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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W3543 審判 全部申立て 登録を維持 W3543 審判 全部申立て 登録を維持 W3543 審判 全部申立て 登録を維持 W3543 審判 全部申立て 登録を維持 W3543 |
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管理番号 | 1337225 |
異議申立番号 | 異議2017-900262 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-08-28 |
確定日 | 2018-01-25 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5953339号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5953339号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5953339号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成からなり、平成28年10月26日に登録出願、第35類「インターネットにおけるウェブサイト上の広告用スペースの提供及びそれに関する情報の提供」及び第43類「酒類を主とする飲食物の提供に関する情報の提供,酒類を主とする飲食店の人気ランキングに関する情報の提供,飲食物の提供,飲食店の予約の取次ぎ」を指定役務として、同29年3月3日に登録査定、同年6月9日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、以下の3件の商標であり、登録商標については、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。 (1)申立人が雑誌「小悪魔ageha」の商標として広く認識されている商標であると主張している別掲2のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標1」という。) (2)登録第5818273号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:小悪魔ageha(標準文字) 登録出願日:平成27年3月18日 設定登録日:平成28年1月8日 指定商品及び指定役務:第35類「広告,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,職業のあっせん,求人情報の提供,化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の他、第9類、第16類、第42類及び第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 (3)登録第5647339号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の構成:小悪魔ageha(標準文字) 登録出願日:平成25年8月14日 設定登録日:平成26年2月7日 指定役務:第43類「飲食物の提供,宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,動物の宿泊施設の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与,布団の貸与,まくらの貸与,毛布の貸与,おしぼりの貸与,タオルの貸与」 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第11号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。 (1)商標法第4条第1項第10号について ア 「需要者の間に広く認識されている商標」について 引用商標1は、「小悪魔ageha」の商標(甲5)の権利者から使用許諾を受けた会社によって、雑誌「小悪魔ageha」(以下「本件雑誌」という。)の出版を始めとする(甲6)各種取引において使用されている。本件雑誌は、2005年の創刊以来、現在まで出版され、最盛期には発行部数が約30万部にものぼり(2008年当時の出版社「インフォレスト株式会社」による。)広く読者や消費者に知られている。 本件雑誌は、ギャル系ファッション雑誌であり、「agehaモデル」と呼ばれる同誌のモデルの多くは現役のキャバ嬢が多く、「age嬢」と呼ばれる同誌の読者のうち、同誌で紹介されるファッションやメイクを好む女性には、一般女性に加え、現役のホステスやキャバ嬢が多い。本件雑誌には、現役キャバ嬢であるモデルのファッションやメイクが多数紹介され、読者女性たちのファッションやメイクのバイブルといわれている。 本件雑誌には公式サイトがインターネット上に存在し(甲7)、インターネット上においても、ホステスやキャバ嬢の他、一般女性に対してファッションやメイクの情報を提供している。agehaモデルの中には、ツイッターで情報を発信する者もあり(甲8)インターネット上においても、美容整形に関するサイト(甲9)やキャバ嬢求人及びキャバクラ情報サイトに関連するインスタグラムサイト(甲10)など本件雑誌に関連するサイトが多数存在し、知名度は高い。 本件雑誌の出版会社によって運営され、本件雑誌公認のキャバ嬢求人及びキャバクラ情報サイト「小悪魔ageha navi」がある(甲11)。同サイトでは、本件雑誌の読者であるキャバ嬢のために求人情報が提供され、実際に本件雑誌のagehaモデルを務めるキャバ嬢が在籍するキャバクラの求人などが当該在籍モデルとともに紹介されている。上記のとおり、本件雑誌の読者層がホステスやキャバ嬢であることに鑑みると、憧れのagehaモデルやage嬢が勤務するキャバクラの求人に応募することも可能であり、その利用価値は高い。 以上のとおり、引用商標1は、需要者、すなわちホステスやキャバ嬢を中心とするギャル系のファッションを好む女性のみならず本件雑誌を購読しない者の間においても、「小悪魔ageha」というギャル系ファッション雑誌として、幅広く認識されている。 イ 「類似する商標」について 本件商標は、「night ageha」であるが、「ageha」部分が「night」部分と比較して非常に大きく表現されており、商標の中で大部分を占める。そして、その「ageha」部分の「g」及び最後の「a」の文字の丸い部分がハート型になっており、視覚を通じて認識する外観の全体的印象において「ageha」部分が与える影響は多大である。 他方、引用商標1は、「小悪魔ageha」であり、本件商標と同様、「ageha」部分が「小悪魔」部分と比較して非常に大きく、商標全体の大部分を占める。さらに、「ageha」部分の「g」及び最後の「a」の文字の丸い部分がハート型になっており、「ageha」部分においては、本件商標と全く同一である。 本件雑誌の読者は、本件雑誌のモデルをagehaモデルと呼び「小悪魔ageha」のうち「ageha」部分のみを「小悪魔ageha」に関連するものを指して独立で用いることが多々ある(甲6)。そうすると、需要者が視覚を通じて認識する外観の全体的印象は、おのずから「ageha」部分から与えられ、本件商標及び引用商標1において、「ageha」部分が大きく商標全体の大部分を占めることからも、「ageha」部分が完全に同一であることは、外観において互いに紛らわしく、類似する。 つぎに、称呼の類否について検討するに、本件商標が「ナイトアゲハ」であるのに対し、引用商標1は「コアクマアゲハ」であって、「アゲハ」との称呼が同一である。この点、両商標の「アゲハ」と称呼する部分が視覚的に他の部分よりも非常に大きく、商標の大部分を占めていること、需要者において「アゲハ」部分のみを引用商標1の本件雑誌に関連する意味で使用することが多々あること、本件雑誌自体を「アゲハ」と呼ぶこともあること、本件商標と引用商標1が「ageha」部分が大きい結合商標といえること等に鑑みると、両商標は称呼について類似する場合に該当する。 さらに、観念の類否については、ホステスやキャバ嬢等の需要者において、引用商標1において想起する意味は、本件雑誌の元編集長が言及するとおり、「夜の世界のアゲハ蝶」である(甲12)。これに対し、本件商標は、「夜の」アゲハ蝶を意味する。 また、需要者の間において「ageha」は、本件雑誌の代名詞となっており、このことは、上述のとおり、本件雑誌のモデルが「agehaモデル」と呼ばれ、本件雑誌を愛読し同誌のファッションやメイクをする女性を「age嬢」と呼ぶことからも明らかである。つまり、需要者であるキャバ嬢や本件雑誌の読者、クラブやキャバクラ関係者にとって、「ageha」とは、本件雑誌を意味するのである。 さらに、上述したとおり、本件雑誌がキャバ嬢の「バイブル」との評価を得ていることから、「小悪魔ageha」若しくは「アゲハ」といえば、キャバ嬢に関連する情報やグッズが想起される。本件商標は、「アゲハ」の印象が強く、「night」については、キャバ嬢の仕事が夜の仕事と言われるように、キャバ嬢に関連する情報やグッズの想起を促進するものである。 したがって、本件商標と引用商標1は、観念においても類似する。 以上より、本件商標は、需要者の通常有する注意力を基準とした判断に基づき、引用商標1に類似する商標である。 ウ 役務の類否判断について 引用商標1は、本件雑誌が公認するキャバ嬢の求人を掲載し、キャバクラの紹介をするインターネット上のウェブサイト「小悪魔ageha navi」においても使用されている(甲11)。同サイトは、「ageha navi」、「アゲハナビ」とも呼ばれており、agehaモデルやage嬢を中心とするキャバ嬢の間で知名度の高いサイトである(甲10)。つまり、需要者の間では、「ageha」をその名称の一部若しくは全部に含むサイトは、その内容がキャバ嬢やキャバクラに関連する場合には、本件雑誌が公認しているとの認識を持たせるものである。 本件雑誌公認の「ageha navi」では、キャバクラに対してインターネットにおけるウェブサイト上の広告用スペースを提供しており、これに関する情報の提供も行っており、さらにキャバクラのランキングに関する情報提供やキャバ嬢のランキングに関する情報提供も行っている(甲11)。 そうすると、「酒類を主とする飲食店」であるキャバクラに関するインターネット上での情報提供という、本件商標の指定役務において本件商標を用いることは、同指定役務において既に広く認識されている本件雑誌公認のウェブサイトと混同のおそれがあり、「小悪魔ageha」によって提供されている役務と誤認されるおそれが多分に認められる。 したがって、本件商標を用いた指定役務の提供は、同役務が引用商標1である「小悪魔ageha」たる本件雑誌の公認を受けた役務であること、もしくは本件雑誌の出版社によって運営され情報提供されているサイトであると誤認されるおそれがあると認められ、本件商標と引用商標1は、その役務において類似しているといえ、出所の混同を防止する必要性がある。 エ 結論 以上より、本件商標は、全国規模で出版されている本件雑誌を表示するものとして、需要者であるキャバ嬢や読者をはじめとする幅広い層の男女の間に広く認識されている引用商標1に類似するものであり、類似する役務に使用するものである。 (2)商標法第4条第1項第15号について ア 「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」について 本件雑誌は、引用商標1の権利者から使用許諾を受けた会社が出版しており、同会社は「出版」に引用商標1を使用し、これが全国的に需要者にとって周知となっている。また、同会社は、本件雑誌の出版の他、本件雑誌が公認する「小悪魔ageha navi」の運営業務も行っている。 そうすると、インターネットにおけるウェブサイト上の広告用スペースの提供及びそれに関する情報提供や酒類を主とする飲食店の人気ランキング情報の提供などの指定役務の提供において、本件商標を使用した場合、(ア)本件商標と引用商標1が類似していること、(イ)引用商標1が需要者の間で周知されていること、(ウ)本件商標の指定役務と引用商標1を用いて提供されている役務に関連性があること、(エ)本件商標と引用商標1の役務の需要者が共通すること、との理由から、役務の提供者について混同するおそれがある。 イ 結論 以上より、本件商標がその指定役務に使用された場合、その役務の需要者が、本件雑誌の出版社の業務に係る役務と出所について混同するおそれがある。 (3)商標法第4条第1項第11号について ア 商標の類似性について 本件商標は、その文字の大小から「night」と「ageha」の結合商標といえ、引用商標2及び引用商標3もまた、漢字とアルファベットの組み合わせであることから「小悪魔」と「ageha」の結合商標といえる。これらの商標の「ageha」部分は、その称呼において全く同一である。 つぎに、観念の類似性について、引用商標2及び引用商標3は、上記(1)イで述べたとおり「小悪魔ageha」は、本件雑誌の代名詞である。つまり、需要者にとって、「ageha」は、本件雑誌、すなわち「小悪魔ageha」を意味するのであり、本件雑誌のロゴに酷似する本件商標についても、需要者にとっては、本件雑誌を想起させるものである。 以上より、本件商標は、需要者の通常有する注意力を基準とした判断に基づくと、「アゲハ」の称呼及び観念において、引用商標2及び引用商標3と同一若しくは類似するものである。 イ 役務の類否判断について 引用商標2及び引用商標3は、本件雑誌が公認する「小悪魔ageha navi」とのインターネットにおけるウェブサイト上の広告スペースをキャバクラ等の酒類を主とする飲食店に提供する等のサイト運用の役務に用いられている。同サイトにおいては、キャバクラ等の広告の他、キャバクラのランキングや情報提供を行っている。これらの役務は、本件商標の指定役務により提供される、インターネットにおけるウェブサイト上での酒類を主とする飲食店に関する情報提供や同様の飲食店のランキング及び情報提供と、提供するサービス、提供手段及び目的・場所が一致する。つまり、引用商標2及び3を用いて提供されているサービスは、本件商標の指定役務と同一である。 これらの役務に関し、需要者は、キャバクラ等の飲食店の利用者、同飲食店で働いている又は働こうとしているキャバ嬢等の女性等であり、本件商標による指定役務と引用商標2及び引用商標3の役務における需要者は、その範囲が一致する。 ウ 結論 以上より、本件商標は、引用商標2及び引用商標3と「アゲハ」の称呼、観念を共通にする類似の商標であり、また、その指定役務も同一又は類似のものである。 4 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第10号及び同第15号該当性について 申立人が、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当するとして引用している商標は、引用商標1である。 ア 引用商標1及び本件雑誌の著名性 (ア)申立人の提出した証拠によれば,以下のとおりである。 a 甲第6号証は、ダナリーデラックス株式会社発行の本件雑誌であるところ、その表紙には、「g」の文字の一部が欠けているものの、色彩を除いて、引用商標1と同一と認められる、「g」及び語尾の「a」の文字の空洞部分がハート型にデザインされている「ageha」の欧文字(以下「agehaロゴ」という。)を大きく表し、その左上に小さく「小悪魔」の漢字を配した構成からなる商標が表示されている。 そして、本件雑誌には、ファッション、美容関連の内容が掲載され、「age嬢」や「agehaモデル」と称される女性モデル等が紹介されている。 b 甲第7号証は、本件雑誌の公式ウェブサイトとするものであるところ、1葉目には、上部中央に、引用商標1と同一又は類似の態様のものが表示され、左上に「ageha dunnery.tokyo」及び右下に「2017/08/21」の表示がある。そして、5葉目のアーカイブの欄には、2017年4月?2017年8月までの表示、また、「読者プレゼント/2017.8.1?」の表示があることから、この公式ウェブサイトは、本件商標の登録査定後のものである。 c 甲第8号証は、水嶋なな氏のツイッター記事であるところ、引用商標1に関するものは、3葉目に、2017年8月13日のツイートとして、「小悪魔agehaで紹介されてた・・・」の記載があるのみである。 d 甲第9号証は、「小悪魔agehaがバックアップする/美容整形口コミサイト/ageha美容整形navi」と題するものであるところ、右下に「2017/08/15」の表示、甲第10号証は、「小悪魔ageha navi」に関連するインスタグラムサイトとするものであるところ、右下に「2017/08/15」の表示、甲第11号証は、「小悪魔ageha navi/ナイトワーク求人サイト」と題するものであるところ、右下に「2017/08/10」の表示があり、これらの掲載日付けは、本件商標の登録査定後のものである。 e 甲第12号証は、2009年7月14日の「小悪魔ageha」編集長のインタビュー記事とするものであるところ、「・・・今ではギャル系ファッション誌として確固たる地位まで上り詰めた『小悪魔ageha』。」との記載、2006年6月から「小悪魔ageha」に誌名変更、2006年10月から月刊化された旨、本件雑誌の販売部数は30万部との記載、最後の関連記事には、「『小悪魔ageha』などを出版していたインフォレストが倒産・・・」の記載がある。 (イ)上記aないしeからすると、本件雑誌は、ギャル系ファッション誌であって、2006年6月から「小悪魔ageha」と誌名変更され、同年10月から月刊誌となっていることがうかがわれるものの、申立人の提出に係る証拠においては、「小悪魔ageha」に誌名変更したとされる2006年6月以降、本件商標の登録出願時及び登録査定時までの間における、本件雑誌の販売部数、販売地域及び広告状況等がどの程度であるか不明であって、また、申立人が引用商標1の使用を許諾している者が、「ダナリーデラックス株式会社」であり、公式ウェブサイトに表示されている「ageha dunnery.tokyo」が該会社と同一会社であるか等についても確認できないことに加え、上記編集長のインタビュー内容の事実を客観的に裏付ける証拠の提出はなく、その他、本件雑誌及び引用商標1の著名性を認めるに足りる証拠の提出はない。 してみれば、申立人の提出した証拠をもって、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標1が、申立人又は同人から使用許諾を受けた者の業務に係る本件雑誌を表すものとして、需要者間に広く知られていたと認めることはできない。 イ 本件商標と引用商標1の類似性 本件商標は、別掲1のとおり、「agehaロゴ」とほぼ同一のロゴを大きく表し、その左上に小さく「night」(「g」の文字の空洞部分がハート型になっている。)の文字を配し、全体にピンク系で着色した構成からなるものであり、構成中の「ageha」の文字部分が、特徴的なデザインで大きく表示されていることから、該文字部分は、独立して自他役務の識別標識として機能する要部とみることができ、構成全体より「ナイトアゲハ」の称呼を生ずるほか、「ageha」の文字部分に相応して、「アゲハ」の称呼をも生ずるものである。 また、その構成全体からは特定の観念は生じないものの、「ageha」の文字部分からは、容易に「アゲハチョウ(揚羽蝶)」の意味合いを想起させるから、「アゲハチョウ(揚羽蝶)」の観念を生ずるものと認められる。 他方、引用商標1は、別掲2のとおり、「agehaロゴ」の左上に小さく「小悪魔」の漢字を配した構成からなるものであり、構成中の「agehaロゴ」は特徴的なデザインで大きく表されていることから、該文字部分は、独立して自他役務の識別標識として機能する要部とみることができ、構成全体より「コアクマアゲハ」の称呼を生ずるほか、「ageha」の文字部分に相応して、「アゲハ」の称呼をも生ずるものである。 また、その構成全体からは特定の観念は生じないものの、「ageha」の文字部分からは、容易に「アゲハチョウ(揚羽蝶)」の意味合いを想起させるから、「アゲハチョウ(揚羽蝶)」の観念を生ずるものと認められる。 そうすると、両商標は、その要部において、ほぼ同一の態様からなる「ageha」の文字を共通にすることから、外観において近似し、同一の「アゲハ」の称呼及び「アゲハチョウ(揚羽蝶)」の観念を生ずるものであって、類似の商標であると認められる。 ウ 本件商標の指定役務と本件雑誌の関連性 本件商標の指定役務は、「インターネットにおけるウェブサイト上の広告用スペースの提供及びそれに関する情報の提供,酒類を主とする飲食物の提供に関する情報の提供,酒類を主とする飲食店の人気ランキングに関する情報の提供,飲食物の提供,飲食店の予約の取次ぎ」である一方、引用商標1が使用されているのは、印刷物としての本件雑誌であるから、両者は、共通する場所で提供又は販売される関係にはなく、同じ業者によって取り扱われる実情等も見いだせないことからすれば、類似する役務と商品という関係にもなく、その関連性は低いものとみるべきである。 エ 出所の誤認混同について 上記アのとおり、引用商標1は、申立人又は同人から使用許諾を受けた者の業務に係る本件雑誌を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 また、上記イのとおり、本件商標と引用商標1は、類似の商標であるとしても、上記ウのとおり、本件商標の指定役務と引用商標1が表示されている本件雑誌との関連性は低いものである。 してみれば、本件商標をその指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標1を想起ないし連想することはなく、該役務が申立人又は同人と業務上何らかの関係を有する者の取扱いに係る役務であるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。 オ 申立人の主張について 申立人は、「引用商標1は、本件雑誌が公認するキャバ嬢の求人を掲載し、キャバクラの紹介をするインターネット上のウェブサイト『小悪魔ageha navi』においても使用されている。同サイトは、『ageha navi』、『アゲハナビ』とも呼ばれており、agehaモデルやage嬢を中心とするキャバ嬢の間で知名度の高いサイトである。つまり、需要者の間では、『ageha』をその名称の一部若しくは全部に含むサイトは、その内容がキャバ嬢やキャバクラに関連する場合には、本件雑誌が公認しているとの認識を持たせるものである。」、「本件雑誌公認の『ageha navi』では、キャバクラに対してインターネットにおけるウェブサイト上の広告用スペースを提供しており、これに関する情報の提供も行っており、さらにキャバクラのランキングに関する情報提供やキャバ嬢のランキングに関する情報提供も行っている。」、「そうすると、『酒類を主とする飲食店』であるキャバクラに関するインターネット上での情報提供という、本件商標の指定役務において本件商標を用いることは、同指定役務において既に広く認識されている本件雑誌公認のウェブサイトと混同のおそれがあり、『小悪魔ageha』によって提供されている役務と誤認されるおそれが多分に認められる。」旨を主張している。 しかしながら、ウェブサイト「小悪魔ageha navi」の証拠として提出された甲第11号証、及び、「キャバ嬢」と称するキャバクラの女性従業員の間で知名度の高いウェブサイトであるとして提出された甲第10号証は、本件商標の登録査定後の日付のものであり、本件商標の登録出願時及び登録査定時における著名性を立証する証拠として採用し難いばかりか、当該ウェブサイトのインターネット上の掲載期間や、閲覧者数等は不明であり、これら2件の証拠のみから、「インターネットにおけるウェブサイト上の広告用スペースの提供及びこれに関する情報の提供,キャバクラのランキングに関する情報提供」等について、これらの内容を掲載しているウェブサイトが本件雑誌公認のサイトであり、引用商標1が申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者間に広く知られていると認めることはできない。 したがって、上記役務について、引用商標1が広く認識されていることを理由とする申立人の主張は採用できない。 カ 小括 以上からすれば、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当しない。 (2)商標法第4条第1項第11号該当性について 申立人が、商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用している商標は、引用商標2及び引用商標3である。 ア 本件商標について 本件商標は、別掲1のとおり、「agehaロゴ」とほぼ同一のロゴを大きく表し、その左上に小さく「night」(「g」の文字の空洞部分がハート型になっている。)の文字を配し、全体にピンク系で着色した構成からなるものであり、構成中の「ageha」の文字部分が、特徴的なデザインで大きく表示されていることから、該文字部分は、独立して自他役務の識別標識として機能する要部とみることができ、構成全体より「ナイトアゲハ」の称呼を生ずるほか、「ageha」の文字部分に相応して、「アゲハ」の称呼をも生ずるものである。 また、その構成全体からは特定の観念は生じないものの、「ageha」の文字部分からは、容易に「アゲハチョウ(揚羽蝶)」の意味合いを想起させるから、「アゲハチョウ(揚羽蝶)」の観念を生ずるものと認められる。 イ 引用商標2及び引用商標3について 引用商標2及び引用商標3は、前記2(2)及び(3)のとおり、「小悪魔ageha」の文字からなるところ、該文字は、同書、同大、同間隔に表され、漢字及び欧文字のいずれかに軽重の差があるともいい難いから、構成文字の全体に相応して、「コアクマアゲハ」の称呼を生じ、また、「小悪魔ageha」の文字は、辞書等に採録のないものであって、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として認識されるものであるから、特定の観念を生じないものである。 ウ 本件商標と引用商標2及び引用商標3との類否について 本件商標と引用商標2及び引用商標3は、それぞれ上記のとおりの構成からなり、その構成文字及び構成態様において明らかに相違するものであるから、外観において、相紛れるおそれはない。 また、本件商標から生じる「ナイトアゲハ」の称呼と引用商標2及び引用商標3から生じる「コアクマアゲハ」の称呼を比較すると、語頭における「ナイト」の音と「コアクマ」の音において差異を有するものであり、該差異音が両称呼全体に与える影響は小さいものとはいえず、本件商標から生じる「アゲハ」の称呼との比較においては、「コアクマ」の音の有無という差異を有するものであって、それぞれを一連に称呼するときは、明瞭に聴別できるものである。 さらに、本件商標からは「アゲハチョウ(揚羽蝶)」の観念が生じるのに対し、引用商標2及び引用商標3は、特定の観念を生じないものであるから、観念において、類似するものではない。 そうすると、本件商標と引用商標2及び引用商標3は、外観及び称呼において明らかに異なるものであり、観念において類似するものではないから、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 エ 小括 上記ウのとおり、本件商標と引用商標2及び引用商標3とは、非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (3)まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第11号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標:色彩については、原本参照。)![]() 別掲2(引用商標1) ![]() |
異議決定日 | 2018-01-17 |
出願番号 | 商願2016-119528(T2016-119528) |
審決分類 |
T
1
651・
263-
Y
(W3543)
T 1 651・ 271- Y (W3543) T 1 651・ 261- Y (W3543) T 1 651・ 25- Y (W3543) T 1 651・ 262- Y (W3543) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 馬場 秀敏 |
特許庁審判長 |
井出 英一郎 |
特許庁審判官 |
中束 としえ 山田 正樹 |
登録日 | 2017-06-09 |
登録番号 | 商標登録第5953339号(T5953339) |
権利者 | 藤田 睦 |
商標の称呼 | ナイトアゲハ、ナイト、アゲハ |
代理人 | 杉本 佳英 |
代理人 | 伊与田 美幸 |