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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W14
審判 一部申立て  登録を維持 W14
審判 一部申立て  登録を維持 W14
審判 一部申立て  登録を維持 W14
管理番号 1337235 
異議申立番号 異議2017-900258 
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-08-16 
確定日 2018-02-16 
異議申立件数
事件の表示 登録第5950175号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5950175号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5950175号商標(以下「本件商標」という。)は、「PowerMatrix」の欧文字を横書きした構成からなり、平成28年10月24日に登録出願、第14類「親時計,計時用具,原子時計」を含む、第7類、第9類、第11類、第12類、第14類、第38類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同29年5月10日に登録査定、同年5月26日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第14類「全指定商品」について、商標法第4条第1項第11号若しくは同法第4条第1項第15号に該当するものであるから、同法第43条の3第2項によって取り消されるべきものであるとして、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第36号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 引用商標
(1)申立人が引用する登録第4364527号商標(以下「引用商標1」という。)は、「POWERMATIC」の欧文字を横書きした構成からなり、平成11年4月9日に登録出願、第14類「時計・時計の部品及び附属品」を指定商品として、同12年3月3日に設定登録され、その後、同22年3月2日に商標権の存続期間の更新登録がされたものであり、現在、有効に存続しているものである。
(2)同じく、国際登録第1208181号商標(以下「引用商標2」という。)は、「POWERMATIC」の欧文字を横書きした構成からなり、2013年10月2日にSwitzerlandにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、2014年(平成26年)4月2日に国際商標登録出願、第14類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成28年6月24日に日本国において設定登録されたものであり、現在、有効に存続しているものである。
以下、上記の引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、「引用商標」という。
2 具体的な理由
(1)引用商標の著名性について
ア 申立人について
申立人は、1853年に創設されたスイスの時計メーカーであって、毎年、世界中で400万個以上の腕時計を販売している(甲4)。申立人は、創業以来164年にわたり継続して製造販売を手がけてきた伝統的なラグジュアリーウォッチの市場において、世界有数の生産量を誇る一方、1990年代末ごろからは、高度計や方位磁石、温度計、晴雨計など複数の機能を搭載し、タッチスクリーンで機能を切り替えることのできる高機能腕時計を発表するなど、最新技術を搭載した先進的な腕時計の製造販売にも取り組んでいることで知られている(甲4、甲5)。申立人は、創業以来現在に至るまで、世界中の腕時計市場をけん引してきた時計メーカーとして、我が国においても著名である。
イ 引用商標に係る申立人の商品について
引用商標は、申立人が、スイスのムーブメントメーカーであるETA社と共同で開発した、腕時計の自動巻きムーブメントを表す商標である(甲6)。ムーブメントとは、腕時計の駆動を司る機械装置の部分をいい、その仕組みは、ゼンマイを動力とする機械式(自動巻き及び手巻き)及び電池で駆動するクォーツに分けられる(甲7)。機械式腕時計のうち、自動巻きムーブメントを搭載した腕時計は、約40時間の持続時間を有するのが一般的であるところ、申立人が2013年に発表した自動巻きムーブメント「POWERMATIC80」(以下「申立人ムーブメント」という。)は、その倍の約80時間もの持続時間を可能とする最新鋭の自動巻きムーブメントとして、我が国を含む世界中の時計業界において大きな話題となった(甲8?甲11)。2014年以降も、申立人ムーブメントを搭載した申立人の新作の腕時計が毎年発表されており、そのたびに日本における時計専門雑誌の公式ウェブサイトや、時計・ファッション分野における各種ウェブサイト等において大きく取り上げられている(甲12?甲19)。申立人ムーブメントを搭載した申立人の業務に係る腕時計は、機械式腕時計としての高い性能を有する一方、その中心価格帯が10万円前後であることから、高機能かつ手の届きやすい機械式腕時計として、我が国の時計業界関係者や時計ファンの間ではもちろんのこと、一般の腕時計ユーザーの間においても人気が高い。
ウ 引用商標に係る商品の売上高
申立人ムーブメントを搭載した腕時計は、日本における発売開始初年度である2013年において、少なくとも50万スイスフラン(約5700万円)の売上を記録した(甲20)。その後も、2014年には約90万スイスフラン(約1億200万円)、2015年には約100万スイスフラン(約1億1400万円)と順調に売り上げを伸ばし、本件商標の出願前である2016年9月末時点における累計売上高は、約310万スイスフラン(約3億5400万円)にのぼった(甲20)。
エ 引用商標に係る商品の申立人による営業活動
申立人は、日本において申立人ムーブメントを搭載した腕時計の販売を開始した2013年から本件商標の出願時の2016年に至るまで、日本における広告活動を継続して行ってきた(甲21)。引用商標が表示された申立人の業務に係る腕時計に関する広告が掲載された媒体は、新聞(全国紙)、ビジネス雑誌、時計専門情報誌、複数のファッション雑誌である。さらに、日本航空及びそのグループ会社の機内誌にも、引用商標が表示された申立人の業務に係る腕時計の広告が掲載されている(甲22)。
また、申立人は、毎年3月にスイス・バーゼルで開かれる世界最大の時計宝石見本市「バーゼルワールド」において、プレゼンテーションのためのブースを設けて新作を発表している(甲23)。「バーゼルワールド」は、時計産業の中心地であるスイス・バーゼルにおいて、1917年から毎年開催されている見本市であり、100回目の開催にあたる2017年には、申立人を含む220の企業・団体が出展し、世界100か国以上の国から10万6000人もの来場者があった(甲24)。申立人は、「バーゼルワールド」の第1回開催時から毎年継続して出展しており(甲23)、申立人の創業160周年にあたる2013年の「バーゼルワールド」において、申立人は、申立人ムーブメントを搭載した腕時計を初めて発表した(甲8、甲9、甲12)。従来の自動巻きムーブメントは約40時間の持続時間であるところ、申立人ムーブメントは、その倍の約80時間の持続時間を可能とし、腕から外してそのまま放置しても3日間以上動き続けるという画期的な性能を誇る新型ムーブメントとして、日本においても時計専門のウェブサイトやファッションメディアサイトにおいて大きく報道された(甲8?甲11)。申立人はその翌年以降も申立人ムーブメントを搭載した様々なタイプの新作腕時計を発表し、そのたびに日本においても高い関心をもって各ウェブメディアに取り上げられている(甲12?甲19)。
オ 外国における商標登録例
申立人は、引用商標と同一の商標について、第14類「時計」等を指定商品として、米国、ヨーロッパ、アフリカ、東アジア、東南アジア、南米、中東の各国・地域において商標登録を行い、世界中で引用商標の保護に努めている(甲25?甲35)。これにより、申立人の引用商標は世界中でその著名性が維持されている。
(2)本件商標と引用商標の類似性
ア 本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「PowerMatrix」の欧文字を横一連に書してなる商標であり、その構成文字に相応して、「パワーマトリックス」の一連の称呼が生じる。また「PowerMatrix」に相当する(外来)語は存在しないことから、本件商標からは、他の商標と対比すべき観念は生じない。
イ 引用商標について
(ア)引用商標1は、前記第2の1(1)のとおり、「POWERMATIC」の欧文字を横一連に書してなる商標であり、その構成文字に相応して、「パワーマティック」の一連の称呼が生じる。また、「POWERMATIC」に相当する(外来)語は存在しないことから、引用商標1からは、他の商標と対比すべき観念は生じない。
(イ)引用商標2は、前記第2の1(2)のとおり、「POWERMATIC」の欧文字を横一連に書してなる商標であり、引用商標1と同様、その構成文字に相応して、「パワーマティック」の一連の称呼が生じ、また、「POWERMATIC」に相当する(外来)語は存在しないことから、他の商標と対比すべき観念は生じない。
ウ 本件商標と引用商標の対比
(ア)外観について
上記したとおり、本件商標は、欧文字の「PowerMatrix」を横一連に表してなる商標であり、一方、引用商標は、欧文字の「POWERMATIC」を横一連に表してなる商標である。本件商標は、11文字のアルファベットを組み合わせてなるところ、そのうち、外観における識別において重要な要素を占める語頭から数えて8文字までの文字、すなわち「P」、「O」、「W」、「E」、「R」、「M」、「A」、「T」の文字及びその並び順が、引用商標と共通するものである。加えて、本件商標のうち、語尾から2文字目が「I」である点も、引用商標と共通する。本件商標が引用商標と異なる文字は、外観における識別において最も影響が小さいと考えられる語尾部分の「R」及び「X」の2文字のみである。
よって、本件商標は、11文字という比較的冗長な本件商標の文字列にあって、語頭の8文字を含む全体で9文字を引用商標と共通にし、相違する2文字は、取引の際には外観上、看過されやすい本件商標の語尾部分に位置していることから、特段に目立つものとはいえず、需要者が時と所を異にして両商標に接した場合には、看者に全体の外観において近似した印象を与えるものといえる。したがって、両商標は、外観上、極めて近似する構成をとるものである。
(イ)称呼について
上記したとおり、本件商標は、その構成文字に相応して、「パワーマトリックス」の一連の称呼が生じる。一方、引用商標は、その構成文字に相応して、「パワーマティック」の一連の称呼が生じる。両商標は、称呼における識別において重要な要素を占める語頭から4音を共通にし、語尾部分は「トリックス」と「ティック」で異なるものの、語尾から2音目の「ック」の音を共通にしており、全体として称呼した際には、近似音として聴取されるものである。
(ウ)観念について
上述のとおり、本件商標と引用商標は、いずれも直接的かつ一義的に何らかの特定の観念が生じるものではなく、全体として一種の造語を表してなるものと認識、把握されるとみるのが相当であり、観念において比較することができない。
エ 小括
以上のすべてを考慮すると、本件商標と引用商標は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼の要素が近似するものであって、かつ、本件商標に係る指定商品中、第14類「親時計,計時用具,原子時計」は、引用商標の指定商品と同一又は類似する商品である。したがって、本件商標は引用商標に類似するものである。
(3)出所混同の生ずるおそれについて
最高裁判決(最高裁平成10(行ヒ)85号)に鑑みると、商品の出所混同のおそれの判断は、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準に、商品間の関連性、商標自体の類似性の程度、他人の商標の著名性の程度、著名商標の独創性の程度、取引者及び需要者の共通性、並びに実際の具体的取引の実情を勘案したうえで、総合的に判断されるべきものである。
この点を本件商標と引用商標について検討すると、まず、引用商標の著名性については、上述のとおり、時計及びその部品並びに附属品につき、世界的な著名性を有していることはいうまでもないことである。そして、本件商標と引用商標の類似性についても、両商標は外観及び称呼において近似したものといえ、その類似性は相当程度高いものである。そして、著名商標である引用商標の独創性の程度については、引用商標は、直接的かつ一義的に何らかの特定の観念が生じるものではなく、全体として一種の造語を表してなるものと認識、把握されるものであるから、創造標章であることは明白である。さらに、取引者及び需要者の共通性については、本件商標は、その指定商品に「親時計,計時用具,原子時計」を含むものであり、引用商標もその指定商品に「時計・時計の部品及び附属品」等を含むものである。このように、指定商品の分野が同一であるので、商品の用途又は目的も同一であり、その取引者・需要者は共通であるというべきである。また、言うまでもなく、申立人は引用商標の指定商品である時計及びその部品並びに附属品の製造販売を行っており、申立人の業務の根幹を成すものである。
さらに、申立人の引用商標に係るムーブメントは、腕時計に搭載される小型の精密機械であるところ、通常、腕時計に搭載されたムーブメントに係る商標は、腕時計の文字盤にごく小さい文字で表示されることが一般的である。実際に、申立人の業務に係る腕時計の文字盤は、大きいものでも直径約4センチメートル程度であり、その下方にごく小さい文字で引用商標が表示されている(甲36)。このような取引の実情に照らせば、11文字という比較的冗長な本件商標の文字列にあって、語頭の8文字を含め、全体で9文字を引用商標と共通にする本件商標が、腕時計の文字盤に小さい文字で表示された場合、取引者及び需要者をして通常払われる注意力をもってしても、対比観察はもとより、時と所を異にして離隔観察した場合においてはなおさら、両商標の外観を見誤るおそれがあるといえる。また、本件商標が腕時計の文字盤にごく小さい文字で表示された場合、あたかも申立人の著名な自動巻きムーブメントである「POWERMATIC」のシリーズの一つとして取引者及び需要者等において認識され得るものであり、取引上相紛らわしいものである。
以上より、本件商標と引用商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準に、商品間の関連性、商標自体の類似性の程度、引用商標の著名性の程度、著名である引用商標の独創性の程度、取引者及び需要者の共通性、並びに実際の具体的取引の実情を勘案すると、本件商標がその指定商品に使用されると、取引者及び需要者は、それらの商品があたかも申立人若しくは申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
(4)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、上述のとおり、その出願日前の出願に係る申立人の引用商標に類似する商標であって、その引用商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものである。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するというべきである。
(5)商標法第4条第1項第15号について
上述のとおり、著名な引用商標と類似するというべき本件商標が、引用商標の指定商品と同一又は類似する本件商標の指定商品に使用された場合、引用商標の有する著名性を考慮し、また本件商標と引用商標の指定商品が重複することを考慮すると、本件商標に接する取引者・需要者は、それらの商品があたかも申立人若しくは申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
上述の最高裁判所における判決例において、商標法第4条第1項第15号の趣旨から、フリーライド及びダイリューションを引き起こすような広義の混同を生ずる商標をも商標法第4条第1項第15号に該当すべきであると判示されている。
本件においても、申立人の著名な引用商標と相紛れるおそれのある本件商標が、当該著名表示に化体した高い名声及び信用にフリーライドすることによって、当該著名表示に化体した名声、信用、及び評判の稀釈化が引き起こされる蓋然性は高いといえ、したがって、引用商標に対する希釈化を防止し、引用商標が有する自他商品識別機能を保護すべき必然性は高いといえる。そして、本条の趣旨から考えても、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に該当するというべきである。
また、上記したとおり、11文字という比較的冗長な本件商標の文字列にあって、語頭の8文字を含め、全体で9文字を引用商標と共通にする本件商標が、その指定商品中、例えば時計の文字盤に小さい文字で表示された場合、取引者及び需要者をして通常払われる注意力をもってしても、対比観察はもとより、時と所を異にして離隔観察した場合においては尚のこと、両商標の外観を見誤るおそれがあるといえるほか、本件商標が、その指定商品中、例えば腕時計の文字盤に小さい文字で表示された場合、あたかも申立人の著名な自動巻きムーブメントである「POWERMATIC」のシリーズの一つとして取引者及び需要者等において認識され得るといった取引の実情を考慮すると、本件商標がその指定商品中、第14類「親時計,計時用具,原子時計」に使用された場合に、これに接する取引者・需要者は、あたかも申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何等かの関係がある者の業務であるかの如く誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
以上に述べたとおり、本件商標と引用商標との外観及び称呼上の類似性、引用商標が周知著名性を獲得していること、申立人が高い著名性を獲得している時計分野の商品と同一・類似する商品を本件商標が指定していること、時計という商品の性質上、ごく小さい文字で商標が表示された上で商品が取引されるといった取引の実情等に照らし、両商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断した場合において、本件商標に接した取引者・需要者は、あたかも申立人若しくは申立人と何等かの関係がある者の業務に係る商品であるかの如く、役務の出所について混同を生ずるおそれがあることは明白である。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(6)結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号若しくは商標法第4条第1項第15号に該当するというべきである。

第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「PowerMatrix」の欧文字を横書きした構成からなるところ、該文字は、「力、能力」などを意味する英語「Power」と、「母体、行列」などの意味を有する英語「Matrix」の2語を結合したものと理解されるものであって、両語は、それぞれ一般によく知られているものといえる。しかし、両語が結合されて、我が国において親しまれた熟語的意味合いが生ずるものではないから、本件商標からは、特定の意味合いが生ずるものとはいえない。
したがって、本件商標は、その構成文字に相応して、「パワーマトリックス」の称呼を生ずるものであって、特定の観念を有しない造語を表したと理解されるとみるのが相当である。
(2)引用商標について
引用商標は、前記第2の1のとおり、いずれも「POWERMATIC」の欧文字を横書きした構成からなるところ、該文字は、辞書等に載録のないものであって、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として認識されるものである。
してみれば、引用商標は、その構成文字に相応した「パワーマティック」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標との対比
ア 外観について
本件商標は、11文字からなり、語頭の「P」と第6文字の「M」が大文字で表され、他の文字は小文字で表されており、文字全体の書体は同一で、等間隔で表されているものである。これに対し、引用商標は、10文字からなり、すべての文字を大文字で表されているものである。
そうすると、両商標は、構成文字数の差、大文字と小文字の混在により構成されているか、あるいは、大文字のみで構成されているかの相違点を有し、そして、語尾において、「rix」と「IC」の文字の顕著な差異を有するものであるから、両商標において、上記相違点は、これらを時と所を異にして離隔的に観察した場合においても、外観上判然と区別し得るものといえる。
したがって、本件商標と引用商標は、外観上類似するものとはいえない。
イ 称呼について
本件商標より生ずる「パワーマトリックス」の称呼と引用商標より生ずる「パワーマティック」の称呼とを比較すると、本件商標の称呼が長音を含み8音構成に対し、引用商標の称呼は6音構成と、その構成音数に差異を有し、また、両称呼の、後半部における「トリックス」と「ティック」の音の差異が両称呼全体に及ぼす影響は決して小さいとはいえず、それぞれを一連に称呼した場合には、両称呼は音調、音感が異なるものとして聴取されるものである。
したがって、本件商標と引用商標は、称呼上類似するものとはいえない。
ウ 観念について
前記のとおり、本件商標と引用商標は、構成全体をもって、特定の意味合いを有しない造語よりなるものであるから、観念上比較することはできない。
エ 以上より、本件商標と引用商標とは、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において判然と区別し得るものであるから、互いに紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
(4)小括
上記のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の周知・著名性
申立人は、引用商標は、日本国内において申立人の業務に係る商品の出所を表示するものとして広く取引者及び需要者間に周知著名であった旨主張し、その証拠として甲第8号証ないし甲第35号証(枝番号を含む。)を提出している。
しかし、申立人から提出された証拠は、主に申立人ムーブメント及び申立人ムーブメントを搭載した腕時計(以下、これをまとめて「申立人商品」という。)を紹介するウェブサイトの記事(甲8?甲19)と申立人の外国における登録商標のリスト及び登録証(甲25?甲35)であり、当該証拠からは、引用商標が、申立人の業務に係る申立人商品を表す商標として、本件商標の登録出願時前より我が国において使用されていた事実及び各国で商標登録されていることを認めることができるとしても、これが直ちに引用商標について、本件商標の登録出願時及び登録査定時における周知・著名性を、具体的(例えば、販売数量、販売金額、市場占有率、広告宣伝の媒体、広告内容・期間・回数・地域・金額など)かつ、客観的な資料に基づいて立証しているものではない。また、申立人の諸外国における商標の登録例は、引用商標の周知・著名性を直接的に裏付けるものではない。
さらに、引用商標を使用した申立人商品の我が国における売上高(甲20)にしても、申立人が数字のみをリスト化したもので、そこに記載の数字を裏付ける具体的な証拠の提出はなく、また、同業他社の販売額等は立証されていないから金額の多寡について評価することはできない。
そして、引用商標が表示された申立人商品に関する新聞、雑誌への広告(甲21)は、それぞれ年1回程度と、その回数は少ないものであり、また、時計宝石見本市の証拠(甲23、甲24)は、本件商標の登録出願日より後のものである。
加えて、我が国において引用商標が付された申立人商品の販売が開始されたのは、2013年であると認められるところ、それから本件商標の登録出願日までは極めて短期間であって、引用商標が、この期間内に日本国内における需要者の間に広く認識されている商標になったという事実は認められない。
してみると、申立人から提出された証拠は、本件商標の登録出願日以前に、我が国において、引用商標が、申立人の業務に係る商品を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めるに足る証拠とはいえない。
そうすると、申立人提出の証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く知られていたということはできない。
(2)出所の混同のおそれ
上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る申立人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及びその登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたということはできない。
さらに、上記1のとおり、本件商標は、引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点についても互いに紛れるおそれのない非類似の商標である。
そうすると、本件商標に接する需要者が引用商標を想起又は連想することはなく、したがって、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、該商品が申立人又は申立人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれのある商標ということはできない。
(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、登録異議の申立てに係る指定商品について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものではないから、商標法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2018-02-05 
出願番号 商願2016-118399(T2016-118399) 
審決分類 T 1 652・ 261- Y (W14)
T 1 652・ 262- Y (W14)
T 1 652・ 263- Y (W14)
T 1 652・ 271- Y (W14)
最終処分 維持 
前審関与審査官 今田 尊恵 
特許庁審判長 田中 幸一
特許庁審判官 大森 友子
網谷 麻里子
登録日 2017-05-26 
登録番号 商標登録第5950175号(T5950175) 
権利者 キーランド テクノロジー シーオー., エルティーディー.
商標の称呼 パワーマトリックス、マトリックス 
代理人 河野 登夫 
代理人 田中 伸次 
代理人 廣中 健 
代理人 田中 克郎 
代理人 小林 奈央 
代理人 河野 英仁 
代理人 稲葉 良幸 
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