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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W121825 |
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管理番号 | 1337222 |
異議申立番号 | 異議2017-900237 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-07-31 |
確定日 | 2018-02-01 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5944691号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5944691号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5944691号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示したとおりの構成からなり、平成27年4月17日に登録出願、第14類「キーホルダー,身飾品(「カフスボタン」を除く。)」、第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ」及び第25類「被服,バンド,ベルト」を指定商品として、同29年3月14日に審決、同年5月12日に設定登録されたものである。 2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号に基づき、取り消されるべきものであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第132号証を提出した。 (1)申立人標章について 申立人が引用する標章(以下、「申立人標章」という。)は、「GOTHAM CITY」の欧文字からなるものである。 (2)商標法第4条第1項第15号について 申立人は、コミック雑誌の発行を業とする米国の企業であり、その代表作である「バットマン」など、世界中の誰もが知っているコミックを継続して多数制作・出版してきた。1939年にバットマンが誕生して以来、申立人は長年にわたり、バットマン本人、その仲間や敵役等のキャラクターにとどまらず、バットマンの周辺にあるあらゆる「もの」の特徴を際立たせ、展開することに力を注いできた。そのうちの一つが「GOTHAM CITY/ゴッサムシティ」である。 「GOTHAM CITY/ゴッサムシティ」は、バットマンのホームタウンであり、多数の出版物、デジタル出版物、テレビ番組、ケーブルテレビ番組、映画、ホームビデオ、テレビゲームを含む、実質的にすべての著作物のストーリーがこの街で展開される。日本においてもバットマン関連映画の人気は高く、「GOTHAM CITY/ゴッサムシティ」と言えば、バットマンに出てくる街を連想する人は多い。 「GOTHAM CITY」の表示は、バットマン関連のコミックブックの表紙にも記載されている(甲2?甲20)。「GOTHAM CITY」(まれに「CITY OF GOTHAM」)が付された消費者物資も多数販売・頒布されている。その中には本件商標の指定商品に含まれている「被服」をはじめ(甲21?甲49)、帽子(甲50?甲55)、履物(甲56?甲57)、タオル(甲58?甲60)、おもちや(甲61?甲73)、アクセサリー(甲74、甲75)、時計(甲76)、文房具(甲77、甲78)、マグカップ(甲79)等がある。 甲第21号証ないし甲第79号証で示した商品は、米国等で販売されているものであるが、日本においても申立人が出版した書籍が、「Amazon.com」で販売されている(甲108?甲115)。これらの書籍の内容紹介の欄には、ストーリーが展開される街である「ゴッサムシティ」について触れられている。 「おもちゃ」のジャンルでは、後述する連続ドラマ「GOTHAM」の登場人物及び「バットマン」のスピンオフ作品の登場人物のフィギュアが、プラモデル等の専門店である「コトブキヤ」のサイトで販売されている(甲116?甲118)が、その商品説明の欄にも「ゴッサムシティ」という記述がある。また「バットマン」のスピンオフ作品「THE DARK KNIGHT」の登場人物のフィギュアも平成30年4月に発売される予定であり、「MEDICOM TOY」(甲119)、「Yahoo!ショッピング」(甲120)、「CJMART」(甲121)のそれぞれのサイトで紹介されているが、そこでも「GOTHAM CITY」との記載が見られる。 前述の「コトブキヤ」のサイトでは、「バットマン」とその関連作品のキャラクターをかわいらしくデフォルメした作品「バットマン:リル・ゴッサム」のフィギュアが販売されているが(甲122)、そこでも「バットマンの住む『ゴッサムシティ』」との説明がある。また、「コトブキヤ」のサイト内のブログにおいて、2014年にタワーレコード渋谷店で開催された「バットマン75周年記念渋谷・原宿JACK!」が紹介されており(甲123)、その4頁にブロガーが、「ゴッサムシティぽい街角」と記述している。映画を語る際に必ずその街の名前が言及されるほど、「ゴッサムシティ」という街の名前は突出して著名である。 ここで、映画そのものについて触れると、1989年に公開された第一作目の「バットマン」に続き、その続編又はスピンオフ作品として多数の映画が制作され、それらの映画はその後、ビデオ化されたり、さらにはDVD化、Blu-ray化されたりした。日本で販売されたそれらのDVD、Blu-rayのパッケージ、及びそれらの作品を紹介したAmazon.comのウェブサイト中の映画のあらすじを紹介する箇所では、上述の書籍やおもちやと同様に、ストーリーが展開する場所として必ず「ゴッサム・シティ」又は「ゴッサム」に触れている(甲80?甲94)。 加えて、例えば甲第82号証のAmazon.comのウェブサイトにおいては、「ゴッサム・シティの造形やバットモービルまでフルモデルチェンジ」とあるように、ゴッサム・シティは単にストーリーが展開する場所という位置づけではなく、ゴッサム・シティそのもののデザインや美しさも映画の観客にアピールする対象であり、バットマンシリーズの映画にとっては重要な要素である。 また、バットマンのコンテンツは映画にとどまらず、ゲーム(甲95、甲96)やパチンコ(甲97)のキャラクターとしても採用されている。 最近では米国で、申立人の制作した「GOTHAM」という連続テレビドラマが放映され、そのシーズン4の制作も決定した(甲98)。このドラマも「ゴッサム・シティ」を舞台としている(甲99)。日本では、このドラマのシーズン1が2015年からCS放送のAXNで視聴可能となった(甲100)。また、NETFLIXでは、ストリーミング再生により現在でもシーズン1を視聴することができる(甲101)。前述のAXNでも現在シーズン1を放送中であるほか、2017年12月20日以降、シーズン3をエピソード1から順に放送する予定である(甲102)。動画配信検索エンジンのJustWatchのサイ卜でもドラマ「GOTHAM」が紹介されている(甲103)。ドラマ「GOTHAM」は、順次DVD化、Blu-ray化されており、シーズン3のDVD・Blu-rayが2017年11月3日に発売された(甲104、甲105)。 ドラマ「GOTHAM」の人気が高いことの証明として、上述のような放送局やDVD発売元以外にも、ドラマレビューのサイトで「GOTHAM」が取り上げられ論評されているが、いずれの場合でもドラマとそのストーリーが展開される街「ゴッサム・シティ」との結びつきを強調する内容となっている(甲106、甲107)。 ここで、申立人が登録第2374699号他9件の「GOTHAM CITY」の商標登録を保有している事実を示す(甲124?甲132)。これらの商標は、1992年から1994年にかけて登録されたものである。カバーされる商品区分は、第9、11、14、16、18、19、20、21、22、24、25、27、28、29及び30類に及ぶ。本件商標とは商品上類似の関係にあるものではないが、申立人は、上記のとおり多数の「GOTHAM CITY」の商標登録を保有している。 以上のとおり、1989年以降三十年に及ばんとする長きにわたり多数の関連映画が制作されている「バットマンシリーズ」、また、その関連書籍やおもちゃ等も日本国内で人気が高いことは言うまでもなく、しかも、その内容を紹介する文章には、ストーリーの展開に重要な役割を果たす要素としての「ゴッサムシティ」が例外なく記載されている。これら「GOTHAM CITY」又は「ゴッサムシティ」の表記の使用が商標の使用に当たるかと言えば、否定する意見も多いと考えるが、その事実を考慮しても、「バットマンシリーズ」と、それを制作した申立人が、「ゴッサムシティ」と強い結びつきがあると日本国内で広く認識されていることは疑いのない事実である。 このような状況において、出願人が本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接した需要者・取引者は、本件商標が付された商品が、あたかも著名な映画「バットマン」及びそのシリーズ作品、さらには、それを制作した申立人あるいはその関連会社と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあることは明らかである。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 3 当審の判断 (1)申立人標章の周知著名性について 申立人提出の証拠及び同人の主張によれば、「ゴッサムシティ(GOTHAM CITY)」の文字は、1989年に第一作が日本において公開された、映画「バットマン(BATMAN)」シリーズに登場する架空の都市として、我が国の映画関係の分野の者(ファンを含む。)の間では、ある程度知られているということができる(甲80?甲94)。 しかしながら、上記証拠は、「バットマン(BATMAN)」の映画の紹介記事、DVD等のビデオグラムのパッケージや商品説明に記載された内容紹介(あらすじ)の記載であることから、本件商標の登録出願時及び審決時において、映画の分野に係る取引者、需要者(ファンを含む。)の範囲においては、「ゴッサムシティ(GOTHAM CITY)」が広く知られていたものと認めることができるとしても、我が国において、その他の分野において一般に広く知られていたものとまでは認めることができない。 加えて、「GOTHAM CITY」又は「ゴッサムシティ」の文字は、上記証拠以外に、「バットマン」関連のコミックブックの表紙(甲2?甲20)、Tシャツ、帽子、靴、おもちゃ、アクセサリー、時計、文房具等の商品(甲21?甲50、甲54?甲70、甲72?甲79、甲122)やインターネット上で販売されている書籍の内容紹介等(甲108?甲115)において記載(表示)されていることが確認されるが、甲第2号証ないし甲第20号証のコミックブックは、英語で記載されたものであり、我が国の需要者を対象としたものとは認められず、また、上記のその他の各商品や各書籍も、本件商標の登録出願までに我が国において、何年にどのくらいの数量が販売されたのか等は一切不明である。 さらに、海外ドラマ「ゴッサム(GOTHAM)」を紹介するウェブサイトにおいて、「ゴッサム・シティ」がドラマの舞台となる都市名として記載されていることやこのドラマの登場人物のフィギュアが発売されることはうかがえるが(甲98?甲107、甲116?甲121)、これらの証拠は、本件商標の登録出願時より後のものである。 以上のことを踏まえると、本件商標の登録出願時及び審決時に、申立人標章は、申立人の業務に係る商標として、映画関連の分野を超えて、本件商標の指定商品の分野の一般的な需要者にまで、広く知られているとは認め難いものである。 (2)本件商標と申立人標章との類似性について ア 本件商標について 本件商標は、別掲のとおり、「GOTHAM」及び「CITY」の欧文字を中央部をやや上方に湾曲させて表し、その下に「ゴッサムシティ」の片仮名を横書きしてなるものであるところ、その構成中、「GOTHAM」の欧文字は、我が国において一般に知られている語であるとはいい難く、これに「都市」を意味する「CITY」の欧文字を組み合わせても、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語からなるものと認められる。そして、本件商標の構成中の片仮名部分は、欧文字部分の読みを表したものと理解されるものであるから、その構成文字に相応して、「ゴッサムシティ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないというのが相当である。 イ 申立人標章について 申立人標章は、「GOTHAM CITY」の欧文字からなるところ、該文字に相応して「ゴッサムシティ」の称呼を生ずるものである。また、上記したとおり、「GOTHAM CITY」の文字は、映画「バットマン(BATMAN)」に登場する架空の都市を表すものとして、我が国の映画関係の分野の者(ファンを含む。)の間では、ある程度知られているとしても、これが世間一般にまで広く知られているとはいえないものであるから、特定の観念を生じない一連の造語からなるというのが相当である。 ウ 本件商標と申立人標章との類否について 本件商標と申立人標章とは、上記ア及びイの構成からなるところ、その全体の構成においては相違するが、本件商標の構成中「GOTHAM CITY」の欧文字部分と申立人標章は、構成文字のつづりが同一である。 そうすると、本件商標と申立人標章との間には、外観において、文字のデザインや片仮名部分の有無等の相違があるとしても、欧文字部分のつづりが同一であることから、両者は、外観上、極めて近似した印象を与えるものである。 また、本件商標と申立人標章から生ずる「ゴッサムシティ」の称呼は同一である。そうすると、本件商標と申立人標章とは、共に特定の観念を有しないことから、観念においては,比べることはできないものの、外観及び称呼において、相紛れるおそれのある類似の商標であるというべきである。 (3)出所の混同のおそれについて 本件商標と申立人標章とは、前記(2)のとおり、互いに紛らわしい類似の商標であるが、申立人標章は、前記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び審決時において、その指定商品の分野の一般的な需要者にまで、広く知られているとは認め難いものである。 また、本件商標の指定商品は、一般的な消費者を需要者とする被服や身飾品、かばん類等であるところ、これらの商品と、申立人標章の使用に係る映画や漫画等の娯楽分野の商品・役務とは、製造販売者・提供者、製造販売場所・提供場所、流通経路及び用途において共通するものとはいい難く、それらの関連性は、極めて低いものである。 そうとすれば、本件商標をその指定商品について使用をしても、該商品が申立人又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (4)むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲(本件商標) |
異議決定日 | 2018-01-22 |
出願番号 | 商願2015-37755(T2015-37755) |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Y
(W121825)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 海老名 友子 |
特許庁審判長 |
今田 三男 |
特許庁審判官 |
田中 幸一 大森 友子 |
登録日 | 2017-05-12 |
登録番号 | 商標登録第5944691号(T5944691) |
権利者 | 有限会社クークス |
商標の称呼 | ゴッサムシティ、ゴッサム、シティ |
代理人 | 磯野 富彦 |
代理人 | 特許業務法人 松原・村木国際特許事務所 |