報の提供」
(ア)被請求人発行の「TACNEWS 2016年4月号」の27?31頁に載っている人材募集情報の提供の用に供する物ないしその提供を受ける者の利用に供する物(乙3:商標法第2条第3項第4号及び同第5号)。
(イ)TACプロフェッションバンクのホームページにおける「TAC キャリアナビ」の求人情報の提供の用に供する物ないしその提供を受ける者の利用に供する物(乙4:商標法第2条第3項第4号及び同第5号)。
(3)使用期間
ア 上記アのパンフレット(乙1)には「2016.06 → 2017.02」との記載がある。
イ 上記イのインターネットサイトの写し(乙2)には,2016年2月3日のタイムスタンプがある。
ウ 上記ウ(ア)の雑誌(乙3)には,平成28年4月1日発行という記載がある。発行部数は3万部以上である。
エ 上記ウ(イ)のインターネットサイトの写し(乙4) には,2016年2月3日のタイムスタンプがある。
(4)使用主体
本件商標の商標権者であるTAC株式会社は,上記(2)ア及び上記(2)ウ(ア)についての使用者であるとともに,TACプロフェッションバンクの親会社であり,同社に対し,平成17年7月19日依頼,本件商標の使用許諾をしている(乙5)。
(5)請求人は,平成27年11月9日及び平成27年12月22日,本件と同趣旨の取消審判の請求を行った。しかし,その後,請求人は,平成28年4月14日,両請求を取り下げた結果,審判は終了している(乙6,乙7)。このような経緯をかんがみると,今回の請求人の請求も認められるべきではない。
2 口頭審理陳述要領書(平成28年12月28日付け)
(1)乙第1号証について
乙第1号証のDVDが商品として販売されたものであること。
ア 乙第1号証に加えて,乙第8号証を追加する。乙第8号証は,パンフレットであり,この表紙の左下に,乙第1号証と同じく本件商標の記載がある。本件商標は,パンフレットの表紙に赤字で目立ったように記載されており,まさに商標として使用されている。
イ 乙第8号証の6頁には,「日商簿記3級 湊純子講師のスッキリコース」(以下「本件コース」という)の説明がある。そこの「インプット期」の下欄には,上記コースとして,「スッキリわかる講義DVD 日商簿記3級 120分×4枚」と記載されている。
ウ 乙第9号証は,「スッキリわかる講義 DVD日商簿記3級」第3版第1刷の外観(表と裏と中身のDVD4枚)であり,乙第10号証の1は,その第3版第1刷のDVDの内容で,乙第10号証の2はその前の第2版の内容で,いずれも講師の講義風景の録画画像に関する一部である。
これらを見ると明らかなように,このコースの内容は,講師の講義風景を録画したDVDの頒布である。このDVDは,本件商標の指定商品である「録画済ビデオディスク」にあたる。
他方,乙第8号証には,当該DVDの購入方法が写真入で紹介されているのであるから,本件商標は,このDVDの広告パンフレット中で,DVDという「商品との具体的関係において使用されて」おり,乙第8号証は,「録画済ビデオディスク」という「商品・・・に関する広告,価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し,若しくは頒布・・・する行為」(商標法第2条第3項第8号)に当たる。
(2)商品性,頒布時期,社会的同一性など
ア 独立の商品性について
「日商簿記3級 湊純子講師のスッキリコース」の内容は「学習スタートアップDVD」のみならず,講師の講義を録画したDVDが主体である。このコースとは,これらのDVDを販売して,それを購入者が視聴するだけの内容であるから,このDVDは,知識の教授の従属物ではなく,独立して取引の対象とされている商品であり,商標法上の商品に当たる。
本件コースは,これらのDVDを購入して視聴するものであり,それ以外に教室などでの授業はなく,その教材でもない。また,このコースの料金は,このDVDと書籍込みのフルパックで7800円であるが,その中の「『わかる』『とける』パックは,『スッキリわかる日商簿記3級』『スッキリとける過去+予想問題集 日商簿記3級』をお持ちの方向けで,これらが含まれないパックです。」として,これらを除いたもので直前対策を含めたもので6200円で販売されている(乙8)。また,DVDのみの価格は2400円となっている(乙9)。そして,DVDの外観も通常の市販DVDと何ら変わることはない(乙9)。
イ 要証期間内の頒布について
乙第8号証で,表紙の最下段に記載のある「2015.06→2016.02」との対応関係を説明すると,同6頁の「日商簿記3級 湊純子講師のスッキリコース」の下の真ん中に,「開講コース(実施回別)」「2016年2月第142回目標コース 11?2月」とあり,「スッキリわかる講義DVD」が2015年11月から2016年2月までの間に購入者に送付されたことがわかる。そうすると,そのパンフレットである乙第8号証も,その始まりである2015年11月までには頒布されていなければならないはずである。他方,この上には,「開講コース2015年(実施回別)」「11月第141回目標コース 5月?10月」とあるので,遅くとも,2015年5月には,この回に向けてこのパンフレットの頒布が開始されていたはずである。したがって,この回の申込期間も2015年10月下旬から2016年2月上旬と記載されている。
さらに,乙第8号証の最終頁右下の赤地部分には,「本書内容に記載されている内容は,2015年6月現在のものです」とある。
よって,これらから,乙第8号証は,要証期間内である2016年6月10日から遡って3年以内の間に頒布されものであるといえる。
この乙第8号証については,印刷業者の見積書(乙11の1)の日付は2015年6月15日となっていて,330,000部印刷されることになっていたが,その請求書(乙11の2)の日付は,2015年7月31日となっていて,乙第8号証のパンフレットが「簿記 独学道場 2015.06」と表記されていて納品されていたことがわかる。
また,乙第9号証のDVDは,「スッキリわかる講義DVD日商簿記3級」の第3版第1刷で,その発行日付は,4頁目の右に2016年3月30日と記載されている。なお,乙第8号証の広告対象は,主として「スッキリわかる講義DVD日商簿記3級」の第2版であるので,両者の映像を証拠として提出した。
ウ 商標の社会的同一性について
乙第8号証に表示されている商標は,「資格の学校」と全く同一なものである。その近くに「TAC」という文字が存在するが,1つの商標の近くに別の商標が記載されていても,結合が強固で一体不可分とならない限り,それぞれの商標の同一性認識の妨げとはならない。まして「資格の学校」は漢字と平仮名,「TAC」はロ-マ字であるのだから,両者は一体不可分ではない。これは組み合わせが上下左右,大きさや色にバリエ-ションがあっても変わりはない。
また,請求人は,本件商標は「自他識別力がないか,あっても識別力が極めて弱い」と主張するが,識別力は,指定商品との関係において判断すべきところ,本件商標の指定商品は,「録画済ビデオディスク」のシリ-ズであり,本件商標の意味が他のDVDとの区別性(識別力)を薄弱化させるような表示とはならないことはもちろんである。
(2)乙第2号証について
乙第2号証には,中央の一番目立つところに「資格の学校」という本件商標が記載されている。もっとも,これは「人材派遣のための人材募集」の広告であり,「人材派遣」は,「職業のあっせん」ではない。しかし,乙第2号証は,その左上に「TACの経理・会計派遣」とあるように,派遣された目的は,経理・会計であるから,その人材は,派遣先で様々な役務を行っている。その中には本件商標の指定役務である「書類の複製,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,文書又は磁気テープのファイリング」を含んでいる。乙第2号証は,この役務を行うその人材募集にかかる書類であるから,当然その役務との具体的関係において使用されており,人材派遣による上記「役務・・・に関する広告,価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し,若しくは頒布・・・する行為」に当たる。なお,派遣社員の仕事の内容については,2016年12月26日のサイトのコピーを乙第2号証の2として追加する。これによると「仕事内容 会計ソフト入力,書類作成,ファイリング,データ集計」などとなっていて,これは要証期間内も変わらないものであった。
また,乙第2号証は,インターネット上のサイトのコピーであるが,その左上に「2016/2/3」のタイムスタンプがあり,要証期間内である2016年2月3日には,そのサイトが公開されていたことがわかる。
タイムスタンプが2016年2月3日である理由は,請求人が,本件商標に対し,2015年11月9日に第38類について不使用取消しの審判を申立て(取消2015-300982),被請求人が2016年1月26日から40日以内に答弁書を提出するために証拠を準備していたところ,東京地方裁判所で両社の侵害訴訟の和解がすすんでいたため,その提出を留保しており,その後,和解ができ,2016年4月4日付で審判が取り下げられた(乙7)ため,審判に提出せず,被請求人の手元においておいたものである。よって,不自然なものなどではない。
(3)乙第2号証に関して,以下の証拠を追加する。
ア 乙第12号証は,被請求人の発行にかかる雑誌「TACNEWS2016年2月号」であり,裏表紙にこれは要証期間内である2016年2月1日に発行されたと記載されている。ただし,出版業界の慣行として実際の発売はその約1ヶ月前となる。そして,その51頁の広告の「医療事務講座&就職サポート」の一番下に,本件商標「資格の学校」の表示があり,同じく「(株)医療事務 スタッフ 関西」及び「TAC医療事務 スタッフ」の表記もある。そして,その上に「無料講座説明会・就業説明会」との記載があり,関西では,2016年1月の説明会がその例示の意味で記載されている。なお,2月号に1月の日程が記載されているのは上述の発売日と発行日との関係によるものである。
イ 乙第13号証は,前記「株式会社医療事務 スタッフ 関西」のサイトの写しであり,そのすぐ横の目立つところに「資格の学校」との記載がある。また「株式会社医療事務 スタッフ 関西」は「東証1部『資格の学校TAC』の100%子会社」と記載されている。さらに,次頁にも本件商標「資格の学校」の表示がある。これらのデータは,ウェイバックマシンのサイトから,過去のサイトを検索したもので,左下のタイムスタンプは,「20151118212118」となっていて,これが2015年11月18日21時21分18秒に公開されていたことがわかる。乙第13号証の2も同じ内容であるが,タイムスタンプは,「20160310014753」となっている。
そして,そのすぐ下に,「医療機関の方へ,即戦力となる人材をご紹介。医療事務のお仕事をお探しの方へ,最適な職場を紹介。」とあり,この会社が請求人の主張する「企業などからの求人及び求職者からの求職の申し込みを受け,求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんする」「職業のあっせん」をしていること,100%子会社として被請求者の許諾の下,乙第12号証及び乙第13号証に本件商標を使用していることがわかる。
ウ なお,乙第14号証は,TAC株式会社の子会社である「TAC医療事務スタッフ」作成のチラシの写しであり,TACの医療事務講座の希望者に配布されたものである。その中に「資格の学校TACの医療事務講座には,資格取得後の就・転職サポートがあります」「TACグル-プには,『TAC医療事務スタッフ』という医療系人材サ-ビスの会社がありますので,資格を取得後の就職相談,お仕事の紹介などを無料でサポートいたします。」との記載がある。
上記のことから,乙第12号証は,要証期間内に,被請求人と医療事務スタッフ関西が,本件商標を「職業のあっせん」という「役務・・・に関する広告,価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し,若しくは頒布・・・する行為」(商標法第2条第3項第8号)に当たる。
乙第13号証は,要証期間内に,被請求者の許諾の下,医療事務スタッフ関西が,本件商標を「職業のあっせん」という役務に関し,「電磁的方法(電子的方法,磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。次号において同じ。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為」(商標法第2条第3項第3号)に当たる。
(4)乙第3号証について
これは,被請求人が発行した「雑誌」であり,掲載されているものは,雑誌の掲載記事か掲載広告というべきものであって,「求人情報の提供」に係る役務の提供ではない,とのことであるので,以下の証拠を追加する。
ア 乙第15号証は,被請求人の子会社であるTACプロフェッションバンクが2015年11月25日に発行した2015年「会計業界就職ガイド」であって,その表紙には,左下に本件商標「資格の学校」との表記がある。
イ 乙第16号証は,被請求人の子会社であるTACプロフェッションバンクが企画した「会計業界合同就職説明会」の配布資料であって,これは,2015年12月20日に行われていて,その際,乙第15号証の資料が展示・配布されたものである。そして,被請求人の子会社であるTACプロフェッションバンクは,被請求人から本件商標の使用許諾を受けている(乙5)。
したがって,乙第15号証は,要証期間内に,被請求者の許諾の下,本件商標を,「求人情報の提供」という「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し,又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為」(商標法第2条第3項第3号),「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」(同第4号)に当たる。
乙第16号証は,要証期間内に,被請求者の許諾の下,本件商標を,「求人情報の提供」という「役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。以下同じ。)に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為」(同第5号),「役務・・・に関する広告,価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し,若しくは頒布・・・する行為」(同第8号)に当たる。
(5)乙第4号証について
ア 乙第4号証には,「新着求人」や「求人情報の検索」の欄があるが,これらの欄に,具体的な求人情報が掲載されていて,実際に求人情報が提供される過程を,複数の画面の遷移等をもって説明する。
(ア)乙第17号証には,新着求人情報として7社以上の写真入り求人案内が記載されている。このデータも,ウェイバックマシンのサイトから,過去のサイトを検索したもので,左上のタイムスタンプは,印刷した日の「2016/12/16」となっているが,右上に「毎週火曜日・金曜日更新2015/07/03更新」とあり,2015年7月3日に公開されていたサイトの記載であることがわかる。また,左下に「20150927223646」とあり,2015年9月27日22時36分46秒に公開されていたことがわかる。
(イ)また,乙第17号証には,この求人情報のサイトを運営している被請求人の子会社である「株式会社TACプロフェッションバンク」の記載がある。同社は,本件商標について,使用許諾を得ている(乙5)。なお,当事者間の私法上の使用許諾は,合意のみで成立し,専用使用権の登録の有無は関係がない。本件商標は,登録された商標そのものであるから,乙第5号証の合意の範ちゅうにあることは当然である。
(ウ)乙第18号証は,乙第17号証と同旨の証拠で,「毎週火曜日・金曜日更新2015/09/25更新」とあり,乙第19号証も,乙第17号証と同旨の証拠で,「毎週火曜日・金曜日更新2015/12/11更新」とある。ウェイバックマシンのタイムスタンプも要証期間内であることを示している。
したがって,乙第17号証ないし乙第19号証は,要証期間内に,被請求人の許諾の下,TACプロフェッションバンクが,本件商標を「求人情報の提供」という役務に関し,「電磁的方法(電子的方法,磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。次号において同じ。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為」(商標法第2条第3項第3号)(審決注:「商標法第2条第3項第7号」の誤り。)に当たる。
3 上申書(平成29年2月3日付け)
(1)乙第9号証の2について
乙第9号証「スッキリわかる講義DVD」第3版の前の版の第2版のもので,乙第10号証の2のDVDのパッケ-ジ写真である。この背面には「2014年4月10日第2版第1刷発行」と記載されている。
(2)乙第20号証の1ないし5について
これは「簿記独学道場」(乙8)が印刷された(乙11)後,配布のために書籍に挟み込むことを依頼した2015年11月19日付及び2015年11月11日付の注文書(乙20の2,乙20の3),被請求人の拠点(各校舎)に配布された記録(乙20の4)を示すものである。乙第20号証の5は,被請求人の子会社(TACプロフェッションバンク,TAC医療事務スタッフ,医療事務スタッフ関西)を示す会社案内である。
4 上申書2(平成29年3月1日付け)
(1)乙第1号証及び乙第8号証の日商簿記3級「スッキリコース」の内容は,ビデオと本の販売であり,それ以外の講義が設けられていないことは,乙第8号証の6頁の記載等から明らかである。よって,講義の際に従属的に提供される物品などではないから,このビデオは,本件商標の指定商品である「録画済ディスク」にあたる。
(2)乙第15号証の「就職ガイド」の26頁以降を乙第15号証の2として追加する。
(3)乙第2号証の1,乙第2号証の2,乙第4号証,乙第15号証ないし乙第19号証の各号証について,その商標使用者であるTACプロフェッションバンクの本件商標使用の権限は,使用許諾であり,その証拠として,乙第21号証を提出する。
なお,補足すると,使用許諾は,その内容は無償でよいし,範囲は包括的で良いとされているし,その形式は口頭約束でもよいとされている(取消2006-30956)。また,要証期間中,TACプロフェッションバンクは,被請求人の100%子会社であるのだから(乙22)黙示の許諾でもよいとされるケ-スである(取消2006-30444)。
また,乙第2号証について付言すると,TACプロフェッションバンクでは,希望に応じて人材派遣や人材紹介の役務を行っている。そのため人材派遣や人材紹介の業務免許を取得していて,該当者について「人材紹介事業」を行っており,これが「職業のあっせん」にあたる。
(4)乙第12号証について,その商標使用者であるTAC医療事務スタッフ(2017年2月から「TAC医療」に社名変更)の本件商標使用の権限は,使用許諾である(乙21)。この内容も上記に準じるものである。
(5)乙第12号証,乙第13号証の1と乙第13号証の2の各号証について,その商標使用者である医療事務スタッフ関西の本件商標使用の権限は,使用許諾である(乙21)。この内容も上記に準じるものである。
(6)乙第12号証について補足する。
ア 乙第12号証の印刷の請求書では2015年12月28日の日付となっていて(乙24),同発行日は2016年2月1日となっている(乙12)ので,要証期間内の配布があったことが合理的に認定できる。
イ 乙第12号証の「医療事務講座&就職サポート」の「就職サポート」では,希望に応じて人材派遣や人材紹介の役務を行っている。そのため,TAC医療事務スタッフと医療事務スタッフ関西では,人材派遣や人材紹介の業務免許を取得している。
ウ 上記のように,TAC医療事務スタッフは,該当者について「人材紹介事業」を行っており,これが「職業のあっせん」にあたる。他方,医療事務スタッフ関西は,要証期間内の実績は「職業のあっせん」の実績はなかったが,人材派遣を通じて,派遣先で「事務用機器の操作」を行って文書を作成している。乙第3号証は,その人材募集にかかる書類であるから,人材派遣による「事務用機器の操作」という「役務・・・に関する広告,価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し,若しくは頒布・・・する行為」にも当たることは,乙第2号証と同様である(口頭弁論陳述要領書8頁及び9頁)。
5 上申書3(平成29年3月3日付け)
(1)被請求人は,乙第20号証の5の1枚目が2015年から2016年度の被請求人の会社案内の一部であったので,この全頁を乙第20号証の6として追加する。乙第20号証の6は,次の事実を立証するものである。
ア 42頁「関係会社」の部分
TACプロフェッションバンク,TAC医療事務スタッフ,医療事務スタッフ関西が被請求人の関係会社であること。
イ 35頁及び36頁
TACプロフェッションバンクの事業には,人材紹介事業があり,これは第35類「職業のあっせん」に該当すること。ちなみに,後述の乙第27号証は,その「職業のあっせん」の広告にあたる。
ウ 37頁
同頁には,左上の「医療事務人材事業」の中に,「また,2014年12月に関東にて『株式会社TAC医療事務スタッフ』を設立し,2015年4月に一般労働者派遣事業及び有料職業紹介事業の許可を取得,関東圏で同時期にスタートするTAC医療事務講座と連携を取りながら,医療事務人材事業を展開してまいります。」とあるように,人材紹介事業があり,これも第35類「職業のあっせん」に該当し,乙第12号証はこの広告にあたる。
(2)乙第27号証は,TACプロフェッションバンクのホームページの一部であり,下記のようになっている。なお,下記のサイトの写しの一番下の数字はウェイバックマシンの記録日付である。
ア 乙第27号証の1について
TACプロフェッションバンクの会計業界就職情報サイトと題するサイトマップの中に人材紹介のための「TACキャリアエージェント」という項目があること(2016年3月25日付のもの)。
イ 乙第27号証の2について
上記アと同様に人材紹介「TACキャリアエージェント」の項目があること(2016年3月25日付のもの)。
ウ 乙第27号証の3について
上記アと同様で,上記「TACキャリアエージェント」の1頁の左上に本件商標「資格の学校」が使用されていること(2015年7月8日付のもの)。
エ 乙第27号証の4について
上記アと同様で,「TACキャリアエージェント」は人材紹介であり,第35類の「職業のあっせん」に該当すること及びその2頁目に本件商標「資格の学校」が使用されていること(2015年7月8日付のもの)。
オ 乙第27号証の5について
上記アと同様で,人材紹介の流れが説明されていること(2015年7月8日付のもの)。
カ 乙第27号証の6について
上記アと同様で,その1頁目に本件商標「資格の学校」が使用されていること(2015年7月8日付のもの)。

第5 当審の判断
被請求人は,本件商標を,第9類「録画済みビデオディスク」については,録画済みDVDに関する広告に使用し,第35類「職業のあっせん」については,TACプロフェッションバンクのホームページ「TACの経理・会計派遣サイト」等において,人材派遣業務に関する広告に使用し,第42類「求人情報の提供」については,ア)人材募集情報の提供の用に供する物ないしその提供を受ける者の利用に供する物である被請求人発行の「TACNEWS 2016年4月号」と,イ)求人情報の提供の用に供する物ないしその提供を受ける者の利用に供する物であるTACプロフェッションバンクのホームページ「TAC キャリアナビ」において使用している,旨を述べているところであるが,当合議体は,第42類「求人情報の提供」について,本件商標の使用が認められると判断する。理由は,以下のとおりである。
1 被請求人の提出した証拠によれば,次のとおりである。
(1)乙第5号証について
乙第5号証は,被請求人とTACプロフェッションバンクが,平成17年7月19日付けで締結した,「商標使用許諾覚書」である。
これには,以下の記載がある。
「TAC株式会社(以下「甲」という)と株式会社TACプロフェッションバンク(以下「乙」という)は,甲が所有する商標権について,次の通り商標使用許諾契約を締結している。
第1条(本契約の対象商標)甲は,乙に対し,甲の所有にかかる下記商標権(以下「本件商標権」という)について専用使用権を許諾する。

本件商標の登録番号,商標名,商品等の表示
一 商標登録 第4622187号
二 商標名 『資格の学校』
三 指定商品と役務 『求人情報の提供』(第42類)
『職業のあっせん』(第35類)
第2条(使用権の範囲) 前条の使用権の範囲設定は,次の通りとする。
〈1〉使用地域 日本国内
〈2〉使用期間 商標有効期間中
〈3〉使用内容 本件商標権を付した商品または役務の製造,販売,輸出,提供等
〈4〉使用態様 甲・乙が合意した書体,図形,立体及び態様」,また,これの最後には,「平成17年7月19日」の日付と契約者である,甲,乙の住所,会社名,代表取締役の氏名の記載及び押印がある。
(2)乙第15号証について
乙第15号証は,2015年(平成27年)11月25日にTACプロフェッションバンクが発行した,「東日本版 会計業界 就職ガイド CAREER2015winter」(以下「就職ガイド」という場合がある。)である。
これには,表紙に「東日本版/会計業界/就職/ガイド/CAREER/2015/winter」の記載,及び,その右下に赤字で「資格の学校/TAC」の表示がある。
そして,19頁に「求人情報」の記載があり,20頁の上部に「スピードインデックス」の見出しの下,左側から,「ページ,掲載社名,勤務地,就職説明会参加,TACキャリアナビ掲載,雇用区分,実務経験,募集資格,備考」の各項目があり,1頁当たり10社の情報が掲載されている。
そして,その2段目には,「ページ」の項目に「26」,「掲載社名」の項目に「あいわ税理士法人」の記載があり,また,23頁の上から7段目には「ページ」の項目に「32」,「掲載社名」の項目に「辻・本郷税理士法人」の記載がある。
(3)乙第15号証の2について
乙第15号証の2は,乙第15号証の「就職ガイド」の26頁以降の頁が記載されたものである。
この26頁には,「あいわ税理士法人」の業務内容が記載されており,31頁には,その法人の会社概要,募集要項(正社員)及び応募方法/事務所見学会の記載があり,その「募集要項(正社員)」の項には,「募集職種,採用人数,応募資格,待遇,昇給賞与,勤務時間,休日,福利厚生,勤務地」についての記載がある。
また,32頁以降には,「辻・本郷税理士法人」の業務内容が記載されており,34頁の「募集要項(正社員)」の項には,「採用予定人数,仕事内容,応募資格,給与,待遇,勤務時間,勤務地,休日休暇」についての記載がある。
(4)乙第16号証について
乙第16号証は,TACプロフェッションバンクが企画した「会計業界合同就職説明会」の配布資料の社内データを出力したものである。
これには,表紙に「税理士/日商簿記合格者対象」の見出しとともに「求人企画」の記載,これらの下に,「9月16日(水)申込受付開始 10月9日(金)申込締切」の記載があり,その下に,「2015冬会計業界/就職ガイドCareer」記載とともに赤字で「11月27日(金)発行予定」の記載がある。
そして,この記載の下に,乙第15号証の「就職ガイド」の表紙が掲載されており,その右側に「東日本版/15,000部」の記載がある。
さらに,下部に「会計業界合同就職説明会」,「東京会場/12月20日(日)/ベルサール渋谷ファースト/名古屋会場/12月18日(金)TAC名古屋校/梅田会場/12月19日(土)/梅田センタービル(TAC入居ビル)」の記載がある。
加えて,2頁には,「読者対象」の項目には「税理士(合格者,科目合格者,学習者),日商簿記(合格者,学習者)など」の記載があり,「配布方法」の項目には「全国のTAC校舎に積み置き,TAC税理士通信講座受講生に送付,TAC税理士通信ガイダンスにて配布」の記載がある。
(5)乙第22号証について
乙第22号証は,「第32回/定時株主総会/招集ご通知/平成26年4月1日から平成27年3月31日まで」の記載があり,その下に,「開催日時」として「平成27年6月24日(水曜日)午前10時」の記載,下部に「TAC株式会社」の記載がある。
そして,8頁には,「(3)重要な親会社及び子会社の状況」の項があり,「〈2〉重要な子会社の状況」において,「会社名,資本金(千円),当社の議決権比率(%),主な事業内容」の項目からなる表に10社掲載され,その上から7段目に,「会社名」として「株式会社TACプロフェッションバンク」,「資本金(千円)」として「30,000」,「当社の議決権比率(%)」として「100.0」及び「主な事業内容」として「人材事業」の記載がある。
2 上記1によれば,以下のとおり判断できる。
(1)本件商標の使用者について
乙第5号証は,被請求人とTACプロフェッションバンクとの間で締結された「商標使用許諾覚書」であり,これには,本件商標を,第42類「求人情報の提供」及び第35類「職業のあっせん」において,日本国内で商標有効期間中,本件商標を付した商品又は役務の製造,販売,輸出,提供等において使用することを被請求人が許諾している。
また,乙第22号証の「第32回定時株主総会招集ご通知」の8頁によれば,TACプロフェッションバンクは,被請求人の議決権比率が100%の子会社である。
以上からすれば,被請求人は,同人の子会社であるTACプロフェッションバンクと,本件商標の「商標使用許諾覚書」を締結し,TACプロフェッションバンクに本件商標の通常使用権を与えているものである。
したがって,TACプロフェッションバンクは,本件商標の通常使用権者と認められる。
(2)本件商標と使用商標との社会通念上同一について
乙第15号証の「就職ガイド」の表紙の右側下部には,赤字で「資格の学校/TAC」の文字が表示されているところ,この文字中の大きく表示された「TAC」の文字については,被請求人の社名である株式会社TACの「株式会社」を除いた部分であることから,この文字部分は,単独で自他役務の識別標識としての機能を果たすものである。
そして,これを除くやや小さく表示された「資格の学校」の文字部分もまた,単独で,自他役務の識別標識としての機能を果たし得る商標(以下「使用商標」という場合がある。)とみるのが相当である。
そうすると,本件商標は,前記第1のとおり,赤色で「資格の学校」の文字からなるものであり,一方,使用商標も赤色で「資格の学校」の文字からなるものであるから,共に赤色の「資格の学校」の文字からなり,「シカクノガッコウ」の称呼を生じるものである。
よって,使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
(3)使用商標の使用時期について
乙第15号証の「就職ガイド」の表紙には,使用商標(資格の学校)が表示されており,これは,2015年(平成27年)11月25日に本件商標の通常使用権者であるTACプロフェッションバンクが発行したものである。
そうすると,使用商標は,要証期間内に該就職ガイドに使用されたものである。
また,「会計業界合同就職説明会」の資料(乙16)によれば,該就職ガイドは,東日本版として,15,000部作成され,配布されたことが推認できるものである。
(4)使用役務について
本件商標の通常使用権者であるTACプロフェッションバンクは,「就職ガイド」(乙15)において,「求人情報」の文字を記載し,「スピードインデックス」において,各会社の情報を記載している。
そして,その会社の情報として,各社の求人に関する募集要項等が記載されていることからすれば,通常使用権者であるTACプロフェッションバンクは,該「就職ガイド」において,「求人情報の提供」を役務として提供しているというのが相当であって,その役務は,本件商標の指定役務にある「求人情報の提供」と認められるものである。
(5)小括
上記(1)ないし(4)によれば,本件商標の通常使用権者であるTACプロフェッションバンクは,要証期間内である平成27年11月25日に本件審判の請求に係る指定役務中の「求人情報の提供」に係る「就職ガイド」に,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して頒布したものと推認することができる。
そして,上記の使用行為は,商標法第2条第3項第4号にいう「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」に該当するものと認められる。
3 請求人の主張について
(1)「求人情報の提供」について
請求人は,「被請求人は,乙第15号証とともに,乙第16号証を提出しているところ,その2枚目には,乙第15号証の表紙及び名称と,そこから『1/2頁以上の広告』と記載された矢印が掲載され,ここにも『11月27日(金)発行予定』と雑誌を思わせる記載があるとともに,同時に,『1/2頁以上の求人広告の掲載で,無料特典として合同就職説明会にご出席いただけます。無料特典はTACキャリアナビ求人広告掲載とのいずれを選択いただけます。』との記述がある。すなわち,被請求人自身が乙第15号証の2の各企業の情報を求人広告の掲載であると認めているのである。したがって,乙第15証の右下の『資格の学校』の表示をもって,『求人情報の提供』について本件商標の使用をしたということはできない。」旨を主張している。
確かに,被請求人は,本件商標の通常使用権者であるTACプロフェッションバンクが「就職ガイド」に求人情報を載せる企業に対し,広告ページ数に応じて,無料特典として「会計業界合同就職説明会のブース出展」もしくは「TACキャリアナビWEB求人広告」とのいずれかを選択できるようにしている。
しかしながら,これは,「就職ガイド」に求人情報を掲載しようとしている企業に対するもので,実際に「就職ガイド」が配布されるのは,「会計業界合同就職説明会」(乙16)によれば,読者対象としての「税理士(合格者,科目合格者,学習者),日商簿記(合格者,学習者)など」であり,配布方法は,「全国のTAC校舎に積み置き,TAC税理士通信講座受講生に送付,TAC税理士通信ガイダンスにて配布」されることを予定して作成されたものである。
そして,該「就職ガイド」においては,求人情報のページを有しており,そこには,「スピードインデックス」が設けられ,企業名を「五十音順」に並べ,雇用区分,実務経験及び応募資格などの項目を設けてわかりやすく情報を整理していることからすれば,これは,明らかに「求人情報の提供」がされているといえるものである。
してみれば,該「就職ガイド」の内容の一部において,これから企業に就職しようとする者に対し,「求人情報の提供」の役務が行われているものとみるのが相当である。
したがって,仮に,該「就職ガイド」が雑誌を思わせる記載や各企業の求人広告の掲載等についての記載があったとしても,この就職ガイドにおいて「求人情報の提供」の役務がなされていないということはできない。
(2)その他の主張について
請求人は,被請求人が主張する第9類「録画済みビデオディスク」及び第35類「職業のあっせん」についての本件商標の使用について,録画済みDVDに関する広告,及びTACプロフェッションバンクのホームページ「TACの経理・会計派遣サイト」等において,人材派遣業務に関する広告に使用しているとの主張及びその証拠に関して,種々の反論を行っているところである。
しかしながら,上記(1)のとおり,「求人情報の提供」について,本件商標と社会通念上同一の商標である「資格の学校」を要証期間内に使用していたことは明らかである。
そして,商標法第50条第2項本文により,不使用取消審判の被請求人である商標権者が主張立証すべき事実は,審判の請求の登録前3年以内に,審判請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用していることを被請求人が証明すれば足りるものであり,上記のとおり,「求人情報の提供」の役務についての使用が証明されたものであるから,その他の使用に係る商品及び役務である「録画済みDVD」又は「職業のあっせん」について,その使用が証明されたかは述べるまでもない。
よって,請求人の主張は,いずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者が,その請求に係る指定役務中の「求人情報の提供」について,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものと認められる。
したがって,本件商標の登録は,その請求に係る指定役務について,商標法第50条の規定により,その登録を取り消すことができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本件商標


(色彩については,原本参照。)

審理終結日 2017-07-21 
結審通知日 2017-07-25 
審決日 2017-08-15 
出願番号 商願2001-35799(T2001-35799) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Z09353842)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 金子 尚人 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 榎本 政実
山田 正樹
登録日 2002-11-22 
登録番号 商標登録第4622187号(T4622187) 
商標の称呼 シカクノガッコー 
代理人 正林 真之 
代理人 林 栄二 
代理人 名越 秀夫 
代理人 三浦 大 
代理人 東谷 幸浩 
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