• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない W34
管理番号 1338301 
審判番号 無効2016-890082 
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-12-14 
確定日 2018-02-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第5850163号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5850163号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成27年12月8日に登録出願,第34類「紙巻たばこ用紙,たばこ,喫煙用具,マッチ」を指定商品として,同28年4月18日に登録査定,同年5月13日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が,本件商標の無効の理由に引用する登録商標は,以下の8件であり,いずれも現に有効に存続しているものである。なお,これらをまとめて「引用商標」という場合がある。
1 登録第5346240号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,平成22年4月22日に登録出願,第34類「紙巻たばこ,代用たばこ(医療用のものを除く。),その他のたばこ,たばこケース,たばこホルダー,灰皿,マッチ,ライター,紙巻たばこ用フィルター,紙巻たばこ用紙」を指定商品として,同年8月13日に設定登録されたものである。
2 登録第5731832号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲3のとおりの構成からなり,2014年4月25日にペルー共和国においてした商標登録出願に基づくパリ条約第4条による優先権を主張して,平成26年9月30日に登録出願,第34類「紙巻たばこ,たばこ,たばこ製品,ライター,マッチ,喫煙用具」を指定商品として,同27年1月9日に設定登録されたものである。
3 登録第5743466号商標(以下「引用商標3」という。)は,別掲4のとおりの構成からなり,2014年4月25日にペルー共和国においてした商標登録出願に基づくパリ条約第4条による優先権を主張して,平成26年9月25日に登録出願,第34類「紙巻たばこ,たばこ,たばこ製品,ライター,マッチ,喫煙用具」を指定商品として,同27年2月20日に設定登録されたものである。
4 登録第5744419号商標(以下「引用商標4」という。)は,別掲5のとおりの構成からなり,2014年7月14日にペルー共和国においてした商標登録出願に基づくパリ条約第4条による優先権を主張して,平成26年9月26日に登録出願,第34類「紙巻たばこ,たばこ,たばこ製品,ライター,マッチ,喫煙用具」を指定商品として,同27年2月27日に設定登録されたものである。
5 登録第5755761号商標(以下「引用商標5」という。)は,「SHUANGXI」の欧文字を標準文字で表してなり,2014年4月25日にペルー共和国においてした商標登録出願に基づくパリ条約第4条による優先権を主張して,平成26年9月26日に登録出願,第34類「紙巻たばこ,たばこ,たばこ製品,ライター,マッチ,喫煙用具」を指定商品として,同27年4月3日に設定登録されたものである。
6 登録第5824574号商標(以下「引用商標6」という。)は,別掲6のとおりの構成からなり,2015年4月27日に英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)においてした商標登録出願に基づくパリ条約第4条による優先権を主張して,平成27年10月8日に登録出願,第34類「紙巻たばこ,たばこ,たばこ製品,ライター,マッチ,喫煙用具」を指定商品として,同28年2月5日に設定登録されたものである。
7 登録第5829832号商標(以下「引用商標7」という。)は,別掲7のとおりの構成からなり,2014年12月17日に英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)においてした商標登録出願に基づくパリ条約第4条による優先権を主張して,平成27年6月5日に登録出願,第34類「紙巻たばこ,たばこ,たばこ製品,ライター,マッチ,喫煙用具」を指定商品として,同28年2月26日に設定登録されたものである。
8 国際登録第1017150号商標(以下「引用商標8」という。)は,別掲8のとおりの構成からなり,2009年(平成21年)8月11日に国際商標登録出願,第34類「Cigarettes.」を指定商品として,平成22年7月16日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第29号証を提出した。
1 請求人について
請求人であるシーティービーエイティーインターナショナルカンパニーリミテッド(以下「CTBAT社」という。)は,中国国家烟草公司の関連会社とブリティッシュ・アメリカン・タバコ香港の共同出資子会社である(甲10)。また,CTBAT社は,ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・グループのグループ会社である。ブリテッシュ・アメリカン・タバコ・グループは,世界41か国にある46の工場で紙巻きたばこを生産するとともに,2013年には6760億本の紙巻たばこを販売するたばこ業界を代表する会社の一つである(甲11)。日本市場は,ブリテッシュ・アメリカン・タバコ・グループにとって,世界の中でも4位又は5位に位置する重要な市場であり,2015年においては,日本国内の市場シェアの約12.8%を占めている(甲12)。
ブリテッシュ・アメリカン・タバコ・グループは,「ダンヒル(Dunhill)」,「ケント(Kent)」,「ラッキー・ストライク(Lucky Strike)」など,200を超えるブランドを含むポートフォリオを有している(甲11)。これらのブランドのうち,CTBAT社は,世界的に有名な煙草ブランドである「ステイト・エクスプレス555(State Express 555)」に関する全世界における権利を保有及び管理するほか,代表的なブランドの一つである「Shuang Xi」に関する中国国外における権利を保有している(甲12)。
具体的には,請求人は,世界各国において「Shuang Xi」ブランドに関する商標を保有するほか,日本においても「Shuang Xi」ブランドに関する引用商標を保有している(甲2?9)。
2 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)請求人の商標の世界における周知・著名性
請求人は,上述のとおり,日本において8件(引用商標)の商標登録を保有するほか,世界各国においても,商標登録を保有しており,請求人の商標を実際に使用している(甲13)(以下,当該使用に係る標章(使用例1?3)を,それぞれ「使用例標章1」(別掲9),「使用例標章2」(別掲10)及び「使用例標章3」(別掲11)という。また,これらをまとめて「使用例標章」という。)。
請求人の商標は,二重の慶事を表す双喜紋とよばれる非常に縁起の良いマークをモチーフにしているため,アジアの国々の慶事に利用されるなど,人気の商品となっている。
加えて,請求人は,請求人の商標のブランドイメージを維持し,より一層発展させるため,世界各国の市場において徹底したブランド管理を行っている。つまり,請求人の商標は,請求人の業務に係る商品を表示するものとして,日本はもとより世界中で一般の取引者・需要者の間に広く認識されている周知・著名な商標であり,請求人の提供する商品・役務に係る絶大な信用が化体した重要な財産である。
(2)本件商標と引用商標との類似性
ア 称呼における類似性
請求人の商標は,二重の慶事を表す双喜紋とよばれる非常に縁起の良いマークをモチーフにしている。この「双喜紋」のマークは,日本語では「双喜(そうき)」と読まれるが,中国語では「Shuangxi(シュアンシー)」と読まれる(甲14)。この読み方を欧文字で記したのが,引用商標1及び5である。したがって,引用商標からは,「双喜(そうき)」又は「シュアンシー」の称呼が生じる。
加えて,「双喜紋」のマークは,「喜」の文字を二つ並べて構成されていることから,上述の日本語及び中国語での読み方のほかに,「双喜紋」のマークの文字の構成を英語で言い表し,「Double Happiness(ダブルハピネス)」と読まれることもしばしばである(甲14)。したがって,引用商標は,「ダブルハピネス」の称呼をもって取引に資される可能性が高い。
一方,本件商標は,「DOUBLE」と「HAPPINESS」の欧文字を右側に寄せて二段に配し,斜体で横書きした商標であり,本件商標の構成文字より「ダブル」,「ハピネス」及び「ダブルハピネス」の称呼が生じる。
以上より,本件商標と引用商標は,共に「ダブルハピネス」という同一の称呼が生じることから,称呼において類似する商標である。
イ 商品の類似性
本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは,同一又は類似の商品である。
(3)被請求人の不正の目的について
被請求人は,周知・著名な商標に同一・類似の商標について,先取り的に悪意の商標出願を世界各国において行い,周知・著名商標である請求人の商標の出所表示機能の希釈化する行為及び請求人の商標に化体する信用・名声・顧客吸引力を毀損させる行為を行っている(甲15)。
加えて,被請求人は,日本において,「JACKPOT/ジャックポット」(登録第2001368号),「CARAVAN」(登録第4619284号)など,悪意の商標出願を行っている。
さらに,請求人は,現在,日本のほかに,欧州・英国・ブルネイ・シンガポールにおいて,被請求人に対し,請求人の商標に関連する悪意の商標出願に基づく商標登録を阻止すべく,異議申立を行い,争っている(甲16?19)。
本件商標は,上述のような状況下で,被請求人によってなされたものである以上,本件商標が,商標法第4条第1項第19号にいう「不正の目的」をもって,本件商標を使用するためになされたものとみるのが相当である。
また,実際に,本件商標を付した商品を購入した需要者が,請求人の商標を付した商品と出所の混同を生じている(甲20)。さらに,本件商標を付した商品は,本件商標のほかに,請求人の商標に酷似した「双喜紋」のマークを商品に付して使用している(甲20)。ゆえに,被請求人による,上述の本件商標の使用は,明らかに請求人の商標の出所表示機能の希釈化及び請求人商標に化体する信用・名声・顧客吸引力を毀損させる目的で行われたものであり,断じて許されるべきではない。
(4)小括
以上のとおり,本件商標の登録が維持されると,請求人が現にその商標を付して使用している商品とその取引者層・需要者層を共通にする商品について,請求人の使用商標と類似する商標,すなわち本件商標が自由に使用されてしまうことになる。その結果として,請求人の商標の出所表示機能の希釈化及び請求人商標に化体する信用・名声・顧客吸引力が毀損されているといえる。
このような事態が生じている状況において,請求人が多大な努力を費やして培ってきたブランドイメージは著しく毀損され,請求人が多大な損害を被ることは明白である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。
3 答弁に対する弁駁
(1)請求人の引用商標について
被請求人は,引用商標1及び8の権利者が請求人ではない旨主張するが,引用商標1及び8の権利者は,請求人であることが明らかである(甲26,27)。したがって,被請求人の主張には理由がない。
(2)被請求人の不正の目的について
被請求人は,「CARAVAN」について,ブリテッシュ・アメリカン・タバコの販売する銘柄であることを理由に被請求人の不正を主張するのは全く的を射ていない旨主張するが,「CARAVAN」は被請求人が行っている多数の不正の目的のある商標登録出願の代表的な一例であり,正当な権利者であるブリテッシュ・アメリカン・タバコの販売する銘柄である「CARAVEN A」に多少の変更を加えた「CARAVAN」や「CRAVEN A」というような商標について,多くの不正の目的のある商標登録出願を被請求人は実際に行っている。
被請求人は,日本に加え,世界各国においても,不正の目的のある商標登録出願を行っている(甲28)。
加えて,英国において,請求人は,被請求人の商標に対し行った異議申立において,引用商標2及び7に対応する2件の欧州連合商標に基づき,請求人の商標の取消しが認められている(甲29)。
上述のような状況の下において,被請求人が行った本件商標の登録出願及び権利取得のための行為は,商標法第4条第1号第19号にいう「不正の目的」をもって行ったものと考えるのが相当である。

第4 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨次のように述べた。
1 引用商標について
請求人は,自己の保有する登録商標を引用商標1?8(甲2?9)として提出している。
引用商標1は,「SHUANGXI」の欧文字からなり,白抜きの各文字を黒線で囲っているもので,「シュアンシー」の称呼が生じるものである。
なお,引用商標1の権利者は,請求人ではなく,「広東中烟工業有限責任公司」となっている。
引用商標2は,やや青みがかった円形の黒地の中に,白抜きで「喜」の文字を横に二つ,円形に沿って書されているもので,「喜」の文字を二つ並べたものは,請求人の主張によると,「双喜紋」のマークとして「ソウキ」の称呼が生じるものである。
引用商標3は,青みがかった縦長のパッケージの表面に,上記と同じ「双喜紋」のマークとその下に「SHUANGXI」の文字が配されており,「ソウキ」の称呼と「シュアンシー」の称呼が生じるものである。
引用商標4は,黒地の円形と,外周から少し内側に白抜きの枠からなる円形が配されており,その内側に円形に沿って,上方に「TABACCO BLENDS」の文字と下方に「INSPIRED BY THE ORIENT」の文字が書されており,中心には,引用商標2と同様に「喜」の文字を横に二つ並べた双喜紋とされるもので,「ソウキ」の称呼が生じるものである。
引用商標5は,標準文字で「SHUANGXI」の欧文字を書してなるもので,「シュアンシー」の称呼が生じるものである。
引用商標6は,縦長の台紙の上方に「SHUANGXI」の文字が配されており,台紙の中央に「喜」の文字を横に二つ並べた双喜紋が配されているところから,「シュアンシー」の称呼と「ソウキ」の称呼がそれぞれ生じるものである。
引用商標7は,赤色を基調として円形状に外周を16枚の花びらをかたどり,その内側にも二重に花びら状で円形を配し,中央に赤字で「喜」の文字を横に二つ並べた双喜紋が配されているところから,「ソウキ」の称呼が生じるものである。
引用商標8は,横長の台紙の左右中央に,黒地の円形状の中に,それぞれ「喜」の文字を横に二つ並べた双喜紋が配されているところから,二つの「ソウキ」の称呼が生じるとともに,左上方には中国文字が表されており,右上方には「SHUANGXI」の文字が表されているところから,「シュアンシー」の称呼も生じるものである。
なお,引用商標8の権利者は,中国の「China Tobacco Guangdong Industrial Co.,Ltd.」となっている。
上記のとおり,請求人が商標権者となっているのは,引用商標2ないし7までであるが,引用商標は,上記の構成からなり,「シュアンシー」及び「ソウキ」の称呼あるいはいずれか一方の称呼が生じるものである。
2 請求人の主張について
(1)請求人は,引用商標のほか,世界各国においても,商標登録を有していると主張するが,主張のみに終わっている。また,請求人は,請求人の商標を実際に使用していると主張している(甲13)。
甲第13号証には,使用例標章(タバコ箱の表面と思われる。)が掲載されているのみで,使用に係る具体的内容,すなわち,商品の具体的な内容,使用開始時期,使用範囲,使用頻度,我が国への輸入,国内での販売実績などなど,周知・著名の判断に必要とされている証拠資料は一切提出されていない。
使用例標章1は,赤地の上方に「SHUNGXI」の欧文字と花びら模様の中に「双喜紋」のマークが付されている。使用例標章2は,縦長表面の上方の青地に「SHUNGXI」の文字と中央に青地の花びら模様の中に「双喜紋」のマークが表されており,下方に「Palenje/zabija」の文字が書されている。使用例標章3は,上方の青地の四角形状の中に「SILK」の文字,中央には青地の花びらの中に「双喜紋」のマークが書されており,下方には,「KYPEHNE/YENBAET」の文字が書されている。
請求人は,「請求人の商標は,請求人の業務に係る商品を表示するものとして,日本はもとより世界中で一般の取引者・需要者の間に広く認識されている周知・著名な商標であり,請求人の提供する商品・役務に係る絶大な信用が化体して重要な財産である。」とも主張するが,使用例標章は,引用商標とはいずれも構成を異にしており,単に「請求人の商標」と主張したのでは,どの商標を指して周知・著名性を主張するのか,認定することは到底不可能である。
また,請求人は,中国国家烟草公司の関連会社とブリテッシュ・アメリカン・タバコ香港の共同出資子会社であり,また,ブリテッシュ・アメリカンタバコ・グループのグループ会社とのことである。
請求人は,世界や日本における上記グループ会社の市場性については触れているが,「請求人の商標」,すなわち「どの商標」の周知性・著名性を主張するのか不明であり,立証はなされていない。引用商標の全部及び使用例標章の全部が周知・著名であると主張するのであれば,それ相当の立証が必要であると考える。
(2)請求人は,本件商標は引用商標と類似するものであって,それらに係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものである,と主張している。
請求人は,「双喜紋」のマークは,日本語で「双喜(そうき)」と読まれるが,中国語では「Shuangxi(シュアンシー)と読まれるとした上で,引用商標からは,「双喜(そうき)」又は「シュアンシー」の称呼が生じると主張しており,この二つの称呼が生じることは認めることができる。
しかしながら,請求人は,「双喜紋」のマークは,「喜」の文字を二つ並べて構成されていることから,上述の日本語及び中国語での読み方のほかに,「双喜紋」のマークの文字構成を英語で言い表し,「Double Happiness(ダブルハピネス)」と読まれることもしばしばである,として甲第14号証を挙げている。しかるに,甲第14号証には,「Double Happiness」「ダブルハピネス」のいずれの文字も見当たらない。
このように全く根拠のない理由を挙げて,一足跳びに「Double Happiness(ダブルハピネス)」と読まれることもあると主張することなど信じ難いことである。
よって,本件商標と引用商標は,共に「ダブルハピネス」という同一の称呼が生じることから称呼において類似する商標であるという請求人の主張は,不当であるといわざるを得ない。
なお,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは同一又は類似する商品であることは認める。
(3)被請求人の不正の目的について
請求人の商標が周知・著名であることが,商標法第4条第1項第19号の適用の第一の要件であるが,請求人が提示している引用商標及び請求人が使用していると主張する使用例標章(甲13)の周知・著名性は立証されていない。
さらに,本件商標が請求人の周知・著名な商標と同一又は類似していることも重要な要件であるが,仮に,請求人の商標が周知されていたとしても,先に詳述したとおり,本件商標と引用商標あるいは使用例標章は全く類似していない。
請求人の商標には,「DOUBLE HAPPINESS」の文字は一切見当たらないし,「ダブルハピネス」の称呼も一切生じていない。
すなわち,商標法第4条第1項第19号は,いわゆる周知商標と同一又は類似の商標であって,不正の目的をもって使用するもの,と規定しているのであり,請求人の商標は周知商標でもなく,本件商標はそれに類似するものでもない。
しかるに,請求人は,被請求人の不正行為として,被請求人が保有している他の登録商標の多くを挙げて,その事実をもって,先取り的に商標登録出願を世界各国において行い,周知・著名商標である請求人の商標の出所表示機能の希釈化をする行為及び請求人商標に化体する信用・名声・顧客の吸引力を毀損させる行為を行っていると主張している。
請求人の上記主張は,本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当するか否かとは隔絶したものである。
被請求人が保有する登録第2001368号「JACKPOT/ジャックポット」(甲22)及び登録第5211407号「JACKPOT」(甲23)がフィリップ・モリスの販売する煙草の銘柄であるとしているが,被請求人の行為が商標法第4条第1項第19号に該当すると主張するのであれば,フィリップ・モリスの商標との関係で同条同項同号の適用の要件を具体的に主張して我が国の特許庁に無効審判を主張すべき事案であり本件とは関係はない。
「CARAVAN」についても同様,ブリテッシュ・アメリカン・タバコの販売する煙草の銘柄であることを理由に,被請求人の不正を主張するのは全く的を射ていないといわざるを得ない。
また,請求人は,甲第20号証について,実際に,本件商標を付した商品を購入した需要者が,請求人の商標を付した商品と出所の混同を生じていると主張するが,どのように出所の混同を生じているのか具体的な説明はなく,事実関係がはっきりしない。
よって,被請求人の行為を,不正行為と主張する請求人の主張は,全く理由がなく不当なものである。
3 まとめ
以上のとおり,請求人は,引用商標及び使用例標章の周知性について具体的に主張立証を行っておらず,周知商標であると認めることはできない。さらに,本件商標は,引用商標及び使用例標章とは類似していないことは明らかである。
このように,請求人の商標は,周知商標でもなく,本件商標とは類似する商標でもないという重要な前提条件が欠けているにもかかわらず,被請求人の行為を不正行為と主張しており,全く的を射ない不当な主張である。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)引用商標等の周知性について
請求人は,日本において引用商標を保有するほか,使用例標章(甲13)を実際に使用しており,請求人の商標は,請求人の業務に係る商品を表示するものとして,日本はもとより世界中で一般の取引者・需要者の間に広く認識されている周知・著名な商標である旨主張する。
しかしながら,請求人は,引用商標及び使用例標章が使用された商品「たばこ」の販売数量,売上高,販売シェア,広告宣伝の方法,規模等を示す具体的な証拠は一切提出していない。
そうすると,引用商標及び使用例標章は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,請求人の業務に係る商品「たばこ」を表示するものとして,日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていると認めることはできない。
(2)本件商標と引用商標について
ア 本件商標
本件商標は,別掲1のとおり,「DOUBLE」の欧文字と「HAPPINESS」の欧文字を右端にそろえて上下二段に横書きしてなるところ,その構成態様は,同じ大きさ,同じ間隔,同じ書体をもって,視覚上,まとまりよく一体的に表され,これから生じる「ダブルハピネス」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。
そして,本件商標の構成中,「DOUBLE」の文字部分は,「2倍の」の意味を有するものであり,「HAPPINESS」の文字部分は,「幸せ」の意味を有するものであって,それぞれ親しまれた英語であるから,「2倍の幸せ」の観念を生じるものである。
イ 引用商標
引用商標1は,別掲2のとおり,「SHUANGXI」の欧文字を白抜きで表してなるところ,これよりは「シュアンシー」の称呼が生じる(当事者間に争いがない。)。また,「SHUANGXI」の欧文字は,我が国でなじみのある語とは認められないから,引用商標1からは,特定の観念を生じないものである。
引用商標2は,別掲3のとおり,円形の灰色の中に,白抜きでデザイン化した「喜」の文字を横に二つ,円形に沿って描かれた図形からなるところ,特定の称呼及び観念は生じないものといえる。
引用商標3は,別掲4のとおり,灰色の縦長長方形の図形内の上方中央部に,円形中に,白抜きでデザイン化した「喜」の文字を横に二つ,円形に沿って描かれた図形とその下部に「SHUANGXI」の欧文字を書してなるところ,「SHUANGXI」の欧文字は,「シュアンシー」の称呼を生じるものであり,特定の観念を生じないものである。また,図形部分からは,特定の称呼及び観念は生じないものである。
引用商標4は,別掲5のとおり,黒地の円形と,外周から少し内側に白抜きの枠からなる円が配されており,その内側に円に沿って,上方に「TOBACCO BLENDS」の欧文字と下方に「INSPIRED BY THE ORIENT」の欧文字が書されており,円の中に,白抜きでデザイン化した「喜」の文字を横に二つ,円に沿って描かれた図形からなるところ,構成中の「TOBACCO BLENDS」及び「INSPIRED BY THE ORIENT」の欧文字部分は,「東洋の傑出したたばこのブレンド」程の意味合いを表示したものであって,引用商標4の指定商品の関係から,自他商品の識別標識としては,弱い部分というべきであるから,自他商品の識別標識としての称呼及び観念は生じないものである。また,図形部分からは,特定の称呼及び観念は生じないものである。
引用商標5は,「SHUANGXI」の欧文字を標準文字で表してなるところ,該欧文字は,上記と同様に「シュアンシー」の称呼を生じるものであり,特定の観念を生じないものである。
引用商標6は,別掲6のとおり,縦長長方形の図形内の上方に「SHUANGXI」の欧文字を書し,中央部にデザイン化した「喜」の文字を横に二つ配した構成からなるところ,「SHUANGXI」の欧文字は,「シュアンシー」の称呼を生じるものであり,特定の観念を生じないものである。また,図形部分からは,特定の称呼及び観念は生じないものである。
引用商標7は,別掲7のとおり,赤色の16枚の花びらをかたどった円形を描き,その内側にも二重に花びら状で円形を配し,中央に金色の正方形状の図形内に赤字でデザイン化した「喜」の文字を横に二つ配した構成からなるから,特定の称呼及び観念は生じないものである。
引用商標8は,別掲8のとおり,横長長方形の図形内の左右中央に,黒地の円形状の中に,それぞれデザイン化した「喜」の文字を横に二つ並べて配し,左上方に中国語の漢字を表し,右上方に「SHUANGXI」の欧文字を表してなるところ,「SHUANGXI」の欧文字は,「シュアンシー」の称呼を生じるものであり,特定の観念を生じないものである。また,中国語の漢字部分からは,直ちに特定の称呼及び観念は生じないものであり,図形部分からも,特定の称呼及び観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
ア 外観について
本件商標と引用商標の構成は,上記(2)ア及びイのとおりであるところ,両者は,その全体の外観においては,構成文字及び態様の相違により相紛れるおそれのないことが明らかである。
イ 称呼について
本件商標より生じる「ダブルハピネス」の称呼と,引用商標1,3,5,6及び8より生じる「シュアンシー」の称呼とは,全体の構成音数,構成音を異にするものであるから,明瞭に聴別し得るものである。そして,引用商標2,4,7からは特定の称呼は生じないものであるから,称呼については比較し得ない。
したがって,本件商標と引用商標とは,称呼において類似しない。
ウ 観念について
本件商標からは,「2倍の幸せ」の観念を生じるのに対し,引用商標からは,特定の観念を生じないものであるから,観念において相紛れるおそれはない。
エ 以上よりすると,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても,相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(4)使用例標章について
使用例標章1は,別掲9のとおり,赤色の縦長長方形の図形内の上方に「SHUANGXI」の欧文字を書し,中央に,赤色の16枚の花びらをかたどった円形を描き,その内側にも二重に花びら状で円形図形を配し,その内側に赤字でデザイン化した「喜」の文字を横に二つ配した構成からなるところ,「SHUANGXI」の欧文字は,上記と同様に「シュアンシー」の称呼を生じるものであり,特定の観念を生じないものである。また,図形部分からは,特定の称呼及び観念は生じないものである。
使用例標章2は,別掲10のとおり,縦長長方形の図形内の上方に青色の「SHUANGXI」の欧文字を書し,中央に,青色の円形図形を描き,その内側に白字でデザイン化した「喜」の文字を横に二つ配し,その下方に二段書きされた「Palenie」及び「zabija」の欧文字を黒枠で囲った構成からなるところ,「SHUANGXI」の欧文字は,上記と同様に「シュアンシー」の称呼を生じるものであり,特定の観念を生じないものである。また,「Palenie zabija」の欧文字部分から「パレニーザビジャ」の称呼を生じるものであり,特定の観念を生じないものである。さらに,図形部分からは,特定の称呼及び観念は生じないものである。
使用例標章3は,別掲11のとおり,縦長長方形の図形内の上方に「SILK」の欧文字を配し,中央に,青色の円形図形を描き,その内側に白字でデザイン化した「喜」の文字を横に二つ配し,その下方に「KyPEHИE」「yEИBAET」の文字を黒枠で囲った構成からなるところ,「SHUANGXI」の欧文字は,上記と同様に「シュアンシー」の称呼を生じるものであり,特定の観念を生じないものである。また,「SILK」の文字部分から「シルク」の称呼及び「絹,絹糸」の観念が生じるものである。さらに,「KyPEHИE yBИBAET」の文字部分はロシア語と認められるが,我が国においては,ロシア語が広く一般に親しまれた言語とまではいえないから,当該文字部分からは,特定の称呼及び観念は生じないというのが相当であり,図形部分からも,特定の称呼及び観念は生じないものである。
(5)本件商標と使用例標章との類否について
ア 外観について
本件商標と使用例標章の構成は,上記(2)ア及び(4)のとおりであるところ,両者は,その全体の外観においては,構成文字及び態様の相違により相紛れるおそれのないことが明らかである。
イ 称呼について
本件商標より生じる「ダブルハピネス」の称呼と,使用例標章1より生じる「シュアンシー」の称呼,使用例標章2より生じる「シュアンシー」及び「パレニーザビジャ」の称呼,並びに,使用例標章3より生じる「シルク」の称呼とは,いずれも全体の構成音を異にするものであるから,明瞭に聴別し得るものである。
したがって,本件商標と使用例標章とは,称呼において類似しない。
ウ 観念について
本件商標は,「2倍の幸せ」の観念を生じるのに対し,使用例標章1及び2は,特定の観念を生じないものであり,使用例標章3は,「絹,絹糸」の観念が生じるものであるから,本件商標と使用例標章とは,観念において相紛れるおそれはない。
エ 以上よりすると,本件商標と使用例標章とは,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても,相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(6)小括
上記(1)のとおり,引用商標及び使用例標章は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,請求人の業務に係る商品「たばこ」を表示するものとして,日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていると認めることができない。
そして,上記(3)及び(5)のとおり,本件商標と引用商標及び使用例標章とは,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない,非類似の商標である。
そうすると,本件商標は,不正の目的をもって使用をするものであるかについて検討するまでもなく,商標法第4条第1項第19号に定める要件を欠くものといわなければならない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
2 請求人の主張
請求人は,「双喜紋」のマークは「喜」の文字を二つ並べて構成され,当該マークを英語で言い表し,「Double Happiness(ダブルハピネス)」と読まれることから,引用商標は,「ダブルハピネス」の称呼をもって取引に資される可能性が高い旨主張する。
しかしながら,引用商標及び使用例標章が「ダブルハピネス」と称呼され,請求人に係る商品が「ダブルハピネス」の称呼をもって,取引者,需要者に広く認識されていると認めるに足りる証拠はない。
したがって,請求人の上記主張は採用できない。
3 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第19号に違反してされたものではないから,同法第46条第1項により,無効にすることはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 本件商標


別掲2 引用商標1


別掲3 引用商標2


別掲4 引用商標3


別掲5 引用商標4



別掲6 引用商標6(色彩は,原本参照。)


別掲7 引用商標7(色彩は,原本参照。)


別掲8 引用商標8


別掲9 使用例標章1(色彩は,甲第13号証を参照。)


別掲10 使用例標章2(色彩は,甲第13号証を参照。)


別掲11 使用例標章3(色彩は,甲第13号証を参照。)


審理終結日 2017-09-21 
結審通知日 2017-09-26 
審決日 2017-10-13 
出願番号 商願2015-120489(T2015-120489) 
審決分類 T 1 11・ 222- Y (W34)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 泉田 智宏 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 田村 正明
平澤 芳行
登録日 2016-05-13 
登録番号 商標登録第5850163号(T5850163) 
商標の称呼 ダブルハピネス、ダブルハッピネス、ハピネス、ハッピネス 
代理人 栃木 順子 
代理人 特許業務法人東京アルパ特許事務所 
代理人 達野 大輔 
代理人 竹中 陽輔 
代理人 中山 真理子 
代理人 稲垣 朋子 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ